17 / 20
笑顔になるために
しおりを挟む
彼からの告白の後、二人はしばらく完全に夕陽が沈むまで景色を眺めていた
でも、私の心はそこにはなく、ここ最近思い悩んでいた拓海君からの提案について思いを馳せていた
それからさっきの煉君から告げられた想いと行動を振り返ってみる
『私には、振られると分かっていてこんなにも自分の想いを相手に真っ直ぐ伝えることなんてできない・・・それまでの関係が壊れるぐらいならいっそこのままとどうしても思ってしまうよ、だけどそれがとても苦しいっ・・・・・・・!』
そう心で叫んでいると、隣からこちらを気遣うような声がした
「大丈夫か桜?」
「えっ?あ、うん、大丈夫」
心の叫びに一旦蓋をして、私は急いで彼に対して笑顔を張り付け気丈に振る舞おうとした
しかし、そんな私を見透かしたかのように彼は体ごとこちらに向き合い、私の顔に触れ親指で頬を撫でてきた
「本当か?だったらこの涙はなんだってんだよ・・・?」
「え・・・?」
そう指摘されて初めて私は自分の頬が濡れていることを自覚した
「これは・・・」
そう呟いたきり、私の口は言葉を忘れたかのように音を紡ぐことができなかった
それとは反対に私の瞳からは、次から次へと雫が地面へと滴っていく
せめて声だけは漏らすまいと下唇を噛み締めて懸命に涙を止めようとした
彼はそんな私をどうしていいのかわからずしばらくあわあわしていたが、突然私の肩に手を置き目線を合わせてきた
「そんな声を殺すような泣き方は余計に辛いだけだ・・・それに今ここには俺しかいねぇから思いっきり泣いたって誰にも何も言われない、だからーーーーー」
そう言って彼は肩に置いていた手を背中に回した
次の瞬間には、私は彼の腕の中に閉じ込められていた
「ーーーーーだから笑顔になるために今は泣けるだけ泣いとけ」
その言葉に私はついに涙腺が決壊し、それに加えて小さい子のように大声をあげて彼の背中に手を回してしがみついたまま泣き続けた
「うわぁぁぁぁぁ~!!」
その間彼は一言も声を出さず、ただひたすらに背中をトントンと子どもをあやすかのように優しく叩いてくれた
しばらくそのまま泣いた私は、彼の背中を軽く叩いてもう大丈夫なことを示した
すると、彼はすぐにその意図に気付き腕から私を離してくれた
「もう、いいのか?」
その問に今の私はさっきとは違い確かな思いで言葉を紡いだ
「うん、大丈夫!」
この時私は確かにスッキリした心で笑顔と共に目の前の彼に伝えた
それを聞いた彼も同様に笑顔を浮かべて私の頭を撫でながら返事をした
「そっか、なら良かった!」
彼は何も訊かずただ側に居てくれた、それだけで私はとても救われた
なぜならこんなこと彼には言えない
言ったらきっと真っ直ぐな煉君は、私を思って怒ってしまうだろう、慰めてくれるだろう、でもそれは私にとってはただの逃げに繋がるような気がした
ましてや私に好意を寄せてくれている人に恋愛相談などもってのほかである
つまり、あのとき彼が私に何か尋ねてきたら一も二もなく彼を置いてこの場を去っただろう
そして、たぶん心さえもーーー
「もう本当に大丈夫みたいだし、遅くなる前に家まで送ってくよ」
「・・・うん」
それから私達は、無言で家に着くまで歩いた
でも、それは息苦しいものではなかった
それに加え、私の右手と彼の左手が繋がってそこからじんわりと何か言い知れぬ温もりが心に流れてくる気がして、私は少しでも長く彼と居たくて家に着かないで欲しいと感じた
それでも、家には着いてしまう
「今日はありがとな、楽しかった」
「私も・・・じゃあ、また学校で」
「ああ、またな」
言葉が続かないため、想いと反して早々に私は家に入ることとなった
彼は私が家に入るのを見届ける
それからすぐに私は部屋に行き、窓を開けて彼の姿が見えなくなるまでその背中を見つめていた
私はその後今日一日を終える準備をして、ある決意をした後、目を閉じた
しかし、そんな私を嘲笑うかのように次の日学校で私はまたしても衝撃的なことに直面してしまったーーーーー
________________________________________________
読んで下さりありがとうございました!!
前回5ヶ月も更新が遅れていたのにも関わらず読者の皆様が待ってくださったことに大変嬉しく思いました(ノ_<。)
また、そんな皆様のお陰で今までの中では成し得なかった恋愛でのランキングが200位以内という快挙となりました!
驚きすぎて動悸が大変なことになりましたが、読者の皆様には感謝の念で一杯です!!
これからもどうかよろしくお願いします!
でも、私の心はそこにはなく、ここ最近思い悩んでいた拓海君からの提案について思いを馳せていた
それからさっきの煉君から告げられた想いと行動を振り返ってみる
『私には、振られると分かっていてこんなにも自分の想いを相手に真っ直ぐ伝えることなんてできない・・・それまでの関係が壊れるぐらいならいっそこのままとどうしても思ってしまうよ、だけどそれがとても苦しいっ・・・・・・・!』
そう心で叫んでいると、隣からこちらを気遣うような声がした
「大丈夫か桜?」
「えっ?あ、うん、大丈夫」
心の叫びに一旦蓋をして、私は急いで彼に対して笑顔を張り付け気丈に振る舞おうとした
しかし、そんな私を見透かしたかのように彼は体ごとこちらに向き合い、私の顔に触れ親指で頬を撫でてきた
「本当か?だったらこの涙はなんだってんだよ・・・?」
「え・・・?」
そう指摘されて初めて私は自分の頬が濡れていることを自覚した
「これは・・・」
そう呟いたきり、私の口は言葉を忘れたかのように音を紡ぐことができなかった
それとは反対に私の瞳からは、次から次へと雫が地面へと滴っていく
せめて声だけは漏らすまいと下唇を噛み締めて懸命に涙を止めようとした
彼はそんな私をどうしていいのかわからずしばらくあわあわしていたが、突然私の肩に手を置き目線を合わせてきた
「そんな声を殺すような泣き方は余計に辛いだけだ・・・それに今ここには俺しかいねぇから思いっきり泣いたって誰にも何も言われない、だからーーーーー」
そう言って彼は肩に置いていた手を背中に回した
次の瞬間には、私は彼の腕の中に閉じ込められていた
「ーーーーーだから笑顔になるために今は泣けるだけ泣いとけ」
その言葉に私はついに涙腺が決壊し、それに加えて小さい子のように大声をあげて彼の背中に手を回してしがみついたまま泣き続けた
「うわぁぁぁぁぁ~!!」
その間彼は一言も声を出さず、ただひたすらに背中をトントンと子どもをあやすかのように優しく叩いてくれた
しばらくそのまま泣いた私は、彼の背中を軽く叩いてもう大丈夫なことを示した
すると、彼はすぐにその意図に気付き腕から私を離してくれた
「もう、いいのか?」
その問に今の私はさっきとは違い確かな思いで言葉を紡いだ
「うん、大丈夫!」
この時私は確かにスッキリした心で笑顔と共に目の前の彼に伝えた
それを聞いた彼も同様に笑顔を浮かべて私の頭を撫でながら返事をした
「そっか、なら良かった!」
彼は何も訊かずただ側に居てくれた、それだけで私はとても救われた
なぜならこんなこと彼には言えない
言ったらきっと真っ直ぐな煉君は、私を思って怒ってしまうだろう、慰めてくれるだろう、でもそれは私にとってはただの逃げに繋がるような気がした
ましてや私に好意を寄せてくれている人に恋愛相談などもってのほかである
つまり、あのとき彼が私に何か尋ねてきたら一も二もなく彼を置いてこの場を去っただろう
そして、たぶん心さえもーーー
「もう本当に大丈夫みたいだし、遅くなる前に家まで送ってくよ」
「・・・うん」
それから私達は、無言で家に着くまで歩いた
でも、それは息苦しいものではなかった
それに加え、私の右手と彼の左手が繋がってそこからじんわりと何か言い知れぬ温もりが心に流れてくる気がして、私は少しでも長く彼と居たくて家に着かないで欲しいと感じた
それでも、家には着いてしまう
「今日はありがとな、楽しかった」
「私も・・・じゃあ、また学校で」
「ああ、またな」
言葉が続かないため、想いと反して早々に私は家に入ることとなった
彼は私が家に入るのを見届ける
それからすぐに私は部屋に行き、窓を開けて彼の姿が見えなくなるまでその背中を見つめていた
私はその後今日一日を終える準備をして、ある決意をした後、目を閉じた
しかし、そんな私を嘲笑うかのように次の日学校で私はまたしても衝撃的なことに直面してしまったーーーーー
________________________________________________
読んで下さりありがとうございました!!
前回5ヶ月も更新が遅れていたのにも関わらず読者の皆様が待ってくださったことに大変嬉しく思いました(ノ_<。)
また、そんな皆様のお陰で今までの中では成し得なかった恋愛でのランキングが200位以内という快挙となりました!
驚きすぎて動悸が大変なことになりましたが、読者の皆様には感謝の念で一杯です!!
これからもどうかよろしくお願いします!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる