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31話 怒りのポイント
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(お命ちょうだいって……なんだこいつ!?)
目の前で笑う男に対して俺が鋭い視線を向けると、彼は「こわぁ~い。」とこぼしながらクネクネと動き出した。そんな彼の態度に拍子抜けして油断を見せた瞬間、目の前で何かが膨らんでいく感覚を捉えて反射的に横へ回避すると同時に、自分が今いた位置が激しく破壊された。
まるで何かが破裂した様な衝撃が床や壁を砕き、周りにあるものを吹き飛ばしていく。
「あらぁ~?けっこう感が鋭い方なのかしらぁ~?」
男は俺に避けられた事に少々驚いた様子だが、その笑みは崩す事なく一歩、また一歩と前へ出る。
再び目の前で何かが膨らむ感覚……
「ちっ……!!」
一撃目に受けたダメージは思ったよりも大きかったらしく、回避しようとすると足が軋み、全身に痛みが走る。
だが、避けねば負ける。この攻撃をあと1回でも受けてしまえば、俺は動けなくなるだろう。それほどまでに強力な攻撃だ。
「えぇ~!けっこう避けちゃう感じなのぉねぇ~!お姉さん、興奮しちゃうわぁ~!」
愉悦を浮かべながら、一歩ずつ俺に近づいてくる男。俺はそんな彼から距離を置く様に飛び回って攻撃をかわしていくが、右へ避ければ右に、上に避ければ上にと、まるで俺の動きを読んで罠を仕掛ける様に見えない何かを膨らませては破裂させていった。
すでに客室は原型を留めておらず、あの綺麗だった部屋は見る影もない。だが、俺は自分の事よりも、ふとこの修理費について想像して不安に駆られてしまった。
「……はぁ~。なかなかやるじゃなぁ~い。ここまで避けられたのは初めてかも……は・つ・た・い・け・ん♡」
攻撃が止んだ為、俺は奴と距離を保った位置に着地する。攻撃のし過ぎで相手が疲れたのかと推測したが、涼しい顔をしたまま両手でハートの形を作ってウィンクをする男を見た瞬間、背筋が凍りつく感覚に襲われてすぐにそんな考えは捨てた。
「いったい……なんの恨みがあってこんな事を……!」
俺がそう問いかけると、男はそれに答える事なく熊の顔を型どったポーチを取り出して化粧直しを始めた。その態度に腹の底から怒りが込み上げてくるのを感じて、つい声を荒げてしまう。
「何なんだって聞いてんだろ!理由も言わずに突然襲ってきやがって!」
「ん~理由なんて必要ないでしょ?あたしはあなたを殺しに来た。それで十分よ。」
男はまつ毛をブローしながら、こちらを見る事なくそう告げる。それにはさらに怒りが込み上げてきた。
「お前はバカなのか!?ここはイン・ポルカマレだぞ!!最高級の旅館だぞ!部屋をこんなにめちゃくちゃにしちまって!!ここの修理代はお前が払うんだろうな!?絶対そうなんだろうな!!お前が払えよな!!」
「修理代って……あなた、今の自分の立場わかってる?ちょっとズレてるのかしら……まぁそれも可愛くて好きよ。」
俺の言葉に少々驚いた様だが、男はすぐにそう笑う。対する俺の怒りは止まらない。
「うるせぇー!!まじでキモイ奴だな!!くそぉ~!!せっかく世界で最高の旅館に泊まれたのに、全部台無しじゃないか!!このオカマ野郎!!化粧なんかしてないで部屋を直……」
その瞬間、ふと大事な事に気づいた。
この部屋には目を回したままのディネルースがいたのに、攻撃をかわす事に必死で彼女の事を忘れていた。それを思い出してめちゃくちゃになった部屋を慌てて見回してみる。
「ディネルースは……!?」
だが、ディネルースは何事もなかったかの様に布団の上で横たわったままだった。その事に胸を撫で下ろしつつも、ある違和感にすぐに気がついた。ディネルースの周りはめちゃくちゃなのに、彼女と布団は汚れすらついていない。これだけ破壊された部屋の中で、彼女がいるところだけ綺麗なのだ。まるでそこだけ切り抜かれたかの様に。
(どういう事だ……?こいつが気を遣ったのか?)
一瞬だけ男へ視線を向け、すぐにディネルースへ戻す。ディネルースは攻撃対象ではないという事なのか。それなら狙いは俺1人という事になるが、ここまでこだわる理由には疑問が浮かぶ。
単なる暴漢なら寝ているディネルースごと殺すだろうし、むしろ人質に取るなど使い道はいくらでもあるはず。なのに、それをしないという事はこいつの狙いはやっぱり俺だけであると推測できるし、そうなるとこのこだわりはこいつが殺しを専門とする暗殺者の類だからだと想像できた。
(なんで俺が殺し屋に狙われるのかはよくわからないけど……それならやりようはいくらでもある!)
