25 / 179
ヤンキーの会話についての話
しおりを挟む
ヤンキー同士の会話というのは、基本的には呆れるほど中身がありません。大概は「あれ凄くね?」「あいつ調子こいてるよな」みたいな言葉を交わしています。あとは、デタラメの武勇伝を語るくらいでしょうか。
ただ、その会話を黙って聞いていると、なかなか面白いものです。かつて、とある漫才コンビのネタを「あんなのはチンピラの立ち話だ」と酷評した大御所の芸人がいたそうですが、確かにチンピラやヤンキー同士の会話には、笑える部分がありますね。
例えば、ヤンキーAが「俺のいた学校はよお、教室でシャブ射ってたり廊下をバイクで走ったりしてたぜ」などというような話をしたとします。横で聞いてる私は「こいつ、また嘘ついてるよ」などと思うのですが……ヤンキーBは「あー、わかるわかる。あるあるだよな」なとと言って、明らかな嘘に話を合わせるのです。
これは何故かと言いますと、ヤンキーBには自身がワルであることを証明したい、という思いがあります。したがって、ヤンキーAの話すデマに対し「そんなの大したことじゃねえよ。ワルな俺の地元じゃ、よくある話さ」という反応をして見せるのです。「その話、一般人は信じねえよな。ワル同士でないと分からないぜ」とでも言いたげな表情で、嘘の話に同調する……これは、なかなかにシュールな光景ですね。
さらに、時には架空の人物について語り合うこともあります。ヤンキーAが「俺の地元には、○○くんって先輩がいてよお、一人で三十人をぶっ飛ばしたんだぜ。超怖いんだよ」などと言い出すと「おう、俺も噂は聞いたことあるよ。超強いらしいじゃん」などと同調するヤンキーBが現れます。これは「他の場所の情報も知ってる俺って凄いでしょ」というアピールなわけですね。
こうして二人は、いもしない伝説の不良について熱く語り合ったりしてしまうのです。
仮に私がヤンキーを無作為に十人ほど集め「昔、東京に板倉恭司って名の伝説の喧嘩師がいたらしいよ」などと言ったとしましょう。ひとりくらいは「ああ、噂は聞いてるよ」みたいなことを言い出すでしょうね。
上に挙げた話は、ただのアホな笑い話ですみます。しかし、ヤンキーのやらかす犯罪の九割くらいは、こうした他愛のない会話から端を発しているように思います。
「暇だな……」
チンピラの一人が、溜まり場でふと洩らした一言。その言葉がきっかけで、犯罪が始まるケースは少なくないのです。ヤンキーやチンピラといった人種は、基本的に暇を潰す手段を知りません。ニュース番組で犯罪の報道がされる時に「犯行の動機は、遊ぶ金が欲しかったためと供述しています」などというアナウンサーの言葉は、これまでに何度も聞いたことがありますよね。
つまり、暇を潰したいから金が欲しい。金が欲しいから奪う……という極めて短絡的な思考から、こうした連中は犯罪を起こします。プロの犯罪者のように綿密な計画を立てたり、面倒な下準備をしたりなどしません。
そう、彼らの犯行は……大抵の場合、溜まり場での誰かの発した何気ない一言が発端になります。「暇だな……」の一言がきっかけで、強盗や窃盗をしでかした少年たちは少なくありません。
さらには、溜まり場で仲間の一人が発した「あいつ、最近ちょっと調子に乗ってるよなあ」というような一言がきっかけで、リンチ殺人に発展するケースまであります。
「あいつ、こないだ○○の悪口言ってたぜ」
「そういや、この前みんなで飲みに行った時、あいつだけ金払わないで帰ったらしいぞ」
「あいつ、どうしようもねえなあ」
などなど。しかし共通の知り合いに対する、この程度の陰口は、どこの世界にもある話ではあります。普通なら、そこで終わりでしょう。
ところが、ヤンキーの場合「だったら、あいつヤッちまおうぜ」などと言い出す奴が、どこからともなく現れます。その一言がきっかけとなり「じゃあ、俺があいつを呼び出すよ」「そういや、○○もあいつに金貸してたけど返って来ないって言ってたな。○○も呼ぶよ」などと言い出す奴も、どこからともなく現れるのです。
かくして、溜まり場はリンチの計画の場となってしまいます。しかも、たちが悪いことに……彼らは自分たちこそが正義だと思っています。彼らなりの勝手なルールの中で、そこから逸脱した者を悪と決めつけているケースもあります。
しかも、正義感というのは暴走しがちです。デモ隊が暴徒化するケースは少なくないですからね。
さらにヤンキーの場合、リンチの際に誰かが止めに入ろうとすると、「お前ビビってんのかよ」という言葉が飛んできます。いったんリンチが始まる、もしくは始まる流れになってしまったら、個人の力で止めるのは不可能でしょう。これは、他の犯罪についても同じです。
万が一、こうした状況に巻き込まれてしまったら……正直、私には対処の仕方が分かりません。まずはドサクサに紛れ、その場から離れることでしょうか。そして警察に通報するのも一つの手かと。実際リンチというのは、簡単に殺人へと発展します。集団というのは、いったん火が付いてしまうと、簡単には歯止めがかかりません。相手が死んでから、ようやく我に返るケースもあるのです。
ただ、警察に通報したのが誰なのか、意外と簡単に判別されてしまうこともあります。その場合、「あの野郎、チクりやがって」と、通報した人間が標的となることもあるのです。結局は、そうした集団とは最初から付き合わないか、あるいは集団の中で一目置かれる存在になり「あいつボコッてやろうかと思ったけど、○○が止めるんじゃしょうがねえ。やめとくか」という空気を作り出すか、のどちらかでしょうか。
