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後章

悪い予感がします!

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 フードをしっかりと被りなおしてから、お爺さんに向かって手を振り返す。

 辿り着いたお店から良い香りはするけれど、パンは一つも並んでいない。下町の木造りの長屋の中で、ここだけは耐火性のあるい石造りだ。ここは工房で、販売は別の場所でなのだろう。

 物珍しげに周囲を見回す私に、お爺さんが満面の笑顔で頭を下げる。

「良く来て下さった、貴族様! 光栄です。とっておきのパンができるまで、あちらの椅子をどうぞ」

 大歓迎と言った様子で、お爺さんが工房の入り口の椅子へと促す。
 護衛の騎士は座るわけにはいかないから、私だけ座らせてもらって、左右にジュリアとアラン、後ろにライモンドが囲むように立つ。

 修道院では気にならなかったけど、軽い雰囲気の場所だと物々しさが際立って居心地が少し悪い。迎えたお爺さんも同じ様に感じているのか、なんだか話しづらそうな顔をしている。

 最初の一言は、私から始めた方がいいかもしれない。

「私は聖女様の側に使えています。ここ暫く聖女様は過去の事で、何か悩んでいるご様子です。繊細なお立場ですから、自分から口に出せないご様子で、自ら知って力になる為に奔走しております」

 当然、これは嘘だ。先ほど歩きながら、アランと用意した。
 嘘である事は心が痛むけど、本当の事は何一つ言えないのだから仕方ない。
 聞いて歩いているのが、リーリア・ディルーカである事は教会に親しむ人に警戒されるし、教会派に知られたら大騒ぎになる。

 お爺さんがまじまじと私を見る。一応目深にフードは被っているし、目立つ紺青の髪もきちんとしまってある。簡単に気付く事は無い筈だ。でも、やっぱり観察されると緊張してきてしまう。

「お嬢さんを、何処かで見た気がするんですが、儂なんぞには分かる訳ありませんね」

 苦笑いを浮かべたお爺さんの言葉に胸を撫で下ろしたのも束の間、落胆する言葉が続く。

「聖女ソフィア様の事は、出来るだけ口外しないように修道院から頼まれてまして……」

 修道院が周到だから当然の事だろう。それでも、微かに掴んだ糸口と期待をしていたから落胆は大きい。取り繕うのも忘れて、落ち込んだ声で「仕方ないですね」と呟くと、慌ててお爺さんが首を横に振る。

「ま、待ってください。協力しますよ。だって、聖女様の為ですからね。ただ……、その、南の地区のパン屋を知っています?」
 
 突然、出てきた関係のなさそうな事柄に首を傾げる。ソフィアに何の繋がりがあるのだろうか。
 
「パン屋さんは知りません。ソフィア様と関りが?」
「いえ。ソフィア様とは関係ありません。実は、その店は貴族様から美味しいと手紙を貰ったんです。うちも味には自信があります。お嬢様に食べて頂けると話したら、息子が張り切ってまして……」

 ちらりと工房の方を見てから、お爺さんが期待を込めた眼差しで私を見る。どうやら、ソフィアの事を話す代わりに、パンを褒める一筆を求められているみたいだ。
 工房から漂う香りはとても良いし、販売店を別に持てるぐらいだから、とんでもない味のパンが出て来る事はないと思う。
 左右に控えたジュリアとアランを交互に見ると、アランがゆっくり首を振る。
 個人的には問題なかったけど、名前が出るのはやはり拙いらしい。困って髪を指でくるりと捩じると、悪戯するよな眼差しをジュリアが浮かべてお爺さんを見る。

