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いってきます
しおりを挟む「フレンチトースト作ったよ」
カウンターの上に三皿並べる。楓とリナと皓大の朝ごはんのつもりで。
「すげぇ、朝陽料理できんの」
「食べたいー...けど、すっごい頭イタイ...」
完全に二日酔いのリナと皓大とは逆に、俺の身体は軽い。数ヶ月ぶりにぐっすり寝られたからだ。
昨夜、楓はソファで寝るからとベッドを譲ってくれようとしたのだが、あまりにも申し訳なくて反論した。かなり揉めた挙げ句に、結局二人でベッドに寝るという結論に落ち着いた。はっきり言って、二人で寝るにはあまりに狭すぎるベッドなのだけれど、そのせいで密着した楓の温かさに安心して熟睡できたようだ。
「めっちゃウマイ、なにこれ。朝陽すげえな......リナより上手いよ、まじで」
「はぁ?あたしだってやればできるしぃ?」
「こないだ作ったチャーハン酷かっただろうが。お前嫁にいけねぇぞ」
「あたしは料理できる男つかまえるからいいんですぅ」
言い争う二人を見て笑う。昨日の夜、かなり遅くまで騒いでいた二人の会話から付き合っているのだと気がついていた。仲良くて素敵なカップルだと思う。
「お前ら、遅刻するぞ」
楓が見向きもせずに言う。その言葉に二人は慌てて、残ったフレンチトーストを飲み込んだ。
「ほんとだっ、ヤバい。ちょっと皓大送ってよ」
「俺とお前、反対方向だろうが。自力で行け」
ああだこうだと言い争いながら、急いで出ていく二人を笑って見送る。
と、外へ上がる階段のところまで行ったリナが戻ってきた。
「朝陽、いってきます!」
「え......あ...いってらっしゃいっ...!」
リナは笑って親指を立てて見せてから、また走って出ていった。
わざわざそれ言いに戻ってきてくれたんだ...
俺今ちゃんと、いってらっしゃいって言えてたか...?声裏返ったような...
「いってきます、ね...一日で随分懐いたな」
楓がカウンター前の少し高めの椅子に座り、俺と向き合う。
「これ食っていいの?」
「うん」
楓はあの狭いベッドで疲れていないだろうか。訊いても否定されるのはわかりきっているから、表情から読み取ろうとしたがよくわからない。
「料理...なんでも作れるのか?」
突然の問いに口をポカンと開けてしまう。
「んと......俺別に料理得意って訳じゃないから...」
楓はフレンチトーストをかじっているため、なにも言わないが不思議そうに首をかしげてくる。
「なんていうか、工作は得意なの。料理はその延長、みたいな...だから上手く作れるわけでは...」
楓は少しかたまってから、吹いた。
「ふはっ、おまえ...料理と工作一緒かよ」
「似たようなものかなって......っ笑いすぎ!」
楓ってこんな風に笑うんだな
「じゃあさ」
楓の手が俺の手をとって、包み込むように握る。
「俺のためにオムライス制作してくんない?」
楓は俺の目を見つめて、いたずらっぽくにやりと笑った。
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