37 / 63
第三章 再会
36
しおりを挟む
それに両親も私が第三王子から封書を受け取ったと知り、気もそぞろだ。いつの間にか母まで部屋に入ってきて、私の顔色をうかがっている。
「お付きの人と来て欲しいってことだから、今から行ってくるわ」
私の返答を聞き、両親は手を合わせてはしゃいだ声を出す。
「さっそく、着替えなくちゃ! ドレスは? ああ、どうして新調しておかなかったのかしら」
「リゼット、お付きの方にはもう少し待っていただくから、お前は早く準備をしなさい。綺麗にな!」
私から見たら、両親の方が有頂天になり、焦っている。
娘の気乗りしない顔にも気づかないほど、浮かれている。
「いえ、このままでいいです」
そう言ったが、両親に無理やり着替えさせられ、化粧を塗りたくられた。
私がエディアルドから招待を受けたと知った両親の喜びようったら、なかった。
ご機嫌な二人に見送られお付きの人と、エディアルドのもとへ向かう。
実のところ、エディアルドとの関係は両親には知られたくなかった。絶対面倒なことになると思っていたが、その通りになった。馬車に揺られながら、深くため息をついた。
「リゼット様、到着いたしました」
声をかけられ、意識を呼び覚ます。どうやら私はうたた寝してしまったようだ。
馬車を降りると広大な敷地にそびえたつ、公爵家が視界に入る。
ここはカーライル公爵家、どこか懐かしい気持ちになる。
「こちらへどうぞ」
庭園一面に咲き誇る薔薇の香りが、鼻につく。視界いっぱいに埋め尽くす薔薇が咲き誇っている。
「リゼット」
ふと名前を呼ばれ、振り向いた。
ふわりと微笑むその人は、庭園の一角から姿を現す。
「もしかしたら、今日会えるかと思って、馬車が戻ってくるのを待っていた」
まさか、ずっと庭園にいたの? 馬車の姿が見えるまで? 私が一緒じゃなかったら、どうしたのだろう。
「今日がダメでも、何度も誘うつもりだった。それこそ、何度でも」
エディアルドは手にした一輪の薔薇の花を、そっと私の髪に差した。
「紅茶の準備がしてあるから、行こう」
エディアルドは私の手をつかむと、颯爽と歩き出した。
ふと懐かしくなり、心臓がドキリと音を出す。だけど、あの時と違う手の大きさに私は戸惑う。
温かく、私をすっぽりと包み込む大きさ。舞踏会の時に思ったけど、やはり男の人の手だと感じた。
「座ってリゼット。君の好きなものばかり用意した」
椅子を引き、私に座るように勧めたエディアルドは、みずからティーポットを手にしている。紅茶を淹れると、私の前に座った。
「ありがとう」
エディアルドは頬杖をつき、私を見つめている。まるで、あの時の再現ではないかと思うほど。ただ、妖精のような美しさだったエディアルドはいなくなり、今は端正な顔立ちの男性が座っている。
にこにこと嬉しそうな微笑みを向けているので、正直言って食べにくい。
「魔法治療師の件ですが、ありがとうございました」
私はまず、ここに来た一番の理由、シアナの件についてお礼を言う。
「いつかは診察してもらいたいと思っていたから、エディアルド様のご厚意に感謝いたします」
だが、相手は表情が曇り、険しい目つきだ。
「――エディアルド」
「えっ?」
眉をしかめた彼は椅子に深く腰掛け、不満げな声を出す。
「前に言ったはずだ。エディアルドと呼んで欲しいと。それに、そんな言葉使いも気に入らない」
テーブルの上からエディアルドが手を伸ばし、そっとつかまれた。その手の温かさに張っていた気が、少しだけ緩んだ。
「わ、わかったか、手を離して」
ジッと見つめ続けられているのが気恥ずかしくなり、そっと視線を逸らす。
「と、とにかく、魔法治療師の件は助かったわ。本当にありがとう」
再度お礼を口にするとエディアルドは片眉を上げた。
「リゼットは妹のことばかり心配していたから。妹が元気だとわかれば、もう大丈夫だろう」
私が一番心配していたことを、気にかけてくれていたからこそ、魔法治療師を派遣してくれたのだろうか。
ホッとしてカップを口に持っていく。
「妹が心配ないとわかれば、またずっと俺と一緒にいられるだろう?」
頬杖をつき、微笑むエディアルドの発言に紅茶を噴きそうになった。
もしやそれが目的? また私を監禁するつもりなの?
