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第1章
6 異邦人
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「すまねぇ。オレとしたことが、ちょっと我を失っていたみたいだ」
「わ、私もです。命の恩人の前で失礼しましたのです」
「いえ、お気遣い無く。……それに恩人だなんて。俺は影のような怪物が見えたので、注意を呼びかけただけですから」
そう、俺は確かに声をかけたが、さっきの怪物を倒したのは目の前のアノアという女性の力に寄るものだ。
彼女たちに褒められるほどのことはしていないと思う。
「ところで、お名前を伺ってもよろしいですかな。小生はミリアム・パラックと申しますぞ」
「オレはアノア・クローセ」
「あ、俺は大久信流……じゃなかった。ノブル・オオクといいます」
俺が西洋風に自分の名前を告げた瞬間、二人の顔に驚愕の色が浮かんだ。
「ノーブル・オークですと……」
「え……マジでか……?」
なに、この反応。
俺が困惑しているとミリアムさんが口を開いた。
「失礼ですが、それは本名でありますか?」
「え、ええ。俺の名前は確かにノブル・オオクですが」
「む、ノブル・オオク……? ノーブル・オークではないのですか?」
「なんかアクセントとかが微妙に違いますね。ノブル・オオクです」
そう言うと二人は難しい顔をして顔を見合わせる。
「名前が似てるだけなのか……?」
「この方の言うとおりならそのようです。ですが、私には見た目はあのオークのように見えるのです」
「ああ、ノーブル・オークと言われたらそのまま信じてしまいそうな容姿だ。何かオーラのようなものも……」
二人がごにょごにょ言っている。
「失礼したのです。ところでノブル殿はどちらからいらしたのです? ここで何を?」
「あ……、それは……」
俺は言葉に詰まってしまった。
……ここではない別世界に住んでいたのに、朝起きるとこの世界にトリップしていた。
そう正直に言っても、頭のおかしい狂人扱いされるんじゃないだろうか。
ここは手堅く、記憶喪失と言っとくか……?
俺が言いあぐねていると、ミリアムさんが口を開く。
「もしかして、別世界から来られたのではないですかな」
「っ、え!?」
「何!?」
そのものずばり言い当てられた俺だけでなく、アノアさんまで驚く。
「まず、あなたの容姿です。黒い髪に黒い目というのはとても珍しいのです。それに」
ミリアムさんの視線が俺を上から下まで見やる。
「あなた様のお召し物は、商人の私でも見たことも無いデザインです。生地も不思議な光沢があって、存じ上げないのです」
まぁ、異世界にジャージはないだろうな。
「それにどこか落ち着かない様子。魔獣の徘徊する野外だというのに、武器も持たない軽装というのもおかしいのです」
まぁ、俺がどこか落ち着かない、挙動不審なのはいつものことなのだが。
「以上から、私は異邦人だと判断したのです」
「なるほど……」
アノアさんは納得してるようだ。
俺は異邦人という言葉がよくわからない。
「ちなみに異邦人というのは、別の世界から神隠しなどによってこの世界に迷い込んでしまった方々の総称ですぞ。この世界……二テラというのですが、稀に異邦人と言われる方々が異世界から現れます。彼らは不思議な力を持っていたり、二テラには無い文化や技術を伝えてくれたりするのです」
「まあ、言葉が全然通じなかったりもするらしいけどな。で、実際のところどうなのよ」
アノアは確認するかのように、じっとこっちの顔を見つめてくる。
俺はその視線に照れながらも、覚悟を決めていた。
言い逃れることは難しそうだし、この二人だったら俺が異邦人なるものだということを知っても、悪いようにはしないという感じがしたのだ。
「……ああ。多分、俺はその“異邦人”なんだと思う」
「わ、私もです。命の恩人の前で失礼しましたのです」
「いえ、お気遣い無く。……それに恩人だなんて。俺は影のような怪物が見えたので、注意を呼びかけただけですから」
そう、俺は確かに声をかけたが、さっきの怪物を倒したのは目の前のアノアという女性の力に寄るものだ。
彼女たちに褒められるほどのことはしていないと思う。
「ところで、お名前を伺ってもよろしいですかな。小生はミリアム・パラックと申しますぞ」
「オレはアノア・クローセ」
「あ、俺は大久信流……じゃなかった。ノブル・オオクといいます」
俺が西洋風に自分の名前を告げた瞬間、二人の顔に驚愕の色が浮かんだ。
「ノーブル・オークですと……」
「え……マジでか……?」
なに、この反応。
俺が困惑しているとミリアムさんが口を開いた。
「失礼ですが、それは本名でありますか?」
「え、ええ。俺の名前は確かにノブル・オオクですが」
「む、ノブル・オオク……? ノーブル・オークではないのですか?」
「なんかアクセントとかが微妙に違いますね。ノブル・オオクです」
そう言うと二人は難しい顔をして顔を見合わせる。
「名前が似てるだけなのか……?」
「この方の言うとおりならそのようです。ですが、私には見た目はあのオークのように見えるのです」
「ああ、ノーブル・オークと言われたらそのまま信じてしまいそうな容姿だ。何かオーラのようなものも……」
二人がごにょごにょ言っている。
「失礼したのです。ところでノブル殿はどちらからいらしたのです? ここで何を?」
「あ……、それは……」
俺は言葉に詰まってしまった。
……ここではない別世界に住んでいたのに、朝起きるとこの世界にトリップしていた。
そう正直に言っても、頭のおかしい狂人扱いされるんじゃないだろうか。
ここは手堅く、記憶喪失と言っとくか……?
俺が言いあぐねていると、ミリアムさんが口を開く。
「もしかして、別世界から来られたのではないですかな」
「っ、え!?」
「何!?」
そのものずばり言い当てられた俺だけでなく、アノアさんまで驚く。
「まず、あなたの容姿です。黒い髪に黒い目というのはとても珍しいのです。それに」
ミリアムさんの視線が俺を上から下まで見やる。
「あなた様のお召し物は、商人の私でも見たことも無いデザインです。生地も不思議な光沢があって、存じ上げないのです」
まぁ、異世界にジャージはないだろうな。
「それにどこか落ち着かない様子。魔獣の徘徊する野外だというのに、武器も持たない軽装というのもおかしいのです」
まぁ、俺がどこか落ち着かない、挙動不審なのはいつものことなのだが。
「以上から、私は異邦人だと判断したのです」
「なるほど……」
アノアさんは納得してるようだ。
俺は異邦人という言葉がよくわからない。
「ちなみに異邦人というのは、別の世界から神隠しなどによってこの世界に迷い込んでしまった方々の総称ですぞ。この世界……二テラというのですが、稀に異邦人と言われる方々が異世界から現れます。彼らは不思議な力を持っていたり、二テラには無い文化や技術を伝えてくれたりするのです」
「まあ、言葉が全然通じなかったりもするらしいけどな。で、実際のところどうなのよ」
アノアは確認するかのように、じっとこっちの顔を見つめてくる。
俺はその視線に照れながらも、覚悟を決めていた。
言い逃れることは難しそうだし、この二人だったら俺が異邦人なるものだということを知っても、悪いようにはしないという感じがしたのだ。
「……ああ。多分、俺はその“異邦人”なんだと思う」
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