路地裏モラトリアム

Nora

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離さないで *

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「はぁあっ......ひぃっ......ヒクッ」


「すごい汗......大丈夫か」


はっきり言ってあまり大丈夫じゃない。痛くて痛くて、内側から身体を抉られているみたいだ。


「も、全部はいっ...た...?」


「半分くらい」


まだ半分......


玉になった汗が額を流れていく。こんなところで音をあげそうになる自分の身体と意思が恨めしい。


「......辛いなら止める」


楓の呟きに驚いて首をひねって肩越しにその顔を見つめると、優しさと欲情とが入り交じった瞳と目が合う。


楓はきっとすごく我慢してくれている。俺が少しでも辛くないように自分の中の衝動を抑えてくれている。


「楓......ね、一気にいれて...」


楓の表情が大きく歪んだ。俺への気遣いと欲望との間で葛藤しているに違いない。


「だいじょぶだから...」


小さな舌打ちが聞こえた。楓がゆっくりと息を吐くのに合わせて、その肩が上下するのを見つめる。


「......わかった。力抜いてろ」


その言葉に続いて、お腹の信じられないくらい深いところが開かれていく。


「ひっ...ぅうう.....んあああ゛」


「...ッ、朝陽っ」


痛くて苦しくて仕方がないのに、一瞬にしてそんなのどうでもよくなった。


楓、初めて名前......


低い声で呻くように絞り出された自分の名前が甘く脳の奥に響く。


「ヒクッ...ぁあああ...んうぅ...」


楓の指が口に入ってきて、口の中を掻き回していく。その指が熱くて、溶けてしまいそうだ。


「ゆっくり動くから。無理だったら無理って言え」


そんなこと言うわけない。楓のそばにいられるなら、楓が触れてくれるなら、なんでもできる気がする。


いざ楓が動き出すと、そんなことを考えている余裕なんかあるはずがなかった。そこからは、痛みなんて吹き飛ぶくらいの、想像の何十倍もの刺激と、じわじわと追い詰めてくる未知の快感に身体を震わせ、掠れた声をあげ続けることしかできなかった。











「ハァッ、かえでっ...ぜんぜんっ...ハッ...息あれてない...」


ベッドの上で脱力したまま、呼吸を整えながら楓を横目で見る。さっきまで俺は酸素足りなくて死にそうになっていたというのに、楓は余裕の笑みを返してきた。


「まぁ俺はな......お前に無理させた側だから」


その言葉に一気に不安が沸き上がってくる。勝手に泣き出しそうになるのを唇を噛んでこらえた。


「...俺、思ってたのと違わなかった...?」


「は...?」


「お、れ...楓のになれる...?」


自分でもバカバカしいことを聞いているとは思う。でも止まらなかった。きっと口をつぐんだ瞬間に泣き出してしまう。


「...お前はそれでいいのか」


「......?」


「俺は離してやれねぇよ?」


その言葉を理解するのに少し時間がかかった。


「......それでいいっ、それがいいっ!」


あまりに必死な俺の答えに楓は苦笑いして、お前バカだなぁとこれ以上ないくらいに優しい声で呟いた。



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