Cross Navi Re:〜運命の交差〜

noah太郎

文字の大きさ
41 / 50
第二章 秋人の場合

欺瞞編 1-18 傀儡の国④

しおりを挟む

「バカはお前だ!」


ミカエリスは秋人のその言葉に、戸惑った表情を浮かべる。攻撃を仕掛けてくる秋人に対して、今まで同様に交わそうとステップをとった。

しかし…


(あら…?なにか…おか…)


そう思った矢先、ミカエリスはすでに自分の顔の前に、秋人の手があることに気づく。


(なっ!?私が読み違える…いや…)


「今度こそ…死ね!」

秋人がそう吐き捨てると、空間の歪みが現れて、ミカエリスは後方へと吹き飛ばされる。そのまま、鈍く大きな音たてて、建物に突っ込んだ。


肩で息をしながら、秋人はミカエリスがどうなったか注視する。


(…手応えはあった。だけど…)


一撃は与えた。そして、今までと同じなら先の攻撃で、終わりのはず。しかし、その"今まで"とは違う違和感を、秋人は感じ取っていた。

そして、その違和感の正体を秋人は、すぐに気付かされる。

ガラガラっと音を立てながら、埃漂う崩れた瓦礫の中を、ゆっくりとこちらに歩いてくる影を視認する。


「なるほどねぇ…」


その影は、そう呟きながら建物から出終えると、何事もなかったかのように、服についた埃を払っていく。

黒いロングコートは、所々が裂けており、秋人の攻撃が当たっていたことは一目瞭然であったが、当の本人は特段問題としていなさそうであった。


(…やっぱり、こいつ…)


秋人は、自分の力の及ばない存在に、恐怖の念を抱かざるを得ない。


「うんうん。ちゃんと使いこなせてて、お姉さんとっても嬉しいわぁ。」


ミカエリスは小さく手を叩きながら、ゆっくりと秋人に近づいてきて、一定の距離で足を止める。


「でもねぇ、もう少し工夫が必要かしら、ねぇ。」


そう告げた瞬間、ミカエリスの姿が消える。秋人は一瞬、体が強張るのを感じるも、左側に防御の体制を取る。


(ぐっ、ぐがぁっ!)


体制を取った瞬間に、強い衝撃に襲われ、そのまま数メートル吹き飛ばされるが、必死に受け身を取って、体制を立て直した。

しかし、立て直した瞬間に、またも攻撃が襲いかかり、別の方向に吹き飛ばされる。
それを何度か繰り返していると、秋人は受け身に失敗して、体制を大きく崩してしまった。

その瞬間、


「ほら、こうやってね…」


ミカエリスがそう言って、指をパチンと鳴らすと、倒れる秋人の真横に、紫に輝く雷が撃ち込まれる。

まさに紫電一閃と言わんばかりのその攻撃は、石畳を軽々と抉り取り、真っ黒な炭へと変えてしまった。

後には、紫の残滓が外れた悔恨の意を伝えるかのように、静かに消えていった。

秋人はすぐに理解する。


(こっ、こいつ、わざと外しやがった…)


立つことができない秋人に対して、ミカエリスは静かに秋人を見据えて、愉悦の笑みを浮かべている。そして、ゆっくりと口を開いた。


「メインの能力は、空間把握の他にもある訳ね。」


そう言って「フフッ」と笑い、話を続ける。


「秋人と言ったかしら。このままやって私に勝てるかしらねぇ。いっその事、私と一緒に来ない?」

「どっ、どう言う意味だ!」

「簡単よぉ。私のモルモットにならないかって事ね。」

「モルモットだと!?ふざけるな!好き好んで、実験台になる奴がいるかよ!」


その回答に、ミカエリスは顎に手を当てて首を傾げる。


「それもそうよねぇ。ん~、でもこのままだと、あなた、死ぬことは目に見えてるじゃない。生き延びたいのなら、それが一番良い選択だと思うのだけれど。」


秋人は無言で、ミカエリスの言葉を聞いている。


「苦しいのは少しだけ。痛みも何も感じさせることはしないし、私のお願いを聞いてくれれば、あなたの望むものをなんでも与えるわぁ。」


指をピンと立てて、秋人に笑顔を向けるミカエリス。それに対して、秋人は小さく呟く。


「…つ…け…」

「ん~、何かしら?」

「嘘をつけ!そう言ったんだ!」


秋人はそう咆哮して、ミカエリスに向かって一撃を放つ。案の定、それは交わされ、ミカエリスがいた場所が爆ぜるだけだが。

気づけば、ミカエリスは秋人の後ろに立っている。


「威勢がいいのは好きよ。でも、頭の悪い子は嫌い。」


そう言って、倒れたままの秋人に蹴りを入れる。


「ぐはぁっ!」


秋人は受け身も取れずに、水を跳ねる石のように、石畳の上を跳ね飛ばされる。
地面に横たわる秋人へ、ミカエリスは再び声をかける。


「どうする?死ぬか、ついて来るか。二つに一つね。」


それに対して、秋人は肩で息をしながら、ミカエリスへ変わらず憎悪の視線を送っている。


「…はぁ。そう…残念ねぇ。」


ミカエリスは秋人の考えを察して、ため息を吐き出した。


「それなら、力強くで連れて行くわ!」


そうこぼして、秋人へと飛びかかる。しかし、秋人の体を捕まえたその時であった。

ゴゴゴゴゴッ

大きな地響きと共に、地面から建物ほどの巨大な顎が現れたのだ。しかも4方向から。

ミカエリスはそれを見て、悪態をつく。


「ちっ!グラードの奴…このタイミングで!」


そう言って掴んでいた秋人を離して、その場から離脱しようとする。

が、すぐに違和感に気づいた。
秋人の手が、自分の体に引っ付いているのだ。
いや、その表現は好ましくないだろう。
秋人の手は、ミカエリスの腹部と融合していたのだ。


「なっ!?」


予想外の出来事に、ミカエリスは動揺する。すると、秋人がニヤリと笑って、謀略の意をこぼす。


「ご愁傷様。ようこそ、地獄へのツアーへ!」

「おっ、お前!」


そして、4つの顎は閉じ、そのまま地面へと2人を引き摺り込んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...