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襲撃
77.戦闘の事後処理
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佐伯に渡した竹筒の中身が空になる頃、廃寺にいた生き残りを連れて、黒と白が帰ってきた。
弥太郎も連れてきている。
近づいてくる者たちの顔を見て、佐伯が竹筒を放り出して駆けだした。
一人の若者を抱き上げ、何やら喜んでいる。息子が見つかったようだ。
今回の戦闘で助かった者達も意識がはっきりしたようだ。銘々が生還を喜んでいる。
佐伯が若者を連れて戻ってきた。紅、黒、白も近くに来る。
「斎藤殿、息子の次郎だ」
まさか次男だから次郎か……なんと安直な……
「名前が安直だとでも思ったか?我が家の風習でな、初陣を切るまでは簡単な名前にしているのだ。どうせ名乗りなどいくらでも変えられるからな」
口に出ていたらしい。
確かこの若者の傷は脳震盪と足の骨折だったか。大方落馬して踏まれたか。
「次郎、お前どこを怪我したのだ?何をしておった?」
「はい、矢傷を受け落馬しました。そのまま動けなくなっていたところを、こちらの方々に助けられ、亡くなった者たちの埋葬を済ませたところです」
次郎という若者は、少々ばつが悪そうに俯き加減で報告している。まあ襲撃に驚いて落馬して踏まれたなど、正直には言えないだろう。
「そうか。埋葬を済ませたか。俺の息子としてしっかりやっておったのだな!」
佐伯が次郎を手放しで褒めている。
「よし!決めた!」
佐伯が何かを決心して、俺に向き合う。
「斎藤殿!我が一族郎党を貴殿に預ける。生き残った者たちと、その家族も好きに使ってくれ」
「そんな大事なこと、皆に相談せずに決めていいのか?」
「なに、皆も同じ気持ちだろう。その代わり、ここは俺の首で収めてはもらえんか?」
いや……ここで佐伯を失うのはまずい。三善の爺さんの目論見どおりに、俺がこの地域を治めるようになるのなら、この男は絶対に必要だ。
「何を言っている。一族郎党を預けるのだろう?だったらその長が欠けるのは道理に合わない。当然お前も俺に預かられてもらうぞ?」
「いいのか?誰かがこの戦の責任を取らねばならんぞ?」
「責任を取るべきは少弐家当主だろう。その下っ端のお前ではない。弥太郎。今回の顛末をお前はどう報告する?」
「そうですな……佐伯殿はタケル様の里に肉薄するも奮戦むなしく討ち死になされました。御一門も皆奮戦されましたが、里に手が届くものなく全滅。わずかに生き残った足軽数名をタケル様がお癒しになり、自分達の村に帰らせました……といったところで如何でしょう」
「だそうだが、それで少弐家に通用しそうか?」
俺に尋ねられた佐伯が、腕組みをしてしばらく考える。
「そうだな…まあ儂は実際死んだようなものだし、今回助かった者たちも本来なら全員死んでいたところだ。嘘はついていないな」
「じゃあ決まりだな。お前たちは俺の指示に従ってもらう。まずは亡くなった者たちの埋葬を頼む」
「了解した。早速取り掛かる。遺品は貰ってもいいか?」
「もちろんだ。家族に届けてやって欲しい」
こうして、局地的だが和睦が成立した。
佐伯軍のうち、生き残った者は佐伯本人を含めて50名だった。
俺達に被害はない。里に残した小夜と青に連絡し、和睦と全員の無事を伝える。
小夜が片付けの手伝いを申し出てくれたが、ここは断る。わざわざ俺の弱点を晒す必要もないだろう。
佐伯達はこのままこの地で野営をしながら死者を弔い、その後に領地である宗像に戻ることになった。
埋葬地は戦場を見下ろせる小高い丘の上に決まった。死者の生まれ故郷の方角である北に開けた土地だ。
生き残った者達の武器と鎧はそのまま持ち帰らせる。
死者の分も遺品として持ち帰るものは許可した。
これで現場レベルの戦後処理は一段落だ。
明日からは俺達も手伝って死者を弔わなければならない。今夜ぐらいは里でゆっくり休もう。
里に帰ると子供達の熱烈な歓迎を受けた。
「タケルさん!心配してました!」
これは小夜。怪我人の治療のために飛び出して行きそうになっていたのを、青と椿達が止めてくれたらしい。
「まあタケルさんが負けるとは思ってなかったけどね!」
梅は最近若干ツンデレキャラになりつつある。子育ても一段落し、母であるプレッシャーからも少しづつ解放されはじめたのだろう。
「いっぱい敵をやっつけてたなあ!俺も戦いたかったぜ!」
杉の言葉に松も頷いている。いや、お前達にはまだ早い。それにお前達を戦場に、少なくとも前線に駆り出すつもりはない。
とりあえず皆と一通り抱き合ったあと、夕食を摂りながら戦勝報告をする。
佐伯達の一族郎党が仲間になったこと。とりあえず明日は主だった者達で死者の弔いに行くこと。
そして今後の見通しについてだ。
三善の爺さんが語っていたことが本当なら、俺をこの地の「地頭」のようなポジションに仕立てたがっている。それ自体はやぶさかではないが、別に少弐家に仕えるつもりはない。
ただ、縁ができた人々が豊かに暮らしていけるならと思っている。そのために領地が必要なら領地を切り取るし、力が必要ならその力を行使することも厭わない。
弥太郎が少弐家当主に報告する際には、その場を監視し、仮に再攻撃の指示を出すようなら俺と紅で斬り込む。
そんな話をして、今日は解散にした。
弥太郎も連れてきている。
近づいてくる者たちの顔を見て、佐伯が竹筒を放り出して駆けだした。
一人の若者を抱き上げ、何やら喜んでいる。息子が見つかったようだ。
今回の戦闘で助かった者達も意識がはっきりしたようだ。銘々が生還を喜んでいる。
佐伯が若者を連れて戻ってきた。紅、黒、白も近くに来る。
「斎藤殿、息子の次郎だ」
まさか次男だから次郎か……なんと安直な……
「名前が安直だとでも思ったか?我が家の風習でな、初陣を切るまでは簡単な名前にしているのだ。どうせ名乗りなどいくらでも変えられるからな」
口に出ていたらしい。
確かこの若者の傷は脳震盪と足の骨折だったか。大方落馬して踏まれたか。
「次郎、お前どこを怪我したのだ?何をしておった?」
「はい、矢傷を受け落馬しました。そのまま動けなくなっていたところを、こちらの方々に助けられ、亡くなった者たちの埋葬を済ませたところです」
次郎という若者は、少々ばつが悪そうに俯き加減で報告している。まあ襲撃に驚いて落馬して踏まれたなど、正直には言えないだろう。
「そうか。埋葬を済ませたか。俺の息子としてしっかりやっておったのだな!」
佐伯が次郎を手放しで褒めている。
「よし!決めた!」
佐伯が何かを決心して、俺に向き合う。
「斎藤殿!我が一族郎党を貴殿に預ける。生き残った者たちと、その家族も好きに使ってくれ」
「そんな大事なこと、皆に相談せずに決めていいのか?」
「なに、皆も同じ気持ちだろう。その代わり、ここは俺の首で収めてはもらえんか?」
いや……ここで佐伯を失うのはまずい。三善の爺さんの目論見どおりに、俺がこの地域を治めるようになるのなら、この男は絶対に必要だ。
「何を言っている。一族郎党を預けるのだろう?だったらその長が欠けるのは道理に合わない。当然お前も俺に預かられてもらうぞ?」
「いいのか?誰かがこの戦の責任を取らねばならんぞ?」
「責任を取るべきは少弐家当主だろう。その下っ端のお前ではない。弥太郎。今回の顛末をお前はどう報告する?」
「そうですな……佐伯殿はタケル様の里に肉薄するも奮戦むなしく討ち死になされました。御一門も皆奮戦されましたが、里に手が届くものなく全滅。わずかに生き残った足軽数名をタケル様がお癒しになり、自分達の村に帰らせました……といったところで如何でしょう」
「だそうだが、それで少弐家に通用しそうか?」
俺に尋ねられた佐伯が、腕組みをしてしばらく考える。
「そうだな…まあ儂は実際死んだようなものだし、今回助かった者たちも本来なら全員死んでいたところだ。嘘はついていないな」
「じゃあ決まりだな。お前たちは俺の指示に従ってもらう。まずは亡くなった者たちの埋葬を頼む」
「了解した。早速取り掛かる。遺品は貰ってもいいか?」
「もちろんだ。家族に届けてやって欲しい」
こうして、局地的だが和睦が成立した。
佐伯軍のうち、生き残った者は佐伯本人を含めて50名だった。
俺達に被害はない。里に残した小夜と青に連絡し、和睦と全員の無事を伝える。
小夜が片付けの手伝いを申し出てくれたが、ここは断る。わざわざ俺の弱点を晒す必要もないだろう。
佐伯達はこのままこの地で野営をしながら死者を弔い、その後に領地である宗像に戻ることになった。
埋葬地は戦場を見下ろせる小高い丘の上に決まった。死者の生まれ故郷の方角である北に開けた土地だ。
生き残った者達の武器と鎧はそのまま持ち帰らせる。
死者の分も遺品として持ち帰るものは許可した。
これで現場レベルの戦後処理は一段落だ。
明日からは俺達も手伝って死者を弔わなければならない。今夜ぐらいは里でゆっくり休もう。
里に帰ると子供達の熱烈な歓迎を受けた。
「タケルさん!心配してました!」
これは小夜。怪我人の治療のために飛び出して行きそうになっていたのを、青と椿達が止めてくれたらしい。
「まあタケルさんが負けるとは思ってなかったけどね!」
梅は最近若干ツンデレキャラになりつつある。子育ても一段落し、母であるプレッシャーからも少しづつ解放されはじめたのだろう。
「いっぱい敵をやっつけてたなあ!俺も戦いたかったぜ!」
杉の言葉に松も頷いている。いや、お前達にはまだ早い。それにお前達を戦場に、少なくとも前線に駆り出すつもりはない。
とりあえず皆と一通り抱き合ったあと、夕食を摂りながら戦勝報告をする。
佐伯達の一族郎党が仲間になったこと。とりあえず明日は主だった者達で死者の弔いに行くこと。
そして今後の見通しについてだ。
三善の爺さんが語っていたことが本当なら、俺をこの地の「地頭」のようなポジションに仕立てたがっている。それ自体はやぶさかではないが、別に少弐家に仕えるつもりはない。
ただ、縁ができた人々が豊かに暮らしていけるならと思っている。そのために領地が必要なら領地を切り取るし、力が必要ならその力を行使することも厭わない。
弥太郎が少弐家当主に報告する際には、その場を監視し、仮に再攻撃の指示を出すようなら俺と紅で斬り込む。
そんな話をして、今日は解散にした。
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