頬が引きつる私にエディアルドは続けた。
「リゼットの傷は……? 魔法治療師から問題ないと返事をもらったが」
ごくりと喉を鳴らすエディアルドは質問することに、勇気を出してるように見えた。
「ええ、大丈夫よ。当時の治療が良かったおかげで、傷跡も残っていないわ」
エディアルドはスッと席を立つと、私の隣に立つ。
「見せて」
「はい?」
「自分の目で見なければ、安心できない」
真剣な眼差しを向ける彼は私の腕をつかむと、強引に立たせた。
「お付きの人と来て欲しいってことだから、今から行ってくるわ」
私の返答を聞き、両親は手を合わせてはしゃいだ声を出す。
「さっそく、着替えなくちゃ! ドレスは? ああ、どうして新調しておかなかったのかしら」
「リゼット、お付きの方にはもう少し待っていただくから、お前は早く準備をしなさい。綺麗にな!」
私から見たら、両親の方が有頂天になり、焦っている。
娘の気乗りしない顔にも気づかないほど、浮かれている。
「いえ、このままでいいです」
そう言ったが、両親に無理やり着替えさせられ、化粧を塗りたくられた。
私がエディアルドから招待を受けたと知った両親の喜びようったら、なかった。
ご機嫌な二人に見送られお付きの人と、エディアルドのもとへ向かう。
実のところ、エディアルドとの関係は両親には知られたくなかった。絶対面倒なことになると思っていたが、その通りになった。馬車に揺られながら、深くため息をついた。
「リゼット様、到着いたしました」
声をかけられ、意識を呼び覚ます。どうやら私はうたた寝してしまったようだ。
馬車を降りると広大な敷地にそびえたつ、公爵家が視界に入る。
ここはカーライル公爵家、どこか懐かしい気持ちになる。
「こちらへどうぞ」
庭園一面に咲き誇る薔薇の香りが、鼻につく。視界いっぱいに埋め尽くす薔薇が咲き誇っている。
「リゼット」
ふと名前を呼ばれ、振り向いた。
ふわりと微笑むその人は、庭園の一角から姿を現す。
「もしかしたら、今日会えるかと思って、馬車が戻ってくるのを待っていた」
まさか、ずっと庭園にいたの? 馬車の姿が見えるまで? 私が一緒じゃなかったら、どうしたのだろう。
「今日がダメでも、何度も誘うつもりだった。それこそ、何度でも」
エディアルドは手にした一輪の薔薇の花を、そっと私の髪に差した。
「紅茶の準備がしてあるから、行こう」
エディアルドは私の手をつかむと、颯爽と歩き出した。
ふと懐かしくなり、心臓がドキリと音を出す。だけど、あの時と違う手の大きさに私は戸惑う。
温かく、私をすっぽりと包み込む大きさ。舞踏会の時に思ったけど、やはり男の人の手だと感じた。
「座ってリゼット。君の好きなものばかり用意した」
椅子を引き、私に座るように勧めたエディアルドは、みずからティーポットを手にしている。紅茶を淹れると、私の前に座った。
「ありがとう」
エディアルドは頬杖をつき、私を見つめている。まるで、あの時の再現ではないかと思うほど。ただ、妖精のような美しさだったエディアルドはいなくなり、今は端正な顔立ちの男性が座っている。
にこにこと嬉しそうな微笑みを向けているので、正直言って食べにくい。
「魔法治療師の件ですが、ありがとうございました」
私はまず、ここに来た一番の理由、シアナの件についてお礼を言う。
「いつかは診察してもらいたいと思っていたから、エディアルド様のご厚意に感謝いたします」
だが、相手は表情が曇り、険しい目つきだ。
「――エディアルド」
「えっ?」
眉をしかめた彼は椅子に深く腰掛け、不満げな声を出す。
「前に言ったはずだ。エディアルドと呼んで欲しいと。それに、そんな言葉使いも気に入らない」
テーブルの上からエディアルドが手を伸ばし、そっとつかまれた。その手の温かさに張っていた気が、少しだけ緩んだ。
「わ、わかったか、手を離して」
ジッと見つめ続けられているのが気恥ずかしくなり、そっと視線を逸らす。
「と、とにかく、魔法治療師の件は助かったわ。本当にありがとう」
再度お礼を口にするとエディアルドは片眉を上げた。
「リゼットは妹のことばかり心配していたから。妹が元気だとわかれば、もう大丈夫だろう」
私が一番心配していたことを、気にかけてくれていたからこそ、魔法治療師を派遣してくれたのだろうか。
ホッとしてカップを口に持っていく。
「妹が心配ないとわかれば、またずっと俺と一緒にいられるだろう?」
頬杖をつき、微笑むエディアルドの発言に紅茶を噴きそうになった。
もしやそれが目的? また私を監禁するつもりなの?
頬が引きつる私にエディアルドは続けた。
「リゼットの傷は……? 魔法治療師から問題ないと返事をもらったが」
ごくりと喉を鳴らすエディアルドは質問することに、勇気を出してるように見えた。
「ええ、大丈夫よ。当時の治療が良かったおかげで、傷跡も残っていないわ」
エディアルドはスッと席を立つと、私の隣に立つ。
「見せて」
「はい?」
「自分の目で見なければ、安心できない」
真剣な眼差しを向ける彼は私の腕をつかむと、強引に立たせた。
193
あなたにおすすめの小説
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。
悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています
廻り
恋愛
治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。
その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。
そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。
後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。
本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
最終回まで予約投稿済みです。
毎日8時・20時に更新予定です。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる