44 / 48
第3章 ラオベルグラッド王国の復興
第44話 神様からのオファー
しおりを挟む
「気付いたようだな。そういうことだ。だからそなたを迎えたのだ」
このまま回れ右をして現世に戻っても良いでしょうか?
正直、状況がぶっ飛びすぎて理解を超えていきそうです。
私は間違いなくこの手でライエル様を倒したはずです。
倒すべきは魔族の最後にして最古の四天王であるハルガラヴェスでした。
そのハルガラヴェスが取り憑いたライエル様に一縷の望みをかけて聖属性魔法を使ったのです。
聖属性魔法であれば、完全に闇に染まってなければあわよくば生命だけは残らないかと思いました……。
しかし、同化してしまっていたのかライエル様も一緒に……消し飛ばしたはずです。
「そうだ。そしてあのものはここへやって来た。死者としてな。しかし……」
そこから説明されたライエル様の所業は耳を疑うほど残酷なものでした。
死してなお、聖属性魔法で倒されてなお、私に対しての怒りや恨みが消えなかったそうです。
そして冥界での審判は当然ながら地獄での浄化となったが、素直に従わなかったために神の金槌で叩き潰され、文字通り地獄に落とされたそうです。
それでも強い怒りが消えず、這い出してきてあそこに陣取っているようです。
泣きわめくたびに地獄の看守が冥界のこん棒で殴りつけていたらしいのですが、全く意思を変えないため匙を投げられたそうです。
「そうだったのですね。そんなにもライエル様は……」
それで神様も困っていたとのこと……。
「そなたに罪はないことは我が証明しよう。しかし冥界の番人も地獄の看守も面倒臭がって近寄らんのだ。それで放置していたのだが、まさか地上に魔力を放ったと聞いて対処を考えておったところだ」
それでこのように困った表情というか、呆れた表情をされていたのですね。
神様を困らせるとは、ライエル様……とんでもないですわね。
それは国王陛下や私などではどうしようもできないはずです。
「たとえば彼が愛したものたちに説得させてみるとか……?」
思い浮かぶのはスーメリアや、あのエロフ……ラーヴェと言いましたか……。彼女たちならライエル様に声を届かせることができるかもしれません。
「それができぬのだ。ラーヴェというものは特に浄化が必要なものではなかったのですでに転生済みだ」
なるほど。たしかに、ちょっと婚約者がいる男性との恋を楽しんだだけでは魂の罪とは言えませんわね。
「スーメリアという女も、もうこの世界は懲り懲りだとぼやいて浄化を受け入れた後、さっさと別世界に転生していった」
まさか、スーメリアもですか。
あんなにもライエル様に付き従っていたというのに……まぁ死んでしまったのですから、さっさと流して次に行くのは正しい選択だとは思います。
「そもそも死ねば情念は薄まるのだ。肉体を失うのだからな。それにもかかわらずあそこまで強い執念を持ち続けるというのは一種の才能ではある。もし魔族などが発見すれば、よい傀儡になるだろう。もちろん我の視界の中でそのようなことを許すことはないがな」
たしかに魔族と結託されたら面倒です。
ライエル様の放った黒い影のモンスターは、夜にしか出てこないことや、拠点を移動しないことなどの制約があるように見えました。
そこを魔族や他のモンスターに補われてしまうとかなりやっかいです。
「いっそ、そなたに一度戦ってもらえないだろうか?」
「はっ?」
どうすればよいか、対処法を考えていたら神様がとんでもないことを仰いました。
それは俗に言う丸投げというやつでは?
「ここは生きとし生けるものが辿り着く最後の場所だ。そんな場所での最終決戦。それに負けたら大人しく来世の門をくぐれとでも言えば、諦めるやもしれぬ」
さすがは神様のお言葉。説得力というか、もしかしたらそうかもと思わせる威厳を伴っています。
もちろん、私もかつての婚約者でかつての仲間です。
残念な結果に終わりましたが、彼が穢れをはらって来世に向かうためのお手伝いということであれば、協力することもやぶさかではありません。
『1つ、よろしいでしょうか?』
「なんだ?」
シャドー様が神様に尋ねました。どうされたのでしょうか?
『この場所には精霊の多くはやってこれません。となると、エメリア様の力は制限されることになります。一方で、ライエルの怒りは燃え滾り、執念によって強化されています。この場で戦うのは不利ではないでしょうか?』
「かまいませんわ。魔力は十分にありますし、ここまでついてきてくださったシャドー様とシルフィード様のお力を借りれれば十分ですわ」
私は力強く宣言しました。
ご心配はありがたいですが、もしそれで違う場所で戦ったりすればライエル様の怒りは晴れないでしょう。
「あれっ……エメリア様?……大事な精霊を1体忘れていませんこと?その、世界で唯一のレア属性を持つの美しい淑女のような精霊がいたと思うのですが……」
「ありがたい。では、準備をさせるのでしばし待て。あまりにもそなたに利点のない話ではある故、我が褒美を出そう。それにここは冥界。仮に負けても死にはせぬようにするゆえ、安心して全力で戦ってほしい」
『そうでしたか。ご配慮ありがとうございます』
「ありがとうございます」
そのような配慮までいただいては、なおさら負けられませんわね。
私は入念に自らの状態を確認して戦いに備えました。
地面に座り込んでいじけ始めたメロディアレーゼ様の頭を撫でながら……。
「ふふふ。ツンデレというやつね!あぁ~もう、エメリア様♡」
撫でるんじゃなかった……。
このまま回れ右をして現世に戻っても良いでしょうか?
