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二章
21話 工房長 / サミー
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< 小さい設定 >
ジルは工房の三人と仲良しです。
ノエルのお使いで行く事が多いので、お茶を飲んで世間話をしてから帰ります。
世間話の内容はノエルへもちろん伝えます。
< 小話 >
「どうしてだ! 俺の方が上手い!! どうして、あの下手糞が作るんだ!!」
班長が口を歪めて笑う。お前よりよっぽど稼げるからだよ。
汗を書いて飛び起きる。遠い日の思い出は苦い。繰り返した悔しいやり取りが今も自分を苛む。何時になったら忘れられるのか。
「親父。早くご飯食べて工房に行くよ。工房長がおくれるのは情けないよ」
俺はここで新しい道を歩き出した。アングラード侯爵お抱えの工房長だ。もう、誰に嘲られる事もない。
工房につくとヤニックが、デザイン画をおずおずと見せてくる。昨日、書いた渾身のデザインは真黒になるほどに修正されていた。稼げない、そう笑う夢の顔をが頭をよぎる。自らの技術を否定されて頭に血が上る。
「ふ、ふざ……」
ふざけるな!と怒鳴ろうとした頭に、大人びた話し方をして嫣然と笑う少女が語りかける。
批判は簡単。果たすべきなのはその先。
「ヤニック。どうしてこのデザインになった?」
息を整えて、正面から聞く。睨まない。脅さない。持てる技術は俺が上だ。
「え……、あっ……。鞘ですが社交の場で初の、うちの……宣伝なんです」
だから、最高の技術を盛り込んだだろ! 怒鳴り付けたい言葉を飲み込む。こいつ本当に苛々する。なんでもビクビクしやがって。
「だ、から。強すぎるんじゃなく。も、っと、女性的な美しさもないと、需要がある……女性に、見向きされま……」
修正したデザインには何度もヤニックが悩んだあとがある。落ち着いて、吟味すればヤニックの言葉の意味が分かる。作るのは子息様の鞘だが、目に留めてもらいたいのは貴族の女性だ。
「おい、この修正箇所。なんで最初の修正を消した?」
おもしろい修正デザインが消されて、簡単な技術に変えられていた。そんな場所が何カ所もある。職人としてデザインを見れば出来上がりはイメージできる。どう見ても最初の修正案の方がいい。
「理想は最初の案なんです。……でも、そんなの無理だと思って、難しすぎます」
屑石を一つ手にとって、最初の修正案の通りの柄を掘って見せる。ヤニックが目を輝かせて、その技術に見入る。
技術を相手に伝えて、それを取り込む道筋を示すこと。少女の声がまた聞こえる。
「工房長、これ出来ます?」
新しい図案をヤニックが書く。それをまた屑石に再現する。
新しいデザインに自分が息を飲む。そして再現されたものにまた相手が息を飲む。また、新しいデザインを提示されて息を飲む。そして再現して相手に息を飲ませる。
貴方は変われますか?
最初の傑作の鞘のデザインはマノンが額に入れてくれて、今も工房に飾ってある。
鞘のデザインをうっとりと眺める若い職人達は唇を噛むことがあってもついてきてくれる。時折、酒を酌み交わして褒める。
悪夢だと持っていた過去の夢は気づけば、自らを省みる訓戒だと思えるようになった。
俺は変われましたか? 聞くと少女は晴れやかに笑う。
最高の工房長ですが、もっと頑張れます。俺も晴れやかに笑う。
ジルは工房の三人と仲良しです。
ノエルのお使いで行く事が多いので、お茶を飲んで世間話をしてから帰ります。
世間話の内容はノエルへもちろん伝えます。
< 小話 >
「どうしてだ! 俺の方が上手い!! どうして、あの下手糞が作るんだ!!」
班長が口を歪めて笑う。お前よりよっぽど稼げるからだよ。
汗を書いて飛び起きる。遠い日の思い出は苦い。繰り返した悔しいやり取りが今も自分を苛む。何時になったら忘れられるのか。
「親父。早くご飯食べて工房に行くよ。工房長がおくれるのは情けないよ」
俺はここで新しい道を歩き出した。アングラード侯爵お抱えの工房長だ。もう、誰に嘲られる事もない。
工房につくとヤニックが、デザイン画をおずおずと見せてくる。昨日、書いた渾身のデザインは真黒になるほどに修正されていた。稼げない、そう笑う夢の顔をが頭をよぎる。自らの技術を否定されて頭に血が上る。
「ふ、ふざ……」
ふざけるな!と怒鳴ろうとした頭に、大人びた話し方をして嫣然と笑う少女が語りかける。
批判は簡単。果たすべきなのはその先。
「ヤニック。どうしてこのデザインになった?」
息を整えて、正面から聞く。睨まない。脅さない。持てる技術は俺が上だ。
「え……、あっ……。鞘ですが社交の場で初の、うちの……宣伝なんです」
だから、最高の技術を盛り込んだだろ! 怒鳴り付けたい言葉を飲み込む。こいつ本当に苛々する。なんでもビクビクしやがって。
「だ、から。強すぎるんじゃなく。も、っと、女性的な美しさもないと、需要がある……女性に、見向きされま……」
修正したデザインには何度もヤニックが悩んだあとがある。落ち着いて、吟味すればヤニックの言葉の意味が分かる。作るのは子息様の鞘だが、目に留めてもらいたいのは貴族の女性だ。
「おい、この修正箇所。なんで最初の修正を消した?」
おもしろい修正デザインが消されて、簡単な技術に変えられていた。そんな場所が何カ所もある。職人としてデザインを見れば出来上がりはイメージできる。どう見ても最初の修正案の方がいい。
「理想は最初の案なんです。……でも、そんなの無理だと思って、難しすぎます」
屑石を一つ手にとって、最初の修正案の通りの柄を掘って見せる。ヤニックが目を輝かせて、その技術に見入る。
技術を相手に伝えて、それを取り込む道筋を示すこと。少女の声がまた聞こえる。
「工房長、これ出来ます?」
新しい図案をヤニックが書く。それをまた屑石に再現する。
新しいデザインに自分が息を飲む。そして再現されたものにまた相手が息を飲む。また、新しいデザインを提示されて息を飲む。そして再現して相手に息を飲ませる。
貴方は変われますか?
最初の傑作の鞘のデザインはマノンが額に入れてくれて、今も工房に飾ってある。
鞘のデザインをうっとりと眺める若い職人達は唇を噛むことがあってもついてきてくれる。時折、酒を酌み交わして褒める。
悪夢だと持っていた過去の夢は気づけば、自らを省みる訓戒だと思えるようになった。
俺は変われましたか? 聞くと少女は晴れやかに笑う。
最高の工房長ですが、もっと頑張れます。俺も晴れやかに笑う。
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