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後章
脚色はほどほどにして!
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質素な馬車が、明るい物売りの声が飛び交う下町を駆けていく。
護衛の騎士たちとの簡単な挨拶を終えた後、私は早速ソフィアが生まれた修道院を目指した。
お忍びの小さな馬車の御者台には我が家の御者とライモンド、従者台にはアレンがそれぞれマントで騎士服を隠して乗っている。二人は旧国の出身で、お父様の警備を担当した事もある、とても心強い人選だった。
馬車の中に同乗したジュリアが、向き合う位置に座って今後の警備の説明をしてくれる。
「常に三人でお側に付きます。最年長のアランが護衛隊長ですわ。経験豊富で優秀な騎士で、人望もありますから頼りにしてください。でも、基本お側につくのは、わたくしになります。女性同士ですから、何処でもご一緒できます。ライモンドは……下っ端とでも思て下さいませ」
ライモンド一人、なんだか剣呑な扱いである事に目を瞬く。いきなり、同僚の騎士と上手くいっていないのなら少し心配だ。
「ライモンドとジュリア様は――」
「私の事は、ジュリアとお呼びくださいませ。爵位はわたくしの方が上ですが、今は騎士としてお仕えする立場です。これは、公のマナーですわ」
言葉を遮った正しい指摘に黙り込む。長年沁みついた習慣もあって、敬称なしは非常に呼びづらい。眉を寄せた私の顔を覗き込んで、ジュリアが柔らかく微笑む。
「では、お友達としてならいかが? わたくしも任務外なら、リーリアと呼ぶ事にしますわ」
「それなら、もちろん喜んで。ジュリア」
早速、「様」を外して呼ぶ。何だか、一層距離が縮まった気がして嬉しい。
再び、ライモンドとの関係を確認しようと口を開くと、遮るようにジュリアが手を上げる。
「シュテルン修道院に行く理由を聞いても宜しい? 後の予定も決まっているなら知っておきたいですわ」
さて、何処まで話すべきだろうか。『廃太子』については、友達であっても、私の騎士であっても言うべきではないだろう。話せる事と話せない事を一度頭で整理してから口を開く。
「『聖女』の立場に戸惑っていたら、ご助言を頂いたんです。同じ聖女であるソフィア様について学ぶ事で、気持ちの整理が付くのではないかと」
綺麗な顎を軽く握った拳て叩きながら、ジュリアが小首を傾げる。
「お仕事について、先達の言葉や行動を学ぶのは基本ですわね。でも、シュテルン修道院は役に立たないかもしれませんわ。ここ数か月で、何度も修道院長が変わっていますの。アベッリ公爵は馬鹿みたいな脚色がお好きでしたから、都合の良い物語を語る場になっていると思いますわ」
ジュリアの言葉に腕を組んで唸る。
アベッリ公爵は、教会を通じて『悪女』『魔女』と私の悪評を流していた。ソフィアについても同じように……、聖女の場合は逆に人の心を掴む脚色をして流している可能性は確かに高い。
考え込んでいるうちに、馬車の速度が落ちる。時折、聞こえていた物売りの声も消えていた。馬車のカーテンを微かにずらして、ジュリアが窓の外を確認する。
やっぱり、聖女所縁の地を巡る者がいるらしい。相応の身分を思わせる馬車が、教会の前に何台か止まっているという。
「どうなさいますか、リーリア様? お降りになるならば、フードは被って下さいませ。聖女を求める者の前に、もう一人の聖女が現れたら大騒ぎですわ」
頷いてフードのあるマントを羽織る。薄手の品だから、この時期でも違和感はない。
「折角なので、行ってみましょう。作り話を知っておくのも悪くありません」
ソフィアに関しては、王都ではここ以外に当てがない。
修道院長は変わっても、全員が入れ替わっている訳ないだろう。運よく古顔の人から、何か話を聞けたらいいのにと思う。
他から離れた場所に留めた馬車から降りると、赤茶色の修道院を仰ぎ見る。
所々にあるひび割れが、歴史を主張する古い教会。それに繋がるやや歴史の浅い建物。シュテルン修道院は元々あった教会に、居住できる建物を追加して修道院を名乗るようになったのだろう。
教育と神聖性を重んじる有名な大修道院とは異なり、下町の修道院は病院や孤児院を兼ねる各地区の福祉施設の意味合いが強い。セラフィン王国の発展と共に転身した場所は、国中に幾つもある。
ジュリアとアランとライモンド。三人の騎士に囲まれて、教会ではない居住棟の裏口に向かう。ドアを叩こうとしたら、先に修道着に身を包む女性が扉を開けて出てきた。
「今日は随分と早く――」
誰かと間違えて言いかけた言葉を、物々しい私達を見て飲み込む。怪訝な表情で身を引いた姿に、ジュリアが笑顔で進みでる。
「ご安心ください。我々は騎士団の者です。聖女様について学びたい特別な方の護衛をしてまいりました」
「護衛」という言葉に、先ほどとは違う緊張を修道女が纏う。私達四人を一人一人を確認する様に見た瞳が、フードを被った私で止まる。
「『魔女』……? あっ、いえ。第二聖女のリーリア・ディルーカ様でございますか?」
まだ、教会では私に対して『魔女』の名前が先に出てくるらしい。騎士が付くまで行動を控えろと言われた理由が分かった気がする。
溜息を堪えてフードを外すと、『聖女』の印象を残せるような穏やかな笑顔を浮かべる。
「宜しければ、中で聖女ソフィア様についてお話を聞かせてください」
「でも、今は修道院長様がいないんです。表の教会に集まった方々へお話をしていて……」
戸惑うように視線を泳がせる修道女を無視して、ライモンドが室内に足を踏み入れる。
「第二王子の婚約者であり、もう一人の聖女様のお忍びです。断るなんて論外ですし、いつまでも立たせたままなどありませんよね?」
圧のあるライモンドの囁きに、弾かれるように修道女が頷く。促されて室内に入ると、遠くから子供の声が聞こえてきた。そのまま入ってすぐの小さな一室に案内される。
小さいけれど花が飾られて調度品も揃っている部屋は、外からの来客用なのだろう。進められたソファーに座ると、修道女が一冊の小冊をおずおずと言った様子で机の上に差し出す。
「こちらは、寄付のお礼に教会でお配りしている品です。聖女様の生い立ちや『奇跡』などをまとめてございます。修道院長様が行う聖女様のお話と全く同じ内容となっております」
小さく頭を下げてから、小冊を受け取る。
背表紙や裏表紙がない小冊だけど、仰々しい文字で『奇跡の物語』と題が記されていた。最初の頁を捲ってみると、ソフィアが起こした奇跡が順番に書かれている。
その次の頁からソフィアの生い立ちが始まるのだけど、いきなり一人の赤子が神様の祝福を受ける場面が書かれていた。
小冊の記述を全て嘘というつもりはない。でも、流石にこの出だしなら、全編に脚色が色濃い事は間違いない。小冊を閉じて、修道女を見る。
「素晴らしい内容は、後ほどゆっくり確認いたします。折角なので、今日はソフィア様と同じ時を過ごした方から直接お話を聞いてみたいです」
「そ、それは無理でございます。ソフィア様の件は、修道院長様が全て対応するように指示が……」
なかなか了承を得られそうにない雰囲気に眉を顰めると、横からライモンドが口を挟む。
「リーリア様は、修道院長ではなくソフィア様と共に過ごした者をお望みだ。ここに誰か残っていないのか?」
修道女がライモンドではなく私を見て、胸元で拳を不安そうに握りしめる。
「いないわけではないのですが……。修道院長様だけと……」
怯えた様子をまずは宥めようと微笑んだのに、またライモンドが横から言葉を攫ってしまう。
「修道院長様の話など、作り話であろう? その冊子など、出だしから現実離れしていたぞ。リーリア様は今後の参考に、本当のソフィア様をお知りになりたいのだ。いいか? リーリア様のお願いは、第二王子デュリオ様の命令だ。至急、適切な人物を用意してくれ」
苛立ちを見せた言葉に、弾かれるように修道女が一礼して席を立つ。ドアが閉じて足音が遠ざかると、少し厳しい顔でライモンドを仰ぎ見る。
ここにきて彼がやや高圧的な態度をとるのは二度目だ。教会派の不安定な状況に気勢を上げる旧国派がいる話は聞いている。ライモンドがそういう人物ならば、きちんと釘を刺しておかなくてはいけない。
「私な護衛では、高圧的な態度はお辞め下さい。また、デュリオ王子のお名前も出さないで下さい。教会派との均等が危うい今、言動に注意が必要なんです」
反省の気配なく軽い調子で頷いたライモンドが、身を乗り出して小冊の裏表紙の一端を指す。そこには小さくだけど編者として、グレイ・ローランドの名前があった。
「以後、気を付けます。しかし、ここに怪しい教会派のお抱え芸術家の名前があります。ふざけた出だしの文章からも、小冊はあの変人の作った嘘の物語です。教会派は、これを公式として頒布しているんです。少し高圧的に出なければ、真実なんて出てきませんよ」
騎士団は罪がある者を捕らえるのが仕事だから、高圧的なやり方も一つ手段なのだろう。
でも、今回は私の個人的な活動で、相手は罪のある人じゃない。思い通りに行かないから、必要だからと言って、権力をちらつかせるのは間違っている。
小さくため息を吐いて、もう一度注意をと顔を上げると、ジュリアの舌打ちが聞こえた。
「貴方、お馬鹿さんですの? 体の大きい騎士が威圧的な態度をとれば、女性なら誰だって怯えます。相手は罪人ではなく、罪もない修道女でしたのよ。短絡的な対処を当然と考えるなんて、騎士以前に男として恥じを知りなさい」
一瞬言葉に詰まった様に息を飲んだライモンドが、すぐに頬に朱を登らせて苛立ちの気配を見せる。
「流石は教会派のお姫様だ! 教会派を庇うんですね。困りますね。職責を忘れてはいけませんよ。貴方は今、ご令嬢ジュリアではなくて、リーリア様の騎士ジュリアでしょう?」
「わたくし、自分の立場を忘れてたことはありませんわ。駆け引きには自信がありますの。貴方がしゃしゃり出なければ、怯えさせることもなく穏便に事態を動かしましてよ?」
「駆け引き? そうですよね! 貴方は随分と猫を被ってらしたようだ!」
一発触発。そんな空気を漂わせてジュリアとライモンドが睨み合う。
止めなければと立ち上がろうとした私の肩を抑えて、アランがフードを頭にそっと被せる。束の間、扉が開いて重ねた木箱を抱えた人物が部屋の中へと入ってきた。
「いやぁ。今日は遅くなってしまった。申し訳ないねぇ。いつも通り……おや? おやおや? 客人でしたか? これは、失礼しました」
ほんのりと香ばしい香りを漂わせる木箱を抱えた老人が、皺だらけの顔に笑顔を浮かべる。アランが老人の元に進み出て、木箱の半分を受け取ると如才ない笑顔を返す。
「修道女様は今、出てしまっていてね。これは修道院への納品ですかな? 見ればすぐに、どちらの品かか分かるのかな?」
「えぇ。毎日、届けている食事のパンです。ずっとのお付き合いだから、箱を見ただけでうちと分かるでしょうよ」
空いている別の机にアランが木箱を降ろすと、老人も木箱を同じ場所に下ろす。荷物から解放された腕を気持ち良さそうに回した老人が、フードを被った私を見て真っ白な髪を掻きながら慌てて頭を下げる。
「これは、どうやら身分の高いお客様だったようですな。気付かずに申し訳ない。後で、修道女様からお叱りを受けましょう」
私を見つめる意味ありげなアランの視線に小さく頷く。
商売人は簡単には店の場所を変えたりしない。この年齢で修道院との付き合いが長いというなら、ソフィアがここにいた時からパンを届けに来ていた可能性がある。
「とても良い匂いがして美味しそうです。貴方のパンで、どのくらい子供たちを育ててきたのですか?」
私の言葉にパンを届けた老人が、はにかむような笑顔を浮かべる。
「高貴な身分の方に美味しそうと言われたら照れますね。でも、うちのパンは本当に旨いですよ。最近は大半を息子に任せてますが、ここだけは三十年欠かさずに儂が作っております」
胸の前で一度手を打って、小さな糸を更に手繰り寄せる。
「では、聖女様も食べたパンなのですね。折角ですから、帰りに私も同じものを買い求めたいです。お店の場所を、そこの者に教えて頂けますか?」
アランがお店の場所を聞きながら、老人を送り出す為に外に出ていく。
暫くして戻ったアランは、老人の店が直ぐ近くにある事と、修道院のお使いで聖女の母と老人に交流があった事を教えてくれた。
移動の相談をしていると、修道女が私達とそう変わらない年齢の少女を連れて戻ってきた。
ソフィアがここにいたのは八歳までだ。年齢的にも変わらなければ、記憶なんて殆ど覚えていないだろう。それに、これだけ戻るのに時間が掛かったのだ。受け答えの仕込みも、しっかりされている筈だ。
半ば、答えを諦めつつ緊張した面持ちの少女に質問する。
「ソフィア様とは、親しかったのですか?」
「はい。ソフィア様は私みたいな者にでも、いつでも女神様の様に優しくして下さりました!」
想像通りの言葉に苦笑いが浮かぶのを抑える。
その後も、色々聞いたけど、小さな奇跡を感じる逸話や、聖女らしい穏やかで優しい性格。八つでシャンデラの修道女に推薦されるまで、渡された小冊に沿った内容だった。
ため息交じりにお礼を言って、シュテルン修道院を辞去する。
ここはもう、本当のソフィアを知れる場所ではなく、教会派が作った『聖女ソフィア』を宣伝する為の場所なのだろう。
少しだけ馬車で移動した後、徒歩で来た道を戻るように老人の店を目指す。
表通りの喧騒が微かに聞こえる裏通りを、今後の相談と言って隣に立ったアランと歩く。白髪の目立つ熟練の騎士は、いち早く老人が来たことに気づいた。私が思っている以上に、優秀な人物なのだと思う。
「アラン。ジュリアへの騎士たちの反応はどうなのでしょう?」
馬車の中でジュリアのライモンドに対する言葉には棘があった。修道院ではライモンドはジュリアへの反感を顕にした。
不安を口にした私に、人の良さそうな顔でアランが笑いかける。
「令嬢としてのジュリアの人気は高いですから、着任には多くの者が喜んでおります。しかし、ライモンドの様な複雑な感情を持つ者も一部います」
その言葉にじっと考え込む。
教会派からの私につく事への批判は想定して対応も考えていた。でも、旧国派が不満を抱く事は想定外だ。
旧国派は実力主義の考えが強いけど、私の護衛という限定的な任務は誰かの地位を脅かすとは思えない。それに、女性であるという動かしがたい理由もある。
「複雑とは、どういうことですか?」
「まぁ、旧国派は教会派の躍進人物を叩く傾向が強いんです。苦労人が多いのでやっかみ半分なんですけどね。ほら、ライモンドはローランド男爵に批判的だと思いませんでしたか?」
確かに、ライモンドは先ほども「怪しげな」とか何処となく冷たい表現を使っていた。
アランが苦笑いを浮かべて言葉を続ける。
「地方貴族の跡取り養子が領地を放棄してふらふらしているとか、古今東西の芸術を取り入れた作品は模倣とか。近年で一番の教会派躍進人物のローランド男爵には、辛辣な声を若い旧国派騎士からよく聞きます」
グレイ本人も以前に、新鋭の芸術家で名が売れているから恨みを買っていると言っていた。数年で急速に人気を得て、教会派のお抱え的な立場まで上り詰めた躍進は確かに目立ち過ぎたと思う。
でも、独創的とは言えないけど器用で繊細な作品は、私は好きだし売れるのは納得だと思う。
ただ、付き合って分かったけど、礼儀知らずで奔放で性格には大きな問題がある。新鋭だからとか教会派だからというよりも、性格で叩かれている気がしてならない。
「グレイは癖のある人ですから、ジュリアと比べるのは腑に堕ちません」
私の指摘にアランが笑いだす。驚いた様に先を行くジュリアが振り返って、訝しむような眼差しを向ける。 そんなジュリアに、アランが手を何でもないと手を振る。
「確かに彼と比べるのはジュリアに失礼ですかな。後はあれですね。好意が転じてというやつです。『恋』や『愛』は、時に『疎ましさや』『憎悪』に転じます。ジュリアは人気がありましたから、憧れていた者が多い。姿が変わった事、自分よりも強いかもしれない事で厄介で複雑な感情を抱えてるんでしょう」
愛情が一回りしてというのは、確かに物語などで聞くことがある。正直、私にはよくわからない。
「憧れは、憧れのままで。好きなら、好きのままでいい。私はそう思うですが……。そうはいかないものなのでしょうか?」
眉根を寄せて首を傾げて尋ねると、通りの向うから十歳前後の子供たち駆けてきた。ジュリアの目配せで、アランが私を壁際へいざなって、大きな背に庇うように立つ。
目の前を足の速い女の子が過ぎていって、追いかける男の子が「ブス」と叫ぶ。過ぎていく子供たちを揶揄うような顔で見つめたアランが、私を振り返って肩を竦める。
「リーリア様は、まだまたお若い。深く複雑な男女の心情は苦手の様ですね。騎士は強い事が誇りです。だから、愛らしければ守ってあげたい。だからこそ、負ける事は非常に悔しい。転じると言っても、騎士は単純な者が多いです。好意が転じてと言っても、男の子が好きな子に意地悪するのを拗らせた程度ですよ」
思わず腕を組んで王都の青空を見上げる。
さっきの、ライモンドの得意げな態度がジュリアに向けてだったら? 窘められた反発の根底にジュリアへの好意あったら?
男の子が好きな子に意地悪するのに似てなくもないけど、納得とはならない。分からない事に溜め息をつく。
「私、恋とか愛って苦手なんだと思います。あまり向き合ってこなかったんです。アランの言う通り、好意があるなら、何処かで和解できるでしょうか? 私に出来る事があれば教えてください。ジュリアを応援しているから、物理的には守って貰う立場ですけど、精神的には守ってあげたいんです」
真剣な顔で伝えると、アランが優しい眼差しで前をあるくジュリアの背を見つめる
「今は、手出しは無用です。ジュリアは、騎士として生きたいと名言しました。覚悟を感じましたから、自身の手で騎士としての居場所を手にした方が良いんです。騎士は強い者が偉い。それは剣だけではなく、精神もです。リーリア様は、お友達として愚痴でも聞いて差し上げて下さい」
頷いて、そのまま今後の警備について相談を重ねて歩く。
暫くすると、修道院と同じ香ばしいパンの香りが漂ってきた。角を曲がると私たちの訪れを待っていたかのように、店先に立っていた老人が大きく手をふった。
護衛の騎士たちとの簡単な挨拶を終えた後、私は早速ソフィアが生まれた修道院を目指した。
お忍びの小さな馬車の御者台には我が家の御者とライモンド、従者台にはアレンがそれぞれマントで騎士服を隠して乗っている。二人は旧国の出身で、お父様の警備を担当した事もある、とても心強い人選だった。
馬車の中に同乗したジュリアが、向き合う位置に座って今後の警備の説明をしてくれる。
「常に三人でお側に付きます。最年長のアランが護衛隊長ですわ。経験豊富で優秀な騎士で、人望もありますから頼りにしてください。でも、基本お側につくのは、わたくしになります。女性同士ですから、何処でもご一緒できます。ライモンドは……下っ端とでも思て下さいませ」
ライモンド一人、なんだか剣呑な扱いである事に目を瞬く。いきなり、同僚の騎士と上手くいっていないのなら少し心配だ。
「ライモンドとジュリア様は――」
「私の事は、ジュリアとお呼びくださいませ。爵位はわたくしの方が上ですが、今は騎士としてお仕えする立場です。これは、公のマナーですわ」
言葉を遮った正しい指摘に黙り込む。長年沁みついた習慣もあって、敬称なしは非常に呼びづらい。眉を寄せた私の顔を覗き込んで、ジュリアが柔らかく微笑む。
「では、お友達としてならいかが? わたくしも任務外なら、リーリアと呼ぶ事にしますわ」
「それなら、もちろん喜んで。ジュリア」
早速、「様」を外して呼ぶ。何だか、一層距離が縮まった気がして嬉しい。
再び、ライモンドとの関係を確認しようと口を開くと、遮るようにジュリアが手を上げる。
「シュテルン修道院に行く理由を聞いても宜しい? 後の予定も決まっているなら知っておきたいですわ」
さて、何処まで話すべきだろうか。『廃太子』については、友達であっても、私の騎士であっても言うべきではないだろう。話せる事と話せない事を一度頭で整理してから口を開く。
「『聖女』の立場に戸惑っていたら、ご助言を頂いたんです。同じ聖女であるソフィア様について学ぶ事で、気持ちの整理が付くのではないかと」
綺麗な顎を軽く握った拳て叩きながら、ジュリアが小首を傾げる。
「お仕事について、先達の言葉や行動を学ぶのは基本ですわね。でも、シュテルン修道院は役に立たないかもしれませんわ。ここ数か月で、何度も修道院長が変わっていますの。アベッリ公爵は馬鹿みたいな脚色がお好きでしたから、都合の良い物語を語る場になっていると思いますわ」
ジュリアの言葉に腕を組んで唸る。
アベッリ公爵は、教会を通じて『悪女』『魔女』と私の悪評を流していた。ソフィアについても同じように……、聖女の場合は逆に人の心を掴む脚色をして流している可能性は確かに高い。
考え込んでいるうちに、馬車の速度が落ちる。時折、聞こえていた物売りの声も消えていた。馬車のカーテンを微かにずらして、ジュリアが窓の外を確認する。
やっぱり、聖女所縁の地を巡る者がいるらしい。相応の身分を思わせる馬車が、教会の前に何台か止まっているという。
「どうなさいますか、リーリア様? お降りになるならば、フードは被って下さいませ。聖女を求める者の前に、もう一人の聖女が現れたら大騒ぎですわ」
頷いてフードのあるマントを羽織る。薄手の品だから、この時期でも違和感はない。
「折角なので、行ってみましょう。作り話を知っておくのも悪くありません」
ソフィアに関しては、王都ではここ以外に当てがない。
修道院長は変わっても、全員が入れ替わっている訳ないだろう。運よく古顔の人から、何か話を聞けたらいいのにと思う。
他から離れた場所に留めた馬車から降りると、赤茶色の修道院を仰ぎ見る。
所々にあるひび割れが、歴史を主張する古い教会。それに繋がるやや歴史の浅い建物。シュテルン修道院は元々あった教会に、居住できる建物を追加して修道院を名乗るようになったのだろう。
教育と神聖性を重んじる有名な大修道院とは異なり、下町の修道院は病院や孤児院を兼ねる各地区の福祉施設の意味合いが強い。セラフィン王国の発展と共に転身した場所は、国中に幾つもある。
ジュリアとアランとライモンド。三人の騎士に囲まれて、教会ではない居住棟の裏口に向かう。ドアを叩こうとしたら、先に修道着に身を包む女性が扉を開けて出てきた。
「今日は随分と早く――」
誰かと間違えて言いかけた言葉を、物々しい私達を見て飲み込む。怪訝な表情で身を引いた姿に、ジュリアが笑顔で進みでる。
「ご安心ください。我々は騎士団の者です。聖女様について学びたい特別な方の護衛をしてまいりました」
「護衛」という言葉に、先ほどとは違う緊張を修道女が纏う。私達四人を一人一人を確認する様に見た瞳が、フードを被った私で止まる。
「『魔女』……? あっ、いえ。第二聖女のリーリア・ディルーカ様でございますか?」
まだ、教会では私に対して『魔女』の名前が先に出てくるらしい。騎士が付くまで行動を控えろと言われた理由が分かった気がする。
溜息を堪えてフードを外すと、『聖女』の印象を残せるような穏やかな笑顔を浮かべる。
「宜しければ、中で聖女ソフィア様についてお話を聞かせてください」
「でも、今は修道院長様がいないんです。表の教会に集まった方々へお話をしていて……」
戸惑うように視線を泳がせる修道女を無視して、ライモンドが室内に足を踏み入れる。
「第二王子の婚約者であり、もう一人の聖女様のお忍びです。断るなんて論外ですし、いつまでも立たせたままなどありませんよね?」
圧のあるライモンドの囁きに、弾かれるように修道女が頷く。促されて室内に入ると、遠くから子供の声が聞こえてきた。そのまま入ってすぐの小さな一室に案内される。
小さいけれど花が飾られて調度品も揃っている部屋は、外からの来客用なのだろう。進められたソファーに座ると、修道女が一冊の小冊をおずおずと言った様子で机の上に差し出す。
「こちらは、寄付のお礼に教会でお配りしている品です。聖女様の生い立ちや『奇跡』などをまとめてございます。修道院長様が行う聖女様のお話と全く同じ内容となっております」
小さく頭を下げてから、小冊を受け取る。
背表紙や裏表紙がない小冊だけど、仰々しい文字で『奇跡の物語』と題が記されていた。最初の頁を捲ってみると、ソフィアが起こした奇跡が順番に書かれている。
その次の頁からソフィアの生い立ちが始まるのだけど、いきなり一人の赤子が神様の祝福を受ける場面が書かれていた。
小冊の記述を全て嘘というつもりはない。でも、流石にこの出だしなら、全編に脚色が色濃い事は間違いない。小冊を閉じて、修道女を見る。
「素晴らしい内容は、後ほどゆっくり確認いたします。折角なので、今日はソフィア様と同じ時を過ごした方から直接お話を聞いてみたいです」
「そ、それは無理でございます。ソフィア様の件は、修道院長様が全て対応するように指示が……」
なかなか了承を得られそうにない雰囲気に眉を顰めると、横からライモンドが口を挟む。
「リーリア様は、修道院長ではなくソフィア様と共に過ごした者をお望みだ。ここに誰か残っていないのか?」
修道女がライモンドではなく私を見て、胸元で拳を不安そうに握りしめる。
「いないわけではないのですが……。修道院長様だけと……」
怯えた様子をまずは宥めようと微笑んだのに、またライモンドが横から言葉を攫ってしまう。
「修道院長様の話など、作り話であろう? その冊子など、出だしから現実離れしていたぞ。リーリア様は今後の参考に、本当のソフィア様をお知りになりたいのだ。いいか? リーリア様のお願いは、第二王子デュリオ様の命令だ。至急、適切な人物を用意してくれ」
苛立ちを見せた言葉に、弾かれるように修道女が一礼して席を立つ。ドアが閉じて足音が遠ざかると、少し厳しい顔でライモンドを仰ぎ見る。
ここにきて彼がやや高圧的な態度をとるのは二度目だ。教会派の不安定な状況に気勢を上げる旧国派がいる話は聞いている。ライモンドがそういう人物ならば、きちんと釘を刺しておかなくてはいけない。
「私な護衛では、高圧的な態度はお辞め下さい。また、デュリオ王子のお名前も出さないで下さい。教会派との均等が危うい今、言動に注意が必要なんです」
反省の気配なく軽い調子で頷いたライモンドが、身を乗り出して小冊の裏表紙の一端を指す。そこには小さくだけど編者として、グレイ・ローランドの名前があった。
「以後、気を付けます。しかし、ここに怪しい教会派のお抱え芸術家の名前があります。ふざけた出だしの文章からも、小冊はあの変人の作った嘘の物語です。教会派は、これを公式として頒布しているんです。少し高圧的に出なければ、真実なんて出てきませんよ」
騎士団は罪がある者を捕らえるのが仕事だから、高圧的なやり方も一つ手段なのだろう。
でも、今回は私の個人的な活動で、相手は罪のある人じゃない。思い通りに行かないから、必要だからと言って、権力をちらつかせるのは間違っている。
小さくため息を吐いて、もう一度注意をと顔を上げると、ジュリアの舌打ちが聞こえた。
「貴方、お馬鹿さんですの? 体の大きい騎士が威圧的な態度をとれば、女性なら誰だって怯えます。相手は罪人ではなく、罪もない修道女でしたのよ。短絡的な対処を当然と考えるなんて、騎士以前に男として恥じを知りなさい」
一瞬言葉に詰まった様に息を飲んだライモンドが、すぐに頬に朱を登らせて苛立ちの気配を見せる。
「流石は教会派のお姫様だ! 教会派を庇うんですね。困りますね。職責を忘れてはいけませんよ。貴方は今、ご令嬢ジュリアではなくて、リーリア様の騎士ジュリアでしょう?」
「わたくし、自分の立場を忘れてたことはありませんわ。駆け引きには自信がありますの。貴方がしゃしゃり出なければ、怯えさせることもなく穏便に事態を動かしましてよ?」
「駆け引き? そうですよね! 貴方は随分と猫を被ってらしたようだ!」
一発触発。そんな空気を漂わせてジュリアとライモンドが睨み合う。
止めなければと立ち上がろうとした私の肩を抑えて、アランがフードを頭にそっと被せる。束の間、扉が開いて重ねた木箱を抱えた人物が部屋の中へと入ってきた。
「いやぁ。今日は遅くなってしまった。申し訳ないねぇ。いつも通り……おや? おやおや? 客人でしたか? これは、失礼しました」
ほんのりと香ばしい香りを漂わせる木箱を抱えた老人が、皺だらけの顔に笑顔を浮かべる。アランが老人の元に進み出て、木箱の半分を受け取ると如才ない笑顔を返す。
「修道女様は今、出てしまっていてね。これは修道院への納品ですかな? 見ればすぐに、どちらの品かか分かるのかな?」
「えぇ。毎日、届けている食事のパンです。ずっとのお付き合いだから、箱を見ただけでうちと分かるでしょうよ」
空いている別の机にアランが木箱を降ろすと、老人も木箱を同じ場所に下ろす。荷物から解放された腕を気持ち良さそうに回した老人が、フードを被った私を見て真っ白な髪を掻きながら慌てて頭を下げる。
「これは、どうやら身分の高いお客様だったようですな。気付かずに申し訳ない。後で、修道女様からお叱りを受けましょう」
私を見つめる意味ありげなアランの視線に小さく頷く。
商売人は簡単には店の場所を変えたりしない。この年齢で修道院との付き合いが長いというなら、ソフィアがここにいた時からパンを届けに来ていた可能性がある。
「とても良い匂いがして美味しそうです。貴方のパンで、どのくらい子供たちを育ててきたのですか?」
私の言葉にパンを届けた老人が、はにかむような笑顔を浮かべる。
「高貴な身分の方に美味しそうと言われたら照れますね。でも、うちのパンは本当に旨いですよ。最近は大半を息子に任せてますが、ここだけは三十年欠かさずに儂が作っております」
胸の前で一度手を打って、小さな糸を更に手繰り寄せる。
「では、聖女様も食べたパンなのですね。折角ですから、帰りに私も同じものを買い求めたいです。お店の場所を、そこの者に教えて頂けますか?」
アランがお店の場所を聞きながら、老人を送り出す為に外に出ていく。
暫くして戻ったアランは、老人の店が直ぐ近くにある事と、修道院のお使いで聖女の母と老人に交流があった事を教えてくれた。
移動の相談をしていると、修道女が私達とそう変わらない年齢の少女を連れて戻ってきた。
ソフィアがここにいたのは八歳までだ。年齢的にも変わらなければ、記憶なんて殆ど覚えていないだろう。それに、これだけ戻るのに時間が掛かったのだ。受け答えの仕込みも、しっかりされている筈だ。
半ば、答えを諦めつつ緊張した面持ちの少女に質問する。
「ソフィア様とは、親しかったのですか?」
「はい。ソフィア様は私みたいな者にでも、いつでも女神様の様に優しくして下さりました!」
想像通りの言葉に苦笑いが浮かぶのを抑える。
その後も、色々聞いたけど、小さな奇跡を感じる逸話や、聖女らしい穏やかで優しい性格。八つでシャンデラの修道女に推薦されるまで、渡された小冊に沿った内容だった。
ため息交じりにお礼を言って、シュテルン修道院を辞去する。
ここはもう、本当のソフィアを知れる場所ではなく、教会派が作った『聖女ソフィア』を宣伝する為の場所なのだろう。
少しだけ馬車で移動した後、徒歩で来た道を戻るように老人の店を目指す。
表通りの喧騒が微かに聞こえる裏通りを、今後の相談と言って隣に立ったアランと歩く。白髪の目立つ熟練の騎士は、いち早く老人が来たことに気づいた。私が思っている以上に、優秀な人物なのだと思う。