「お嬢様は、特別な御身分ですの。だから、書く事はできませんわ。代わりに、後ろに立っている騎士が書きますわ」

 突然の指名にライモンドが、小さく抗議の声を上げる。値踏みする様な目でじっとライモンドを見て、お爺さんがため息を吐く。

「後日かぁ……。それに、その騎士様かぁ……。なんだか、華がない。せめて、騎士のお嬢さんにお願いできませんか?」

 私も色々拙いけど、ジュリアもこの国でたった二つの公爵家のご令嬢だ。名前を出せば、効果は宣伝どころではなくなる。
 お爺さんを応援するライモンド頷きを無視して、ジュリアが愛らしい声を上げる。

「地味ですけど、その男も貴族です。見習いの私と違って、先輩騎士で仲間の信頼も厚いみたいです。たくさん食べて、仲間とお店に足を運んでくれますわよ。ねぇ、私の代わりにお願いしますわ?」

 最後の一言に華が綻ぶような笑顔を添えられて、途端にライモンドが固まってしまう。アランの見立てはやっぱり正しいかもしれない。

「そちらの騎士様で我慢します。では、何でも聞いてください。子供と一緒の機会は少ないですが、毎日通っているのでお答えできる事はあると思います」

 お爺さんの言葉に小さく息を吸い込んで、少しだけ姿勢を正す。ソフィアについて分かっている事は、とても少ない。

 私と同じ十七歳。生まれは王都のシュテルン修道院で、八歳で推薦を受けて有名なシャンゼラの大修道院に移った。
 以降、修道女として経験を積み、高い魔力から年初の『新祈の儀式』で神舞を踊る巫女の一人に十五歳で選ばれる。
 そして、半年前にシャンデラでレナート王子に舞を披露して、その際に転倒して怪我をした子供を癒す『奇跡』を起こした。
 美しく優しい。慈悲深く謙虚。魔力は高く、学ぶ事にも労を惜しまない。それが、私の知るソフィアの情報だ。

「では、小さい頃のソフィア様は、どんな子でしたか? 容姿も、立ち居振る舞いも、性格も、あらゆる事が子供の頃から素晴らしかったのは本当ですか?」

 お爺さんが腕組をして、首をひねる。すぐに口にするのではなく、きちんと考えてくれる姿は期待ができそうだ。

「綺麗な顔をしていて、その点では目を引く子でしたな。立ち居振る舞いは、下町の子とは明らかに違います。ただ、あの修道院の中で特別かと言われるとね……。あそこは、大人になったら貴族に奉公する子が多くて、全員が見目も良くて、立ち居振る舞いも教育されてるんです」

 この国の教会や修道院は、神官役の教会派貴族が喜捨を集める為にある。でも、教会や修道院と民に名のっているから、必要な福祉は行う義務がある。大体、どこも最低限なのだけど、一部教育に力を入れている修道院もある。

「教育のきちんとしたシュルテン修道院の中では、ソフィア様も普通だったんですか?」
「普通というより、大人しい子でした。活発な子も多かったから、言動の方は印象が薄いんですな。でも、おっとりとした感じこそ、聖女の気品なのかもしれません。顔立ちは間違いなく一番でした」

 腕を組んで、首をひねる。人から何かを聞きだすのは難しい。今回は、具体的な着地点が自分で分かってないから尚更だ。

 カミッラ正妃は私が見習い聖女だから、ソフィアについて学べと言った。でも、本音は見習い聖女だからではないはずだ。一人前の聖女と認められる為に獲るべき手段は他にいくらでもある。
 わざわざ、生まれの場所からソフィアを知れと言ったのだから、ソフィアの経歴には知っておくべき何かがあるのだろう。

「お爺さんは、何故ソフィア様が大修道院に推薦されたと思いますか?」

 シュルテン修道院の中で、ソフィアに起きた特別。その一つが、シャンデラ大修道院への推薦だと思う。
 大修道院は、街中の教会や修道院とは異なる。国にも数カ所しかなく、貴族の子女も様々な理由で預けられる特別な場所だ。
 庶民の女の子がいない訳ではないけど、殆どが使用人として入っている。ソフィアのように巫女になるような子を私は聞いた事がない。

「推薦の理由? うーん。改めて聞かれると、どうしてだったのかね。まぁ、綺麗な子だったのが一つ。あとは、他の子と違う理由で孤児ではなかった事かな。母親は修道院で住み込みのお手伝いをしていたんだ」

 お爺さんの言葉に目を瞬く。修道院の出身だから、当然みたいにソフィアは孤児だと思っていた。
 修道院の冊子でも、生まれたての赤子に神様が祝福を授ける描写はあったけど、そこに母親の姿はなかった。だから、生まれてすぐにシュルテン修道院に預けられた子供だと理解してた。

「お母様が一緒だったのですか? どんな方だったのでしょう?」

 冊子の物語のソフィアは、何時でも一人だ。孤児だという言葉もないけど、母親の影はもっとない。
 お爺さんが懐かしそうに眼を細めて、お店の外を見る。

「イレーネ。懐かしいなぁ。国の祭りの時は、子供の手を引いて必ず出掛けてた。出掛けにパンをうちで三つ買ってくれてね」
「ソフィア様のお母様はイレーネという名前なんですね?」

 頷くお爺さんの頬が思い出に少しだけ上気する。視線が合うと、照れたように頭を掻く。

「そう。イレーネと言ってね。とても美しい人だった。雪を思わせる髪に、綺麗な紫の瞳。流し目なんか背筋が続々とするような艶があって、歩いてくると通りの男が皆立ち止って見惚れてた」

 イレーネの話は、何だか胸がざわざわとする。
 この不快な感触が私だけのものなのかを確認する為に、ジュリアとアランの表情を盗み見る。二人も何かを思うようで、複雑な色が瞳に滲んでいた。

「住み込みのお手伝いという事は、ソフィア様のお父様は?」

 修道院は身寄りのない人の為の施設だから、住み込みのお手伝いも夫を亡くして収入の厳しい寡婦である事が多い。
 言いづらそうにお爺さんが眉を顰めて、私とジュリアの顔を交互に見る。 

「いや、その、お嬢様には耳汚しの話になるよ?」
「構いません。その辺りがソフィア様の悩みの元かもしれませんから、きちんと聞かせてください」
 
 嘘の聖女様の悩みを盾に回答を迫ると、束の間考え込んだ後に渋々と言った様子でお爺さんが口を開く。

「何かの折に聞いたんだが……イレーネは元々は別の街にいたんだ。妊娠を機会に仕事ができな……やめて王都に来たらしい。父親は分からないのか、分かったけど一緒になっていないのかは知らないよ。だが、生まれた子供と一緒にシュルテン修道院に移ってきて、ここにいた間は一人のままだった」

 言葉と小冊の祖語に首をひねる。
 生まれた子供とシュルテン修道院に移ってきた? シュルテン修道院で生まれたのではない?

「ソフィアは生まれてから、シュテルン修道院に移ってきたんですか?」
「そうだよ。王子様が生まれて国中がお祭り騒ぎだったからよく覚えているよ。華やかな日の一日、イレーネが朝早く赤子と一緒に、この道をシュルテン修道院へ向かって行った。何処かの修道女がソフィアを抱いて付き添ってきてね。丁度、修道院のパンの注文が一人分増えてたから、彼女がそうなんだと思ったんだ」

 レナート王子とデュリオ王子が生まれた時、歴史上でも記録にない程のお祭り騒ぎだったという。その鮮やかな記憶の中に、パンの注文という記録が重なるのなら、お爺さんの言葉に嘘はないのだろう。

 母親の記述を曖昧にしただけでなく、生まれた場所までシュテルン修道院に変えたのは何故だろう。
 どんどん歪になっていく真実の感触に黙り込むと、気まずそうにお爺さんが立ち上がる。

「そろそろ、パンが焼けたかな」

 呟いて奥へと消える背中を見送って、護衛の三人を振り返る。
 何とも言えない表情で腕を組んで目を閉じたアランと、苦々し気な顔で口を結んだジュリア。そして、何故か一人揉み手をしたライモンド。

「聖女ソフィア様の母親が、商売女だったなんて驚きですね。男が振り返るような艶やかな美女なんて、庶民の女に早々いません。教会派が嘘を並べる理由がわかりましたね」

 ライモンドの野次馬感あふれる感想に、思わず苦笑いを浮かべる。
 娼館と呼ばれる場所があって、そういった職業があるのは知っている。だから、お爺さんの態度と濁した言葉から薄々は予感はしてた。
 ソフィアのお母様が隠された理由としても、相応に思える。でも、所々腑に落ちない。

「あの……、こういった事は良くあるんですか? 王都に来て、何処かで子供を産んで、住み込み働いて、何だかすっきりとしないんです」

 聞きづらいけど勇気を振り絞って聞いてみる。配慮ある大人のアランに。
 でも、答えたのはライモンドだ。

「ありますよ。貴族の男を脅しに来る女は案外います。大概は嘘だったりするんですけどね。まぁ、稀にそのまま妾に納まる者もいるから、引きも切らないんですけどね」

 得意げに言ったライモンドを、ジュリアが冷え冷えとした眼差しで見る。

「よくご存じですのね? 足しげく通っていらっしゃるようですわ」
「いやいや。通ってなんかないから! 高級娼館なんていくらかかる……、いえ。そうじゃなくて、まぁ、仕事柄色々な所に踏み込みますから、ね、ね、アラン殿」

 必死で言い訳をするライモンドと、ジュリアはもう目も合わせない。とばっちり的な巻き込まれ方をした、アランは息を吐いてゆっくり目を開ける。

「ライモンドの日常はさておき。イレーネが上手くいきすぎている事が気になってらっしゃるんでしょう?」

 アランは察しが早い。
 パン屋のお爺さんは、イレーネの相手は見つかっていないと言ってた。相手が見つからないなら援助を受ける当てがないという事だ。
 修道院の住み込みは、食事と住まいが保証されているから希望者が少なくない。誰の援助もなく他の街から来た女性が、簡単に得られる職じゃないと思う。
 私が頷くのを確認して、アランが再び口を開く。

「伝手がなければ、簡単には行きません。父親に会えたか、会えなかったかよりも、誰が援助をしたのかを考えた方が良いでしょう。当時のシュルテン修道院の神官を務めた貴族。または、聖女ソフィア様が本当にお生まれになった修道院の貴族を当たってはいかがですか?」

 その言葉に頷いて、ジュリアを見ると直ぐに頷き返してくれる。

「シュルテン修道院の方はすぐに調べられますわ。お生まれになった方も場所が分かれば、確認致します」

 教会派の貴族の事はジュリアに任せれば間違いないだろう。
 こうして人と話すと、少し頭が整理されて次にすべきこ事が見える。

「もう一度、お爺さんが戻ってきたら、生まれた修道院を聞いてみましょう。あとは、イレーネの今も気になります」

 今のイレーネについて、誰か何か知らないかと言いかけた所で、お爺さんが戻って来る足音が聞こえた。
 その手には大きな紙袋を二つ抱えて、何だかとても嬉しそうだ。まだ温かいパンの袋が私とジュリアに渡される。中にはたくさんパンが入っていて、一人ではとても食べきれそうにない。

「これが息子の自慢のパンです。感想を楽しみにしてますよ。それから、申し訳ないのですが、販売店にパンを届けなくてはいけないんです。質問もそろそろ終わりでいいですか?」

 気になる事がまだあるけど、次にすべき事も見えたから一度切り上げてもいいのかもしれない。
 眉を困った風に下げたお爺さんに微笑んで頷く。

「分かりました。では、最後に二つだけ教えてください。一つ目ですが、ソフィア様がお生まれになった修道院は聞いていますか?」

 おじいさんが首を横に振る。小さく肩を落として二つ目の質問に移ろうとしたら、ライモンドが頭上で私に質問の許可を求めてきた。やや発言に不安はあるけど、頷いて許可する。
 ついでにジュリアの反応を窺う。ライモンドが何かするたびに、ジュリアの好感度が下がっていくから気になってしまう。

「イレーネは修道女と一緒に来たんだな? ならば、ケープの模様を覚えてないか? 全ての修道院とは限らないが、幾つかの修道院はケープにシンボルを編みこんでいるんだ」

 意外な博識にジュリアが目を瞬く。ほんの少し戻った好感度に安堵して、ライモンドに微笑みかける。

「凄いですね。そんな細かい知識、良くご存知でしたね」
「修道女、好きなんですよ。清楚な女性っていいですから」
 
 せっかく上がりかけた好感度が、あっという間に下がるのを空気で感じた。グレゴーリ公爵は優秀だけど、ジュリアとライモンドの組み合わせだけは失敗だと思う。
 こめかみを揉むように考え込んでいたお爺さんが、ハッとしたように顔を上げる。

「百合……。自信はないけど、百合だった気がします」

 その言葉に、修道女が好きというライモンドを見る。首を横に振ったから、百合を記しにした修道院はないという事だろう。頷いて、最後の質問を口にする。

「では、イレーネ様は今どうしているかご存知ですか? 連絡が――」
「イレーネは亡くなったと聞いています。シャンデラに家族で移って程なく、物取りに入られて……」

 イレーネが亡くなっている。
 水の中に黒いインクを落としたように、嫌な不安が胸の中に広がっていく。
 何かと何かが結び付くわけじゃない。結び付ける程の情報がある訳じゃない。でも、まるでなかった事のようにされているイレーネ、彼女が物取りで亡くなるなんて嫌な想像が頭を過ぎる。

 おじいさんに丁寧に礼を言って、お代を払ってお店を後にする。
 騎士団が利用できる車寄せまで、護衛に囲まれて歩く。昼過ぎだからなのか、大通りの方から聞こえるざわめきは来た時よりもずっと大きい。
 
 ソフィアはシュルテン修道院ではなく、別の修道院の生まれだった。
 母はイレーネ、彼女は王都の何処かにいるソフィアの父親を求めてやってきた。
 イレーネには、彼女を援助した誰かがいる。シュルテン修道院の当時の貴族か、子供を生んだ修道院の貴族。
 彼らが父親の可能性もあるけど、何故名乗り出ないのだろう?
 やはりイレーネとの関係を隠したいから?
  
「リーリア様、さっきの話を思ってらっしゃいますの?」

 じっと黙り込んだ私の顔を、横に並んだジュリアが覗き込む。帰りはジュリアが私の隣だ。

「はい。なんだか気になるんです。もう少し調べてみたいです」
「そうですね。私もなんだか気になってますわ。イレーネが亡くなっているのが、特に嫌な感じがしますの」

 やっぱりジュリアも同じみたいだ。
 馬車が見えてきて、次は何処へ行こうかと考える。図書館へ行って、入れ替わりの事を調べてみようか。

 表通りから聞こえていたざわめきが、大きな歓声に変わって足を止める。

「何でしょう? 歓声? 今日は何かあるのですか?」
 
 歓声は途切れることなく響いて、次第にこちらに近づく様に大きくなっていった。
 ジュリアが柔らかそうな頬を少しだけ膨らませる。

「レナート王子ですわ。ラントの街で虚鬼が出ておりますから、その討伐に行くんですの」

 弾かれるように通りへと向かって駆けだす。

「リーリア!」
「「リーリア様、お待ちください」」

 後ろからジュリアの叫ぶ声と、アランとライモンドの呼ぶ声が聞こえたけど、足を止める事は出来なかった。

 私とデュリオ王子が行くと言ったのに。デュリオ王子が止めると約束してくれたのに。
 なぜ、レナート王子が出立してしまうの?
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