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第14話 国王の使者
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「ちょっといろいろと混乱していて言えてなかったんだけど、今回はありがとう、アッシュ♡」
「……」
私は無言で抱きしめられているけど、甘んじて受け入れる。
あのGの大群から救ってもらったのにダンジョンが消滅したことで焦って対応をおざなりにしてしまったことを反省したのよ。
今回に限って言えば、とてもとても珍しいことにダンジョン消滅は彼のせいではないのだから。
むしろ恐慌状態に陥った私たちを助けてくれたんだしね。
「あむあむ」
って、耳たぶを甘噛みする許可なんか出してないわ!パーンチ!!!!
「ん?」
わかってたわよ。どうせ私のパンチなんか蚊でも止まったくらいにしか感じないんでしょ?
知ってるわよ。
「ついに結婚……」
いや、ないから。
確かに助けてもらったし、今までのこと全部許せちゃうって思ってたけど、どうしていきなり結婚なのよ!?
「妄想膨らましてんじゃないわよ!!!」
「えぇ!?!?」
とりあえずとぼけた表情のアッシュから離れ、彼のおでこを小突いた。
「いい?指令を手伝ってもらって、助けてもらって感謝してるって話だからね!?わかった?」
「あっ……あぁ」
それでもまんざらでもない表情をしているアッシュを見つめる。
わかってるわよ。
あなたの好意は。
これだけわかりやすく何度も何度も行動されればわかるわよ。
どう考えても重いけど……重すぎるけど、好きだって言ってくれるのも、守ってくれるのも嬉しいのよ?
ずっと森に閉じ込められていたせいでそこから解放した私に執着してしまっているだけじゃないかとは今でも思うけど、それでも触れ合っていて悪い気分はしないわ。
でも、私には役目があるの。
一般人より遥かに多い魔力量に、優れた魔法技術を持つ魔族。
それによって周囲から恐怖され、場合によっては迫害されてきた魔族を安住の地へ導かないといけないのよ。
私自身がそう決めたの。
それが達成されるか、誰かにこの想いを引き継ぐまでは結婚するつもりはないのよ。
アッシュのことは嫌いじゃないけど……。
むしろずっと助けてほしいけど、それじゃあただ利用しているだけでしょ?
そんなのは嫌なのよ。
こうして私たちが少しだけ甘くて苦い時間を過ごしていると……
「お嬢様……」
「セバスチャン。なにかあったのかしら?」
普段より少し硬い表情のセバスチャンが部屋に入ってきて私に声をかけてきた。
「はい。王宮より使者が……」
「えっ?なぜ……すぐに迎え入れる準備を」
「はい」
私の言葉と共に一斉に執事や侍女たちが動き始める。
王宮からの使者の言葉は王の言葉……。丁重に扱わなければならない。
「それには及びませぬ。今回の訪問先はルイン伯爵ではなく、そちらのアッシュ殿なのだ」
そこへゆったりとした足取りで1人の男が入ってきて宣言した。
貴族らしく……それも王宮の使者らしくフォーマルな黒地に豪奢な飾り付けを施した服を着た男だった。
訪問先がアッシュなのであれば私は手出しできない。
一方で、私が伯爵として場を整える必要はない。
「……」
けれども訪問対象だと言われたアッシュも何も言わない。
そもそも彼はそういった貴族の教育は受けていないでしょうに。
なにせ8歳で"黒き魔の森"に放り込まれたのだから。
「ふむ、そなたがアッシュ・フォン・カイゼルか」
「あぁ」
しかし、使者はアッシュの対応に特に文句を言うつもりはないようだ。
事情を知っているからでしょうか?
「ふむ。では国王陛下の言葉を聞くが良い。国王陛下からの命により、アッシュ・フォン・カイゼル……貴様に王宮への出頭を求める」
「……」
「!?!?」
そして使者はとんでもないことを言いだした。
なぜ?これまで放置しておいて、どうして今になってそのようなことを?
疑問しか感じない。
「いいな。では、ついて来い」
「……なぜ?」
使者はアッシュに命じるが、アッシュは動かない。
「なぜだと?王命である。まさか従わぬつもりではあるまいな!?」
「……10年以上放置しておいて、今さら何の用があるのかということだ。たしか罪人として"黒き魔の森"に入った場合、抜け出すことができれば無罪放免となるという規程だったはず」
「え?」
私はアッシュの言うことにも驚いた。そんな規程があるの?
はじめて聞いたけど、そうね。今まで出て来れた人なんて聞いたことがないから、知っていても知らなくても意味のないことね。
「そうだ。通常の罪人の場合はな」
しかし使者は引かない。
「通常?」
「そうだ。仮にも王族を殺した貴様が通常の罪人として扱われることはない」
「……」
そうだったわね。婚約者だった王女を。
しかし魔力暴走はコントロールできない。事故だ。
その結果が信じられないほど酷いものだったのは事実だけど……いや、あれから調べたけど確か国王陛下は王女を溺愛していたそうね。
私怨ではあるけど、王族殺しの罪が重いのも事実。
「もし断るようなら……」
「いや。行く」
「アッシュ……」
「すまないエリー。騒がせた」
彼は普段の振る舞いからは信じられないほど大人しく使者について王宮へ向かっていった。
寂しそうに……私を振り返ることもなく……。
「……」
私は無言で抱きしめられているけど、甘んじて受け入れる。
あのGの大群から救ってもらったのにダンジョンが消滅したことで焦って対応をおざなりにしてしまったことを反省したのよ。
今回に限って言えば、とてもとても珍しいことにダンジョン消滅は彼のせいではないのだから。
むしろ恐慌状態に陥った私たちを助けてくれたんだしね。
「あむあむ」
って、耳たぶを甘噛みする許可なんか出してないわ!パーンチ!!!!
