上 下
8 / 49

第8話 初夜1★

しおりを挟む


(っていうか、まるで見当違いでもないっていうのが怖い……)

 確かにライリーは、魔法薬の力を借りてこそとはいえ、セオが言う特殊オメガ状態だ。ヒートがこないだけで、実はきちんと子を孕んで産めるという。
 しかし、ここでそれを認めるわけにはいかない。

「あ、あはは。そんなオメガがいるはずが……」
「ない、とは断言できないだろう。それに」

 セオの美しい顔がぐっと近付いてきて、そっとファーストキスを奪われた。ゆっくりと顔を離すと、愛おしげな目でライリーの瞳を覗き込む。

「私たちは夫夫だ。子ができずとも、愛し合うことになんの問題がある」
「え、ええと……」

 ナニガ、ドウナッテイル。
 セオの主張はもっともだが、突然の手の平返しに唖然とするほかない。後宮入りした当初、自分の子供を産みさえすればいい、と冷たく言い放っていたのに。どういう風の吹き回しだ。
 いや、それよりも。

(な、なんとか逃れる術はないか!?)

 結婚式が終わるまでは処女を守りたい……って、ライリーに挙式する予定はない。そもそもそれでは、先延ばしにするだけで回避することにならない。
 必死に頭を回したが、混乱していることもあって上手い言い訳が思いつかなかった。そうこうしているうちに、セオの手がライリーの衣服を脱がしていく。

「……綺麗だ」

 ライリーの裸を見て、セオはそうこぼした。
 ついばむようなキスの雨が、ライリーの全身に降り注ぐ。素肌に触れるその手つきは、壊れ物を扱うかのように繊細で優しい。

「あぁっ」

 愛撫する手が中心に触れた瞬間、思わず声が漏れ出た。慌てて手の甲で口元を塞いだが、セオはその手首を掴んでシーツに縫い付ける。

「もっと、可愛い声を聞かせてくれ」
「~~っ」

 なんだ、これ。
 なんなんだ、この展開は。

(お、俺が一体何をしたっていうんだよ――っっ)

 このままでは、セオに抱かれてしまう。今夜は子ができる心配がないと言ったって、なぜセオと愛し合わねばならないのだ。
 本音は拒否したい、が。セオの王婿なのだから、夜伽の相手を務めるのはライリーの役目でもあることは確か。
 そもそも、欠陥オメガを偽装すれば、セオと性行為することはないだろう、と考えていた自分が甘かった。

(う、受け入れるしかない……か)

 腹をくくれ。殺されるわけではないのだから。
 処女を捧げることくらい、なんてことはない。多分。
 ライリーは抵抗をやめ、諦めた。

「セオ陛下。その、や、優しくして下さい……」

 こわごわと言うと、「分かっている」といつもより柔らかい声音の返事があった。
 セオが覆いかぶさってきて、再び唇を奪われる。緊張して閉ざしていた口を舌でこじ開けられ、ぬるりとした舌が侵入してきた。
 おずおずと舌を絡ませ合う。

「んっ、ぁ……」

 よく小説では甘い味がどうのこうのと書かれているが、実際には無味無臭だ。だが、舌をちゅっと吸われると、下半身に痺れにも似た快感が直撃した。
 しばらくディープキスをした後、セオの顏はライリーの乳首に移動する。右の乳首を口に含まれて、左の乳首は指で摘ままれて。舌による優しい刺激と、指による強い刺激が、同時にライリーを襲う。

「あっ、んんっ」

 緩やかな快感が全身を支配する。下半身が疼いて足をもじもじとさせていると、セオは小さく笑って、すっかり硬くなった中心に手を伸ばす。
 やんわりと握られて、上下に扱かれるとたまらなく気持ちいい。

