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34話 提案
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「あいつ!逃げてきたのか!?」
宙に浮かんだまま、こちらを見下ろしているオカマを見上げると、彼の服も体もボロボロでところどころ血が滲んでいる。おそらくは冒険者たちに連行されている途中で、彼らを振り切ってここまで戻ってきたのだろう。実力派揃いの冒険者たち相手にあれだけの怪我で済んでいるのは、彼が本当に強い事を物語っている。
闇夜に浮かぶその顔には怒りが滲んでいた。
男はあくまでも冷静な表情を浮かべている。だが、それでも隠しきれないほどの憎悪が漏れ出ている。自分をコケにされた事が許せない……そんな感じだろうか。
少しの沈黙の後、男はゆっくりと俺たちの部屋の中へと降り立った。
「まじでやってくれたわね。」
その低くて重い声色は彼の心情を見事に表しており、俺に対する殺気が乗せられている事を理解するが、そもそもさっきの件は俺のせいではないはずなんだが。
「てか、勝手にそっちが出て行って捕まったんだろ。俺は関係なくね?」
「うるさい……黙りなさいな。」
男はじろりと俺を睨んだ。
対する俺は、まったく理不尽な回答だと感じたが、そう言い返してもこいつが受け入れるはずもないので、余計な事は言わない方が賢明だと判断して口を閉じる。
それよりも気になったのは、一瞬だけ男がターに視線を向けた事だ。ターがこいつを捕まえたんだし、怒りの矛先が彼女へ向くのも無理ないが、男がターに向けた視線には見ず知らずの相手に向けるそれというよりは、知っている相手に向けた猜疑心の様な視線。考え過ぎなのかもしれないが、それに気づいて違和感を感じたのだ。
だが、ター自身は変わらずに無表情のままだし、男もそれ以降はターにまったく視線を向けてはいない。
(今それを追求するのはナンセンスだな。まずはこいつを倒さないと。)
何にせよ、こいつが強いのは間違いない。冒険者数人を相手にしてきたはずなのに、ほとんどダメージを受ける事なく彼らを倒してここまで辿り着いたその実力は油断できない。そして、まだこいつの能力が全部わかっていないのも事実だ。
今のところ分かっているのは、こいつの力は何もない空間で爆発を起こす能力。そして、厄介なのはそれが目に見えない事。突然目の前で爆発が起こるので、避けるにはそれを事前に察知するしかない訳だが……
(それは自体は大した問題じゃないんだよな。)
俺がちらりと男へ視線を向けると、それに苛立った様子を見せた男が突然攻撃を仕掛けてきた。
それは予備動作のないノーモーションの刺突。いつの間にか手にナイフを持っており、それを寸分違わずに俺の心臓へと突き刺してきたのだ。
もちろん、俺はそれを避けるけど。
「ユウリ様!!」
ディネルースが俺を心配して声をあげるが、男の攻撃は見切っているので問題ない。
「……おっと。」
「……ふ~ん」
追加で繰り出された数回ほどの斬撃を全てかわして距離を取ると、男は冷静にそう呟いた。それと同時に、今度は目の前に何かが膨らみ始めた事に気づいてそれも回避する。そして、さらに距離を取った後、再び訪れる沈黙の中で俺が男と視線を交わすと、男の舌打ちが聞こえた。
「やっぱり避けるのね。」
「あぁ、そうさせてもらってる。」
相変わらず男は無表情だが、内心でははらわたが煮えくり返っているのだろう。そんな雰囲気を感じとった。
実は先ほどの戦いで、俺はこいつの攻撃に関するある重要な事に気づいていた。今の舌打ちはその事にあいつも気づいたという事だ。
確かにこいつの攻撃は目に見えない。見えない何かをこいつ自身が指定した空間で膨らませ、それを爆発させて攻撃してくる。俺はこれを仮に"インビジブルバースト( 視えない破裂 )"と呼ぶ事にした。
まぁ、ちょっと長いのでブルバスと略すけど、このブルバスにはどうやら質量が存在しているらしい。膨らませた瞬間にそれが何かに当たれば、当たった物が動いてしまう為、攻撃位置をうまく誘導し、それを見極めれば簡単に避けられる……という訳だ。
「諦めたら……?」
「ふざけんじゃないわ……爆ぜ殺すわよ。」
「でもさ、3対1だぜ?アドバンテージはこっちにあると思うけど。」
「果たしてそうかしら……ね。」
その瞬間、今度は俺から攻撃を仕掛ける事に。先手必勝というやつだ。ずっと後手に回ってたけどね。
ナイフを構える男の懐に飛び込み、右拳で脇腹に一撃を加えた。だが、男は左肘でそれを防御して、代わりに右手に持つナイフで俺に刺突を放つ。しかし、俺はそれを左手でいなして、そのまま右足を軸に体を回転させて回し蹴りを男の腹部へと撃ち込んだ。
「ぐぅっ……!!」
勢いよく後方へと吹き飛ばされた男は、なんとか踏み止まろうと両足でブレーキをかける。その際、追撃を防ぐ為に俺がいる位置にブルバスを発動させるが、それは想定内だ。その場から瞬時に男の後ろへ回り込み、今度は背中へ再び蹴りを見舞った。
その痛みにうめき声をあげつつも、男は受け身をとって体勢を立て直して俺の方を向くが、その顔には怒りのほかに疲弊が見えた。
「なぁ、もうやめようぜ。勝てないって。」
「……舐めないで……もらえる……?」
肩で息をし始めた男に改めて投降を提案するが、男がそれを拒んだので俺は呆れて頭を掻きながらため息をついた。
「わかったよ。なら、ここからは手加減しないからな。」
そう告げた俺は睨む男の視界から一瞬で消えて、これ以上とないラッシュを撃ち込んだ。
もちろん、殺さない程度にね。
宙に浮かんだまま、こちらを見下ろしているオカマを見上げると、彼の服も体もボロボロでところどころ血が滲んでいる。おそらくは冒険者たちに連行されている途中で、彼らを振り切ってここまで戻ってきたのだろう。実力派揃いの冒険者たち相手にあれだけの怪我で済んでいるのは、彼が本当に強い事を物語っている。
闇夜に浮かぶその顔には怒りが滲んでいた。
男はあくまでも冷静な表情を浮かべている。だが、それでも隠しきれないほどの憎悪が漏れ出ている。自分をコケにされた事が許せない……そんな感じだろうか。
少しの沈黙の後、男はゆっくりと俺たちの部屋の中へと降り立った。
「まじでやってくれたわね。」
その低くて重い声色は彼の心情を見事に表しており、俺に対する殺気が乗せられている事を理解するが、そもそもさっきの件は俺のせいではないはずなんだが。
「てか、勝手にそっちが出て行って捕まったんだろ。俺は関係なくね?」
「うるさい……黙りなさいな。」
男はじろりと俺を睨んだ。
対する俺は、まったく理不尽な回答だと感じたが、そう言い返してもこいつが受け入れるはずもないので、余計な事は言わない方が賢明だと判断して口を閉じる。
それよりも気になったのは、一瞬だけ男がターに視線を向けた事だ。ターがこいつを捕まえたんだし、怒りの矛先が彼女へ向くのも無理ないが、男がターに向けた視線には見ず知らずの相手に向けるそれというよりは、知っている相手に向けた猜疑心の様な視線。考え過ぎなのかもしれないが、それに気づいて違和感を感じたのだ。
だが、ター自身は変わらずに無表情のままだし、男もそれ以降はターにまったく視線を向けてはいない。
(今それを追求するのはナンセンスだな。まずはこいつを倒さないと。)
何にせよ、こいつが強いのは間違いない。冒険者数人を相手にしてきたはずなのに、ほとんどダメージを受ける事なく彼らを倒してここまで辿り着いたその実力は油断できない。そして、まだこいつの能力が全部わかっていないのも事実だ。
今のところ分かっているのは、こいつの力は何もない空間で爆発を起こす能力。そして、厄介なのはそれが目に見えない事。突然目の前で爆発が起こるので、避けるにはそれを事前に察知するしかない訳だが……
(それは自体は大した問題じゃないんだよな。)
俺がちらりと男へ視線を向けると、それに苛立った様子を見せた男が突然攻撃を仕掛けてきた。
それは予備動作のないノーモーションの刺突。いつの間にか手にナイフを持っており、それを寸分違わずに俺の心臓へと突き刺してきたのだ。
もちろん、俺はそれを避けるけど。
「ユウリ様!!」
ディネルースが俺を心配して声をあげるが、男の攻撃は見切っているので問題ない。
「……おっと。」
「……ふ~ん」
追加で繰り出された数回ほどの斬撃を全てかわして距離を取ると、男は冷静にそう呟いた。それと同時に、今度は目の前に何かが膨らみ始めた事に気づいてそれも回避する。そして、さらに距離を取った後、再び訪れる沈黙の中で俺が男と視線を交わすと、男の舌打ちが聞こえた。
「やっぱり避けるのね。」
「あぁ、そうさせてもらってる。」
相変わらず男は無表情だが、内心でははらわたが煮えくり返っているのだろう。そんな雰囲気を感じとった。
実は先ほどの戦いで、俺はこいつの攻撃に関するある重要な事に気づいていた。今の舌打ちはその事にあいつも気づいたという事だ。
確かにこいつの攻撃は目に見えない。見えない何かをこいつ自身が指定した空間で膨らませ、それを爆発させて攻撃してくる。俺はこれを仮に"インビジブルバースト( 視えない破裂 )"と呼ぶ事にした。
まぁ、ちょっと長いのでブルバスと略すけど、このブルバスにはどうやら質量が存在しているらしい。膨らませた瞬間にそれが何かに当たれば、当たった物が動いてしまう為、攻撃位置をうまく誘導し、それを見極めれば簡単に避けられる……という訳だ。
「諦めたら……?」
「ふざけんじゃないわ……爆ぜ殺すわよ。」
「でもさ、3対1だぜ?アドバンテージはこっちにあると思うけど。」
「果たしてそうかしら……ね。」
その瞬間、今度は俺から攻撃を仕掛ける事に。先手必勝というやつだ。ずっと後手に回ってたけどね。
ナイフを構える男の懐に飛び込み、右拳で脇腹に一撃を加えた。だが、男は左肘でそれを防御して、代わりに右手に持つナイフで俺に刺突を放つ。しかし、俺はそれを左手でいなして、そのまま右足を軸に体を回転させて回し蹴りを男の腹部へと撃ち込んだ。
「ぐぅっ……!!」
勢いよく後方へと吹き飛ばされた男は、なんとか踏み止まろうと両足でブレーキをかける。その際、追撃を防ぐ為に俺がいる位置にブルバスを発動させるが、それは想定内だ。その場から瞬時に男の後ろへ回り込み、今度は背中へ再び蹴りを見舞った。
その痛みにうめき声をあげつつも、男は受け身をとって体勢を立て直して俺の方を向くが、その顔には怒りのほかに疲弊が見えた。
「なぁ、もうやめようぜ。勝てないって。」
「……舐めないで……もらえる……?」
肩で息をし始めた男に改めて投降を提案するが、男がそれを拒んだので俺は呆れて頭を掻きながらため息をついた。
「わかったよ。なら、ここからは手加減しないからな。」
そう告げた俺は睨む男の視界から一瞬で消えて、これ以上とないラッシュを撃ち込んだ。
もちろん、殺さない程度にね。
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