そう結論付けて再び男へ向き直ってみると、彼はなぜか下を向いて肩を震わせていた。それはまるで泣いているような怒っているような……どちらとも取れる様子に俺は動揺を隠せずについつい声をかけてしまう。
「お……おい……どうした?なんか悲しい事でも……」
すると、男は突然何かのタガが外れた様に声を上げた。それも獣の咆哮と言っても過言ではないほどの大きさで。
「俺はオカマじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
辺りが大きく震え出す。衝撃波がビリビリと肌に伝わり、その力強さを感じさせられる。
だが、俺自身の驚きはそこではない。彼が怒った理由に単純に驚いていた。
目の前で笑う男に対して俺が鋭い視線を向けると、彼は「こわぁ~い。」とこぼしながらクネクネと動き出した。そんな彼の態度に拍子抜けして油断を見せた瞬間、目の前で何かが膨らんでいく感覚を捉えて反射的に横へ回避すると同時に、自分が今いた位置が激しく破壊された。
まるで何かが破裂した様な衝撃が床や壁を砕き、周りにあるものを吹き飛ばしていく。
「あらぁ~?けっこう感が鋭い方なのかしらぁ~?」
男は俺に避けられた事に少々驚いた様子だが、その笑みは崩す事なく一歩、また一歩と前へ出る。
再び目の前で何かが膨らむ感覚……
「ちっ……!!」
一撃目に受けたダメージは思ったよりも大きかったらしく、回避しようとすると足が軋み、全身に痛みが走る。
だが、避けねば負ける。この攻撃をあと1回でも受けてしまえば、俺は動けなくなるだろう。それほどまでに強力な攻撃だ。
「えぇ~!けっこう避けちゃう感じなのぉねぇ~!お姉さん、興奮しちゃうわぁ~!」
愉悦を浮かべながら、一歩ずつ俺に近づいてくる男。俺はそんな彼から距離を置く様に飛び回って攻撃をかわしていくが、右へ避ければ右に、上に避ければ上にと、まるで俺の動きを読んで罠を仕掛ける様に見えない何かを膨らませては破裂させていった。
すでに客室は原型を留めておらず、あの綺麗だった部屋は見る影もない。だが、俺は自分の事よりも、ふとこの修理費について想像して不安に駆られてしまった。
「……はぁ~。なかなかやるじゃなぁ~い。ここまで避けられたのは初めてかも……は・つ・た・い・け・ん♡」
攻撃が止んだ為、俺は奴と距離を保った位置に着地する。攻撃のし過ぎで相手が疲れたのかと推測したが、涼しい顔をしたまま両手でハートの形を作ってウィンクをする男を見た瞬間、背筋が凍りつく感覚に襲われてすぐにそんな考えは捨てた。
「いったい……なんの恨みがあってこんな事を……!」
俺がそう問いかけると、男はそれに答える事なく熊の顔を型どったポーチを取り出して化粧直しを始めた。その態度に腹の底から怒りが込み上げてくるのを感じて、つい声を荒げてしまう。
「何なんだって聞いてんだろ!理由も言わずに突然襲ってきやがって!」
「ん~理由なんて必要ないでしょ?あたしはあなたを殺しに来た。それで十分よ。」
男はまつ毛をブローしながら、こちらを見る事なくそう告げる。それにはさらに怒りが込み上げてきた。
「お前はバカなのか!?ここはイン・ポルカマレだぞ!!最高級の旅館だぞ!部屋をこんなにめちゃくちゃにしちまって!!ここの修理代はお前が払うんだろうな!?絶対そうなんだろうな!!お前が払えよな!!」
「修理代って……あなた、今の自分の立場わかってる?ちょっとズレてるのかしら……まぁそれも可愛くて好きよ。」
俺の言葉に少々驚いた様だが、男はすぐにそう笑う。対する俺の怒りは止まらない。
「うるせぇー!!まじでキモイ奴だな!!くそぉ~!!せっかく世界で最高の旅館に泊まれたのに、全部台無しじゃないか!!このオカマ野郎!!化粧なんかしてないで部屋を直……」
その瞬間、ふと大事な事に気づいた。
この部屋には目を回したままのディネルースがいたのに、攻撃をかわす事に必死で彼女の事を忘れていた。それを思い出してめちゃくちゃになった部屋を慌てて見回してみる。
「ディネルースは……!?」
だが、ディネルースは何事もなかったかの様に布団の上で横たわったままだった。その事に胸を撫で下ろしつつも、ある違和感にすぐに気がついた。ディネルースの周りはめちゃくちゃなのに、彼女と布団は汚れすらついていない。これだけ破壊された部屋の中で、彼女がいるところだけ綺麗なのだ。まるでそこだけ切り抜かれたかの様に。
(どういう事だ……?こいつが気を遣ったのか?)
一瞬だけ男へ視線を向け、すぐにディネルースへ戻す。ディネルースは攻撃対象ではないという事なのか。それなら狙いは俺1人という事になるが、ここまでこだわる理由には疑問が浮かぶ。
単なる暴漢なら寝ているディネルースごと殺すだろうし、むしろ人質に取るなど使い道はいくらでもあるはず。なのに、それをしないという事はこいつの狙いはやっぱり俺だけであると推測できるし、そうなるとこのこだわりはこいつが殺しを専門とする暗殺者の類だからだと想像できた。
(なんで俺が殺し屋に狙われるのかはよくわからないけど……それならやりようはいくらでもある!)
そう結論付けて再び男へ向き直ってみると、彼はなぜか下を向いて肩を震わせていた。それはまるで泣いているような怒っているような……どちらとも取れる様子に俺は動揺を隠せずについつい声をかけてしまう。
「お……おい……どうした?なんか悲しい事でも……」
すると、男は突然何かのタガが外れた様に声を上げた。それも獣の咆哮と言っても過言ではないほどの大きさで。
「俺はオカマじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
辺りが大きく震え出す。衝撃波がビリビリと肌に伝わり、その力強さを感じさせられる。
だが、俺自身の驚きはそこではない。彼が怒った理由に単純に驚いていた。
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