元アサシンは前世の愛に飢える

noah太郎

文字の大きさ
34 / 42

33話 一件落着?

しおりを挟む
 結局、俺たちはピンク頭のオカマ野郎を旅館側へと突き出して謝罪した。
 もちろん最上級の部屋をあれだけ破壊してしまったのだから、どれだけ嫌味を言われるかとヒヤヒヤしていたが、旅館のオーナーは俺の謝罪を快く受け入れてくれて、オカマはそのままギルドの冒険者が連行していった。

 不幸中の幸いだったのは、壊されたのは俺が宿泊していた部屋のみ……と言っても、先ほど言ったとおり最上級のスイートなのでその修繕費は計り知れないが、こういった事にも備えて保険に入っているから大丈夫だとオーナーが付け加えて説明してくれたので安心した。

 かくして、俺はオカマの暗殺者?の撃退に成功したのである。てか、特別に何かをした訳でもないんだが……

 とにかく、俺たちの部屋は壊れてしまったので旅館側が準備してくれた別の部屋へ戻ってみると、いまだに寝ているディネルースの姿を見つけて彼女の胆力の呆れつつ笑ってしまった。


 

「ところでター。さっきまでどこ行ってたんだよ。」

 
 別の部屋に戻り、一息ついたところで彼女にそう尋ねると、ターは肩をすくめて小さくため息をついた。


「お風呂よ、お風呂。ディネルースの奴が全然戻ってこないからずっと待ってたの。」

「そ……そうか。俺が出た時にちゃんと声をかければよかったな。」


 俺がそう苦笑いしてみたが、ターは小さく鼻を鳴らすだけ。その態度に少しイラッとしてしまったが、せっかくの旅行先で怒るのもナンセンスだと思い、言葉をグッと飲み込んだ。
 
 そうして、俺と彼女の間には沈黙が訪れた。
 家にいる時はあまり感じなかったが、こういう状況だと話が続かないのはとても気まずく感じた。いつもと違う環境でそれを敏感に感じてしまっているのだろう。だけど、何を話せばいいのかわからない俺に、この状況を打破できるはずもない。そう考えたら、無意識に大きなため息を吐き出してしまったが、それにハッとして咳払いする。こんな時は、いつもよく喋っているディネルースのありがたみがよくわかった。


「ディネルースはまだ起きないのかねぇ~。」


 独り言のように呟く俺にターが小さく答える。


「……ディネルースならずいぶん前から起きてるわよ。」

「はっ?!」
 

 驚いて、横になっているディネルースへ顔を向けると、彼女がもぞもぞとし始めた事に気がついた。


「おいディネルース。起きてるならそう言えよな。」

「あらあら、バレてましたか。」


 そう言って上半身を起こし笑うディネルースを見て、この沈黙が解消された事に少しホッとしつつ、まずは先ほどの件について嗜める事にする。


「ディネルース、先に言っとくがさっきのは良くないぞ。ここは旅館でたくさんの人がいるんだ。下手したらお前の毒で誰か死ぬんだぞ。それ、わかってんのか?」


 偉そうに講釈垂れているけど、そもそもがそんな相手と一緒に住んでいる俺も俺だ。だが、この件についてはそろそろ話し合っておかないといけないとは思っていた。これ以上、命を狙われるのも疲れるし。
 それに、家では話しにくい事でも旅行先では気分が高揚していて話し合いやすくなるかもしれない。
 そう踏んで、ディネルースへと語りかけてみる。


「なぁ、そろそろやめないか?なんでそんなに俺を殺したいんだ?俺、お前になんかしたっけか。」


 だが、ディネルースはニコニコと笑ったままで答えない。それはまるで、その事については触れるなとでも言っている様な笑みだ。


「答えないとわからないだろ!俺もそろそろ限界だよ!せめて殺そうとする理由くらい教えてくれ!もしかしたら、改善できる事かもしれないだろ!」


 自分でも言っている事が理解できない。なぜ、殺そうとしてくる相手にその理由を教えてくれと懇願せねばならないのか。
 だが、それでもディネルースは答える事はなく、その態度にさすがの俺も堪忍袋の緒が切れかけて、彼女に歩み寄った。


「ディネルース!!答えてくれよ!なぁ……」


 その瞬間だった。
 再び目の前で何かが膨らむ感覚……これはあのオカマが俺に向けてきた攻撃と同じだ。それに先ほどよりも強い殺気を感じた。
 とっさに目の前に座っているディネルースを庇い、背を向けてその場に蹲ると、同時に後ろの空間が勢いよく破裂した。


「ぐあぁぁぁ!」


 激しい衝撃に体が吹き飛ばされる。ディネルースを庇う様に抱え込んだので、一緒に吹き飛ばされる形になったが、このままだとディネルースが壁にぶつかってしまう俺は彼女を庇う様に体を捻り、部屋の壁へと突っ込んだ。


「ユウリ様、わたくしを守ってくださったのですねぇ!」

「イタタタ……今の……もしかして……」


 空気を読まないディネルースは無視し、今起きた事が何なのかを推測すると、その答え合わせをする様に外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あっはぁ~!やってくれたじゃなぁ~い!ユウリ=ドラックスゥゥゥ~!!」


 声がした窓の外に目を向けると、暗闇の中に人影が見える。それはピンク色の短髪と、特徴的なピアスなどのアクセサリーを身につけたオカマ男。

 彼はリップを塗り直した唇を舐めると、部屋にいる俺を見下ろしていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...