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32話 口喧嘩
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「俺は女だ!!オカマじゃねぇぇぇぇぇ!!」
「いやいや!!どう見ても男だろうが!!!」
男の反応に対して俺がつい言い返すと、彼はその顔をさらに怒りで染め上げた。
「どっからどう見ても綺麗なお姉さんだろうが!!」
「どう見たらそう言えるんだ!?」
「お姉さんだろうがって!!」
「どっからどう見ても完全に男じゃねぇか!!」
「てめぇ~!!人を見かけで判断すんじゃねぇ!!」
男は青筋を立てて俺を指差して怒りをぶちまけるが、その顔と口調で言われても説得力を感じ得ず、俺もそう簡単には言い負ける事はない。
「見かけで判断すんなって……もっともらしい事を言ってるけど、あんたの場合は見かけでしか判断する他ないだろうが!!」
「このぉ~!!あっ、そうか!お前の目は節穴なんだな!!絶対にそうだ!」
「バカ言え!!俺の目が節穴だって言うなら、おそらく世界中が節穴だらけになるわ!」
俺の反応に対して男は完全に熱くなっている。口調もさっきまでのお姉言葉ではなくなってるし、俺が言い返せばすぐに反論してくるのがその証拠である。
これはある意味で好機だと思った。突然襲われて後手に回っていたこの状況を覆す為の突破口……こいつが冷静じゃなくなればなくなるほど、それを見つけやすくなるはずだ。
俺はそう考えて、畳み掛ける様に男を挑発し始めた。
「俺はあんたを女とは絶対に認めんからな!!」
「んだとぉ~!?だから、俺は女だっつってんだろ!」
「そんなごっつい顔した女がどこにいる!鏡を見直してこい!」
「ごっつ……い……!?て……てめぇ!言っていい事と悪い事があんだろが!!」
「事実だろうが!!それにそのピンクの頭も似合ってねぇんだよ!どんなセンスしてんだ!」
「な……っ!この頭のどこが……これはチャームポイントの一つで……」
「ぜっんぜん可愛くねぇし!ピエロにしか見えんわ!」
「ピエ……な……なんでそんな事……」
「それに唇だってめっちゃ分厚いし!リップとか似合ってねぇぞ!!」
「くち……ぶあつ……そ……それは酷いだろうが!」
男は気圧された様に自分の顔や唇に触れる。その様子にどこか変化を感じた。男の怒りの勢いが少し落ちたようなそんな違和感を。
だが、こちらとて必死なのだから挑発の手を休める訳にはいかず、思い当たる事を次々と言い続けた。
「そのピアスだって、鼻に開けるとかどうかしてるって!威圧感しか感じねぇし、牛みたいだな!!可愛らしさなんてどこにあんだよ!」
「だ……だってこれは……!最近のトレンド……で……」
「トレンドとか知らんけど、さっきのクマのポーチとかも顔に似合ってない!!あんたの場合、ゴリラとかの方がいい!!」
「ゴリ……?!ひ……酷い!!」
「そしてその仕草!!全然女性らしくない!!あんたのそれは完全にオカマだ!!オ!カ!マ!」
募っていた不満が一気に口から溢れ出た……そんな感覚だった。あまりにも勢いよく言い過ぎてしまい、肩で息をするほどに。
しかしながら、俺はとりあえず満足感を感じていた。いきなり襲われた事、綺麗な客室をぶち壊された事などに対する怒りをその元凶へぶちまける事ができたのだ。少し言い過ぎた感じも否めないが、まずは達成感というやつを噛み締める様に深呼吸をする。
だが、何度か深呼吸を行ったところで相手の反応がまったくない事に気づき、どうしたものかと視線を向けて驚いた。なぜなら、目の前の男の目には大量の涙が浮かんでいたのだ。
「う……うぇ…………うわぁぁぁぁぁぁん!ひどいわぁ~!ひど過ぎるわぁ~!!」
