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第21話 王子との会食
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「連日会食させることになってしまって申し訳ない」
「滅相もありません。お誘いありがとうございます」
侍女に促されて部屋に入った私にクリストファー王子が頭を下げてきたので慌ててしまった。
「エリーゼ殿とは一度こうして話してみたかったのだ。どうぞそちらへ」
「ありがとうございます」
私は王子の招きに従って席に着く。
当然だけども入り口側の席であることに安心する。王子までの距離は……私なら一瞬で踏み込める程度の距離。
「みな、下がってくれ」
「……!?」
王子がそう言うと侍女も……なんと騎士たちも下がっていった。
あのう……不穏分子が目の前にいるのですが、大丈夫でしょうか?
当然そんなことは言わずに、私は王子と向かい合った。
「王宮から連れて来た料理人が作るものだから目新しさはないかもしれないが、食材は帝国で調達したものだ。食べてくれ」
王子のその言葉で始まった会食はとても落ち着いたものだった。
いくら蔑まれていようとも、私は王国で育った。
私の口には帝国よりも今日の料理の方が合うし、心が安らぐ。
どうやら好みを押さえられているようね。
私はスープを掬って口に運んだ。素朴ながらも心温まる一品だった。具沢山のポタージュスープで、ジャガイモやニンジン、カボチャがたっぷりと入っている。クリーミーなベースにほんのりとした酸味が加わり、口にするたびに心が落ち着いていった。
「帝国は面白かったかい?」
「……はい」
じっと私を見つめる王子の問いに、私は正直に答える。
「様々な種族が生きるこの国の方がもしかしたら君は……いや、君たちにとっては生きやすいのかもしれないなと思った」
「はい……」
王子はどこまで知って……いや、気付いているの?
穏やかで優し気な視線からはわからない。
「市場の光景は新鮮でした。獣人でも、樹人でも受け入れられる帝都には懐の深さを感じました」
「そうか」
少しだけ王子の表情が曇る。
真正面から王国を否定するような内容だから、むしろよく耐えたというところかもしれないわね。
会話が途切れてしまった中で、メインのお皿が運ばれてきた。
私はそのお皿から柔らかく煮込まれたローストビーフを頂いた。グレービーソースがかかったそれを咀嚼すると、心が和らぎ、懐かしさを覚えた。まるで、家族や仲間と過ごした温かい食卓の記憶がよみがえるようだった。
王国で生まれ、王国で育ったのだから当然よね……。
王子に供されるものとしては素朴すぎるような気もするけど、これも私に合わせてくれたんでしょうね。
「美味しいお料理ですわ」
「気に入ってもらえたなら良かった」
沈黙を破って声を発すると、王子の表情も明るくなった。
こらこら。そんなに顔に出していてはだめよ?
「王宮の料理らしくはないですが、田舎貴族としては懐かしさを感じるものです。それと暖かさを」
「らしくないかもしれないが、私はこれが好きなのです。姉も……もう亡くなってしまいましたが、一緒に楽しんだのを覚えています」
あら……そうだったのですね。
王子の母は現国王の側室で、確か伯爵家の出身だったはず。
あぁ、思い出した。
ルセルダード辺境伯家だ。
なるほど、それならこういった料理を食べたことがあるというのも納得できる。
しかし、亡くなった姉?もしかして……。
「大変失礼ながら、お姉様というのは」
「あぁ、そうだな。幼くして亡くなったからあまり知られていないが、私には姉がいたのだ。彼女はもちろん王女だったが、事故で亡くなってしまった」
「!?!?」
もしかしてクリストファー王子は……アッシュの婚約者だった王女様の弟……?
「滅相もありません。お誘いありがとうございます」
侍女に促されて部屋に入った私にクリストファー王子が頭を下げてきたので慌ててしまった。
「エリーゼ殿とは一度こうして話してみたかったのだ。どうぞそちらへ」
「ありがとうございます」
私は王子の招きに従って席に着く。
当然だけども入り口側の席であることに安心する。王子までの距離は……私なら一瞬で踏み込める程度の距離。
「みな、下がってくれ」
「……!?」
王子がそう言うと侍女も……なんと騎士たちも下がっていった。
あのう……不穏分子が目の前にいるのですが、大丈夫でしょうか?
当然そんなことは言わずに、私は王子と向かい合った。
「王宮から連れて来た料理人が作るものだから目新しさはないかもしれないが、食材は帝国で調達したものだ。食べてくれ」
王子のその言葉で始まった会食はとても落ち着いたものだった。
いくら蔑まれていようとも、私は王国で育った。
私の口には帝国よりも今日の料理の方が合うし、心が安らぐ。
どうやら好みを押さえられているようね。
私はスープを掬って口に運んだ。素朴ながらも心温まる一品だった。具沢山のポタージュスープで、ジャガイモやニンジン、カボチャがたっぷりと入っている。クリーミーなベースにほんのりとした酸味が加わり、口にするたびに心が落ち着いていった。
「帝国は面白かったかい?」
「……はい」
じっと私を見つめる王子の問いに、私は正直に答える。
「様々な種族が生きるこの国の方がもしかしたら君は……いや、君たちにとっては生きやすいのかもしれないなと思った」
「はい……」
王子はどこまで知って……いや、気付いているの?
穏やかで優し気な視線からはわからない。
「市場の光景は新鮮でした。獣人でも、樹人でも受け入れられる帝都には懐の深さを感じました」
「そうか」
少しだけ王子の表情が曇る。
真正面から王国を否定するような内容だから、むしろよく耐えたというところかもしれないわね。
会話が途切れてしまった中で、メインのお皿が運ばれてきた。
私はそのお皿から柔らかく煮込まれたローストビーフを頂いた。グレービーソースがかかったそれを咀嚼すると、心が和らぎ、懐かしさを覚えた。まるで、家族や仲間と過ごした温かい食卓の記憶がよみがえるようだった。
王国で生まれ、王国で育ったのだから当然よね……。
王子に供されるものとしては素朴すぎるような気もするけど、これも私に合わせてくれたんでしょうね。
「美味しいお料理ですわ」
「気に入ってもらえたなら良かった」
沈黙を破って声を発すると、王子の表情も明るくなった。
こらこら。そんなに顔に出していてはだめよ?
「王宮の料理らしくはないですが、田舎貴族としては懐かしさを感じるものです。それと暖かさを」
「らしくないかもしれないが、私はこれが好きなのです。姉も……もう亡くなってしまいましたが、一緒に楽しんだのを覚えています」
あら……そうだったのですね。
王子の母は現国王の側室で、確か伯爵家の出身だったはず。
あぁ、思い出した。
ルセルダード辺境伯家だ。
なるほど、それならこういった料理を食べたことがあるというのも納得できる。
しかし、亡くなった姉?もしかして……。
「大変失礼ながら、お姉様というのは」
「あぁ、そうだな。幼くして亡くなったからあまり知られていないが、私には姉がいたのだ。彼女はもちろん王女だったが、事故で亡くなってしまった」
「!?!?」
もしかしてクリストファー王子は……アッシュの婚約者だった王女様の弟……?
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