異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫

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77.態勢を整える②(5月21日)

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慎重に閂を外して扉を開ける。

「誰……ダミアン?」

仰向けに倒れたまま杖をこちらに向ける黒いローブの女。ダミアン一家の魔法師か魔導師だ。
その後ろにも座り込み壁で身体を支える人達。ざっと10人程か。皆怪我を負っているようだ。

「アルカンダラのカサドール、イザベルよ。仲間と一緒に助けに来たから中に入るわ。その杖を逸らしなさい」

「助かった…のか……」

ほっとした顔で立ち上がろうとする村人らしき男を、イザベルが制する。

「いいえまだよ。まだグサーノの襲撃が治まったわけでもないし、あなた達が安全な場所に避難できたわけでもない。たぶん今夜も戦闘が続くわ。だから今のうちにあなた達を治療します。お兄ちゃんいいよね」

「ああ。今から子供達5人を連れたカサドールが合流する。怪我人の治療を行うから、もう少しの辛抱だ。イザベル、アリシア達を頼む」

「はいよ!」

イザベルがアリシア達を呼びに行っている間に、最も重症と思われる黒いローブの女の容態を確認する。

「私はいいから……他の人達を……」

気丈な発言だが、どう見てもこの女が最も重症だ。

「ちょっと診せてもらうぞ。どこをやられた?」

「グサーノの尾に叩かれて、あと毒液を……」

「噛まれたりはしてないな?」

「はい……」

女の全身をスキャンする。洞窟でアリシアやアイダ達を拾った時よりも状態は悪い。
全身打撲に複数箇所の骨折。毒液による皮膚の化学火傷。内臓への損傷はなさそうだ。

「お前、魔法師か魔導師だろう。自分で自分の治療はできなかったのか?」

「それは……魔力残量さえあれば……」

戦闘で使い果たしたか。魔法が使えなくなった魔法使いなど、ただの人でしかない。

「カズヤさん!大丈夫ですか?」

子供達を連れたアリシアとアイダ、イザベルが戻ってきた。

「ああ。この女は俺が治療する。アリシアは他の人達を。イザベルはアリシアの手伝い。アイダは周囲の確認と見張りを頼む」

「あの!私にも何ができる事は?」

アンナがそっと手を上げて申し出る。

「わかった。アリシアと一緒に治療の手伝いをしてくれるか?無理はするな」

「はい!」

アリシアがイザベルとアンナを連れて村人達の容態確認に入った。自分は自分の引き受けた仕事をしよう。

「あの……」

倒れた女が何が言いたそうにしている。

「ああ。俺か?俺はアルカンダラの養成所で教官をしているイトーだ。あいつらは俺の仲間だ。紹介は後回しにして、まずはお前の治療からだ」

女の全身を黄色っぽい光で包み、毒消しと化学火傷、骨折の治療を行う。

「何これ……暖かい……」

「治癒魔法は使えるんだろう?だったら同じ事をしてるはずだが」

「そう…なのかしら……」

あっと言う間に光が薄れていき、治癒魔法の発現が終わる。

「どうだ?って……寝たのか?」

女は返事をしない。そのかわり規則正しい呼吸音が聞こえる。手首で触れる脈拍も安定しているし、寝てしまっただけだろう。この女はこのまま放っておこう。
アリシアが診ている他の人達はどうだろう。

「アリシア。どうだ?」

「はい……こういうのはナバテヘラで経験済みなので……ただこの方だけは皮膚の腐食が進行していて……」

こちらを振り返って返事をするアリシアの顔が青ざめている。
毒液を浴びてほぼ一昼夜。浴びるというより部分的に付いた程度だったのだろうが、そのまま放置されていたからか太ももの表皮だけでなく奥の筋肉まで侵食されている。
さっきの女もそうだったが、普通の治療では下から新しい肉が盛り上がってくるまでに相当の時間がかかりそうだ。

「痛みを遮断して、腐食が進んでいる部分を切除してしまおう。皮膚の色はしばらく薄いままだろうが、その方が治りが早い」

「分かりました。私は何を?」

「傷口の前後を包帯で縛り上げて止血。それから痛みを消す魔法を」

「はい!」

◇◇◇

用意ができた患者の太ももを、患部より少し大きめに抉り取る。この抉る作業そのものも魔法を使うから、出血はほとんどない。
化学火傷は骨までは達していないようだ。
患者を切り取ったら、直ちに再生を行う。血管や神経に意識を集中させて、筋肉や皮を再生させていく。
その様子をアンナが食い入るように見ている。
結構グロテスクだと思うのだが、見てしまったものは仕方ない。

再生が終わるまで、およそ10分ぐらいかかった。

「よし。この人はもう大丈夫だろう。一晩は鎮静魔法を掛けておこう。他の人の容態は?」

「はい。骨折や擦り傷の治療は終わりました。毒液にやられていた部分は、あちらの魔導師さんが水洗いを指示していたらしく、軽症の方も多かったのは幸いでした」

「わかった。じゃあ改めて作戦会議といこう。入口近くでアイダと合流するぞ」

◇◇◇

「だからさあ。奴らの接近が読めないのがマズいんだよね。音で探ろうにも、ずっと地面に耳当ててる訳にもいかないじゃん。探知魔法は風を使うから、土の中では使えないし」

「少なくとも真後ろに突然現れる事態は避けたいな。カズヤ殿、何かいい方法はないだろうか」

食糧庫の入口、一段のステップに腰掛けて皆と話す。
アンナもちょこんと俺とアリシアの間に座っている。

物理的に見えない場所にいる魔物を探知する方法。
地上や空中ならば、イザベルの言うとおり風魔法の応用による探知が有効だ。
これが地中となるとどうだろう。
例えば道路の下に生じた空洞を検知するための地中レーダーなどがあるが、あれは手押しの芝刈り機のように自身が移動していかないといけない。

地中レーダーか。
例えば杭に地中レーダーの機能を付与すれば、定点観測は可能かもしれない。
どうやって?それはほら、一応俺って魔道具開発を主任務にする教官待遇魔導師らしいし、やってみる価値はある。

「アンナ。杭と平板ってあるか?長さ1メートルか2メートルほどでいいんだが」

「杭ですか?細い丸太の片側を削っただけの物で良ければ、裏に積んであるはずです。平らな板は屋上か食糧庫の中にあるかもしれません」

「屋上に上がれるのか。よし、俺とアイダ、イザベルで食糧庫の周囲に杭を打つ。間隔は10メートル毎だ。アリシアは小型ドローンで食糧庫の屋上から周囲を撮影して、板に見取り図を書いてくれ。板が無ければ屋上に直接書いてしまえ。アンナはアリシアの手伝いな。何か質問は?」

「何がどうなるのかはわかんないけど、まあ何とかなるっしょ!ほら!始めるよ!」

イザベルがパンっと手を叩き立ち上がった。

◇◇◇

さて、杭に地中レーダーの効果を発現させるにはどうしたらいいか。
レーダーはそもそも超音波の反射を検出して、その反射の速度や減衰率から物体の位置や大きさを計測している。全く同じ機能を付与するのは難しいだろうが、魔物の接近を探知するだけなら魔力または接近音を検出すればよい。
対潜水艦装備で例えれば、パッシブソノブイだ。

食糧庫の裏に積んであった丸太を10メートル間隔で地中深く打ち込んで、地上に残った一端の表皮を剥く。
ゴブリンから回収した小さな魔石を埋め込み、サインペンで魔石の周囲を囲むように円を描く。
円に沿って書き込む言葉は、単純に英語だ。

“Detect the magic of monsters within 10 meters”

魔物とは“apparition”か、“Demon”なのか、あるいは“Gusano”のほうがいいのかわからないが、まあ上手く検知できなければ書き直せばいい。杭の表面を削れば書き直しも可能だ。

アイダとイザベルが次々と打ち込んでいく杭全てに同じ細工を行う。
食糧庫の外壁から10メートル離してぐるりと囲むように杭を打ち終わる頃には、すっかり日が陰っていた。

「カズヤさん!見取り図ってこんな感じでいいですか?」

屋上から降りてきたアリシアが、一枚の板を見せてくれた。
画板サイズの板には、食糧庫を中心とした周囲の様子がだいたい1/50ぐらいの縮尺で描かれている。先程打ち込み終わった杭も本数まで正確に書き込まれている。

「ああ。充分だ。あとは……」

見取り図が描かれた板の裏側に魔石をはめ込み、表示板を作成する。
今度書き込む言葉は“Flash the position of the stake that detected the magic power in red”だ。

さて、どうなることやら。
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