兄がΩ 〜うっかり兄弟で番いましたが、今日も楽しく暮らしています。〜

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「……っあ! や……いまイッたばかりなんに……そんなんしたら……」
 僕の耳元に兄が甘くて熱い息を吐く。薄い唇を舌でじっくりとなぞってあげたら、それだけで兄はまた達した。
 僕が兄に気持ちのいい時の声を聞きたいとお願いしたら、兄が「思わず啼いちゃうくらい丁寧にやってみれば?」なんて煽るから、火の点いた僕の欲情は燃えに燃えた。昼間に見た、誓二せいじさんの兄に対する馴れ馴れしい態度も、火に注がれたガソリンの役目を果たした。

 事後、兄は藪から棒に僕に聞いた。
「お前さぁ、何で俺のことが好きなの?」
「えっ」
 こわい。ちょっと攻め過ぎた? それとも、アフターケア不足だろうか?
「あ……もしかして、痛かったですか? 気持ちよくなかったとか」
「いや、気持ち良かったけど」
 兄は艶やかな笑みを浮かべて言う。兄の頬や耳はまだほんのりと赤くて、とてもエッチだ。兄はシーツの上に置いた灰皿に、煙草をぐりぐりと押し付けた。そしてまたすぐに一本点けて、煙をふーっと細く長く吐いた。
「何で兄ちゃんとこういう事しようと思ったん?」
「何でって、お兄さんのことが好きなので」
「ほーん。百歩譲って俺が兄じゃなく姉だったら解るけど」
「でも、お兄さんがお姉さんだったら、なおさら無理じゃないですか? 女の人じゃ、気を付けないと妊娠させちゃいますし」
「ふーん」
 兄は意地悪くニヤリと笑った。
「要は、俺とお前は後腐れのない関係ってことだな」
「んなっ! そ、そういう事じゃないですよぉ」
 兄は喉を鳴らして笑いながら、ころりと仰向けになった。
「じゃあどういう事なんだよ」
 なんだかやけに楽しそうだ。そうやって、僕をからかって。僕は兄の上に乗り上げ、正面から兄を見据えて言った。
「後腐れがどうとかじゃありません。僕は本当にお兄さんが好きなんです。性別とか、血の繋がりとか、どうでもよくなるくらいに、お兄さんが好きです」
「マジかよ」
「マジです」
 ふ、と、兄は笑いとも溜息ともつかないものを吐き出して、長い睫毛に縁取られた瞼を伏せた。はにかんでいるのかな。そんな顔を見せられると、僕はまたむらむらしてしまう。
「ねぇ、お兄さん。今度はゴム無しでしてもいいですか? 僕、お兄さんの中を直に感じてみたい」
「だーめ。ゴムつけないなら挿れさしてやんない」
 兄は両腕を僕の首の後ろに回して引き寄せ、頬にチュッと口付けをくれた。
 僕達はまた、薄皮一枚隔てた情交を結ぶ。兄を背中から腕の中に抱き込み、後ろから挿れた。シーツを引き上げて、二人の身体をすっぽり肩まで包み込む。布の下で僕が兄の片脚を抱え、ゆっくりと抜き挿しを繰り返すたびに、兄は短く息を吐く。
「ねぇお兄さん」
「なに?」
「僕がお兄さんのαで、お兄さんが僕のΩだったらよかったな」
 僕は本家の犬「サイトウくん」のことを思った。サイトウくんは誓二さんから貰ったΩの仔犬をせっせと慈しんでいた。運命の番っていいな。僕もあんな風に、兄を慈しみたい。
「馬鹿。後腐れありありじゃん」
 ありありだって平気です。むしろその方が良かったのかも。僕が険しいハードルをいくつも飛び越えてみせないと、兄は僕の気持ちを信じてくれなさそうだもの。
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