ストーカー後輩を放置できなくて矯正してたら、なぜか付き合うことになった

ささい

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本編

【日向視点】違和感

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日向恒一は、違和感に慣れるのが得意だった。
共働きの家の長男で、下は双子だ。驚いても仕方ないことには、早めに慣れる癖がついた。

大学はそういう場所だ。変な先輩、変なサークル、変なルール。
最初は驚いても、そのうち「こういうもんか」で流してしまう。

三週間ほど前に知り合った教育学部一年の真白は、日向にとって「流せる範囲の変な後輩」だった。
目が合うと妙に嬉しそうにする。けれど馴れ馴れしいわけでもない。
距離を詰めてくるというより、距離は保っているのに、視界からは外れない。

そして不思議と、日向が「まいったな」と思うタイミングでよく会う。

自転車で来た日に、落とした鍵を拾われた。
プリントが風に飛ばされた先で、当たり前みたいに拾われた。
雨の日には、傘を差し出された。

偶然だ。
……たぶん。

だが、偶然にしては遭遇する回数が多すぎた。
鍵を落とした日も、プリントが飛んだ日も、雨の日も。困ったことが起きた“そのあと”に、真白の姿が近くにある。

助かった。確かに助かった。
ただ、そのタイミングが妙に良いことにひっかかった。

まるで自分の行動を追ってきていたみたいで、気味が悪い。
とはいえ、疑いを確信に変えるほどの決定打はない。真白が何かを仕掛けたわけでもない。問いただすほどの根拠もない。

(……まあ、いいか)

日向はそれ以上考えるのをやめた。
真白の目に悪意はなかった。そこにあるのは、むしろ心配の色に見えたし、解決したあとには安堵を見せた。


それでも、ある日、答えは勝手に落ちてきた。

大学図書館二階の自習席。
日向は使い終えた資料を返却し、すぐに戻ってきた。
机の上に違和感があった。
ノートが、ほんの数センチ。角度もわずかに違う。
斜めだ。

自分は席を立つとき、ノートや資料を必ず机と平行に置く癖がある。
さっきも揃えてから席を立った。間違いない。

椅子も同じだ。
押し込んだはずの椅子が、半歩ぶん外に出ている。
誰かが横に立ち、膝が当たったみたいな、途中で椅子を引くのをやめた開き方。

ノートと椅子。二つのズレが『ここに誰かがいた』ことを物語っていた。

背中に冷たいものが落ちた。
誰かが自分の物に触れた痕が、この場に残っている。

椅子の脚の近くに、白いミニノートが転がっていた。
日向は反射的にそれを拾いあげた。表にも裏にも何も書かれていない。
中を見るしかない。
そう言い訳して、表紙をめくった。

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