「アラン。ジュリアへの騎士たちの反応はどうなのでしょう?」
馬車の中でジュリアのライモンドに対する言葉には棘があった。修道院ではライモンドはジュリアへの反感を顕にした。
不安を口にした私に、人の良さそうな顔でアランが笑いかける。
「令嬢としてのジュリアの人気は高いですから、着任には多くの者が喜んでおります。しかし、ライモンドの様な複雑な感情を持つ者も一部います」
その言葉にじっと考え込む。
教会派からの私につく事への批判は想定して対応も考えていた。でも、旧国派が不満を抱く事は想定外だ。
旧国派は実力主義の考えが強いけど、私の護衛という限定的な任務は誰かの地位を脅かすとは思えない。それに、女性であるという動かしがたい理由もある。
「複雑とは、どういうことですか?」
「まぁ、旧国派は教会派の躍進人物を叩く傾向が強いんです。苦労人が多いのでやっかみ半分なんですけどね。ほら、ライモンドはローランド男爵に批判的だと思いませんでしたか?」
確かに、ライモンドは先ほども「怪しげな」とか何処となく冷たい表現を使っていた。
アランが苦笑いを浮かべて言葉を続ける。
「地方貴族の跡取り養子が領地を放棄してふらふらしているとか、古今東西の芸術を取り入れた作品は模倣とか。近年で一番の教会派躍進人物のローランド男爵には、辛辣な声を若い旧国派騎士からよく聞きます」
グレイ本人も以前に、新鋭の芸術家で名が売れているから恨みを買っていると言っていた。数年で急速に人気を得て、教会派のお抱え的な立場まで上り詰めた躍進は確かに目立ち過ぎたと思う。
でも、独創的とは言えないけど器用で繊細な作品は、私は好きだし売れるのは納得だと思う。
ただ、付き合って分かったけど、礼儀知らずで奔放で性格には大きな問題がある。新鋭だからとか教会派だからというよりも、性格で叩かれている気がしてならない。
「グレイは癖のある人ですから、ジュリアと比べるのは腑に堕ちません」
私の指摘にアランが笑いだす。驚いた様に先を行くジュリアが振り返って、訝しむような眼差しを向ける。 そんなジュリアに、アランが手を何でもないと手を振る。
「確かに彼と比べるのはジュリアに失礼ですかな。後はあれですね。好意が転じてというやつです。『恋』や『愛』は、時に『疎ましさや』『憎悪』に転じます。ジュリアは人気がありましたから、憧れていた者が多い。姿が変わった事、自分よりも強いかもしれない事で厄介で複雑な感情を抱えてるんでしょう」
愛情が一回りしてというのは、確かに物語などで聞くことがある。正直、私にはよくわからない。
「憧れは、憧れのままで。好きなら、好きのままでいい。私はそう思うですが……。そうはいかないものなのでしょうか?」
眉根を寄せて首を傾げて尋ねると、通りの向うから十歳前後の子供たち駆けてきた。ジュリアの目配せで、アランが私を壁際へいざなって、大きな背に庇うように立つ。
目の前を足の速い女の子が過ぎていって、追いかける男の子が「ブス」と叫ぶ。過ぎていく子供たちを揶揄うような顔で見つめたアランが、私を振り返って肩を竦める。
「リーリア様は、まだまたお若い。深く複雑な男女の心情は苦手の様ですね。騎士は強い事が誇りです。だから、愛らしければ守ってあげたい。だからこそ、負ける事は非常に悔しい。転じると言っても、騎士は単純な者が多いです。好意が転じてと言っても、男の子が好きな子に意地悪するのを拗らせた程度ですよ」
思わず腕を組んで王都の青空を見上げる。
さっきの、ライモンドの得意げな態度がジュリアに向けてだったら? 窘められた反発の根底にジュリアへの好意あったら?
男の子が好きな子に意地悪するのに似てなくもないけど、納得とはならない。分からない事に溜め息をつく。
「私、恋とか愛って苦手なんだと思います。あまり向き合ってこなかったんです。アランの言う通り、好意があるなら、何処かで和解できるでしょうか? 私に出来る事があれば教えてください。ジュリアを応援しているから、物理的には守って貰う立場ですけど、精神的には守ってあげたいんです」
真剣な顔で伝えると、アランが優しい眼差しで前をあるくジュリアの背を見つめる
「今は、手出しは無用です。ジュリアは、騎士として生きたいと名言しました。覚悟を感じましたから、自身の手で騎士としての居場所を手にした方が良いんです。騎士は強い者が偉い。それは剣だけではなく、精神もです。リーリア様は、お友達として愚痴でも聞いて差し上げて下さい」
頷いて、そのまま今後の警備について相談を重ねて歩く。
暫くすると、修道院と同じ香ばしいパンの香りが漂ってきた。角を曲がると私たちの訪れを待っていたかのように、店先に立っていた老人が大きく手をふった。
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