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第四章 対決
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その後、ようやく解放された時には、もうヘロヘロになっていた。
「おかしいな、そんなに疲れたか」
執拗に私の唇を求めたあなたがそれを言う?
ええ、おかげさまで、私の体力ゲージは振り切ってゼロよ。
「これなら夜を過ごしたら、どうなってしまうんだろうな?」
私の髪をひと房手にし、フフッと笑いながら口づけを落とすエディアルド。色気が駄々もれている。夜を過ごしたら……って。嫌でも想像してしまうが、思考を振り払う。
「ええ、そうね。過激な蹴りをお見舞いすることでしょうね」
私の軽口もエディアルドは楽しそうに笑う。
ひとしきり笑うと、私の手をギュッと握りしめた。
「リゼット」
「なによ」
改まって呼ばれ、視線を合わせる。
「好きだ」
突然の告白に、しどろもどろになる。
「そ、それはどうも……」
「リゼットは? リゼットの気持ちが知りたい」
私はさきほどの口づけを思い出す。だけど、嫌じゃなかった。ほかの人とを想像しただけで、身震いがするのに。考え込んでいると、エディアルドは私の頭を優しくなでる。
「まあ、いいさ。どうせ俺からは逃げられない。逃がさないのだから」
たがエディアルドは、時折サラッと執着心強めなことを口にする。なので、抗ってみたくなる。
「じゃあ、逃げたらどうするの? 例えば隣国とか」
エディアルドは顔を斜めにし、肩をすくめた。
「探す。どんな手を使ってでも。それこそ、普段は抑えている五大属性の精霊の加護をフルで活用してやる。もし仮に男が一緒にいたなら、そいつを永遠の闇に落とし、死してなお苦しませる」
ひっ、ひぇぇぇ。わ、私、そこまで言ってないよ!
ダメだ、ヤンデレ執着を呼び覚ますような発言は控えるべきだ。
「そ、そんなわけないでしょ。私はこのせいで、男性が近寄っても来ないのだから」
エディアルドの目前に、薬指に光る指輪を突き付けた。
「本当に、いい仕事をしてくれるな、母の形見は」
にっこり笑うエディアルドだが、そんな大事な指輪なら、しまっておけといいたい。
「もう、帰るわ」
立ち上がったところを、エディアルドは腰に腕を回し、再度ソファに引きずり倒す。
「ちょっと!」
「じゃあ、これがさよならの口づけだ」
そしてまたまた深い口づけを受けるが、エディアルドはよほど嬉しかったようで、執拗に繰り返す。
だが、拒まない私も私なんだよな。
情熱的な口づけに頭がポーッとなりながら、考えた。
***
数日後、シアナと街へ買い物に来ていた。姉妹での買い物は本当にいい気晴らしになる。
馬車に乗り、帰路に着いた時、急に馬車の歩みがゆっくりになる。
「どうしたのかしら?」
怪しんで窓の外を見るが、真っ黒な靄がかかったような状態だった。
さっきまで晴れていたのに雷雨でもくるのかしら? だったら、早く屋敷に戻らないと。
馬車がゆっくりと停車したことが気になり、窓から顔を出す。
「お、お姉さま……!」
その時、ゆらゆらと黒い影のようなものが、窓から侵入してきた。それは物体といえど、意識を持っているように思えた。
直感が働き、あの黒い影は危険だと本能が告げている。
「シアナ!」
狭い馬車の中だがシアナを背後に庇い、黒い影と対峙する。
すでに窓の外は真っ暗な霧に覆われ、昼だというのに、夜の闇の暗さだ。
ゆらゆらと私に迫ってくる影を振り払いたくとも、実体がない。
間違いない、この影の狙いは私だ……!
馬車の扉を開け、シアナの背中を押し、彼女を外へ出す。
「お姉さま!!」
「早く逃げて!!」
叫んだのと最後に影に包まれ、意識が遠のく。
ああ、私、どうなってしまうのだろう――。
その時、脳裏に浮かんだのはエディアルドだった。
***
ううん……。
頭が重くて、すっきりしない。
瞼を開けると、そこは知らない部屋だった。驚いて起き上がろうとするも、身動きが取れない。
視線を下げると、手足はローブで縛られ、拘束されていた。
「なに、これ……!」
ベッドに投げられて、横になっている私。キョロキョロと周囲を確認するも、ここがどこなのか、ちっともわからない。
縛られたローブは頑丈で、無理やり動かすと、手首にギリリとロープが食い込む。
ここから逃げなきゃ。
誰がなんの目的でここに連れてきたのか不明だが、この扱いをみるに、私に逃げられると困るのだ。命が目的だったらとっくに始末していると、自分で思ってゾッとした。
なんの目的かは知らないけど、手段を選ばない強引さに背筋が寒くなる。
このまま大人しくなんて、していられない――!!
私はローブを口元へ持っていくと、ガジガジと嚙み始めた。私の歯をなめてもらっちゃ、困るわね。今まで虫歯一本もできていないのは、今日この日のためだったのかもしれない。
「おかしいな、そんなに疲れたか」
執拗に私の唇を求めたあなたがそれを言う?
ええ、おかげさまで、私の体力ゲージは振り切ってゼロよ。
「これなら夜を過ごしたら、どうなってしまうんだろうな?」
私の髪をひと房手にし、フフッと笑いながら口づけを落とすエディアルド。色気が駄々もれている。夜を過ごしたら……って。嫌でも想像してしまうが、思考を振り払う。
「ええ、そうね。過激な蹴りをお見舞いすることでしょうね」
私の軽口もエディアルドは楽しそうに笑う。
ひとしきり笑うと、私の手をギュッと握りしめた。
「リゼット」
「なによ」
改まって呼ばれ、視線を合わせる。
「好きだ」
突然の告白に、しどろもどろになる。
「そ、それはどうも……」
「リゼットは? リゼットの気持ちが知りたい」
私はさきほどの口づけを思い出す。だけど、嫌じゃなかった。ほかの人とを想像しただけで、身震いがするのに。考え込んでいると、エディアルドは私の頭を優しくなでる。
「まあ、いいさ。どうせ俺からは逃げられない。逃がさないのだから」
たがエディアルドは、時折サラッと執着心強めなことを口にする。なので、抗ってみたくなる。
「じゃあ、逃げたらどうするの? 例えば隣国とか」
エディアルドは顔を斜めにし、肩をすくめた。
「探す。どんな手を使ってでも。それこそ、普段は抑えている五大属性の精霊の加護をフルで活用してやる。もし仮に男が一緒にいたなら、そいつを永遠の闇に落とし、死してなお苦しませる」
ひっ、ひぇぇぇ。わ、私、そこまで言ってないよ!
ダメだ、ヤンデレ執着を呼び覚ますような発言は控えるべきだ。
「そ、そんなわけないでしょ。私はこのせいで、男性が近寄っても来ないのだから」
エディアルドの目前に、薬指に光る指輪を突き付けた。
「本当に、いい仕事をしてくれるな、母の形見は」
にっこり笑うエディアルドだが、そんな大事な指輪なら、しまっておけといいたい。
「もう、帰るわ」
立ち上がったところを、エディアルドは腰に腕を回し、再度ソファに引きずり倒す。
「ちょっと!」
「じゃあ、これがさよならの口づけだ」
そしてまたまた深い口づけを受けるが、エディアルドはよほど嬉しかったようで、執拗に繰り返す。
だが、拒まない私も私なんだよな。
情熱的な口づけに頭がポーッとなりながら、考えた。
***
数日後、シアナと街へ買い物に来ていた。姉妹での買い物は本当にいい気晴らしになる。
馬車に乗り、帰路に着いた時、急に馬車の歩みがゆっくりになる。
「どうしたのかしら?」
怪しんで窓の外を見るが、真っ黒な靄がかかったような状態だった。
さっきまで晴れていたのに雷雨でもくるのかしら? だったら、早く屋敷に戻らないと。
馬車がゆっくりと停車したことが気になり、窓から顔を出す。
「お、お姉さま……!」
その時、ゆらゆらと黒い影のようなものが、窓から侵入してきた。それは物体といえど、意識を持っているように思えた。
直感が働き、あの黒い影は危険だと本能が告げている。
「シアナ!」
狭い馬車の中だがシアナを背後に庇い、黒い影と対峙する。
すでに窓の外は真っ暗な霧に覆われ、昼だというのに、夜の闇の暗さだ。
ゆらゆらと私に迫ってくる影を振り払いたくとも、実体がない。
間違いない、この影の狙いは私だ……!
馬車の扉を開け、シアナの背中を押し、彼女を外へ出す。
「お姉さま!!」
「早く逃げて!!」
叫んだのと最後に影に包まれ、意識が遠のく。
ああ、私、どうなってしまうのだろう――。
その時、脳裏に浮かんだのはエディアルドだった。
***
ううん……。
頭が重くて、すっきりしない。
瞼を開けると、そこは知らない部屋だった。驚いて起き上がろうとするも、身動きが取れない。
視線を下げると、手足はローブで縛られ、拘束されていた。
「なに、これ……!」
ベッドに投げられて、横になっている私。キョロキョロと周囲を確認するも、ここがどこなのか、ちっともわからない。
縛られたローブは頑丈で、無理やり動かすと、手首にギリリとロープが食い込む。
ここから逃げなきゃ。
誰がなんの目的でここに連れてきたのか不明だが、この扱いをみるに、私に逃げられると困るのだ。命が目的だったらとっくに始末していると、自分で思ってゾッとした。
なんの目的かは知らないけど、手段を選ばない強引さに背筋が寒くなる。
このまま大人しくなんて、していられない――!!
私はローブを口元へ持っていくと、ガジガジと嚙み始めた。私の歯をなめてもらっちゃ、困るわね。今まで虫歯一本もできていないのは、今日この日のためだったのかもしれない。
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