ただ、その会話を黙って聞いていると、なかなか面白いものです。かつて、とある漫才コンビのネタを「あんなのはチンピラの立ち話だ」と酷評した大御所の芸人がいたそうですが、確かにチンピラやヤンキー同士の会話には、笑える部分がありますね。
例えば、ヤンキーAが「俺のいた学校はよお、教室でシャブ射ってたり廊下をバイクで走ったりしてたぜ」などというような話をしたとします。横で聞いてる私は「こいつ、また嘘ついてるよ」などと思うのですが……ヤンキーBは「あー、わかるわかる。あるあるだよな」なとと言って、明らかな嘘に話を合わせるのです。
これは何故かと言いますと、ヤンキーBには自身がワルであることを証明したい、という思いがあります。したがって、ヤンキーAの話すデマに対し「そんなの大したことじゃねえよ。ワルな俺の地元じゃ、よくある話さ」という反応をして見せるのです。「その話、一般人は信じねえよな。ワル同士でないと分からないぜ」とでも言いたげな表情で、嘘の話に同調する……これは、なかなかにシュールな光景ですね。
さらに、時には架空の人物について語り合うこともあります。ヤンキーAが「俺の地元には、○○くんって先輩がいてよお、一人で三十人をぶっ飛ばしたんだぜ。超怖いんだよ」などと言い出すと「おう、俺も噂は聞いたことあるよ。超強いらしいじゃん」などと同調するヤンキーBが現れます。これは「他の場所の情報も知ってる俺って凄いでしょ」というアピールなわけですね。
こうして二人は、いもしない伝説の不良について熱く語り合ったりしてしまうのです。
仮に私がヤンキーを無作為に十人ほど集め「昔、東京に板倉恭司って名の伝説の喧嘩師がいたらしいよ」などと言ったとしましょう。ひとりくらいは「ああ、噂は聞いてるよ」みたいなことを言い出すでしょうね。
上に挙げた話は、ただのアホな笑い話ですみます。しかし、ヤンキーのやらかす犯罪の九割くらいは、こうした他愛のない会話から端を発しているように思います。
「暇だな……」
チンピラの一人が、溜まり場でふと洩らした一言。その言葉がきっかけで、犯罪が始まるケースは少なくないのです。ヤンキーやチンピラといった人種は、基本的に暇を潰す手段を知りません。ニュース番組で犯罪の報道がされる時に「犯行の動機は、遊ぶ金が欲しかったためと供述しています」などというアナウンサーの言葉は、これまでに何度も聞いたことがありますよね。
つまり、暇を潰したいから金が欲しい。金が欲しいから奪う……という極めて短絡的な思考から、こうした連中は犯罪を起こします。プロの犯罪者のように綿密な計画を立てたり、面倒な下準備をしたりなどしません。
そう、彼らの犯行は……大抵の場合、溜まり場での誰かの発した何気ない一言が発端になります。「暇だな……」の一言がきっかけで、強盗や窃盗をしでかした少年たちは少なくありません。
さらには、溜まり場で仲間の一人が発した「あいつ、最近ちょっと調子に乗ってるよなあ」というような一言がきっかけで、リンチ殺人に発展するケースまであります。
「あいつ、こないだ○○の悪口言ってたぜ」
「そういや、この前みんなで飲みに行った時、あいつだけ金払わないで帰ったらしいぞ」
「あいつ、どうしようもねえなあ」
などなど。しかし共通の知り合いに対する、この程度の陰口は、どこの世界にもある話ではあります。普通なら、そこで終わりでしょう。
ところが、ヤンキーの場合「だったら、あいつヤッちまおうぜ」などと言い出す奴が、どこからともなく現れます。その一言がきっかけとなり「じゃあ、俺があいつを呼び出すよ」「そういや、○○もあいつに金貸してたけど返って来ないって言ってたな。○○も呼ぶよ」などと言い出す奴も、どこからともなく現れるのです。
かくして、溜まり場はリンチの計画の場となってしまいます。しかも、たちが悪いことに……彼らは自分たちこそが正義だと思っています。彼らなりの勝手なルールの中で、そこから逸脱した者を悪と決めつけているケースもあります。
しかも、正義感というのは暴走しがちです。デモ隊が暴徒化するケースは少なくないですからね。
さらにヤンキーの場合、リンチの際に誰かが止めに入ろうとすると、「お前ビビってんのかよ」という言葉が飛んできます。いったんリンチが始まる、もしくは始まる流れになってしまったら、個人の力で止めるのは不可能でしょう。これは、他の犯罪についても同じです。
万が一、こうした状況に巻き込まれてしまったら……正直、私には対処の仕方が分かりません。まずはドサクサに紛れ、その場から離れることでしょうか。そして警察に通報するのも一つの手かと。実際リンチというのは、簡単に殺人へと発展します。集団というのは、いったん火が付いてしまうと、簡単には歯止めがかかりません。相手が死んでから、ようやく我に返るケースもあるのです。
ただ、警察に通報したのが誰なのか、意外と簡単に判別されてしまうこともあります。その場合、「あの野郎、チクりやがって」と、通報した人間が標的となることもあるのです。結局は、そうした集団とは最初から付き合わないか、あるいは集団の中で一目置かれる存在になり「あいつボコッてやろうかと思ったけど、○○が止めるんじゃしょうがねえ。やめとくか」という空気を作り出すか、のどちらかでしょうか。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる