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三章
44話 酒席レポ 前編 / カミュ
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< 小さな設定 >
カミュ様はお酒を嗜みません。
母上がお酒を飲むと絡みますので、なんだか同じ絡み酒になる気がするそうです。
< 小話 >
――宴の席で 前編
お酒の席は噂に聞いておりましたが、大変なものですね。
「カミュ様。私たち頑張りましたよね!!」
護衛騎士達が問いかけるのは、すでに五回目。誇りに思っておりますと、笑いかける。大喜びして下さるのは嬉しいですが、「褒めて酒」の二人はまだ続きそうです。
下僕にテラスに避難席作るようお願いし、席が出来るまで友の様子を見て楽しみましょう。そういえば、卒なくこなせるノエルはどこに……?
さて、まずはユーグ。早々から自分で呑まれに行きました。本当に困った方です。
なんでも首を突っ込む困った子は今は黙々とビセンテ先生、自分の従者と紙に術式を書き込んでおります。読みふける私の従者に何を読んでるのか、問いかけます。
「カミュ様! 術式いくつかけるかなゲームが創作術式まで出てきて、こんなに!!」
学術好きの私の従者は目を輝かせます。ユーグの場合は普段と大差がないですね。じゃあ、次へ……。
腰にドンと衝撃を感じで振り返ると、ユーグが張り付いております。ああ、嫌な予感しか致しません。
「ねぇ? 僕こんなに術式書いたんだけど、ご褒美くれるよね?」
「前回のご褒美で私がどれ程、怒られているかご存知ですか? もう二度と御免です」
幼子が嫌々をするように首を振るユーグの様子に、酒が入ると甘えるタイプと判定致します。とりあえず、子供には頭を撫でておきましょう。
「では、ビセンテ先生と古式文字での術式勝負で買ったら、ご褒美を差し上げます」
古式文字は今は使われない古い文字。以前、文字に興味がないと言ったユーグが魔力講義主任に勝てる訳ありません。再び紙に向かう、「甘え酒」の探求者を置いて次に向かいましょう。
次の方はお友達ではないですが、ディエリとノエルの従者ジルと護衛騎士の組み合わせです。従者がいると言う事はノエルも戻っている筈なのに見回しても姿はありませんね……
ディエリは様子が違いますね。一生懸命、ノエルの従者に剣技について問うております。
「あの剣はどこで覚えた? 頼む! ぜひ教えて欲しい」
見下す様子はなく言葉もまぁまぁ、私に気づくと礼をして中断をジルと護衛騎士に詫びる。ディエリとは思えない下の者に対しての配慮ある態度! 驚きです!!
案外根は真面目で勤勉タイプなのかもしれません。この子は「真面目酒」と判定しましょう。
おや、ノエルの従者は水のようにお酒を飲みますね。早々に空にしたお酒は特に良いものばかりで、真面目と思っていましたが遊び上手かもしれません。
ディエリとの会話に一区切りつくと、顔色一つ変えず丁寧にいつも通り完璧な挨拶を見せます。
「楽しんでいらっしゃいますか?」
「はい。……夢幻の楽しい一夜、良い思い出になりました」
僅かに透ける本音に彼も少しは酔っているのでしょう。彼が下級貴族を傷つけて学園を途中で去った経歴は騎士団推薦の話の時に耳に挟みました。遠くを見る目に映ったのは過去の怨嗟か、未来の希望か。友なら見分けられるのでしょうが、私には適いません。
「夢幻ではなく現実です。そして私たちの未来図です」
過去に捕まって閉じこもろうとした私の扉をノエルが開けて、あの日知らなかった未来が今心地よく愛しい。傷みはお互い違えども、過去を引きずるのは同じ。
ならば、今日と同じ未来が、よき心地で迎えられることを願う、私はグラスを持つ。
ジルの思いはノエルがきっと癒すでしょう。今日が当たり前になる未来はすぐ叶わずとも、アレックスもそれを指す王になるからいつかきっと叶はず。私も彼らの一助になれると良い。グラスに一口だけ酒を注ぐ。
「また、いつか貴方と、皆とこのように自由にお酒を飲みたいと思っております」
軽い音を響かせて、グラスを合わせて飲む。私が一口なのに対して、大きなグラス一杯を一息に飲み干す。
とても嬉しそうににっこりと笑う未熟なオリーブ色の明るい瞳が心に残った。
顔色一つ変えない「底なし酒」と判定いたしましょう。
カミュ様はお酒を嗜みません。
母上がお酒を飲むと絡みますので、なんだか同じ絡み酒になる気がするそうです。
< 小話 >
――宴の席で 前編
お酒の席は噂に聞いておりましたが、大変なものですね。
「カミュ様。私たち頑張りましたよね!!」
護衛騎士達が問いかけるのは、すでに五回目。誇りに思っておりますと、笑いかける。大喜びして下さるのは嬉しいですが、「褒めて酒」の二人はまだ続きそうです。
下僕にテラスに避難席作るようお願いし、席が出来るまで友の様子を見て楽しみましょう。そういえば、卒なくこなせるノエルはどこに……?
さて、まずはユーグ。早々から自分で呑まれに行きました。本当に困った方です。
なんでも首を突っ込む困った子は今は黙々とビセンテ先生、自分の従者と紙に術式を書き込んでおります。読みふける私の従者に何を読んでるのか、問いかけます。
「カミュ様! 術式いくつかけるかなゲームが創作術式まで出てきて、こんなに!!」
学術好きの私の従者は目を輝かせます。ユーグの場合は普段と大差がないですね。じゃあ、次へ……。
腰にドンと衝撃を感じで振り返ると、ユーグが張り付いております。ああ、嫌な予感しか致しません。
「ねぇ? 僕こんなに術式書いたんだけど、ご褒美くれるよね?」
「前回のご褒美で私がどれ程、怒られているかご存知ですか? もう二度と御免です」
幼子が嫌々をするように首を振るユーグの様子に、酒が入ると甘えるタイプと判定致します。とりあえず、子供には頭を撫でておきましょう。
「では、ビセンテ先生と古式文字での術式勝負で買ったら、ご褒美を差し上げます」
古式文字は今は使われない古い文字。以前、文字に興味がないと言ったユーグが魔力講義主任に勝てる訳ありません。再び紙に向かう、「甘え酒」の探求者を置いて次に向かいましょう。
次の方はお友達ではないですが、ディエリとノエルの従者ジルと護衛騎士の組み合わせです。従者がいると言う事はノエルも戻っている筈なのに見回しても姿はありませんね……
ディエリは様子が違いますね。一生懸命、ノエルの従者に剣技について問うております。
「あの剣はどこで覚えた? 頼む! ぜひ教えて欲しい」
見下す様子はなく言葉もまぁまぁ、私に気づくと礼をして中断をジルと護衛騎士に詫びる。ディエリとは思えない下の者に対しての配慮ある態度! 驚きです!!
案外根は真面目で勤勉タイプなのかもしれません。この子は「真面目酒」と判定しましょう。
おや、ノエルの従者は水のようにお酒を飲みますね。早々に空にしたお酒は特に良いものばかりで、真面目と思っていましたが遊び上手かもしれません。
ディエリとの会話に一区切りつくと、顔色一つ変えず丁寧にいつも通り完璧な挨拶を見せます。
「楽しんでいらっしゃいますか?」
「はい。……夢幻の楽しい一夜、良い思い出になりました」
僅かに透ける本音に彼も少しは酔っているのでしょう。彼が下級貴族を傷つけて学園を途中で去った経歴は騎士団推薦の話の時に耳に挟みました。遠くを見る目に映ったのは過去の怨嗟か、未来の希望か。友なら見分けられるのでしょうが、私には適いません。
「夢幻ではなく現実です。そして私たちの未来図です」
過去に捕まって閉じこもろうとした私の扉をノエルが開けて、あの日知らなかった未来が今心地よく愛しい。傷みはお互い違えども、過去を引きずるのは同じ。
ならば、今日と同じ未来が、よき心地で迎えられることを願う、私はグラスを持つ。
ジルの思いはノエルがきっと癒すでしょう。今日が当たり前になる未来はすぐ叶わずとも、アレックスもそれを指す王になるからいつかきっと叶はず。私も彼らの一助になれると良い。グラスに一口だけ酒を注ぐ。
「また、いつか貴方と、皆とこのように自由にお酒を飲みたいと思っております」
軽い音を響かせて、グラスを合わせて飲む。私が一口なのに対して、大きなグラス一杯を一息に飲み干す。
とても嬉しそうににっこりと笑う未熟なオリーブ色の明るい瞳が心に残った。
顔色一つ変えない「底なし酒」と判定いたしましょう。
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