男はそう言って泣き出すと、クネクネと動きながら部屋から走り去っていった。残された俺はといえば、何が起きたのか理解できずに、その様子をただ茫然と見送る事しかできない。
「……え!おい……」
手を伸ばした先にはすでに誰もおらず、これがどういう状況なのか理解できなかった。
あの男は暗殺者の類ではなかったのだろうか。それとも、これは俺の油断を誘う作戦の1つで、追いかけたところを突然ブスリっと一突きに……しかし、あの涙は本物っぽかった様な気もしないでもない。
混乱が混乱を招いて足が動かない。
頭の中では今のこの状況を必死に整理しようとしているもう1人の俺がいるが、情報過多でその彼も倒れそうになっている。いっそこのまま考えるのをやめようか。あいつはもういなくなったのだし、とりあえずは良しとしてしまおうか。
だが、この部屋の惨状が俺を現実に引き戻す。
「……ていうかこれ、俺が弁償すんのか?」
見事に砕け散った家具や調度品の数々と、ほとんどの部分に亀裂が入った壁を見てゾッとする。
ここは世界最高級の旅館。
血の気が引くとはまさにこの事かと思うほど、体から熱が消えていく感覚が俺を襲う。
ここは世界最高級の旅館。
逃げるべきか……でも、受付で名前書いちゃったし、逃げたってすぐに身元がバレてしまう。かと言って、家には帰らずに雲隠れしたところで、ギルドの捜査網から逃げ切れる自信は俺にはない。
ここは世界最高級の旅館。
ゲイズの街のギルマスの怒りに満ちた顔が浮かんで、さらに背筋が凍りつく。
「くそぉ~どうすれば……」
その場に膝から崩れ落ち、両手をついてそうこぼす。
こんな事になると知っていたら、初めから来なかったのに。あの平凡ないつもの暮らしに戻りたい。
そう思い、絶望に打ちひしがれていたところで聞き覚えのある声が前から聞こえてきた。
「……何なのよ、まったく。ほら、こいつ捕まえておいたからね。さっさと旅館へ突き出すわよ。」
ゆっくりと前を向けば、今まで姿を見せていなかったターが意識を失ったピンク頭のオカマ野郎を担いでおり、俺の前に下ろすと大きなため息をついた。
「いやいや!!どう見ても男だろうが!!!」
男の反応に対して俺がつい言い返すと、彼はその顔をさらに怒りで染め上げた。
「どっからどう見ても綺麗なお姉さんだろうが!!」
「どう見たらそう言えるんだ!?」
「お姉さんだろうがって!!」
「どっからどう見ても完全に男じゃねぇか!!」
「てめぇ~!!人を見かけで判断すんじゃねぇ!!」
男は青筋を立てて俺を指差して怒りをぶちまけるが、その顔と口調で言われても説得力を感じ得ず、俺もそう簡単には言い負ける事はない。
「見かけで判断すんなって……もっともらしい事を言ってるけど、あんたの場合は見かけでしか判断する他ないだろうが!!」
「このぉ~!!あっ、そうか!お前の目は節穴なんだな!!絶対にそうだ!」
「バカ言え!!俺の目が節穴だって言うなら、おそらく世界中が節穴だらけになるわ!」
俺の反応に対して男は完全に熱くなっている。口調もさっきまでのお姉言葉ではなくなってるし、俺が言い返せばすぐに反論してくるのがその証拠である。
これはある意味で好機だと思った。突然襲われて後手に回っていたこの状況を覆す為の突破口……こいつが冷静じゃなくなればなくなるほど、それを見つけやすくなるはずだ。
俺はそう考えて、畳み掛ける様に男を挑発し始めた。
「俺はあんたを女とは絶対に認めんからな!!」
「んだとぉ~!?だから、俺は女だっつってんだろ!」
「そんなごっつい顔した女がどこにいる!鏡を見直してこい!」
「ごっつ……い……!?て……てめぇ!言っていい事と悪い事があんだろが!!」
「事実だろうが!!それにそのピンクの頭も似合ってねぇんだよ!どんなセンスしてんだ!」
「な……っ!この頭のどこが……これはチャームポイントの一つで……」
「ぜっんぜん可愛くねぇし!ピエロにしか見えんわ!」
「ピエ……な……なんでそんな事……」
「それに唇だってめっちゃ分厚いし!リップとか似合ってねぇぞ!!」
「くち……ぶあつ……そ……それは酷いだろうが!」
男は気圧された様に自分の顔や唇に触れる。その様子にどこか変化を感じた。男の怒りの勢いが少し落ちたようなそんな違和感を。
だが、こちらとて必死なのだから挑発の手を休める訳にはいかず、思い当たる事を次々と言い続けた。
「そのピアスだって、鼻に開けるとかどうかしてるって!威圧感しか感じねぇし、牛みたいだな!!可愛らしさなんてどこにあんだよ!」
「だ……だってこれは……!最近のトレンド……で……」
「トレンドとか知らんけど、さっきのクマのポーチとかも顔に似合ってない!!あんたの場合、ゴリラとかの方がいい!!」
「ゴリ……?!ひ……酷い!!」
「そしてその仕草!!全然女性らしくない!!あんたのそれは完全にオカマだ!!オ!カ!マ!」
募っていた不満が一気に口から溢れ出た……そんな感覚だった。あまりにも勢いよく言い過ぎてしまい、肩で息をするほどに。
しかしながら、俺はとりあえず満足感を感じていた。いきなり襲われた事、綺麗な客室をぶち壊された事などに対する怒りをその元凶へぶちまける事ができたのだ。少し言い過ぎた感じも否めないが、まずは達成感というやつを噛み締める様に深呼吸をする。
だが、何度か深呼吸を行ったところで相手の反応がまったくない事に気づき、どうしたものかと視線を向けて驚いた。なぜなら、目の前の男の目には大量の涙が浮かんでいたのだ。
「う……うぇ…………うわぁぁぁぁぁぁん!ひどいわぁ~!ひど過ぎるわぁ~!!」
男はそう言って泣き出すと、クネクネと動きながら部屋から走り去っていった。残された俺はといえば、何が起きたのか理解できずに、その様子をただ茫然と見送る事しかできない。
「……え!おい……」
手を伸ばした先にはすでに誰もおらず、これがどういう状況なのか理解できなかった。
あの男は暗殺者の類ではなかったのだろうか。それとも、これは俺の油断を誘う作戦の1つで、追いかけたところを突然ブスリっと一突きに……しかし、あの涙は本物っぽかった様な気もしないでもない。
混乱が混乱を招いて足が動かない。
頭の中では今のこの状況を必死に整理しようとしているもう1人の俺がいるが、情報過多でその彼も倒れそうになっている。いっそこのまま考えるのをやめようか。あいつはもういなくなったのだし、とりあえずは良しとしてしまおうか。
だが、この部屋の惨状が俺を現実に引き戻す。
「……ていうかこれ、俺が弁償すんのか?」
見事に砕け散った家具や調度品の数々と、ほとんどの部分に亀裂が入った壁を見てゾッとする。
ここは世界最高級の旅館。
血の気が引くとはまさにこの事かと思うほど、体から熱が消えていく感覚が俺を襲う。
ここは世界最高級の旅館。
逃げるべきか……でも、受付で名前書いちゃったし、逃げたってすぐに身元がバレてしまう。かと言って、家には帰らずに雲隠れしたところで、ギルドの捜査網から逃げ切れる自信は俺にはない。
ここは世界最高級の旅館。
ゲイズの街のギルマスの怒りに満ちた顔が浮かんで、さらに背筋が凍りつく。
「くそぉ~どうすれば……」
その場に膝から崩れ落ち、両手をついてそうこぼす。
こんな事になると知っていたら、初めから来なかったのに。あの平凡ないつもの暮らしに戻りたい。
そう思い、絶望に打ちひしがれていたところで聞き覚えのある声が前から聞こえてきた。
「……何なのよ、まったく。ほら、こいつ捕まえておいたからね。さっさと旅館へ突き出すわよ。」
ゆっくりと前を向けば、今まで姿を見せていなかったターが意識を失ったピンク頭のオカマ野郎を担いでおり、俺の前に下ろすと大きなため息をついた。
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