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四章
53話 違和感の人 / カリーナ
しおりを挟む本日より最終章開始です。暫くは嵐の前の時間です。
ノエルとアレックスの時間と共に、過去に出てきた事柄に幾つか答えを繋げていきます。
細かいと色々ありますが「我が家の事情」「契約とキス」「歌声と魔法」「魔力印と名」辺りが今日はやや絡んでます。
この先も過去と少しずつ絡みますので、是非その辺りも楽しんでもらえたら嬉しいです。
< 小さな設定 >
文官専科 → ノエル、カミュ、ドニ、ラザール
騎士専科 → アレックス、クロード、ディエリ
研究専科 → ユーグ
令嬢専科 → カリーナ
<小話>
――窓辺から
「カリーナ様! 騎士専科の方ですわ。いらしてくださいませ」
クラスメイトの方に呼ばれて窓から外を見下ろしますと、演習に向われる騎士専科の殿方がいらっしゃいました。
周囲の皆様のざわめきが一段と大きいのは、アレックス王子、クロード様、ディエリ様のクラスだから。
それぞれが気になる殿方の名をお出しになって、その良さを口にしては蕩けるようなお顔になられます。
確かにお三方はとても素敵だと思います。秀麗で気品のある殿下、精悍で逞しいクロード様、冷ややかで威厳のあるディエリ様。威風堂々たる彫刻のようなお三方が並ぶと、世界が切り取られたようです。
私に気付いて殿下が軽く手を上げて下さいますと、周囲から一斉に悲鳴が上がります。
皆さま落ち着きになってくださいませ。令嬢たるものその様に取り乱してはなりません。
私はその場できっちりと令嬢として礼をとらせて頂きます。
騎士専科の方が通り過ぎてしばらく致しますと、また窓辺で悲鳴が上がりました。
「文官専科の方たちです!」
私は慌てて窓に駆け寄ります。遠くに綺麗な銀の髪を見つけると胸が小さく高鳴ります。
こちらは艶やかで美しいカミュ様、愛らしく天使のようなドニ様、そして容姿端麗で華のあるノエル様。
お三方は一枚の完成された絵画のよう思わず私もうっとりとしてしまいます。
私に気付いてノエル様が日差しのように眩しい笑顔を向けて下さると周囲がまた大きな悲鳴に包まれます。
慌てて返す為の礼を取ろうとして、今日こそは思い留まることができました。
胸に手を当てて呼吸を整え、そっと小さく手を振り返します。気付いて嬉しそうに笑ってくださるから、もう顔を見てられずに思わず座り込んでしまいました。
令嬢としてはしたない! まだまだ、私も未熟です。
でも、漸く初めて手を振ることが出来てとても幸せ。
「カリーナ!」
窓の外で少し低い声が私の名を呼びます。ゆっくりと立ち上がって顔を出しますと、ノエル様の後ろでラザールが大きく手を振っています。無視してもよろしいでしょうか?
悪い方ではないのですが、水と油の気がしてなりません。苦手ではないのです。なんとなく他の方と比べていつも違和感が落ちるのです。
「カリーナ! 今日も美しいね。いつか君を攫わせて欲しい」
崩落戦以降、彼はよく恥ずかしいセリフを堂々と口にいたします。かの国は暑い国。人も大変な情熱を秘めているそうです。
ラザールの愛の言葉に慣れた周囲からは、ざわめきすらもう湧きません。
全く恥ずかしい限りですわ!
横を向いて知らんぷりでやり過ごします。たっぷり十を数えて、もうそこにいないのを確認してから、窓から身を乗り出してその方の背を見ます。
怒ってらっしゃらない?
文官にしておくには勿体ない逞しい背中。あの戦いの時は少しだけ素敵に見えました。冷静に周囲を見渡す鋭い眼差しも、的確な言葉も。そして、伝令を賜った私に見せた気遣いも。
ノエル様のような高鳴りを感じないその背中に溜め息をつくと、気づいたかのようにラザールが振り返って大きく手を振られてしました。
仕方ないから、小さく手を振り返します。
「カリーナ様はラザール様には、直ぐに手を振り返せるのですね」
その言葉に簡単に上げた手を見つめます。あの方は私にとって違和感の嵐です。
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