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第一章 イクシードの女の子
16ストライク 魔力とスキル
しおりを挟む「今日は"魔力"と"スキル"について話をしよう。」
俺はアルのその言葉に、興奮の色を隠せなかった。
それはファンタジー世界において重要な要素…野球ばかりしてきた俺にだって、そういう教養くらいはあるし、子供の頃はヒーローやアニメの主人公に憧れたものだ。
そんな夢のような話を聞いて、興奮しない方がおかしいだろう。
だって…
『ウインドカッター!!』
とか…
『ダークフレイム!!』
とかさ…
こんなカッコいい技を使えるって事なんだよな!
「ソフィア…?大…丈夫……?」
気づいたら、アルとジーナが引いていた。
どうやら、興奮し過ぎて体が勝手に動いていたらしく、二人はそんな俺の勢いについてこれなかったようだ。二人の視線を見ていたら、なんだか自分の態度が恥ずかしくなってしまい、俺は元の席で小さくなった。
落ち着きを取り戻した俺を見て、アルは小さく咳払いをすると再び説明を始める。
「ソフィアは魔力について覚えていることはある?」
そう聞かれた俺は、ベスボル大会の時に治癒士の手が緑色に光っていた事を思い出し、その時にアルから教えてもらった事を思い浮かべた。
「えっ…と、ソフィアたちは体内に魔力の核を持っている…?そこにある魔力を変換して、スキルを使う…だっけ?」
「うん、正解。ソフィアは本当に賢いね。一度しか教えてないのに、ちゃんと覚えてる。どこかの誰かさんとは違って…」
「えへへ…」
アルは満足げに頷いた。
頷きながら、彼がチラリと横にいるジーナへ視線を向けると、ジーナは首を傾げてハテナを浮かべていた。
そんな妹を見て、アルは呆れたようにため息をつく。
ジーナは勉強が嫌いな子のようだな。でも、本は好きなんだから、それをうまく利用すれば大丈夫だと思うけど…
そう感じたが、それを妹の俺が言うのもちょっと違う気がして、口には出さなかった。
気を取り直して、俺はアルの説明に耳を傾ける。
まずは"魔力"についてだ。
魔力とは、この世界の全ての生き物の体内に存在するエネルギーの一種みたいなものらしい。全ての生き物には魔力核という器官が存在していて、魔力はその魔力核から作り出されている。作り出された魔力は血液と共に体内を循環し、最終的に魔倉( まそう )という器官に蓄積されるのだという。
また、体内を循環しているものと、魔倉に蓄積されているものの合計が、その人の魔力の総量となるらしいが、その量には個人差がある。
魔力の基本的な蓄積量は、訓練により増やすことができ、特に幼少期での訓練が重要だそうだが、それでも多い奴は多いし、少ない奴は少ない。持って生まれた才は、そこにも現れるということだろう。
ちなみに、イクシード家では稼業を継ぐ継がないに関わらず、皆、魔力量を引き上げる訓練を行うとアルが教えてくれた。そして、その先生となるのは、父親であるジルベルトであることも…
「父ちゃんが…?」
「そうだよ。父さんはこの街唯一の狩人だからね!」
アルはなんだか嬉しそうだったが、それを聞いた俺はあのジルベルトが…?と少し不安になった。
いつも、俺を見てニマニマしている娘バカな父親が、そんな高度な技術に詳しいとは、俄には信じられなかったからだ。カッコいいジルベルトなど、全く想像ができない。
だが、魔力のことを学べるなら、それはそれでいいか。だって、使いたいじゃん!スキル!
俺の中ではジルベルトの事よりも、ワクワクが圧勝した。
「ソフィアもその内、父さんから声をかけられるんじゃないかな。」
その言葉に目を輝かせ、鼻息荒くして頷く俺を見たアルは、クスリと笑って説明を続ける。
魔力には属性と言うものがある。
火や水、風などの基本原則から、光や闇などの特殊なものまで様々な種類の属性が存在しており、この世界の全ての生き物は、必ず何かしらの属性を持って生まれるそうだ。
また、個人差はあるものの、持って生まれる属性は一つではなく、それらの属性を組み合わせることで、多様な事象を起こすことができる。その"事象"と言うものが、この世界で"スキル"と呼ばれている特殊な技能のことであった。
魔法ではなく、あくまでもスキル…
想像したものとは違ったが、"スキル"とは体内で生み出された魔力を外部エネルギーへ変換し、体外で発動させる人智を超えた力。こう考えれば、ある意味で"魔法"と言っても差しつかえはないかもしれない。
要は概念の話だろうからな。
まぁ、それは置いておくとして…"スキル"の種類も多岐に渡るようだ。
生活に活用できるもの、戦いに活かせるもの、そして、一年前に俺が受けたように、人の治療に役立てるものなど、両手で数えても確実に足りないほど多様性に富んだ技能…それが"スキル"なのである。
さらに言えば、このスキルを使うためには緻密な魔力操作が必要のようで、その魔力操作の精度が高ければ高いほど、より高度で効果的なスキルを発動できる、という事だそうだ。
この"魔力操作"についても、今後ジルベルトが教えてくれると、アルが説明してくれた。
魔力の増幅と操作の訓練か。この世界では、基礎中の基礎なんだろうけど、俺にとっては未知の領域だ。今まで経験したことがないことに挑戦すると言うのは、やっぱりワクワクするな!俄然、やる気が出てきたぞ!
俺が再び鼻息を荒くしていると、アルがこう付け加える。
「今回は"魔力"と"スキル"について話したけど、ベスボルを学ぶ上でこの二つはとても重要なんだ。だから、ソフィアもちゃんと覚えておいてね。」
だが、それを聞いた瞬間、疑問が浮かんだ。
興奮しててちゃんと考えてなかったけど、冷静になってみると、何でベスボルの話に魔力やスキルの話が関係するんだろうか。単純に、ベスボルをするには魔力が必要ってこと?スキルを使わないとベスボルができないのか?
だが、一年前のベスボル大会では、皆スキルらしいスキルは使っていなかったと記憶している。俺が覚えているのは、野球と同じように"普通"にプレーする街の連中の姿。火が出たり、風が吹いたり、そんな光景は一つも見てはいない…
もしかして、スキルって目に見えないとか…?でも、治癒士さんのは緑色に光ってたよな。母さんも、洗濯する時に洗浄スキルをよく使ってるのを見るし…う~ん、わからん…
そこで俺はアルに質問を投げかける。
「でも、ポッケたちはスキル使ってなかったよ?あれはなんで?」
俺がそう尋ねると、アルは少し驚いてフフッと笑った。
「ソフィアはよく観察してるね。うん、その疑問は正しい。本来、ベスボルはスキルを使って競い合う競技なんだ。だけど、スキルの中には危険なものだってある。場合によっては人だって殺せるし…だから、ベスボルではちゃんとしたルールが決められているのさ。」
「ルール…?」
「そうさ。ベスボルでのスキルの使用は、公式戦、もしくは協会が認定したチーム同士の練習試合やエキシビジョンマッチだけと決まってるんだよ。」
アルの言葉に、俺は大きく頷いた。
なるほどな…意外にもベスボルにはきちんとしたルールがあるらしい。
アル曰く、そもそも一般市民のスキル使用は、生活を補助するものに限ると法律で決まっているとのことだった。それだけ聞いても、この世界は思っていた以上に政治や法律などがしっかりした世界だと推測できる。
だが、ふと別の疑問が湧いた。
「でも、父ちゃんやアル兄は魔物狩りでは使ってるよ?」
そう…ジルベルトもアルも"魔物狩り"ではスキルを使う。それは、今聞いた一般的市民のスキル使用ルールに反する気もするのだが…
だが、アルはそれにも明確に答えてくれた。そして、その言葉に俺は再び興奮してしまう。
「父さんと僕は冒険者ギルドに登録してるからね。イクシード家は、スキルを使って魔物を狩ることをギルドから許されてるのさ。」
ぼ…冒険者ギルドだと!?ワクワク要素がまた来た!!
そう握った拳を突き上げて目を輝かせる俺を見て、アルもジーナも再び苦笑いを浮かべるのであった。
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