正直、状況がぶっ飛びすぎて理解を超えていきそうです。
私は間違いなくこの手でライエル様を倒したはずです。
倒すべきは魔族の最後にして最古の四天王であるハルガラヴェスでした。
そのハルガラヴェスが取り憑いたライエル様に一縷の望みをかけて聖属性魔法を使ったのです。
聖属性魔法であれば、完全に闇に染まってなければあわよくば生命だけは残らないかと思いました……。
しかし、同化してしまっていたのかライエル様も一緒に……消し飛ばしたはずです。
「そうだ。そしてあのものはここへやって来た。死者としてな。しかし……」
そこから説明されたライエル様の所業は耳を疑うほど残酷なものでした。
死してなお、聖属性魔法で倒されてなお、私に対しての怒りや恨みが消えなかったそうです。
そして冥界での審判は当然ながら地獄での浄化となったが、素直に従わなかったために神の金槌で叩き潰され、文字通り地獄に落とされたそうです。
それでも強い怒りが消えず、這い出してきてあそこに陣取っているようです。
泣きわめくたびに地獄の看守が冥界のこん棒で殴りつけていたらしいのですが、全く意思を変えないため匙を投げられたそうです。
「そうだったのですね。そんなにもライエル様は……」
それで神様も困っていたとのこと……。
「そなたに罪はないことは我が証明しよう。しかし冥界の番人も地獄の看守も面倒臭がって近寄らんのだ。それで放置していたのだが、まさか地上に魔力を放ったと聞いて対処を考えておったところだ」
それでこのように困った表情というか、呆れた表情をされていたのですね。
神様を困らせるとは、ライエル様……とんでもないですわね。
それは国王陛下や私などではどうしようもできないはずです。
「たとえば彼が愛したものたちに説得させてみるとか……?」
思い浮かぶのはスーメリアや、あのエロフ……ラーヴェと言いましたか……。彼女たちならライエル様に声を届かせることができるかもしれません。
「それができぬのだ。ラーヴェというものは特に浄化が必要なものではなかったのですでに転生済みだ」
なるほど。たしかに、ちょっと婚約者がいる男性との恋を楽しんだだけでは魂の罪とは言えませんわね。
「スーメリアという女も、もうこの世界は懲り懲りだとぼやいて浄化を受け入れた後、さっさと別世界に転生していった」
まさか、スーメリアもですか。
あんなにもライエル様に付き従っていたというのに……まぁ死んでしまったのですから、さっさと流して次に行くのは正しい選択だとは思います。
「そもそも死ねば情念は薄まるのだ。肉体を失うのだからな。それにもかかわらずあそこまで強い執念を持ち続けるというのは一種の才能ではある。もし魔族などが発見すれば、よい傀儡になるだろう。もちろん我の視界の中でそのようなことを許すことはないがな」
たしかに魔族と結託されたら面倒です。
ライエル様の放った黒い影のモンスターは、夜にしか出てこないことや、拠点を移動しないことなどの制約があるように見えました。
そこを魔族や他のモンスターに補われてしまうとかなりやっかいです。
「いっそ、そなたに一度戦ってもらえないだろうか?」
「はっ?」
どうすればよいか、対処法を考えていたら神様がとんでもないことを仰いました。
それは俗に言う丸投げというやつでは?
「ここは生きとし生けるものが辿り着く最後の場所だ。そんな場所での最終決戦。それに負けたら大人しく来世の門をくぐれとでも言えば、諦めるやもしれぬ」
さすがは神様のお言葉。説得力というか、もしかしたらそうかもと思わせる威厳を伴っています。
もちろん、私もかつての婚約者でかつての仲間です。
残念な結果に終わりましたが、彼が穢れをはらって来世に向かうためのお手伝いということであれば、協力することもやぶさかではありません。
『1つ、よろしいでしょうか?』
「なんだ?」
シャドー様が神様に尋ねました。どうされたのでしょうか?
『この場所には精霊の多くはやってこれません。となると、エメリア様の力は制限されることになります。一方で、ライエルの怒りは燃え滾り、執念によって強化されています。この場で戦うのは不利ではないでしょうか?』
「かまいませんわ。魔力は十分にありますし、ここまでついてきてくださったシャドー様とシルフィード様のお力を借りれれば十分ですわ」
私は力強く宣言しました。
ご心配はありがたいですが、もしそれで違う場所で戦ったりすればライエル様の怒りは晴れないでしょう。
「あれっ……エメリア様?……大事な精霊を1体忘れていませんこと?その、世界で唯一のレア属性を持つの美しい淑女のような精霊がいたと思うのですが……」
「ありがたい。では、準備をさせるのでしばし待て。あまりにもそなたに利点のない話ではある故、我が褒美を出そう。それにここは冥界。仮に負けても死にはせぬようにするゆえ、安心して全力で戦ってほしい」
『そうでしたか。ご配慮ありがとうございます』
「ありがとうございます」
そのような配慮までいただいては、なおさら負けられませんわね。
私は入念に自らの状態を確認して戦いに備えました。
地面に座り込んでいじけ始めたメロディアレーゼ様の頭を撫でながら……。
「ふふふ。ツンデレというやつね!あぁ~もう、エメリア様♡」
撫でるんじゃなかった……。
123
あなたにおすすめの小説
偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!
黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」
婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。
罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。
それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。
しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。
「どんな場所でも、私は生きていける」
打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。
これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。
国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……
王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる