妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

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第三章 再会

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 馬車に揺られて街に到着し、停留所に停まる手前で、ガクンと衝撃を受け、体がはねた。いったい、何事だろう?
 
「お嬢さま、すいません、車輪が……」

 従者の焦った声を聞き、外に出ると車輪が破損していた。その横には大きな岩があった。どうやら車輪をぶつけてしまったようだ。なんてついていない。

 深くため息をつくと従者が肩を震わせ、小さくなっている。

「こうなってしまったら、仕方がないわ。すぐには治せそうもないから、帰りはどうにかするしかないわね」

 ここアルドの街の南通りは高級店が立ち並ぶので、貴族御用達となっている店も多い。運良く顔見知りに出会えたら幸運だが、わざわざ送ってくれとお願いするのも気が引けるしな……。逆方向だったら、なおさらだ。こうなったら、乗合馬車でも使うしかないのか……。

 考え込んでいると、停留所に一台、黒塗りの高級な馬車が停車した。
 あの紋章は――。

 私たちの前で停車した馬車から降りてきた人物を見て、思わず凝視した。

「――リゼット」

 嬉しそうに名を呼ぶが、どうしてここにいるの。偶然にしてはできすぎている。もしかして私のことをつけてきたんじゃないわよね?

「エディアルド」

 名を呼ぶと、顔を綻ばせた彼は、一瞬で状況を判断したようだ。

「これは大変だな」

 その割には表情が嬉しそうなのは気のせいではないはずよ。

「あなたはどうしたの?」
「ああ、天気がいいからリゼットを誘いにグリフ家に行ったら、アルドの街に行ったと聞き、追いかけてきたんだ」

 シレッと口にするけど、会えなかったら、どうするつもりだったんだ。

「リゼットの用事がある店に行こう。帰りは一緒の馬車に乗るといい」
「……それは助かるわ」

 実際、エディアルドが来てくれて、すごく助かった。

「じゃあ、行こうか」

 エディアルドがグッと手を差し出す。

「離れてしまうと悪いだろう」

 確かに結構な人ごみなので、はぐれてしまいそうだ。そう判断して彼の手をそっと握った。さまざまな店の前を、二人で並んで歩いた。

「俺、こうやってリゼットと街を歩くの、夢見ていたんだ」

 エディアルドが嬉しそうに笑う。大勢の人前に出るときは、大人びた印象だけど、こうやって二人になると、時折、幼く見える。昔のエディアルドの無邪気さが残っているようで、少し嬉しくもなる。

 やがてドレスを依頼していた店に到着する。

「またリゼットと双子コーデをしたい」

 エディアルドの発言に噴き出しそうになる。

「無理よ。あなた、その体格でドレスを着るつもりなの?」

 広い肩幅に厚い胸板はどこからどうみても男性だというのに。ドレス姿を想像すると可愛くない。特注サイズもいいところだろうし。エディアルドも私に言われ、頬を緩ませた。

 仕上がったドレスに袖を通して確認している間、エディアルドは店内を見ていた。

「リゼット、装飾品も選ぶのだろう?」
「ええ、そうね」

 ずらりと並べられた宝石の中から、どれがいいか頭を悩ませた。

 涙型のイヤリングに揃いのネックレス、爽やかなで深みのあるブルーのバイカラーが美しいイヤリング、ワンポイントのキュービックがさりげなく輝き、とても上品だ。透明感のあるブルーが美しいアクアマリンは、シンプルなスタッドタイプでコーディネートしやすいのも魅力だ。

 ショーケースを眺めている私の横でエディアルドは立っている。私は自分の買い物ばかりに夢中になっていた。彼もなにか必要なものがあるだろう。そっちを優先させてもいい。

「私にばかり付き合わなくてもいいからね」

 エディアルドは横で微笑んでいる。

「なぜ? 俺はこうやって装飾品を選んでいるリゼットを見ているだけでも幸せな気持ちになれのに」

 優しい声でささやくエディアルドにドキッとする。

「それで、決まったのか?」
「ええ、このブルーのイヤリングにしようと思うの」

 指を差すと、エディアルドは店員を呼ぶ。

「このショーケースの中、全部をグリフ家に届けてくれ」
「かしこまりました」

 一瞬、なにを言われたのか、わからなかった。

「ちょっと……!」
「いいんだ。贈らせてくれ。俺が贈りたいんだ。着飾った君をみたい」

 指を頬に滑らせるエディアルド。ほくほく顔の店員の眼差しが、痛い。
 それじゃあ、私が選んだ意味がないじゃない。

「そんなにたくさんあっても困るわ」
「じゃあ、どれだけあればいいんだ? 十個ぐらいか?」

 ズイッと前に出たエディアルドの胸を押し、落ち着けと伝えた。
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