妹を監禁するはずの悪役から、なぜか執着されています

夏目みや

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第三章 再会

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 その後、エディアルドの姿が見えなくなると馬車に乗り込んで、頭を抱えた。

 どうしよう、傷つけてしまった。

 自分本位な気持ちをぶつけ、死にもの狂いで努力したエディアルドの二年間を否定してしまった気がする。

 罪悪感で苦しくて、胸が押しつぶされそうだ。

 まさか、エディアルドがあそこで涙を流すとは思ってもいなかった。それだけ傷ついたってことだ。
 おまけにアリッサのことなんて、完璧に八つ当たりじゃないか。自分がアリッサから言われて嫌だったからといって、そのまま当の本人に打ち返してどうする! 歯向かうのならエディアルドにじゃなくて、アリッサにでしょう!

 自分自身の幼稚さに頭を抱え、かきむしった。髪はボサボサになったが、気にするものか。
 耳元のイヤリングが揺れ動く。私とお揃いの宝石の装飾品だと嬉しそうだったエディアルド。涙をハラハラと流す顔さえ、尊いほど美しかった。それが余計に私の罪悪感をぐりぐりと刺激して、胸が苦しい。

 人を傷つけた自覚があるからこそ、謝罪の言葉だけでは足りない気がした。
 自分の過ちを深く反省しながら、馬車の中で涙を流した。
 
 その後、なにをしても心が晴れないし、どうしてあんなことを言ってしまったのかと、反省する日々だ。
 シアナにまで、様子がおかしいことを心配されたので、思い切って相談することにした。

「人に八つ当たりして、傷つけてしまったとき、どうするかって?」

 読んでいた本から顔を上げたシアナは、顎に指をあてて宙を見上げた。

「とりあえず、心の底から謝るしかないんじゃない? 悪いと思っているなら」
「そっか、そうよね……」

 私はうんうんとうなずきながら、シアナの話に耳を傾ける。

「そもそも、そんな傷つける言葉を吐くってことは、相手に甘えている部分もあるんじゃない?」
「それはどういう意味?」
「この人なら、私を受け止めてくれる、って心のどこかで思っているのよ」

 シアナはにっこりと微笑む。

「だからお姉さま、元気がなかったのね。エディアルド様とケンカしたんだぁ」
「べ、別に相手が誰かなんて言ってないでしょ!」

 シアナにはしっかりばれているようだ。

「早く仲直りした方がいいと思うわ。来週、舞踏会あるでしょう? その時がチャンスだと思う。時間が長くなればその分、気まずさが増すと思うし」
「そ、そうよね。ありがとう。頑張ってみるわ」

 シアナに背中を押され、舞踏会でエディアルドに謝るという第一目標ができた。本当は王妃やアリッサに顔を合わせるのもおっくうだったから、しばらく行事は欠席しようと思っていた。だが、エディアルドに謝罪するために、出席することにした。

 そして緊張しながらも舞踏会当日を迎えた。

 エディアルドとはあれ以来、接触がなかった。まずは封書で謝罪すればいいかとも思ったが、やはり顔を見て直接謝罪したい。

 華やかな場に到着し、周囲をキョロキョロと見まわす。エディアルドはまだ来ていないみたいだ。
 そもそも参加するのかしら。エディアルドがいなかったら、私もすぐに帰宅しよう。
 考えていると背後から肩を叩かれたのでハッとする。

 もしかしてエディアルド?

 振り返った先にいたのはジェラールだった。

「やあ、リゼット嬢。久しぶりだね。そんなにがっかりした顔しないで」

 表情に出てしまっていたと知り、私は焦る。

「お久しぶりです、ジェラール様。がっかりなんて、していませんわ」

 取り繕って笑顔を浮かべるが、もう遅かったかもしれない。それよりも――。

「今日はお一人ですか?」
「いや、もう来るはずだよ」

 ジェラールが言うと同時に会場がざわめいた。扉が開き、エディアルドの登場だ。

「ほら、噂をすればというやつだ。本当、彼が登場するとすぐわかるな」

 エディアルドが登場し、場の空気が変わるのを肌で感じていた。エディアルドはさして周囲に興味も示すでもなく、会場を進む。すると脇から女性が飛び出した。あれはアリッサだ。

 微笑みながら会話をしている。私の目にエディアルドはまんざらでもないように見えた。

 頬を染めるアリッサは大胆にもエディアルドの腕に触れた。
 その様子を見て、心がざわめいた。

「この前から思っていたけど、なかなか積極的な令嬢だ」

 ジェラールが苦笑している横で、私の表情はどんどん険しくなっていく。

「リゼット嬢、気になる?」

 腰を折り、私の顔をのぞきこんでくる彼にハッとして、冷静を装う。

「いえ、誰と交流があろうと、本人の自由ですから」
「つれない回答だな」

 ジェラールは肩を揺らし、クククッと笑う。

「それよりもエディアルドとなにかあった?」
「えっ」

 ジェラールは先ほどまでの軽やかなムードから一変し、真剣な表情を向ける。

「……彼はなにか言っていました?」

 ジェラールは静かに首を横に振る。

「別に、なにも。だが、すこぶる機嫌が悪い。そう、近づくのも躊躇するほど」

 大げさなぐらい肩をすくめるジェラール。それを見て、表情が曇った。
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