取り壊し反対!偉そうだけど本当は優しい魔法の家が住人を離さないために奮闘するお話

蒼井星空

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いざ安住の地へ

<フィン> 研究成果漁り

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 家さんはやっぱり家さんでさすがだった。
 安っぽいとか言われても凄いとしか言い表せない。

 僕は父上の言葉も思い出していた。
 ”時勢を支配しようとせず、必要だと思うことをやれ”というのは、家さんの言った、”まずできることをやろう”というのと同じに思えた。
 魔道具を認めてもらう方法は全く思い浮かばないけど、気分はだいぶ変わった。

 そして僕は王城の図書室を訪ねた。
 ここには貸出可能な本のほかに、古書なども保管されている。
 この国では今はあまり使われていない魔道具だが、かつて研究されたことはあるんだ。
 もしかしたら資料が残っているかもしれない。

 僕は司書さんに話をして古書を保管している場所に入れてもらう。
 鼻に感じるのは時の風に包まれた香り……ではなくほのかな古紙の匂い。やはり僕の語彙は少ないのだろうか?それとも表現力だろうか?

「フィン様、こちらに過去の研究資料があります。どのような研究をお探しでしょうか?」
「ありがとう。ここからは自分で探すよ。どんな研究かをそもそも特定できていないんだ」
「そうでしたか。こちらに研究成果のリストなどもあります。作りかけですがもし参考になれば。それでは何かありましたらお声がけください」

 司書さんはとても優しい雰囲気の人だったが、どこか憂いを感じさせるその眼差しは気品に満ち、深淵の貴族の令嬢のようだった。
 たしかエルメリアさんだ。美しい透き通るような銀髪を背中に流している。
 ハザウェイ公爵家のご令嬢だったと思うのでイメージはおかしくない。ただ、あまり社交の場に出てこない人なので記憶が薄い。

 司書をしていることを知って少し驚いた。
 ハザウェイ公爵は中立の立場だったと思うが、血のつながりや交友関係はわからない。
 王位継承争いをしている中で、どういうつながりを持った人かわからないからあまり込み入った話はしづらい。


 僕は研究成果のリストを漁る。
 ある程度まとめられている中にそれっぽいものがあった。
 僕が選んだのは”魔力病に関する研究"、"人体に関する研究"、"癒しの術に関する研究"の3つだ。

 魔力病に関する研究を選んだのは、一応だ。
 家さんを信じているけども……。
 
 僕はひたすら研究資料を読む。
 今日も明日も予定はない。
 ひたすら読む。
 そして気になることをメモする。

 魔力病に関する研究はあんまりだった。
 家さんから聞いた通りで魔力的な問題だという前提に立っているものばかりであまり参考にならない。
 その中で唯一これはと思ったのは魔力病にかかった人の子供が同じような症状が出たときに回復魔法をかけたら治った場合があるという記述だ。
 厳密には魔力病を発症したとされていないからメモ書きのような感じだったが、これは肉体の不調の段階で治せたからじゃないのか?
 すべてではなく"場合がある"、というのがわからないが。

 ただ、それは人体に関する研究でわかった。
 おそらく不調の原因には回復魔法で治せるものと治せないものがあるんだろう。
 厳密に言ってケガなのかどうか。
 生まれてきた時から形がおかしい場合、奇形と呼ばれるがこれは回復魔法で治せない。
 体がその形を覚えているからと魔法の観点から言われているが、人体を構成しているなにかによるものだとその研究には書いてあった。
 どうか兄上の魔力病の原因が回復魔法で治るものでありますように……。

 いや、例え奇形だったとしても治せばいいのか。
 人体の研究は興味深かった。
 外的要因によって治すというか、機能を取り戻すこともできるようだ。

 これならどんな原因でも回復させられる気がする。

 そして魔道具に関する研究だ。
 こちらは案外資料があった。
 もしかして……もしかしなくても魔道具を求める人は多いのかもしれない。
 考えてみれば魔導騎士団なんて国の中ではごく少数だ。
 魔法で仕事をしている人だってそんなに多くない。
 だから魔道具で便利にと考える人は多いんだろう。特に研究者には。

 僕はどんどんページをめくっていく。
 魔道具の話は面白かった。

「フィン様……」
「えっ?」
「フィン様、申し訳ありません。そろそろ施錠の時間でして」
 もう夜だった。
 びっくりするくらい時間が早く経過したみたいだ。

「すまない。熱中してしまって」
「お気持ち、わかります。探し物は見つかりましたでしょうか?」
「あぁ、うん……」
 ハッとなる。
 警戒を怠ってはいけない。

「申し訳ございません、探るような真似を」
「いえ、大丈夫だ……」
 まずい……魔力病の資料を出したままだ。

「魔力病の研究をされているのですか?」
「あぁ。すまない。あまり詮索は……」
 完全に僕の失敗だ。
 彼女にはわかってしまっただろう。

「ミカエル様……でしょうか?」
「……はい」
 彼女は公爵令嬢だ。
 失礼をするわけにはいかない。
 でも、放っておいてほしいという思いは消えない。
 特に興味本位なら……。
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