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後章
騎士になって下さい!
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ディルーカ家の屋敷は、王都の中心にある大通りを少しだけ奥へと入った場所にある。元々、お父様が一人で住んでいたお屋敷だから、爵位の割には小さい。だけど、アルトゥリアを模したお庭は広くて、とても気に入っている。
屋敷の馬車寄せに立って背伸びをすると、馬車の車輪と馬蹄の音が微かに聞こえた。門が開いて、美しい彫が施された馬車が屋敷に入ってくる。
少し緊張して姿勢を伸ばすと、止まった馬車から愛らしいお客様が栗毛色の縦ロールを揺らして降りてきた。
稲穂色の瞳と目が合って、ドレスの端を摘まんで一礼する。
「お茶会に足をお運び頂き有難うございます。ジュリア・グレゴーリ公爵令嬢」
憮然とした表情で軽く小首を傾げたジュリアが、下の者に対する軽い一礼で応える。
「公爵家の令嬢として、お茶会のお誘いには極力赴くようにしておりますの」
そっけない言葉と共に顔を上げたジュリアが、意図を計るような眼差しを向ける。
私はレナート王子として、ジュリアの本音をたくさん知ってる。でも、それを知らないジュリアにとっては、あり得ない突然のお誘いだろう。
警戒されないように明るい笑顔を浮かべて、準備が整えてある庭園へと促す。
アンティークな屋外テーブルには、バターの香りの濃い焼き菓子、綺麗な器に飾られたドライフルーツと蜂蜜漬け等のたくさんのお菓子と我が家で一番ティーカップが並べてある。
中でも目を引く宝石みたいな砂糖菓子は、昨日の帰りにデュリオ王子が私にくれたものだ。
肩に頭を預けて笑い合っている中、従者のエミリオが呼びに来て昨日は分かれた。触れ合う事が止められて小さく息を吐いた私と、名残惜しそうに顔を顰めたデュリオ王子。
レナート王子の事を抜きにしても、私にはもう少し時間が必要なのかもしれない。
椅子の一つを引いて、ジュリアに向かって微笑む。
「どうぞ、こちらにおかけ下さい。ここからならば、見ごろの花がよく見えます」
今の季節はこの席が一番居心地がいい。
席に着いたジュリアが、アルトゥリアを模した野趣の富む庭を珍しそうに見回す。
「貴方らしい。他家と異なる趣のお庭ですこと」
「有難うございます。緑が多いのが好きなんです」
上機嫌で答えると、ジュリアが軽く眉を顰めてティーカップに口をつける。驚いたような小さな声に、弾むような色を見つけて身を乗り出す。
「お気に召しましたか? そちらは東方のお茶なんです。一般的な西方のお茶と味わいが違って、お気に入りなんです」
私の事を嫌いじゃない本音を知っても、すぐには飛び越えられない溝があるのは分かっていた。だから、少しでも会話が弾むように、流通の少ない東のお茶を今日は用意した。
もう一度、口をつけてからジュリアが軽く頷く。
「素敵な味わいですわ。とても気に入りました」
「光栄です。お土産の用意をしてありますので、お持ち帰りくださいね。こちらのお菓子もどうですか、この砂糖菓子は私の好きなお店の新作だと聞いています。中に、少しだけお酒が入っているんです」
紹介しながら一つを摘まんで、口へと運ぶ。いつもの砂糖菓子よりも少し硬い口当たりだけど、下の上にのると雪のように解けて、大人の味わいを感じさせるアルコールの香りが口に広がる。
頬を抑えて舌鼓を打った私を見つめて、ジュリアも砂糖菓子へと手を伸ばす。一瞬、驚いたような顔をしたけど、すぐに愛らしい笑顔に変わって小さく感嘆する様な息を吐く。
「こういった深い味わいのお菓子が、わたくしは好きですの」
珍しいお茶とお菓子で始まったお茶会は、私達の今までを考えたら上々の内容になった。
最近の料理の話題から、貿易で入って来る珍しい品々、そこから繋がる異国の文化とセラフィン王国の違い。何処どなく警戒感の残る会話は大きく盛り上がる事はないけれど、気まずい空気で途切れるような事もなく進んでいく。
改めて、ジュリアは本当にすごい女の子だと思う。
知識は深く、会話運びも上手い。カップの持ち方一つも優雅で、マナーには隙が無い。
じっと見つめていた私の眼差しに、稲穂色の視線がぶつかる。今日初めての短い沈黙が落ちて、ジュリアが小さくため息をつく。
「何故、わたくしをお茶会に誘ったんですの?」
足払いを掛けられたレナート王子が私で、色々知ったのでと言う訳にはいかない。事前に考えていた通りに、レナート王子から聞いた話として答える。
「……レナート王子から、私を嫌っていないと聞きました。お茶に誘えば来てくださると」
忌々し気に顔を顰めたジュリアが、テーブルを指先で軽く打つ。
「最低の上に、最悪なお喋り。とことんあの王子が嫌いですわ」
言い訳によるレナート王子の好感度の更なる悪化は想定外だった。手にしたカップを慌てて受け皿に戻して、両手を振って誤解の解消に努める。
「そんな事ありません。色々、考えがあるんだと思います」
瞳を細めたジュリアが、グレゴーリ公爵に似た強い威圧感を漂せる。
「お人好しですわ。どんな考えがあって、元婚約者を傷つけるのです」
「そんな事ありません。私は結果的に無事ですし、今は……」
言いかけた言葉を飲み込む。険悪とまでは行かないが、漂う空気がすっかり冷たくなってしまった。
こんな風に言い争いをする為に、ジュリアを誘った訳じゃない。今日は、ジュリアと新しい関係を作る為だった筈だ。
息を軽く吸ってから、ジュリアの厳しい眼差しを見つめて微笑む。
「ご不快にさせるつもりではありませんでした。ジュリア様の事を私に教えて下さったのは、私がずっとお友達になりたかったのをご存知だったからだと思います。初めてお会いした時から、お姫様みたいに素敵だとずっと憧れていました。嫌いじゃないと知れて、本当に嬉しかったです」
何とも言えない表情を浮かべて、ジュリアが少しだけ唇を尖らせる。機嫌が悪そうに見えるけど、さっきまでの威圧感はもうない。
初めて王都であった絵本の中のお姫様みたいな女の子。厳しい言葉や態度もあったけど、私にない貴族としての優雅な美しさはずっと憧れだった。
お茶までこぎつけた感慨に顔を綻ばせている私を、全然怖くない表情でジュリアが軽く睨む。
「わたくしは、貴方には糾弾されても仕方ない事を何度かしましたわ。その件について、言い訳はしません。でも、謝罪するつもりもありません。私なりの意志があってした事です。同じ立場に立つ事は二度とないと思いますが、別件で再び対峙すれば同じ事を躊躇なくします」
開き直りともとれる言葉だけど、今のジュリアだとちっとも腹が立たない。
届かなかった自分の夢と、同じ夢を見る誰かの為に王妃を目指したジュリア。その努力が本気で並々ならないものである事は、追随を許さない彼女の令嬢としての姿でよくわかる。
とことん自分の道に素直で、目的の為に努力のできる人。嫌いじゃない。むしろ、何もしない人より、ずっと好ましい。
「謝って頂きたいと思ってません。でも、今後の対峙は遠慮します。できれば、協力できるお友達になりたいです」
本当は機を見て言う筈だった言葉が、するりと出てきてしまって慌てて口を手で覆う。伺うような私を一瞥したジュリアが僅かに顎を上げる。
「利害が反しない限りは、結構ですわ。貴方の努力を、わたくしは認めておりますの。田舎の地から、社交界の事を何も知らずに出てきて、短期間で私と張り合うまでになった。嫌いじゃないですわ」
承諾の言葉に、瞼を擦って瞳を閉じてを繰り返す。
視線を逸らしたジュリアの完璧に手入れのされた美しい指が、お茶会を再開するように砂糖菓子の一つを摘まむ。その頬には初めて見る仄かな赤色があった。
嘘でも夢でもなく、お友達になる事が本当と漸く理解する。
「嬉しい、お友達ですね! これから、本当にお友達ですよね?」
「聞き返すのは嫌いですわ」
言葉はそっけないけど、ジュリアは笑って頷いてくれた。
長い夢の一つがかなって、ゆっくりとした雪解けみたいなお茶会が再開される。
今までとは違う親し気な会話は、互いに王妃を目指した立場の所為か、視点がよく似ていて話題が尽きる事がない。冷たいと思った態度も、友達として慣れると凄く可愛いかった。相変わらずきつい事を言うし全然素直ではないけれど、前よりも険がないし時折気遣う様にちらりと上目遣いでみたりする。
楽しい時間に緩みっぱなしの頬を抑えて含み笑いを漏らすと、少しだけ頬を膨らましてジュリアが庭の一角に視線を移す。