「気持ちよさそうだな」
「そ、そんなこと……あぁっ」

 咄嗟に否定するが、喘ぎ声を出していては説得力がない。挙句、竿の先端から先走りが溢れ出てくる始末。
 くちゅくちゅと室内に響く水音が、ライリーの羞恥心を煽る。お前は感じているんだ、と突きつけられているようで。
 竿の丸い窪みからセオは先走りを指で掬って、その指をお尻の窄まりに這わせる。出入り口に先走りを塗りたくり、つぷっと中指を差し挿れてきた。
 未知の感覚に、体が強張った。そのことに気付いたセオが、宥めるようにライリーの額にキスを落とす。

「大丈夫だ」

 菊門を犯す指がまた一本、増える。円を描くようにくるくると掻き回し、まだ未通の処女門をほぐしていく。

「……そろそろ、挿れるぞ」

 下着ごと下ろしたズボンの奥から露になる、セオの欲望。はち切れんばかりに硬く膨れ上がって、天を衝いている。
 ライリーは、ごくりと生唾を飲み込んだ。

(あ、あれが尻に入るのか? 本当に?)

 赤ん坊が出られるくらいなのだから、そりゃあ入るだろうと思うが……相当、痛いのでは。
 怖気づいたライリーは、やめろと言いたくなった。が、口にするよりも先に、セオは肉棒をライリーの後孔にあてがった。
 正常位の体勢でぐっと圧力をかけられると、少しずつそこが開けていく。怒張したモノがゆっくりと中に入ってくる。
 丹念にほぐしてもらったからだろうか。想像したような激痛ではない。痛みはほんの少しだけだ。それよりも圧迫感が強く、胸の辺りが苦しい。

「入ったぞ。大丈夫か」

 気付いたら、根本まで中に収まっていた。だが、そこの感覚が鈍いのか、あまり存在を感じない。この胸の圧迫感がなかったら、入っているのか分からなかっただろう。

「だ、大丈夫です」

 もうここまできたら、引き返せない。さっさと終えてもらおう。
 大丈夫だと聞いて、セオは「では、動くぞ」とそろりと腰を引いた。そして、またゆっくりと押し入ってくる。
 その際、先端が奥に当たって、痺れるような快感が弾けた。

「あ、んっ!」

 喘ぎ声が出たことで、気持ちいいのだとセオは察したらしかった。抜き差しを繰り返しながら、そこを重点的に攻めてくる。
 奥を突かれるたび、頭に火花が散る。喘ぎ声が止められない。

「あぁっ、やっ、んんっ」
「何が嫌なんだ。ここが好きなんだろう」

 意地悪く言いながら、ぐりぐりと押し付けられると、たまらなく気持ちいい。
 不思議ともう痛みはなかった。圧迫感も消え、与えられるのは快楽だけ。

「そんなことな……あぁっ!」

 ずんと一息に貫かれて、あろうことかイってしまった。
 突然の強烈な攻めに、ライリーは恨めしげにセオを見上げる。しかし、潤んだ瞳で睨まれても、痛くも痒くもないらしい。涼しい顔をして、ライリーの後孔を穿つ。
 意地悪だと思いつつも、激しさを増していく抽挿による快楽には抗えなかった。

「あっ、あぁっ、やぁっ」

 嫌だと言いつつ、腰が勝手に動く。はしたないことをしていると分かっているが、快楽を貪ることをやめられない。
 セオは仄かに笑い、

「中に出すぞ」

 腰を大きくグラインドさせた。
 膨張した雄が中で爆発し、蜜液で肉奥を濡らす。その衝撃で、ライリーもまた、再び硬くなっていた熱芯から蜜液を吐き出した。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私はあなたの母ではありませんよ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,660pt お気に入り:3,594

遅れた救世主【聖女版】

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:222

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,948pt お気に入り:1,959

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

BL / 連載中 24h.ポイント:674pt お気に入り:301

妻が遺した三つの手紙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,655pt お気に入り:46

グッバイシンデレラ

BL / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:112

西の迷宮の触手風俗! ~少年剣士サージュの棚ボタ英雄譚~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:53

初夜の翌朝失踪する受けの話

BL / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:2,926

処理中です...