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最強の飼育員
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都内某所にある『子供の国公園』は、東京ドームひとつぶん……まではいかないが、かなり広い公園である。また、様々な動物が飼育されている。動物園と呼ぶほどの規模ではないが、犬や猫や兎やカピバラ、さらには馬までいるのだ。
そんな動物たちを飼育しているのは、当然ながら公園の職員たちである。中でも、特に動物たちと仲がいいのは町田辰雄だ。あだ名はターちゃんだ。背はさほど高くなく、髪は肩までの長さである。体格はがっちりしているが、顔には愛嬌があり子供にも人気がある。
この男、困った癖があった。
夜になると、辰雄はこっそりと動物たちの小屋に入っていく。
すると、さっそく近づいて来たのは犬の太郎丸だ。雑種の中型犬である。尻尾を振りながら、嬉しそうに飛びついて来た。
「太郎丸は元気だなあ」
言いながら、辰雄は頭を撫でた。太郎丸は、嬉しそうに彼の腕に噛み付いていく。
「おおお、なかなか強くなったな。はっはっは」
笑う辰雄の腕を、太郎丸はガジガジ噛んでいる。甘噛みではなく本気噛みである。太郎丸は、辰雄のことだけは本気で噛むのだ。噛んでも平気なことを熟知しているからである。
辰雄もまた、平気な顔をしている。いかに中型犬といえど、本気噛みをされたらただでは済まない。確実に怪我をする。常人ならば確実に怪我を負っているはずだが、この男の腕には傷ひとつ付いていない。
「お前も、早く大きくなれよ」
猫のマイケルもまた、嬉しそうにじゃれついていく。辰雄の手を前足で掴んでの本気猫キック連打を食らわしている。マイケルもまた、他の人間にこんなことはやらない。辰雄が相手だからである。
ひとしきり犬猫と戯れた後、辰雄は厩舎へと入っていく。中では、黒馬のウマノスケが繋がれていた。
「今日も来たぞ、ウマノスケ」
辰雄は、ウマノスケに抱き着いていく。ウマノスケも、嬉しそうにブルルンと鼻を鳴らしながら足踏みしたり飛び上がったりする。たまに、蹴りもバチバチ入る。
馬の蹴りは、数トンの衝撃力がある。これは、ヘビー級ボクサーのパンチを軽く上回る威力だ。常人が食らったら、確実に重傷である。それどころか、即死してもおかしくはない。
しかし、辰雄は平気な顔だ。またウマノスケも、他の人間にこんなことはしない。辰雄なら、蹴りを入れてもビクともしないことを知っているのだ。
しばらく戯れていたが、やがて身体を離した。もう、そろそろ帰る時間た。
「ウマノスケ、また明日な」
そう言うと、辰雄は悲しそうな顔で厩舎を出ていった。
ひとりで夜の公園を歩いていた辰雄だったが、ふと足を止める。前から、数人のヤンキー少年たちが歩いてきたのだ。
「つまんねえ所だなあ」
「こんな公園、ブッ壊した方が良くね?」
そんなことを言いながら、彼らはずかずか歩いている。うちひとりが、飲んでいたジュースの缶を投げ捨てた。
辰雄は、さっと動く。缶を拾い、ヤンキーたちに渡した。
「君たち、ゴミは持ち帰ってね」
言いながら、ニッコリ笑う。すると、ヤンキーたちの表情が変わった。
「おいコラ、てめえ誰にンな口きいてんだ?」
ヤンキーの中でも、好戦的な顔つきの者が口を開く。髪を金色に染めており、痩せているが背は高い。
しかし、辰雄に恐れる様子はない。
「公園はね、みんなの憩いの場所なんだよ。だから、ゴミは持ち帰って欲しいんだ」
「殺すぞ!」
喚きながら、殴りかかった金髪。大振りのパンチは、狙い違わず辰雄の顔面に炸裂した。
だが、辰雄は平然としている。
それも当然だった。辰雄は、ウマノスケの強烈な蹴りを毎晩受け続けている。馬の数トンともいわれる威力の蹴りに比べれば、ひ弱なヤンキー少年のパンチなどは、蚊に刺された程度でしかない。
ポリポリと顔を掻き、首を傾げる。
「どうしたの? 蚊でも止まってた?」
真顔でそんなことをいう辰雄に、ヤンキーたちは後ずさりする。
「な、なんだこいつ、ヤベえよ……」
ヤンキーたちは、明らかに怯んでいた。こんな男は初めてである。今、全力で殴ったはずだった。それなのに、何事もなかったかのようにニコニコしているのだ。
「君たち、あんまり公園を汚しちゃいけないよ。いいね?」
言いながら、辰雄は近づいていく。途端に、ヤンキーたちは飛び上がった。
「は、はひ! す、すみませんでした!」