「ん?」
わかってたわよ。どうせ私のパンチなんか蚊でも止まったくらいにしか感じないんでしょ?
知ってるわよ。
「ついに結婚……」
いや、ないから。
確かに助けてもらったし、今までのこと全部許せちゃうって思ってたけど、どうしていきなり結婚なのよ!?
「妄想膨らましてんじゃないわよ!!!」
「えぇ!?!?」
とりあえずとぼけた表情のアッシュから離れ、彼のおでこを小突いた。
「いい?指令を手伝ってもらって、助けてもらって感謝してるって話だからね!?わかった?」
「あっ……あぁ」
それでもまんざらでもない表情をしているアッシュを見つめる。
わかってるわよ。
あなたの好意は。
これだけわかりやすく何度も何度も行動されればわかるわよ。
どう考えても重いけど……重すぎるけど、好きだって言ってくれるのも、守ってくれるのも嬉しいのよ?
ずっと森に閉じ込められていたせいでそこから解放した私に執着してしまっているだけじゃないかとは今でも思うけど、それでも触れ合っていて悪い気分はしないわ。
でも、私には役目があるの。
一般人より遥かに多い魔力量に、優れた魔法技術を持つ魔族。
それによって周囲から恐怖され、場合によっては迫害されてきた魔族を安住の地へ導かないといけないのよ。
私自身がそう決めたの。
それが達成されるか、誰かにこの想いを引き継ぐまでは結婚するつもりはないのよ。
アッシュのことは嫌いじゃないけど……。
むしろずっと助けてほしいけど、それじゃあただ利用しているだけでしょ?
そんなのは嫌なのよ。
こうして私たちが少しだけ甘くて苦い時間を過ごしていると……
「お嬢様……」
「セバスチャン。なにかあったのかしら?」
普段より少し硬い表情のセバスチャンが部屋に入ってきて私に声をかけてきた。
「はい。王宮より使者が……」
「えっ?なぜ……すぐに迎え入れる準備を」
「はい」
私の言葉と共に一斉に執事や侍女たちが動き始める。
王宮からの使者の言葉は王の言葉……。丁重に扱わなければならない。
「それには及びませぬ。今回の訪問先はルイン伯爵ではなく、そちらのアッシュ殿なのだ」
そこへゆったりとした足取りで1人の男が入ってきて宣言した。
貴族らしく……それも王宮の使者らしくフォーマルな黒地に豪奢な飾り付けを施した服を着た男だった。
訪問先がアッシュなのであれば私は手出しできない。
一方で、私が伯爵として場を整える必要はない。
「……」
けれども訪問対象だと言われたアッシュも何も言わない。
そもそも彼はそういった貴族の教育は受けていないでしょうに。
なにせ8歳で"黒き魔の森"に放り込まれたのだから。
「ふむ、そなたがアッシュ・フォン・カイゼルか」
「あぁ」
しかし、使者はアッシュの対応に特に文句を言うつもりはないようだ。
事情を知っているからでしょうか?
「ふむ。では国王陛下の言葉を聞くが良い。国王陛下からの命により、アッシュ・フォン・カイゼル……貴様に王宮への出頭を求める」
「……」
「!?!?」
そして使者はとんでもないことを言いだした。
なぜ?これまで放置しておいて、どうして今になってそのようなことを?
疑問しか感じない。
「いいな。では、ついて来い」
「……なぜ?」
使者はアッシュに命じるが、アッシュは動かない。
「なぜだと?王命である。まさか従わぬつもりではあるまいな!?」
「……10年以上放置しておいて、今さら何の用があるのかということだ。たしか罪人として"黒き魔の森"に入った場合、抜け出すことができれば無罪放免となるという規程だったはず」
「え?」
私はアッシュの言うことにも驚いた。そんな規程があるの?
はじめて聞いたけど、そうね。今まで出て来れた人なんて聞いたことがないから、知っていても知らなくても意味のないことね。
「そうだ。通常の罪人の場合はな」
しかし使者は引かない。
「通常?」
「そうだ。仮にも王族を殺した貴様が通常の罪人として扱われることはない」
「……」
そうだったわね。婚約者だった王女を。
しかし魔力暴走はコントロールできない。事故だ。
その結果が信じられないほど酷いものだったのは事実だけど……いや、あれから調べたけど確か国王陛下は王女を溺愛していたそうね。
私怨ではあるけど、王族殺しの罪が重いのも事実。
「もし断るようなら……」
「いや。行く」
「アッシュ……」
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寂しそうに……私を振り返ることもなく……。
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