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悪役聖女?
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「アンナお嬢様は気にならないのですか?ご自分の未来の旦那様となられる、当代の円卓の騎士に誰が選ばれるのか。」
「なられるって、やめてちょうだい。あくまでも“されている”なのだから本当に婚姻を結ぶとは限らないのよ。」
絶対にそこだけは引けないとリロイの言葉に訂正を入れる。
確かにアステリスクでもその伝承はあった。聖女と円卓の騎士が結ばれる事で、世界に繁栄をもたらすだろう、と。
ゲームと現実を一緒にしてしまうのは鼻で笑ってしまうけれど、参考にする程度ならば問題は無い筈。なら、ゲームの中での友情エンドや危機を回避できずに滅んでしまうバッドエンドの未来も有り得る。未来は自分の言動一つでいくらでも変わる…それはゲームでも現実でも変わらない。
「ですが私はあえて言わせていただきますわ!悪役令嬢の未来を選ぶと!」
「この場合、悪役聖女だと思うんですが。」
「……悪役で聖女だなんて、矛盾してるわね。」
「アンナお嬢様ですから矛盾の一つや二つや三つなんて。」
リロイは私を敬いなさいよ。主の娘で聖女だなんて敬うべき存在じゃないの。
でもこの軽口を許せるくらいリロイには気を許しているのよねぇ。外ではしっかり侍女を務めているし。
----------------------------------
「そうと決まればまずは作戦を立てなくては。」
お茶の時間も終わり、今日は予定が無いので午後の自由時間。リロイは茶器を片付けるのに下がったので、今は自室のデスクに一人向かっている。
まずはゲームの冒頭を思い出そう。ヒロインはトリプルSこと、私シルベストリ子爵家長女のシルビアンナ・S・シルベストリ。彼女が聖女として王立魔法学園に入学するシーンから始まる。――同じ名前だとゲームのシルビアンナと私で混乱してしまいそうだし、前世の通称であるトリプルSと呼ぶことにしましょう。と言っても前世の事なんて誰にも言えないから脳内の話だけれど。
ゲームでは入学式の学園長の長い話の途中で何故入学する事になったのかという回想シーンが流れるのだけれど、学園長だとかお年を召した方の話が長いのはこの国でも同じらしいわね。トリプルSも聖女なのに回想シーンを入れる辺り話を聞いてないじゃない。私だったら勿論、話を聞かないわ。……私も現実で聖女とされている以上、トリプルSの事を悪く言えなかったわ。
まぁその回想シーンというのが王様からの手紙なのだけれど、それは先程リロイに頬に押し付けられていたあれね。ゲームでの文面と違う部分、私の病についてがあったけれど学園に通えというところは同じ。
もしもこの世界がゲームの世界だとしたら、ゲームでは日常生活などの細かいパートなんて全部ヒロインのステータスを上げるためだけのシーンで全部すっ飛ばされているのだから、ゲームではそういった本筋と関係無い部分は省略されていたのかもしれない、という仮設が立てられる。
「…でもここは私の現実なの。生まれてからの13年は、紛う事無く本物であるのよ。これだと卵が先か鶏が先か、という話になってしまうわね。」
あたしであった時から考えるのは得意じゃないせいか、頭が痛くなってきた。それでも私はあたしの時より見目麗しいと言えるし、頭脳だって良い方だ。うらやまけしからん。いや今は自分の事だった。
…いけない、思考が迷子になってしまうのはあたしの頃からの悪い癖だわ。取り敢えず、ゲームと同じように王様からの手紙が来た事までは一緒ね。
で、ええと…入学式での回想シーンの後は確か、当代の円卓の騎士の発表だった筈。
円卓の騎士は、聖女と違って神託は無い。けれど聖女降臨の神託の後に、身体の何処かに円卓の騎士の証である聖印が現れる。聖女は聖国とだけあってか、私が生まれ育ったアスタロン聖国の中からしか出現しないけれど、円卓の騎士はアスタロン聖国からだけではなく、神話に出てくる他の六つの国の中から神によって選ばれる、とされている。
因みにこの世界には小国と呼ばれる小さな国も多くあるけれど、神話にも出てくるアスタロン聖国を含めた七つの国を総称して七大国と呼ぶ…って、これは今はどうでも良かったわ。
作戦を立てようと意気込んだのに、全然進んでないじゃない。しっかりしなさい、シルビアンナ。
「なられるって、やめてちょうだい。あくまでも“されている”なのだから本当に婚姻を結ぶとは限らないのよ。」
絶対にそこだけは引けないとリロイの言葉に訂正を入れる。
確かにアステリスクでもその伝承はあった。聖女と円卓の騎士が結ばれる事で、世界に繁栄をもたらすだろう、と。
ゲームと現実を一緒にしてしまうのは鼻で笑ってしまうけれど、参考にする程度ならば問題は無い筈。なら、ゲームの中での友情エンドや危機を回避できずに滅んでしまうバッドエンドの未来も有り得る。未来は自分の言動一つでいくらでも変わる…それはゲームでも現実でも変わらない。
「ですが私はあえて言わせていただきますわ!悪役令嬢の未来を選ぶと!」
「この場合、悪役聖女だと思うんですが。」
「……悪役で聖女だなんて、矛盾してるわね。」
「アンナお嬢様ですから矛盾の一つや二つや三つなんて。」
リロイは私を敬いなさいよ。主の娘で聖女だなんて敬うべき存在じゃないの。
でもこの軽口を許せるくらいリロイには気を許しているのよねぇ。外ではしっかり侍女を務めているし。
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「そうと決まればまずは作戦を立てなくては。」
お茶の時間も終わり、今日は予定が無いので午後の自由時間。リロイは茶器を片付けるのに下がったので、今は自室のデスクに一人向かっている。
まずはゲームの冒頭を思い出そう。ヒロインはトリプルSこと、私シルベストリ子爵家長女のシルビアンナ・S・シルベストリ。彼女が聖女として王立魔法学園に入学するシーンから始まる。――同じ名前だとゲームのシルビアンナと私で混乱してしまいそうだし、前世の通称であるトリプルSと呼ぶことにしましょう。と言っても前世の事なんて誰にも言えないから脳内の話だけれど。
ゲームでは入学式の学園長の長い話の途中で何故入学する事になったのかという回想シーンが流れるのだけれど、学園長だとかお年を召した方の話が長いのはこの国でも同じらしいわね。トリプルSも聖女なのに回想シーンを入れる辺り話を聞いてないじゃない。私だったら勿論、話を聞かないわ。……私も現実で聖女とされている以上、トリプルSの事を悪く言えなかったわ。
まぁその回想シーンというのが王様からの手紙なのだけれど、それは先程リロイに頬に押し付けられていたあれね。ゲームでの文面と違う部分、私の病についてがあったけれど学園に通えというところは同じ。
もしもこの世界がゲームの世界だとしたら、ゲームでは日常生活などの細かいパートなんて全部ヒロインのステータスを上げるためだけのシーンで全部すっ飛ばされているのだから、ゲームではそういった本筋と関係無い部分は省略されていたのかもしれない、という仮設が立てられる。
「…でもここは私の現実なの。生まれてからの13年は、紛う事無く本物であるのよ。これだと卵が先か鶏が先か、という話になってしまうわね。」
あたしであった時から考えるのは得意じゃないせいか、頭が痛くなってきた。それでも私はあたしの時より見目麗しいと言えるし、頭脳だって良い方だ。うらやまけしからん。いや今は自分の事だった。
…いけない、思考が迷子になってしまうのはあたしの頃からの悪い癖だわ。取り敢えず、ゲームと同じように王様からの手紙が来た事までは一緒ね。
で、ええと…入学式での回想シーンの後は確か、当代の円卓の騎士の発表だった筈。
円卓の騎士は、聖女と違って神託は無い。けれど聖女降臨の神託の後に、身体の何処かに円卓の騎士の証である聖印が現れる。聖女は聖国とだけあってか、私が生まれ育ったアスタロン聖国の中からしか出現しないけれど、円卓の騎士はアスタロン聖国からだけではなく、神話に出てくる他の六つの国の中から神によって選ばれる、とされている。
因みにこの世界には小国と呼ばれる小さな国も多くあるけれど、神話にも出てくるアスタロン聖国を含めた七つの国を総称して七大国と呼ぶ…って、これは今はどうでも良かったわ。
作戦を立てようと意気込んだのに、全然進んでないじゃない。しっかりしなさい、シルビアンナ。
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