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28話 計画を立てよう
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今回俺たちが泊まるイン・ポルカマレはこの国随一の有名な高級旅館であり、温泉はもちろんのこと、設備面でも接客面でも最高級のサービスを受ける事ができる旅館だ。その反面、予約がなかなか取れない事でも有名な旅館で、常に5年先までキャンセル待ちでいっぱいらしいという話を、目の前で楽しそうにはしゃぐディネルースから教えてもらったんだが。
そんな旅館に泊まらせてもらえるなんて、かなり幸運だなと改めて実感していた俺だったが、ターからここの宿泊料金について聞かされてゾッとした。1番安いグレードの部屋でも、俺が何年働いて用意できないほどの金額。それなのに、今回泊まるのはスイート……要は超がつくほどの最高級の部屋だった。
チェックインを済ませて部屋に案内された俺たちは、中に入って目を疑った。煌びやかな調度品が多く飾られたその部屋は、まるで王族が住む一室の様であり、それでいて畳や障子、組子細工がふんだんに施された扉など、今まで見たことがない内装にも驚かされる。
「こんな装飾初めて見たな。」
「それは東方の辺境の国ハクトの組子ですわね。」
俺が組子を使った扉を物珍しそうに眺めていると、ディネルースがそう教えてくれた。他にも俺の背丈ほどある壺や、掛け軸と呼ばれる大きな巻物の様な飾りなど、見ていて飽きる暇がない。
ついつい、部屋の中を行ったり来たりしている俺を見て、ターがソファーに座りながらため息をつく。
「ユウリ、はしゃぐのもいいけどこの後はどうするの?」
「いいではありませんか。こんな高級旅館、一生に泊まれるかどうかなのですから。ゆったりと過ごしましょう。ターもブスッとしてないで、少しは楽しんだらいかがですか?」
アメニティグッズの中から取り出した紅茶を淹れながら、ディネルースがそうクスクスと笑う。ターは少し気に食わなさそうに目を逸らしたが、ディネルースが淹れた紅茶を飲みながら外の景色を眺める様子は、まんざらでもなさそうだった。
はしゃぎながらもその様子を見ていた俺は、いったん落ち着こうと思い、ターが座るソファーの向かいに腰を下ろした。ディネルースが持ってきた紅茶を受け取って一口含んで見ると、鼻腔を優しく撫でる様な香りが鼻を抜けて心地よい。これも今まで飲んだ事も嗅いだ事もない味と香りがするなと余韻に浸ってしまう。
「俺も仕事柄、紅茶を作ったりするけどさ。はぁ~……これは次元が違う飲み物だな。」
「ここは世界でトップクラスの旅館ですからね。使っている品物も全てが超高級ですわ。ちなみに、この紅茶もハクトでしか採れない茶葉らしいですよ。」
「ほんとすごいところに来ちゃったんだな。それもこれもディネルースのお陰なんだけどな。」
「そ……そんな!ユウリ様……その様におっしゃってもらえて、わたくし嬉しさでいっぱいです。」
俺にお礼を告げられた事に少し驚くと、ディネルースは顔を赤くして嬉しそうにクネクネと動き出した。
ーーーでもやっぱり、これは演技なのかなぁ。
ふと、そんな疑念が頭に浮かぶ。
普段はこんな風に普通に接してくれるのに、彼女は突然俺に毒を盛ってくる。その理由がまったくを持ってわからないからタチが悪い。
とは言え、もともとの出会いが出会いなだけに俺の事をまだ殺そうとしていると考えるのが妥当なのかもしれない。そして、そんな奴と一緒に住んでいる俺自体はバカなんだと自分でも感じてはいた。
俺に見られて嬉しそうに体をくねらせるディネルースから視線を移動させ、1人で景色を眺めながら紅茶を嗜むターに目を向ける。
家でもよく紅茶やコーヒーを飲んでいる彼女だが、今日のその様子はとても優雅で気品があると感じられた。俺の様な凡人にはできないゆったりとした時間の使い方。そして、それに慣れている様な振る舞いには少々驚きを隠せない。
「なに……?」
「い……いや……なんでもないよ。」
俺の視線にすぐ気づき、ティーカップを置きながら視線だけ向けて尋ねてくるターに、俺はつい目を逸らしてティーカップを口へと運ぶ。
その様子を見たターは肩をすくめた後、ソファーに背中を預けながら背伸びをする。
「……っ………はぁ……。それで、この後はどうするの?買い物にでも行く?近くに有名なお菓子屋さんがあるらしいけど……」
「アマトさんのスイーツ店ですね。あの方のお菓子は格別ですわよ。」
アマト……それは俺も聞いたことがある名前だ。
正確にはアマト=シュガーポット氏。彼が作るお菓子は珍しいものが多くて、貴族たちの間ではかなり流行っていると、ギルド長の娘のエルダから聞いた事がある。もちろん、見た目だけじゃなくて味も超一流であり、本店以外でもいろんな国にお店を数多く展開している超有名な菓子職人だ。
「それは俺も食べてみたいかも……」
想像して涎を溢しそうになる俺に対し、ターは呆れてため息をつきながらもそれを承認してくれる。
「なら、まずはそこに行って今夜のデザートでも買う?」
「だな。その後は少し観光するか。そうすれば夕食の時間にはなるんじゃないか?」
ターはそれについても普通に同意してくれたが、いつも否定や皮肉を言われる俺としては少しの違和感を感じてしまう。
だが、ここでそれを聞こうとすれば、何と言われるかは目に見えている。ここは黙っているのが1番いいはず。
俺がそんな事を考えていた矢先、突然ディネルースが全ての提案を覆してきた。
「では、まずは温泉に行きましょう!!」
本当にこいつはマイペースな奴だとため息しか出なかった。
そんな旅館に泊まらせてもらえるなんて、かなり幸運だなと改めて実感していた俺だったが、ターからここの宿泊料金について聞かされてゾッとした。1番安いグレードの部屋でも、俺が何年働いて用意できないほどの金額。それなのに、今回泊まるのはスイート……要は超がつくほどの最高級の部屋だった。
チェックインを済ませて部屋に案内された俺たちは、中に入って目を疑った。煌びやかな調度品が多く飾られたその部屋は、まるで王族が住む一室の様であり、それでいて畳や障子、組子細工がふんだんに施された扉など、今まで見たことがない内装にも驚かされる。
「こんな装飾初めて見たな。」
「それは東方の辺境の国ハクトの組子ですわね。」
俺が組子を使った扉を物珍しそうに眺めていると、ディネルースがそう教えてくれた。他にも俺の背丈ほどある壺や、掛け軸と呼ばれる大きな巻物の様な飾りなど、見ていて飽きる暇がない。
ついつい、部屋の中を行ったり来たりしている俺を見て、ターがソファーに座りながらため息をつく。
「ユウリ、はしゃぐのもいいけどこの後はどうするの?」
「いいではありませんか。こんな高級旅館、一生に泊まれるかどうかなのですから。ゆったりと過ごしましょう。ターもブスッとしてないで、少しは楽しんだらいかがですか?」
アメニティグッズの中から取り出した紅茶を淹れながら、ディネルースがそうクスクスと笑う。ターは少し気に食わなさそうに目を逸らしたが、ディネルースが淹れた紅茶を飲みながら外の景色を眺める様子は、まんざらでもなさそうだった。
はしゃぎながらもその様子を見ていた俺は、いったん落ち着こうと思い、ターが座るソファーの向かいに腰を下ろした。ディネルースが持ってきた紅茶を受け取って一口含んで見ると、鼻腔を優しく撫でる様な香りが鼻を抜けて心地よい。これも今まで飲んだ事も嗅いだ事もない味と香りがするなと余韻に浸ってしまう。
「俺も仕事柄、紅茶を作ったりするけどさ。はぁ~……これは次元が違う飲み物だな。」
「ここは世界でトップクラスの旅館ですからね。使っている品物も全てが超高級ですわ。ちなみに、この紅茶もハクトでしか採れない茶葉らしいですよ。」
「ほんとすごいところに来ちゃったんだな。それもこれもディネルースのお陰なんだけどな。」
「そ……そんな!ユウリ様……その様におっしゃってもらえて、わたくし嬉しさでいっぱいです。」
俺にお礼を告げられた事に少し驚くと、ディネルースは顔を赤くして嬉しそうにクネクネと動き出した。
ーーーでもやっぱり、これは演技なのかなぁ。
ふと、そんな疑念が頭に浮かぶ。
普段はこんな風に普通に接してくれるのに、彼女は突然俺に毒を盛ってくる。その理由がまったくを持ってわからないからタチが悪い。
とは言え、もともとの出会いが出会いなだけに俺の事をまだ殺そうとしていると考えるのが妥当なのかもしれない。そして、そんな奴と一緒に住んでいる俺自体はバカなんだと自分でも感じてはいた。
俺に見られて嬉しそうに体をくねらせるディネルースから視線を移動させ、1人で景色を眺めながら紅茶を嗜むターに目を向ける。
家でもよく紅茶やコーヒーを飲んでいる彼女だが、今日のその様子はとても優雅で気品があると感じられた。俺の様な凡人にはできないゆったりとした時間の使い方。そして、それに慣れている様な振る舞いには少々驚きを隠せない。
「なに……?」
「い……いや……なんでもないよ。」
俺の視線にすぐ気づき、ティーカップを置きながら視線だけ向けて尋ねてくるターに、俺はつい目を逸らしてティーカップを口へと運ぶ。
その様子を見たターは肩をすくめた後、ソファーに背中を預けながら背伸びをする。
「……っ………はぁ……。それで、この後はどうするの?買い物にでも行く?近くに有名なお菓子屋さんがあるらしいけど……」
「アマトさんのスイーツ店ですね。あの方のお菓子は格別ですわよ。」
アマト……それは俺も聞いたことがある名前だ。
正確にはアマト=シュガーポット氏。彼が作るお菓子は珍しいものが多くて、貴族たちの間ではかなり流行っていると、ギルド長の娘のエルダから聞いた事がある。もちろん、見た目だけじゃなくて味も超一流であり、本店以外でもいろんな国にお店を数多く展開している超有名な菓子職人だ。
「それは俺も食べてみたいかも……」
想像して涎を溢しそうになる俺に対し、ターは呆れてため息をつきながらもそれを承認してくれる。
「なら、まずはそこに行って今夜のデザートでも買う?」
「だな。その後は少し観光するか。そうすれば夕食の時間にはなるんじゃないか?」
ターはそれについても普通に同意してくれたが、いつも否定や皮肉を言われる俺としては少しの違和感を感じてしまう。
だが、ここでそれを聞こうとすれば、何と言われるかは目に見えている。ここは黙っているのが1番いいはず。
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