悪役令嬢目指して奮闘中

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悪役聖女?

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わたくしの心境を語るとしたら、たった一言だ。

ど う し て こ う な っ た !

「私は!悪役令嬢が良かったのよ!!」

自室での優雅なティータイム中である。
下位とはいえれっきとした貴族であるわたくし、シルビアンナ・S・シルベストリ(13)は傍に控えている侍女の白けた視線にも何のその。飲み終えたカップをソーサーに置いてから、庭先にあったら絶対におしゃれであろう可愛らしい丸いテーブルに拳を叩き付ける。落ちかけたカップは白けた視線を向けていた侍女が難なくキャッチした。

「シルビアンナ様、悪役で令嬢というのはあまり大っぴらにできる事では無いと思われるのですが。」
「相変わらず主たる私に生意気な口をきくわね、リロイ。」
「私の雇い主はシルベストリ子爵様ですし。」
「ぐぬぬぬ…。」

家名を持たぬ、ただのリロイは私の乳母の娘であり、幼馴染でもある。
不敬ともとれそうな口を利くのは私にだけと知っているし、前世の記憶がある私にとっては別段気になるような事でもない。

――前世。輪廻転生をする魂が生まれ変わる前の一生の事。
私は、いえ、あたしはただの腐女子に両足を膝くらいまで浸けた、ゲーム漫画アニメ大好きな腐健全ふけんぜんなオタクだった。
最初はあたしの記憶は無かった。違和感を持ちながらも普通に私として育ってきただけだ。記憶が戻ったきっかけは、貴族の9歳になる年の子から未就学児――今の人生では貴族の就学は14歳になる年からで、児と言っても13歳まで居るんだけど――を対象とした、5年に一度開催される王家のお茶会でする自己紹介の練習をさせられた時。
私はその時、初めて自分の名前がシルビアンナ・S・シルベストリだと知った。だってお父様もお母様も、乳母やもリロイも皆して私をアンナと呼んでいたんだもの、アンナが名前だと思うじゃない。
そうしてフルネームを知った私の生まれながらの違和感が音を立てて砕け散っていくようだった。――記憶を取り戻した私を最初に待っていたのは、突然な記憶の開放で知恵熱にて寝込むというものだったのは言うまでもないかしら。
そして熱が引っ込んだ時には、私とあたしが完全に同居しているという不思議な感覚。まぁ魂ってそうそう変わるものでは無いと言うし、性格的には何も変わっていなかったからなんだろう、という事にした。

そして落ち着いた私が、あたしとしての記憶を取り戻してから改めて記憶の整理をしたのだけれど。まず最初に考えることはやはり切っ掛けとなった自分の名前で。
シルビアンナ・S・シルベストリ…あたしはこの名前にとても馴染みがあった。前世では通称トリプルSと呼ばれていた、私と同姓同名の人物。それは、前世のあたしがこよなく愛した乙女ゲーム【アステリスク~聖なる乙女と円卓の騎士~】のヒロインにして主人公の名前だった
単なる同姓同名であるのならそういう事もあるんだな、で済ませられた。済ませたかった…。
だけど、私が育ってきたこの国の名前、王様の名前、王太子の名前、同年代の格上の貴族の子息令嬢の名前に見知った名前がズラズラと並んでいれば済ませられる筈も無く。あたしは私として生まれ変わってしまったんだと嫌でも実感した。
乙女ゲームのヒロインに転生だなんてハーレムじゃないか!と夢見る同士なら妬まれる立場なんだろうけど、あたしはヒロインの立場なんて欲しくなかった。
冒頭で叫んだ通り、あたしは乙女ゲームの世界に転生するなら悪役令嬢になりたかったのだ!
約束された未来、それをヒロインにぶち壊されて転落の一途を辿る可哀想な立場にありながら、ゲーム知識を使ってひらりと平和を目指して奮闘する…そんな夢小説のように。

「現実とは儚いものですわねリロイ。」
「お嬢様は現実というものをしっかり見つめてください。」

視界から排除し続けていた手紙をリロイの手によって眼前に突き付けられる。
その手紙には、要約するとこう書かれていた。

【シルビアンナ・S・シルベストリ嬢は神託により100年に一度降臨なされる聖女であると定められた。よって、来年度から王立魔法学校へと通う事を任ずる。――アスタロン聖国国王 ジュナベール・K・アスタロン】
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