言ったかと思うと、ヤンキーたちは一目散に逃げていく。
辰雄はというと、またしても首を傾げた。
「なんか帰っちゃたぞ。何をそんなに慌てているのだろうな」
町田辰雄……彼は、最強の飼育員である。だが残念なことに、本人は自身の強さに全く気づいていなかった──
そんな動物たちを飼育しているのは、当然ながら公園の職員たちである。中でも、特に動物たちと仲がいいのは町田辰雄だ。あだ名はターちゃんだ。背はさほど高くなく、髪は肩までの長さである。体格はがっちりしているが、顔には愛嬌があり子供にも人気がある。
この男、困った癖があった。
夜になると、辰雄はこっそりと動物たちの小屋に入っていく。
すると、さっそく近づいて来たのは犬の太郎丸だ。雑種の中型犬である。尻尾を振りながら、嬉しそうに飛びついて来た。
「太郎丸は元気だなあ」
言いながら、辰雄は頭を撫でた。太郎丸は、嬉しそうに彼の腕に噛み付いていく。
「おおお、なかなか強くなったな。はっはっは」
笑う辰雄の腕を、太郎丸はガジガジ噛んでいる。甘噛みではなく本気噛みである。太郎丸は、辰雄のことだけは本気で噛むのだ。噛んでも平気なことを熟知しているからである。
辰雄もまた、平気な顔をしている。いかに中型犬といえど、本気噛みをされたらただでは済まない。確実に怪我をする。常人ならば確実に怪我を負っているはずだが、この男の腕には傷ひとつ付いていない。
「お前も、早く大きくなれよ」
猫のマイケルもまた、嬉しそうにじゃれついていく。辰雄の手を前足で掴んでの本気猫キック連打を食らわしている。マイケルもまた、他の人間にこんなことはやらない。辰雄が相手だからである。
ひとしきり犬猫と戯れた後、辰雄は厩舎へと入っていく。中では、黒馬のウマノスケが繋がれていた。
「今日も来たぞ、ウマノスケ」
辰雄は、ウマノスケに抱き着いていく。ウマノスケも、嬉しそうにブルルンと鼻を鳴らしながら足踏みしたり飛び上がったりする。たまに、蹴りもバチバチ入る。
馬の蹴りは、数トンの衝撃力がある。これは、ヘビー級ボクサーのパンチを軽く上回る威力だ。常人が食らったら、確実に重傷である。それどころか、即死してもおかしくはない。
しかし、辰雄は平気な顔だ。またウマノスケも、他の人間にこんなことはしない。辰雄なら、蹴りを入れてもビクともしないことを知っているのだ。
しばらく戯れていたが、やがて身体を離した。もう、そろそろ帰る時間た。
「ウマノスケ、また明日な」
そう言うと、辰雄は悲しそうな顔で厩舎を出ていった。
ひとりで夜の公園を歩いていた辰雄だったが、ふと足を止める。前から、数人のヤンキー少年たちが歩いてきたのだ。
「つまんねえ所だなあ」
「こんな公園、ブッ壊した方が良くね?」
そんなことを言いながら、彼らはずかずか歩いている。うちひとりが、飲んでいたジュースの缶を投げ捨てた。
辰雄は、さっと動く。缶を拾い、ヤンキーたちに渡した。
「君たち、ゴミは持ち帰ってね」
言いながら、ニッコリ笑う。すると、ヤンキーたちの表情が変わった。
「おいコラ、てめえ誰にンな口きいてんだ?」
ヤンキーの中でも、好戦的な顔つきの者が口を開く。髪を金色に染めており、痩せているが背は高い。
しかし、辰雄に恐れる様子はない。
「公園はね、みんなの憩いの場所なんだよ。だから、ゴミは持ち帰って欲しいんだ」
「殺すぞ!」
喚きながら、殴りかかった金髪。大振りのパンチは、狙い違わず辰雄の顔面に炸裂した。
だが、辰雄は平然としている。
それも当然だった。辰雄は、ウマノスケの強烈な蹴りを毎晩受け続けている。馬の数トンともいわれる威力の蹴りに比べれば、ひ弱なヤンキー少年のパンチなどは、蚊に刺された程度でしかない。
ポリポリと顔を掻き、首を傾げる。
「どうしたの? 蚊でも止まってた?」
真顔でそんなことをいう辰雄に、ヤンキーたちは後ずさりする。
「な、なんだこいつ、ヤベえよ……」
ヤンキーたちは、明らかに怯んでいた。こんな男は初めてである。今、全力で殴ったはずだった。それなのに、何事もなかったかのようにニコニコしているのだ。
「君たち、あんまり公園を汚しちゃいけないよ。いいね?」
言いながら、辰雄は近づいていく。途端に、ヤンキーたちは飛び上がった。
「は、はひ! す、すみませんでした!」
言ったかと思うと、ヤンキーたちは一目散に逃げていく。
辰雄はというと、またしても首を傾げた。
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