「ところで、リーリア様。あちらにあるのは、何ですの?」
我が家の庭には、動物を模した愛らしい感じの飾り物が所々に置いてある。
「弓の練習用の的です。故郷では狩りをする事もあったので、腕が鈍らないように練習しているんです」
答えてジュリアの表情をそっと窺う。
ジュリアは庭に入った時から、的を何度も気にしていた。可愛いくお手入れもしてあるけれど、よく見れば傷がついているのは分かる。
騎士になりたいジュリアなら、聞かずとも矢傷である事は推測できた筈だ。
「そう……」
気のない返事をしてティーカップに口づけながら、再びちらりとジュリアが的を見る。
「リーリア様は、弓をお使いになるのね? 令嬢には珍しい趣味ですわ」
「故郷では狩りは必要な事ですから、腕が鈍らないように時々練習しているんです。ジュリア様もお得意ですよね? 私と勝負してみませんか?」
戸惑う様に頬に手をあててたジュリアの口元が、必死に感情を抑えて僅かに震える。
「どうしようかしら……。令嬢の趣味としては褒められませんが、今はわたくしたちだけですのよね。社交界を見渡しても、弓のご期待に応えられるのはグレゴーリ公爵家のわたくしぐらいでしょう。どうしてもと仰るのなら、お願いを聞いて差し上げてもよろしくてよ?」
瞳を輝かせて強がるジュリアに、内心で苦笑いしながら頷く。
今日、もう一つの目的にはお誂え向きな展開だ。
令嬢と弓。明らかに似つかわしくない取り合わせで、ジュリアと一緒に庭の一角に立つ。ここは、幾つかの木立や草花が的を邪魔する位置に来るから一番難しい場所になる。
強度を確認する様に弓の弦を弾くと、姿勢を正したジュリアが矢をつがえる。ブレのない重心と非の打ち所のない立ち姿だけで、その腕前が確かなものだとはっきりと分かる。
弦を引く微かな音の後に風を切る音が続いて、命中を知らせる音が庭に響く。
初めての弓と的なのに、見事中心を射止めたジュリアに拍手を送ると、ジュリアが少女のように顔を綻ばせる。
「いい弓ですわ。とてもしなやかで、よくお手入れがなされています。次はリーリア様の腕前をみせてくださませ」
頷いて位置を変わると、いつも通りに矢をつがえて弓を引く。慣れている事もあって、私の矢も中心に近い位置を捕える。少し得意げに振り返ると、気品を感じさせる和らかな手つきでジュリアが満足気に手を叩く。
「悪くありませんわ。でも、構えが我流で少し斜めですわね。連続で打つと、ブレが心配ですわ」
晴れやかに笑いながら、私と再び位置を変わってジュリアが矢をつがえる。
幼気で弱い振りをしている社交界では、絶対に見る事はない凛とした横顔。楽しそうで、生き生きとした瞳は、本当に綺麗だった。
デュリオ王子が私を学友すると言った時、文官にも騎士にも何者にもなれない事を突きつけられた。まだ、夢を持たなかった私でも、少なからず落胆したのはよく覚えている。
本気の夢なのに最初から選べなかった子の、その悔しさは想像も出来ない程大きいと思う。
決意を固めると、振り返ったジュリアを真っすぐに見つめる。
「ジュリア様。私の騎士をお引き受け頂けませんか?」
稲穂色の瞳を零れそうな程大きく見開いて、ジュリアが私を真っ直ぐに見つめる。
「レナート王子から、その事もお伺いになったの?」
今度はレナート王子の評判を下げてしまわない様に慎重に言葉を選ぶ。
「はい。ジュリア様を埋もれるには惜しいとお感じのようでした」
「お喋りな男性は嫌いですわ……」
厳しい言葉だけど、最初程の強い嫌悪感がない事に安堵する。
「聖女として、私は教会への出入りが今後増えます。残念ですが、教会は教会派の牙城ですから、私を邪魔に思う者は多いでしょう。男性騎士が同行できない場所も、側に居て下さる女性騎士を探しております」
教会への聖女としての出入りは勿論。調べたい事は山ほどある。
明後日には、グレゴーリ公爵が騎士を派遣してくれる。その日から当然、色々動くつもりだ。ジュリアが一緒にいてくれたら心強いと思う。
驚愕、期待、迷い、憧れ。万華鏡の様に様々な感情を瞳に移してジュリアが小さく頭を振る。
「グレゴーリ公爵家は、中立の立場ですが教会派に属します。必ず批判の声は上がるでしょう」
「勿論、配慮致します。デュリオ王子からの王家の要請として依頼は出します。私が個人的にお願いする形ではないので、不満は出にくい筈です」
私の警備の話が出た段階で、既にこの希望はデュリオ王子に手紙で伝えてある。二度三度のやり取りの中で、私とジュリアの関係をとても心配されたけど承諾は得てある。
ジュリアがバラ色の小さな唇を噛む。
「騎士は、わたくしにとって一度諦めた夢です。違う生き方を受け入れて、今のわたくしがあります」
苦し気な声の裏側にあるジュリアの戸惑いや不安は理解できる。
私の申し入れは、ジュリアが目指した決まりを変えるのとは明らかに違う。誰もいない中で、この国でたった一人の女性騎士になる。物珍しさや、厳しい眼差しに晒される事は間違いない。
ジュリアは誰よりも優雅で愛らしい令嬢と評価されてきたから、余計に周囲のざわめきは大きくなるだろう。
「ジュリア様が目指した事を、私も素晴らしいと思います。今回の事は、必ず貴族女性の生き方に一石を投じます。茨の道を一人歩ませる事は致しません。王家の申し出であると同時に、私の我儘と公言するつもりです。悪口も陰口も私は慣れ子ですから、批判の矢面はお任せください」
レナート王子に、足払いを掛けたジュリアの言葉は正しい。あまりにも、この国では女性が選べる道が少なすぎる。
少しでも前向きに考えて欲しくて、戸惑うジュリアの手を取る。
「友達として、騎士として、私の側に居て下さい。世間からは私が守ります。代わりに、物理的に守って頂けたら嬉しいです」
決断を促す様な強い風が吹いて、庭の木々が不穏な影を落として揺れる。
ゆっくりと私の手から手を解いて弓を近くに立て掛けると、ジュリアが令嬢としての一礼をとる。
「本日のお茶会は、これにて退席させて頂きますわ。お返事は改めてさせてくださいませ」
踵を返したジュリアはどんなに話しかけても、上の空の返事しか返ってこなかった。
ジュリアのお茶会から二日が過ぎて、騎士を迎える日が来た。
鏡に向かっていつもとは違う装いを確認する。少しの短いドレスと、女性らしいブーツ。貴族令嬢の一般的な旅装だ。旅装を普段着にするなんてと言われてしまいそうだけど、他にマナーを逸脱せずに動きやすい服がないのだから仕方ない。
「貴族の女性って面倒くさい……」
ため息を一つ落として、準備運動の為に軽く飛び跳ねる。
今日から、騎士を同行させてなら私は自由に自分の意志で動ける。知りたい事も、知らなくてはいけない事もいっぱいある筈だ。時間がいくらあったって足りない。
ドアを叩く音がして、入室を許可すると侍女が騎士の訪れを告げる。もう一度鏡を見てから、玄関ロビーに向かう。
騎士を連れて最初に向かう場所は、『ソフィアの生まれた王都の修道院』と決めてある。
正直、入れ替わった理由や『贋物』の意味も調べたい。だけど、カミッラ正妃がソフィアについて学べと私に命じたなら、こちらの件が『廃太子』に大きく関わってくるのは間違いない筈だ。
階段の側、ロビーが見渡せる場所で目を瞬く。
屈強な騎士に混じって、小柄な背中が見えた。頭の上で高く結ばれた栗色の綺麗な縦ロールに、誰だかすぐに分かって名前を呼ぶ。
「ジュリア様!」
駆けだすと、ジュリアが私を振り返る。
鮮やかな縦襟の青のジャケットと、それに合わせた白のパンツに黒いブーツ。腰に下げた剣が細いレイピアなのは違うけど、間違いなく騎士の姿をしている。
階段を降りると、生き生きとした様子で花が開く様な美しい笑顔でジュリアが跪く。
「デュリオ王子のご命令で、騎士団より参りました。本日より、我々三名がリーリア様にお仕えさせて頂きます」
嬉しいのと驚いたので口を開けたり閉じたりする私に向かって、ジュリアの左右に跪いた騎士が騎士の礼をとって名乗る。
「第一隊のアラン・ナタールです。しっかりとお守りさせて頂きます」
「第三隊のライモンド・ムーアです。宜しくお願い致します」
アランはお父様よりも年上で白髪の目立が、熟練の騎士と言った貫禄がある。ライモンドは私達よりもやや年上で、騎士らしい逞しさのある爽やかな青年だ。
第一隊の隊長、第三隊の副長は、共にグレゴーリ公爵のご子息だった筈だから、二人とも間違いなく優秀の人物だろう。
二人の騎士に挟まれて、いつも以上に小さく見える体でジュリアも騎士の礼をとる。
