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ケガ
しおりを挟むケガをしている二人に驚いて駆け寄ると、後ろからリナが不機嫌そうな声を出した。
「喧嘩してきたから遅かったんだ?」
皓大は何事もなかったように朝陽の横を通って中へ入り、リナの座っていない方のソファに身を投げ出した。
「違ぇよ。絡まれたから追い払っただけだっつの」
「そのわりに随分傷だらけじゃない?」
「仕方ねーだろ、相手六人だぞ」
「ああもう、ほら、傷見せて。手当てしてあげるから」
たった二人で六人もを相手に喧嘩しているところを想像してゾッとした。目の前に楓が無事でいることが奇跡に思える。
よく見ると手の関節のところに血が滲み、服の肩の部分に血が染みていた。
「楓...血出て......」
「ん?......あぁ、これほとんど相手の。手の甲のかすり傷くらいだよ、俺は」
ほら、と言って手に付いた血を水で落として見せてくる楓にホッと胸を撫で下ろす。それでもなぜかもやもやとした不安が残った。
「朝陽ー、心配すんな。相手ボロッボロにしといて、楓はほぼ無傷だから」
リナに手当て、という名の雑な消毒をされながら皓大が言う。その言葉に楓が笑って返した。
「お前はそれなりに怪我してっけどな」
「うるせー。お前が強すぎんだよ。つか、三人ずつって言ったからって三人片付けた後、見てねぇで手伝えよ!」
「俺が手出さなくても勝てるだろ」
「うおっ、なになに。楓ちゃん、俺のこと誉めてんの?お前ならできるって信じてるよ、みたいな?」
「...めんどくさかっただけだ」
大きめの舌打ちをしながら楓は買ってきたものを二つのソファの間にあるテーブルに置いた。
「ぬるくなるぞ」
「あたしのはー?」
ちょうど皓大の手当てを終えたリナが身を乗り出して缶を一つ手に取る。俺は飲みかけのペットボトルを手に、リナの隣に座った。
リナがカチャリと蓋を開けた瞬間...
プシャッ
あ、という皓大の声と同時に缶の中身が吹き出して、俺の髪と服がそれを受け止めた。
「ブッ...途中、で...落としたからッ気を付けっ、ろよ?」
皓大が笑いをこらえながら、今更なことをリナに伝える。
「あんった、遅いのよ!朝陽、ごめんねぇ...ぷっ、ダメだ、アハッ」
そんなに面白いだろうかと思って楓を見ると、顔を背けて肩を震わせていた。
「苦っ...」
髪を伝ってきた液体が口に入り、その苦さに顔をしかめる。それを見た楓が立ちあがり、俺の腕を掴んだ。
「ベタベタになるから、シャワー浴びてこい」
「うん...」
返事はしたものの立ち上がらない俺を楓は半ば強引にシャワーに連れていく。握られたところから流れ込む熱が、身体中に回り、息苦しくなった。
「今着替え持ってくるから...」
そう言って風呂場に俺をおいていこうとする楓の背中を見て、心臓がドクンと跳ねる。
あ.........ダメ、行っちゃ...
ほとんど無意識に楓の腕に手を絡めて体重をかけていた。予想外の俺の行動に楓がバランスを崩し、二人して床に倒れ込む。その拍子にシャワーに肘が当たって、熱いお湯が頭上から降り注いできた。
「ってぇ...どうした」
「.........」
シャワー、熱い...
「朝陽?」
あー...なんか言わなきゃ
楓が困ってる......
「お前、もしかして......酔ってる?」
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