取り壊し反対!偉そうだけど本当は優しい魔法の家が住人を離さないために奮闘するお話

蒼井星空

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いざ安住の地へ

<フィン> 遠隔念話

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『……フィン……』
「ん?」
「どうされました?何か?」
「いや、なんでもないです」
 
『……フィン……』
 もしかして家さんか?

『そうだ、やっと念話がつながった』
 ちょっと後にしてくれるかな?今団長と話してて……。

『オッケー』
 そう言って家さんとの念話は切れた。
 念話って遠隔でできるものだったっけ?

「王子?」
 ブレイディ団長が急にうつろになった僕を訝しむ。
 
「すみません、少々疲れたようです」
「それはそうでしょう。あと1日走りますし、その次の日は作戦です。今日はゆっくりしてください」
「ありがとうございます」
 あわてて言い訳してしまったが、疲れたのは事実だ。
 やはり騎士団の移動はハードだ。

 それに士気は高い。
 今の団員からしたら初の戦争だ。
 日頃の……もしかしたら一生ないかもしれないと思っていた見せ場でもある。
 そんな中でいきなり防衛なんかさせたら抑えが効かなくなるかもしれない。
 団長が言うのはそういう事だったのかな。

 僕は軍議を行っていた天幕を後にして自分の天幕に入った。

 家さん、びっくりしたよ。

 ……あれ?

「家さん?」

 ……小さい声を出してみたけど反応がない。
 さっきのは幻聴だったのかな?

「家さ~ん!!」

「どうかされましたでしょうか、閣下」
 護衛兵が入ってきた。
 彼は王城警備隊から連れてきた兵士だ。
 さすがにローザを連れてくるのは憚られたため、彼女の同僚で普段僕の警備を担っている人を数名連れてきた。
 そのうちの1人だが……。

「いや、なんでもないんだ、すまない」
「はっ、何かありましたらお呼びください」
 
 もしかして家さん……この状況を見て笑っているような……ギリィ。

 
『もう話しかけていいのか?』
 家さん!

『悪い悪い。もし空振りさせたらどうなるかななんてこれっぽっちも思ってないから』
 家さん!!!
 もう、酷いや。

『ふっふっふっふ。びっくりしただろう?』
 びっくりしたさ。
 そもそも念話ってこんな離れた場所でつなげるの?

『念話を飛ばしているわけではない』
 じゃあなにを?

『いや、お前と会話しているのは念話で、だが』
 なんなのさ。
 
『私の研究の成果だ。お前と今念話しているのはお前に渡した私の外壁だ』
 は?これで??

『そうだ。もともと意識を別の場所に飛ばすのはできたんだが、自分の一部を別の場所におくればもっと遠くにいても会話できるんじゃないかと思ってな。やってみたらこの通り。上手くいった』
 仕組みが全く分かんない。

『たぶんだけど、私のスキルにある分割ってやつが効果を発揮しているんじゃないかと思う。私自身の分割だ』
 そもそも意識を飛ばすって何?

『それはたぶん支援魔法だな。できるようになってから教えてもらったんだが、遠見の魔法があるらしいから、それと同じことをやってるんだと思うぞ』
 それを組み合わせてる?

『直接この魔法とこの魔法って感じじゃないけど、今の状態を実現するために似たような原理を使って現象を引き起こしている感じだな』
 僕にそれを教えてくれることは?

『無理だろうな。お前にはスキルが足りない』
 だよね……。

 それで、何かあった?
 僕を心配してくれてるのかな?

『あぁ、説明しておこうと思ってな。こうやって会話できるなら、何か困ったときに言ってくれれば話せるだろう?』
 話しかけ方を決めたいな。
 さっきみたいなのを何回も繰り返すのはちょっと……。

『よし、では呪文を決めよう。えーと……コンクロイだな』
 コンクロイ?

『あぁ、この世界の言葉とは違う響きだから偶然発音することはなさそうだろう?』
 たしかに。

『今は休止中か?悪いな邪魔をした。早く寝るんだぞ』
 わかった。ありがとう。
 心配してくれて嬉しいよ。

『魔道具の方は進めてるからな。できたらまた連絡する』
 助かるよ。お願いします。

『あぁ。お前も困ったら連絡するんだぞ!』
 うん。

 やはり家さんはいいな。
 落ち着く。
 また明日頑張ろう。
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