「グレゴーリ公爵家より参じました。ジュリア・グレゴーリです。盾となり剣となり、お守りさせて頂きますわ」
自信のある笑顔と堂々とした態度に胸が熱くなる。
たった一人の女性騎士に、きっと悪い噂が立つ事なんてない。こんなに愛らしくて優雅で凛々しいから、あっという間に皆の憧れになる。
屋敷の馬車寄せに立って背伸びをすると、馬車の車輪と馬蹄の音が微かに聞こえた。門が開いて、美しい彫が施された馬車が屋敷に入ってくる。
少し緊張して姿勢を伸ばすと、止まった馬車から愛らしいお客様が栗毛色の縦ロールを揺らして降りてきた。
稲穂色の瞳と目が合って、ドレスの端を摘まんで一礼する。
「お茶会に足をお運び頂き有難うございます。ジュリア・グレゴーリ公爵令嬢」
憮然とした表情で軽く小首を傾げたジュリアが、下の者に対する軽い一礼で応える。
「公爵家の令嬢として、お茶会のお誘いには極力赴くようにしておりますの」
そっけない言葉と共に顔を上げたジュリアが、意図を計るような眼差しを向ける。
私はレナート王子として、ジュリアの本音をたくさん知ってる。でも、それを知らないジュリアにとっては、あり得ない突然のお誘いだろう。
警戒されないように明るい笑顔を浮かべて、準備が整えてある庭園へと促す。
アンティークな屋外テーブルには、バターの香りの濃い焼き菓子、綺麗な器に飾られたドライフルーツと蜂蜜漬け等のたくさんのお菓子と我が家で一番ティーカップが並べてある。
中でも目を引く宝石みたいな砂糖菓子は、昨日の帰りにデュリオ王子が私にくれたものだ。
肩に頭を預けて笑い合っている中、従者のエミリオが呼びに来て昨日は分かれた。触れ合う事が止められて小さく息を吐いた私と、名残惜しそうに顔を顰めたデュリオ王子。
レナート王子の事を抜きにしても、私にはもう少し時間が必要なのかもしれない。
椅子の一つを引いて、ジュリアに向かって微笑む。
「どうぞ、こちらにおかけ下さい。ここからならば、見ごろの花がよく見えます」
今の季節はこの席が一番居心地がいい。
席に着いたジュリアが、アルトゥリアを模した野趣の富む庭を珍しそうに見回す。
「貴方らしい。他家と異なる趣のお庭ですこと」
「有難うございます。緑が多いのが好きなんです」
上機嫌で答えると、ジュリアが軽く眉を顰めてティーカップに口をつける。驚いたような小さな声に、弾むような色を見つけて身を乗り出す。
「お気に召しましたか? そちらは東方のお茶なんです。一般的な西方のお茶と味わいが違って、お気に入りなんです」
私の事を嫌いじゃない本音を知っても、すぐには飛び越えられない溝があるのは分かっていた。だから、少しでも会話が弾むように、流通の少ない東のお茶を今日は用意した。
もう一度、口をつけてからジュリアが軽く頷く。
「素敵な味わいですわ。とても気に入りました」
「光栄です。お土産の用意をしてありますので、お持ち帰りくださいね。こちらのお菓子もどうですか、この砂糖菓子は私の好きなお店の新作だと聞いています。中に、少しだけお酒が入っているんです」
紹介しながら一つを摘まんで、口へと運ぶ。いつもの砂糖菓子よりも少し硬い口当たりだけど、下の上にのると雪のように解けて、大人の味わいを感じさせるアルコールの香りが口に広がる。
頬を抑えて舌鼓を打った私を見つめて、ジュリアも砂糖菓子へと手を伸ばす。一瞬、驚いたような顔をしたけど、すぐに愛らしい笑顔に変わって小さく感嘆する様な息を吐く。
「こういった深い味わいのお菓子が、わたくしは好きですの」
珍しいお茶とお菓子で始まったお茶会は、私達の今までを考えたら上々の内容になった。
最近の料理の話題から、貿易で入って来る珍しい品々、そこから繋がる異国の文化とセラフィン王国の違い。何処どなく警戒感の残る会話は大きく盛り上がる事はないけれど、気まずい空気で途切れるような事もなく進んでいく。
改めて、ジュリアは本当にすごい女の子だと思う。
知識は深く、会話運びも上手い。カップの持ち方一つも優雅で、マナーには隙が無い。
じっと見つめていた私の眼差しに、稲穂色の視線がぶつかる。今日初めての短い沈黙が落ちて、ジュリアが小さくため息をつく。
「何故、わたくしをお茶会に誘ったんですの?」
足払いを掛けられたレナート王子が私で、色々知ったのでと言う訳にはいかない。事前に考えていた通りに、レナート王子から聞いた話として答える。
