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怪盗ルニャン
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遠い宇宙の彼方には、動物たちの星がある。二足歩行の動物たちが、人間と同じ文明を築き生活している不思議な世界。猫人の怪盗アルセーヌ・ルニャン、今夜も華麗に参上します──
「ルニャン、今日の獲物はこの美術館にあるのか?」
ルニャンに聞いたのは、ジゲン・ニャイスケだ。彼はコンニャットマグナムをぶっ放すハチワレの猫人であり、ルニャンの頼もしい仲間である。肉球の付いた手にもかかわらず、拳銃の腕はアニマル星でもトップクラスだ。
「ああ、名画『モニャリザ』はここにあるはずだニャ。必ずいただくニャ。にしても、やけに警備が手薄だニャ」
周りを見回しながら、ルニャンは首を傾げる。ちなみに、ルニャンは赤茶色の毛並みの猫人だ。長い尻尾をフリフリしながら、時おり立ち止まり軽く毛繕いすることを忘れないオシャレ猫でもある。
彼らは今、アニマル星でも有名なニャーブル美術館にいた。目当ては、名画モニャリザである。夜中に警報機をストップさせ、美術館へと侵入した。
ところが、警備員の姿が見えない。これだけの規模の美術館なら、警備員が数十人体制で巡回していてもおかしくないのだが。
「油断してはいけないニャ。さっきから、妙な気配を感じるニャ」
言ったのはイシカワ・ゴエニャンだ。灰色の毛並みの猫人であり、ニャンテツケンの使い手でもある。彼もまた、ルニャンの仲間だ。
彼らは、美術館の奥へと進んで行った。地下への階段を下ると、辺りの風景は一変した。頑丈な特殊合金の壁に覆われた部屋、奥の壁には、モニャリザの絵が飾られている。
だが、絵の前にはひとりの猿人がいた。ストライプ模様のシャツに短パンという、美術館には似つかわしくない格好だ。木製のゴルフクラブを片手に、不敵に笑った。
「わいはモンキー! プロゴルファー・モンキーだッキ! ルニャン、お前にモニャリザは渡さないッキ!」
呆気に取られているルニャンたちの前で、モンキーはボールを床に置いた。
「くらえ! 旗つつみショットだッキ!」
直後、ボールが放たれる──
かろうじて、そのボールを避けたルニャン。だが、モンキーの攻撃は止まらない。続けて、凄まじい勢いでボールが飛んで来る。
「ルニャン! ひとまず逃げるぞ!」
ジゲンの声とともに、皆は階段まで後退し壁の陰に隠れる。
「キッキッキ! ルニャン一味はヘタレの集まりだッキ!」
勝ち誇るモンキーの声を聞き、ルニャンは尻尾をビタンと振った。さらに、ヒゲをぴくぴく震わせる。
「あの猿め、調子に乗りやがって……」
ルニャンは、いまいましげに呟いた。その時、どこからともなく三味線の音が鳴る。
見ると、ゴエニャンがニャンテツケンを抜いていた。
「拙者に任せるニャ」
言うが早いか、ゴエニャンはモンキーの前に姿を現した。
「ウキキキ! 俺の命を懸けた一打で、地獄行きだッキ!」
さっそく、モンキーのボールが飛んで来た。そのスピードは、銃弾並みである。当たれば命はない。
しかし、ボールは当たらなかった。
「ニャー!」
気合いの声と共に、ゴエニャンが刀を一閃──
直後、切り裂かれたボールが床に転がる。
「そんな……わいの旗つつみショットが……まだだ! ボールはまだあるッキ!」
モンキーは、続けざまにボールを打っていく。だがゴエニャンの刀は、その全てを打ち落とした。
床には、切り裂かれたボールが溜まっていく。
「な、なんて奴だッキ……」
呆然となるモンキー。その時、銃声が轟いた。
「おい猿、遊びはここまでニャ。動いたら、ドタマぶち抜くニャ」
涼しい表情で、コンニャットマグナムを構えているのはジゲンだ。一方、ルニャンは壁にかかったモニャリザを取り外している。美しい貴婦人……いや貴婦猫が微笑む名画だ。
「あとはずらかるだけだニャ。ジゲン、ゴエニャン、さっさと逃げるぞ」
三人は、敗北に打ちひしがれているモンキーを尻目に、さっさと美術館を脱出した。あとは、脱出用の車に乗り込むだけである。三人は、車に向かい道路を進んで行く。
その時、地の底から恐ろしい声が聞こえてきた。
「待てルニャン! 逮捕だワニ!」
声と共に、道路のアスファルトをぶち破って現れた者がいる……それは、巨大なワニであった。全長は十メートル以上、開いた口には、ナイフのような牙がずらりと並んでいる。もはや、ワニというより恐竜であった。
「な、何だコイツ……」
怯んでいる三人に、巨大ワニはげらげら笑った。
「わしはな、アリゲーター警部だワニ! ルニャン、お前を逮捕するため下水道から呼び出されたワニ!」
そう、このアリゲーター警部は……下水道で育った巨大ワニである。高い戦闘力を持っているが、あまりにも破壊的な捜査手法ゆえに下水道の見回り係に回されていた。しかし今日は特別に、怪盗ルニャン逮捕のため駆り出されたのである。
「この化け物が! 俺のマグナムをくらえニャ!」
ジゲンはコンニャットマグナムを構え、たて続けにぶっ放す。このマグナム弾は、世界でもトップクラスの威力だ。当たれば、マンモスでも倒せる……はずだった。
しかし、銃弾は弾き返された──
「そんな銃弾では、わしの革を貫くことは出来ないワニ!」
アリゲーターは、愉快そうに叫んだ。すると今度は、ゴエニャンが進み出る。
「拙者に任せろニャ!」
ゴエニャンは、一気に間合いを詰める。と同時に、ニャンテツケンを一閃──
その一撃は、間違いなくアリゲーターの背中を捉えた。ニャンテツケンは、特殊合金をも真っ二つに出来る名刀だ。巨大ワニですら、一刀両断のはずだった。
しかし、ゴエニャンの一撃は弾き返された──
「そ、そんな……拙者のニャンテツケンが……」
呆然となるゴエニャン。一方、アリゲーターは高らかに笑った。
「ワーニワニワニワニワニ! わしの革の硬さは世界一だワニ!」
直後、巨大ワニの尻尾が飛んで来る。ゴエニャンは避けきれず、その一撃をまともに喰らった。
「ギニャー!」
それは、トラックが突進して来るがごとき衝撃だった。ゴエニャンは吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。そこに、アリゲーターが突っ込む──
「まずは、お前から始末してやるワニ! 覚悟だワニ!」
巨大な口を開け、ゴエニャンを飲み込もうとした。
だが、ルニャンが走る。電光石火の速さで、ゴエニャンを救い出した。さらに、ジゲンのマグナムが火を吹く──
狙い違わず、銃弾はアリゲーターに炸裂する。しかし、まったくダメージを与えられていない。
「ワーニワニワニワニワニ! 効かないワニ!」
アリゲーターが吠える。一方、ジゲンは舌打ちした。
「なんて奴だ、俺のマグナムが効いてないニャ」
「ジゲン、ここは逃げるニャ!」
ルニャンは叫んだ。同時に、ゴエニャンの手を引く。だが、ゴエニャンは弱々しく首を振る。
「ルニャン、拙者は動けん……二人で逃げてくれニャ」
「そんなこと、出来ないニャ!」
言いながら、ルニャンは迫るアリゲーターを睨んだ。ジゲンのマグナムも、ゴエニャンのニャンテツケンも効かない。となると……。
その時、ルニャンの頭に閃くものがあった。彼はアリゲーターの前に飛び出し、背中を向けて尻尾を振る。
「ほれほれ、アリゲーターのとっつあん、俺の尻尾をくれてやるニャ。ただし、食いちぎれたらな」
挑発しながら、ルニャンは尻尾を振った。
「さあ、このルニャンさまの尻尾……食いちぎれるものなら、食いちぎってみろニャ!」
「上等だワニ! 食いちぎってやるワニ!」
アリゲーターは口を開け、ルニャンの尻尾に噛み付いた──
だが、間一髪のところで躱した。と同時に、ルニャンは飛び上がり、空中で一回転する。ムーンサルトプレスの要領で、アリゲーターの頭に飛び乗った。
さらに、両手でアリゲーターの口を閉める。
「どうだニャ! これで、口は開けられないニャ!」
そう、ワニの噛む力は確かに凄まじい。肉食獣の中でもトップクラスであろう。だが、口を開ける力は意外と弱いのだ。普通サイズのワニなら、老人の握力でも口を閉ざすことが出来る。
アリゲーターとて例外ではない。ルニャンに口を掴まれ、開けることが出来ない。
想定外の状況を前に、混乱するアリゲーター。その隙に、ルニャンはダクトテープで警部の口を縛り上げた。ぴょんと飛び降り、大げさな仕草でお辞儀する。
「アリゲーターのとっつあん、またニャ!」
からかうような口調で言うと、ルニャンたちは逃げて行った──
翌日、下水道に恐ろしい声が響き渡っていた。巨大なワニが、尻尾を振り回し怒り狂っていたのだ。
「くそう! 許さんぞルニャン! 必ず逮捕してやるワニ!」
屈辱に身を震わせるアリゲーター警部は、ルニャンに復讐を誓うのだった。二人の闘いは、まだ始まったばかりである──
「ルニャン、今日の獲物はこの美術館にあるのか?」
ルニャンに聞いたのは、ジゲン・ニャイスケだ。彼はコンニャットマグナムをぶっ放すハチワレの猫人であり、ルニャンの頼もしい仲間である。肉球の付いた手にもかかわらず、拳銃の腕はアニマル星でもトップクラスだ。
「ああ、名画『モニャリザ』はここにあるはずだニャ。必ずいただくニャ。にしても、やけに警備が手薄だニャ」
周りを見回しながら、ルニャンは首を傾げる。ちなみに、ルニャンは赤茶色の毛並みの猫人だ。長い尻尾をフリフリしながら、時おり立ち止まり軽く毛繕いすることを忘れないオシャレ猫でもある。
彼らは今、アニマル星でも有名なニャーブル美術館にいた。目当ては、名画モニャリザである。夜中に警報機をストップさせ、美術館へと侵入した。
ところが、警備員の姿が見えない。これだけの規模の美術館なら、警備員が数十人体制で巡回していてもおかしくないのだが。
「油断してはいけないニャ。さっきから、妙な気配を感じるニャ」
言ったのはイシカワ・ゴエニャンだ。灰色の毛並みの猫人であり、ニャンテツケンの使い手でもある。彼もまた、ルニャンの仲間だ。
彼らは、美術館の奥へと進んで行った。地下への階段を下ると、辺りの風景は一変した。頑丈な特殊合金の壁に覆われた部屋、奥の壁には、モニャリザの絵が飾られている。
だが、絵の前にはひとりの猿人がいた。ストライプ模様のシャツに短パンという、美術館には似つかわしくない格好だ。木製のゴルフクラブを片手に、不敵に笑った。
「わいはモンキー! プロゴルファー・モンキーだッキ! ルニャン、お前にモニャリザは渡さないッキ!」
呆気に取られているルニャンたちの前で、モンキーはボールを床に置いた。
「くらえ! 旗つつみショットだッキ!」
直後、ボールが放たれる──
かろうじて、そのボールを避けたルニャン。だが、モンキーの攻撃は止まらない。続けて、凄まじい勢いでボールが飛んで来る。
「ルニャン! ひとまず逃げるぞ!」
ジゲンの声とともに、皆は階段まで後退し壁の陰に隠れる。
「キッキッキ! ルニャン一味はヘタレの集まりだッキ!」
勝ち誇るモンキーの声を聞き、ルニャンは尻尾をビタンと振った。さらに、ヒゲをぴくぴく震わせる。
「あの猿め、調子に乗りやがって……」
ルニャンは、いまいましげに呟いた。その時、どこからともなく三味線の音が鳴る。
見ると、ゴエニャンがニャンテツケンを抜いていた。
「拙者に任せるニャ」
言うが早いか、ゴエニャンはモンキーの前に姿を現した。
「ウキキキ! 俺の命を懸けた一打で、地獄行きだッキ!」
さっそく、モンキーのボールが飛んで来た。そのスピードは、銃弾並みである。当たれば命はない。
しかし、ボールは当たらなかった。
「ニャー!」
気合いの声と共に、ゴエニャンが刀を一閃──
直後、切り裂かれたボールが床に転がる。
「そんな……わいの旗つつみショットが……まだだ! ボールはまだあるッキ!」
モンキーは、続けざまにボールを打っていく。だがゴエニャンの刀は、その全てを打ち落とした。
床には、切り裂かれたボールが溜まっていく。
「な、なんて奴だッキ……」
呆然となるモンキー。その時、銃声が轟いた。
「おい猿、遊びはここまでニャ。動いたら、ドタマぶち抜くニャ」
涼しい表情で、コンニャットマグナムを構えているのはジゲンだ。一方、ルニャンは壁にかかったモニャリザを取り外している。美しい貴婦人……いや貴婦猫が微笑む名画だ。
「あとはずらかるだけだニャ。ジゲン、ゴエニャン、さっさと逃げるぞ」
三人は、敗北に打ちひしがれているモンキーを尻目に、さっさと美術館を脱出した。あとは、脱出用の車に乗り込むだけである。三人は、車に向かい道路を進んで行く。
その時、地の底から恐ろしい声が聞こえてきた。
「待てルニャン! 逮捕だワニ!」
声と共に、道路のアスファルトをぶち破って現れた者がいる……それは、巨大なワニであった。全長は十メートル以上、開いた口には、ナイフのような牙がずらりと並んでいる。もはや、ワニというより恐竜であった。
「な、何だコイツ……」
怯んでいる三人に、巨大ワニはげらげら笑った。
「わしはな、アリゲーター警部だワニ! ルニャン、お前を逮捕するため下水道から呼び出されたワニ!」
そう、このアリゲーター警部は……下水道で育った巨大ワニである。高い戦闘力を持っているが、あまりにも破壊的な捜査手法ゆえに下水道の見回り係に回されていた。しかし今日は特別に、怪盗ルニャン逮捕のため駆り出されたのである。
「この化け物が! 俺のマグナムをくらえニャ!」
ジゲンはコンニャットマグナムを構え、たて続けにぶっ放す。このマグナム弾は、世界でもトップクラスの威力だ。当たれば、マンモスでも倒せる……はずだった。
しかし、銃弾は弾き返された──
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「そんなこと、出来ないニャ!」
言いながら、ルニャンは迫るアリゲーターを睨んだ。ジゲンのマグナムも、ゴエニャンのニャンテツケンも効かない。となると……。
その時、ルニャンの頭に閃くものがあった。彼はアリゲーターの前に飛び出し、背中を向けて尻尾を振る。
「ほれほれ、アリゲーターのとっつあん、俺の尻尾をくれてやるニャ。ただし、食いちぎれたらな」
挑発しながら、ルニャンは尻尾を振った。
「さあ、このルニャンさまの尻尾……食いちぎれるものなら、食いちぎってみろニャ!」
「上等だワニ! 食いちぎってやるワニ!」
アリゲーターは口を開け、ルニャンの尻尾に噛み付いた──
だが、間一髪のところで躱した。と同時に、ルニャンは飛び上がり、空中で一回転する。ムーンサルトプレスの要領で、アリゲーターの頭に飛び乗った。
さらに、両手でアリゲーターの口を閉める。
「どうだニャ! これで、口は開けられないニャ!」
そう、ワニの噛む力は確かに凄まじい。肉食獣の中でもトップクラスであろう。だが、口を開ける力は意外と弱いのだ。普通サイズのワニなら、老人の握力でも口を閉ざすことが出来る。
アリゲーターとて例外ではない。ルニャンに口を掴まれ、開けることが出来ない。
想定外の状況を前に、混乱するアリゲーター。その隙に、ルニャンはダクトテープで警部の口を縛り上げた。ぴょんと飛び降り、大げさな仕草でお辞儀する。
「アリゲーターのとっつあん、またニャ!」
からかうような口調で言うと、ルニャンたちは逃げて行った──
翌日、下水道に恐ろしい声が響き渡っていた。巨大なワニが、尻尾を振り回し怒り狂っていたのだ。
「くそう! 許さんぞルニャン! 必ず逮捕してやるワニ!」
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