「……レナート王子から、私を嫌っていないと聞きました。お茶に誘えば来てくださると」
忌々し気に顔を顰めたジュリアが、テーブルを指先で軽く打つ。
「最低の上に、最悪なお喋り。とことんあの王子が嫌いですわ」
言い訳によるレナート王子の好感度の更なる悪化は想定外だった。手にしたカップを慌てて受け皿に戻して、両手を振って誤解の解消に努める。
「そんな事ありません。色々、考えがあるんだと思います」
瞳を細めたジュリアが、グレゴーリ公爵に似た強い威圧感を漂せる。
「お人好しですわ。どんな考えがあって、元婚約者を傷つけるのです」
「そんな事ありません。私は結果的に無事ですし、今は……」
言いかけた言葉を飲み込む。険悪とまでは行かないが、漂う空気がすっかり冷たくなってしまった。
こんな風に言い争いをする為に、ジュリアを誘った訳じゃない。今日は、ジュリアと新しい関係を作る為だった筈だ。
息を軽く吸ってから、ジュリアの厳しい眼差しを見つめて微笑む。
「ご不快にさせるつもりではありませんでした。ジュリア様の事を私に教えて下さったのは、私がずっとお友達になりたかったのをご存知だったからだと思います。初めてお会いした時から、お姫様みたいに素敵だとずっと憧れていました。嫌いじゃないと知れて、本当に嬉しかったです」
何とも言えない表情を浮かべて、ジュリアが少しだけ唇を尖らせる。機嫌が悪そうに見えるけど、さっきまでの威圧感はもうない。
初めて王都であった絵本の中のお姫様みたいな女の子。厳しい言葉や態度もあったけど、私にない貴族としての優雅な美しさはずっと憧れだった。
お茶までこぎつけた感慨に顔を綻ばせている私を、全然怖くない表情でジュリアが軽く睨む。
「わたくしは、貴方には糾弾されても仕方ない事を何度かしましたわ。その件について、言い訳はしません。でも、謝罪するつもりもありません。私なりの意志があってした事です。同じ立場に立つ事は二度とないと思いますが、別件で再び対峙すれば同じ事を躊躇なくします」
開き直りともとれる言葉だけど、今のジュリアだとちっとも腹が立たない。
届かなかった自分の夢と、同じ夢を見る誰かの為に王妃を目指したジュリア。その努力が本気で並々ならないものである事は、追随を許さない彼女の令嬢としての姿でよくわかる。
とことん自分の道に素直で、目的の為に努力のできる人。嫌いじゃない。むしろ、何もしない人より、ずっと好ましい。
「謝って頂きたいと思ってません。でも、今後の対峙は遠慮します。できれば、協力できるお友達になりたいです」
本当は機を見て言う筈だった言葉が、するりと出てきてしまって慌てて口を手で覆う。伺うような私を一瞥したジュリアが僅かに顎を上げる。
「利害が反しない限りは、結構ですわ。貴方の努力を、わたくしは認めておりますの。田舎の地から、社交界の事を何も知らずに出てきて、短期間で私と張り合うまでになった。嫌いじゃないですわ」
承諾の言葉に、瞼を擦って瞳を閉じてを繰り返す。
視線を逸らしたジュリアの完璧に手入れのされた美しい指が、お茶会を再開するように砂糖菓子の一つを摘まむ。その頬には初めて見る仄かな赤色があった。
嘘でも夢でもなく、お友達になる事が本当と漸く理解する。
「嬉しい、お友達ですね! これから、本当にお友達ですよね?」
「聞き返すのは嫌いですわ」
言葉はそっけないけど、ジュリアは笑って頷いてくれた。
長い夢の一つがかなって、ゆっくりとした雪解けみたいなお茶会が再開される。
今までとは違う親し気な会話は、互いに王妃を目指した立場の所為か、視点がよく似ていて話題が尽きる事がない。冷たいと思った態度も、友達として慣れると凄く可愛いかった。相変わらずきつい事を言うし全然素直ではないけれど、前よりも険がないし時折気遣う様にちらりと上目遣いでみたりする。
楽しい時間に緩みっぱなしの頬を抑えて含み笑いを漏らすと、少しだけ頬を膨らましてジュリアが庭の一角に視線を移す。
「ところで、リーリア様。あちらにあるのは、何ですの?」
我が家の庭には、動物を模した愛らしい感じの飾り物が所々に置いてある。
「弓の練習用の的です。故郷では狩りをする事もあったので、腕が鈍らないように練習しているんです」
答えてジュリアの表情をそっと窺う。
ジュリアは庭に入った時から、的を何度も気にしていた。可愛いくお手入れもしてあるけれど、よく見れば傷がついているのは分かる。
騎士になりたいジュリアなら、聞かずとも矢傷である事は推測できた筈だ。
「そう……」
気のない返事をしてティーカップに口づけながら、再びちらりとジュリアが的を見る。
「リーリア様は、弓をお使いになるのね? 令嬢には珍しい趣味ですわ」
「故郷では狩りは必要な事ですから、腕が鈍らないように時々練習しているんです。ジュリア様もお得意ですよね? 私と勝負してみませんか?」
戸惑う様に頬に手をあててたジュリアの口元が、必死に感情を抑えて僅かに震える。
「どうしようかしら……。令嬢の趣味としては褒められませんが、今はわたくしたちだけですのよね。社交界を見渡しても、弓のご期待に応えられるのはグレゴーリ公爵家のわたくしぐらいでしょう。どうしてもと仰るのなら、お願いを聞いて差し上げてもよろしくてよ?」
瞳を輝かせて強がるジュリアに、内心で苦笑いしながら頷く。
今日、もう一つの目的にはお誂え向きな展開だ。
令嬢と弓。明らかに似つかわしくない取り合わせで、ジュリアと一緒に庭の一角に立つ。ここは、幾つかの木立や草花が的を邪魔する位置に来るから一番難しい場所になる。
強度を確認する様に弓の弦を弾くと、姿勢を正したジュリアが矢をつがえる。ブレのない重心と非の打ち所のない立ち姿だけで、その腕前が確かなものだとはっきりと分かる。
弦を引く微かな音の後に風を切る音が続いて、命中を知らせる音が庭に響く。
初めての弓と的なのに、見事中心を射止めたジュリアに拍手を送ると、ジュリアが少女のように顔を綻ばせる。
「いい弓ですわ。とてもしなやかで、よくお手入れがなされています。次はリーリア様の腕前をみせてくださませ」
頷いて位置を変わると、いつも通りに矢をつがえて弓を引く。慣れている事もあって、私の矢も中心に近い位置を捕える。少し得意げに振り返ると、気品を感じさせる和らかな手つきでジュリアが満足気に手を叩く。
「悪くありませんわ。でも、構えが我流で少し斜めですわね。連続で打つと、ブレが心配ですわ」
晴れやかに笑いながら、私と再び位置を変わってジュリアが矢をつがえる。
幼気で弱い振りをしている社交界では、絶対に見る事はない凛とした横顔。楽しそうで、生き生きとした瞳は、本当に綺麗だった。
デュリオ王子が私を学友すると言った時、文官にも騎士にも何者にもなれない事を突きつけられた。まだ、夢を持たなかった私でも、少なからず落胆したのはよく覚えている。
本気の夢なのに最初から選べなかった子の、その悔しさは想像も出来ない程大きいと思う。
決意を固めると、振り返ったジュリアを真っすぐに見つめる。
「ジュリア様。私の騎士をお引き受け頂けませんか?」
稲穂色の瞳を零れそうな程大きく見開いて、ジュリアが私を真っ直ぐに見つめる。
「レナート王子から、その事もお伺いになったの?」
今度はレナート王子の評判を下げてしまわない様に慎重に言葉を選ぶ。
「はい。ジュリア様を埋もれるには惜しいとお感じのようでした」
「お喋りな男性は嫌いですわ……」
厳しい言葉だけど、最初程の強い嫌悪感がない事に安堵する。
「聖女として、私は教会への出入りが今後増えます。残念ですが、教会は教会派の牙城ですから、私を邪魔に思う者は多いでしょう。男性騎士が同行できない場所も、側に居て下さる女性騎士を探しております」
教会への聖女としての出入りは勿論。調べたい事は山ほどある。
明後日には、グレゴーリ公爵が騎士を派遣してくれる。その日から当然、色々動くつもりだ。ジュリアが一緒にいてくれたら心強いと思う。
驚愕、期待、迷い、憧れ。万華鏡の様に様々な感情を瞳に移してジュリアが小さく頭を振る。
「グレゴーリ公爵家は、中立の立場ですが教会派に属します。必ず批判の声は上がるでしょう」
「勿論、配慮致します。デュリオ王子からの王家の要請として依頼は出します。私が個人的にお願いする形ではないので、不満は出にくい筈です」
私の警備の話が出た段階で、既にこの希望はデュリオ王子に手紙で伝えてある。二度三度のやり取りの中で、私とジュリアの関係をとても心配されたけど承諾は得てある。
ジュリアがバラ色の小さな唇を噛む。
「騎士は、わたくしにとって一度諦めた夢です。違う生き方を受け入れて、今のわたくしがあります」
苦し気な声の裏側にあるジュリアの戸惑いや不安は理解できる。
私の申し入れは、ジュリアが目指した決まりを変えるのとは明らかに違う。誰もいない中で、この国でたった一人の女性騎士になる。物珍しさや、厳しい眼差しに晒される事は間違いない。
ジュリアは誰よりも優雅で愛らしい令嬢と評価されてきたから、余計に周囲のざわめきは大きくなるだろう。
「ジュリア様が目指した事を、私も素晴らしいと思います。今回の事は、必ず貴族女性の生き方に一石を投じます。茨の道を一人歩ませる事は致しません。王家の申し出であると同時に、私の我儘と公言するつもりです。悪口も陰口も私は慣れ子ですから、批判の矢面はお任せください」
レナート王子に、足払いを掛けたジュリアの言葉は正しい。あまりにも、この国では女性が選べる道が少なすぎる。
少しでも前向きに考えて欲しくて、戸惑うジュリアの手を取る。
「友達として、騎士として、私の側に居て下さい。世間からは私が守ります。代わりに、物理的に守って頂けたら嬉しいです」
決断を促す様な強い風が吹いて、庭の木々が不穏な影を落として揺れる。
ゆっくりと私の手から手を解いて弓を近くに立て掛けると、ジュリアが令嬢としての一礼をとる。
「本日のお茶会は、これにて退席させて頂きますわ。お返事は改めてさせてくださいませ」
踵を返したジュリアはどんなに話しかけても、上の空の返事しか返ってこなかった。
ジュリアのお茶会から二日が過ぎて、騎士を迎える日が来た。
鏡に向かっていつもとは違う装いを確認する。少しの短いドレスと、女性らしいブーツ。貴族令嬢の一般的な旅装だ。旅装を普段着にするなんてと言われてしまいそうだけど、他にマナーを逸脱せずに動きやすい服がないのだから仕方ない。
「貴族の女性って面倒くさい……」
ため息を一つ落として、準備運動の為に軽く飛び跳ねる。
今日から、騎士を同行させてなら私は自由に自分の意志で動ける。知りたい事も、知らなくてはいけない事もいっぱいある筈だ。時間がいくらあったって足りない。
ドアを叩く音がして、入室を許可すると侍女が騎士の訪れを告げる。もう一度鏡を見てから、玄関ロビーに向かう。
騎士を連れて最初に向かう場所は、『ソフィアの生まれた王都の修道院』と決めてある。
正直、入れ替わった理由や『贋物』の意味も調べたい。だけど、カミッラ正妃がソフィアについて学べと私に命じたなら、こちらの件が『廃太子』に大きく関わってくるのは間違いない筈だ。
階段の側、ロビーが見渡せる場所で目を瞬く。
屈強な騎士に混じって、小柄な背中が見えた。頭の上で高く結ばれた栗色の綺麗な縦ロールに、誰だかすぐに分かって名前を呼ぶ。
「ジュリア様!」
駆けだすと、ジュリアが私を振り返る。
鮮やかな縦襟の青のジャケットと、それに合わせた白のパンツに黒いブーツ。腰に下げた剣が細いレイピアなのは違うけど、間違いなく騎士の姿をしている。
階段を降りると、生き生きとした様子で花が開く様な美しい笑顔でジュリアが跪く。
「デュリオ王子のご命令で、騎士団より参りました。本日より、我々三名がリーリア様にお仕えさせて頂きます」
嬉しいのと驚いたので口を開けたり閉じたりする私に向かって、ジュリアの左右に跪いた騎士が騎士の礼をとって名乗る。
「第一隊のアラン・ナタールです。しっかりとお守りさせて頂きます」
「第三隊のライモンド・ムーアです。宜しくお願い致します」
アランはお父様よりも年上で白髪の目立が、熟練の騎士と言った貫禄がある。ライモンドは私達よりもやや年上で、騎士らしい逞しさのある爽やかな青年だ。
第一隊の隊長、第三隊の副長は、共にグレゴーリ公爵のご子息だった筈だから、二人とも間違いなく優秀の人物だろう。
二人の騎士に挟まれて、いつも以上に小さく見える体でジュリアも騎士の礼をとる。
「グレゴーリ公爵家より参じました。ジュリア・グレゴーリです。盾となり剣となり、お守りさせて頂きますわ」
自信のある笑顔と堂々とした態度に胸が熱くなる。
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