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第20話 一族のために
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『エリーゼ様……正直に言って検討に値する案には思えません……。もちろん帝国は我が一族を受け入れてくれるでしょう。しかしその先に待つのは帝国の先兵としての未来です……。現時点では双方望んでいないのかもしれませんが、帝国の行く末はひたすら戦争あるのみです。戦火を広げ続ける限り、必ずや我らは戦場に駆り出され、その力を振るわざるを得なくなるでしょう……』
皇帝陛下との会食を終えて公館に戻った私はクリストファー王子に無難な会食であったことを報告し、自室に戻った。
そこで待っていたエレノア達は既にセバスチャンと通信の魔道具をつないでおり、私は皇帝陛下からの誘いについて話をしたところ大反対されている。
やっぱりそうよね。
でも……
「王国の犬と呼ばれ、蔑まれながら明るくない未来に向かって嫌々歩いていくのと比べてどうか?というところなんだけども」
これが私の本心だ。
王国の中にいたからと言って明るい未来なんか期待できない。
どうせ戦火には巻き込まれるし、その前から嫌な仕事しか待っていないのよ。
私自身が大変なのはいいけど、部下たちも現在進行形で難しかったり、意味が分からなかったり、面倒だったり、厳しい指令に晒されている。
それが変わるだけでも進歩のように感じてしまうのよ。
あの好色そうな皇帝陛下の視線からして私は側室にでもさせられるだろうけど、それさえ受け入れれば今よりはましな状況になると思うのよ。
『繰り返しますが、帝国が覇道を行く限り、我々の状況が改善するとは思えません。さらに主君を裏切って寝返った一族として帝国の中でも陰口を叩かれる立場に置かれるでしょう。恐れられ、蔑まれる状況も変わりません。もしかしたら勝手にやったことだと言われて皇帝自身からも斬り捨てられる可能性があります』
うーむ。
さすがにそんなことをしたら皇帝陛下の言葉の信頼性が失われるからそこまで悪どいことをされるとは思えない。
そこは私の技量次第とも言える。
そんなに若くはないけれども……。
「エリーゼ様、私も……いや、仲間しかいないから言うわね。エリー、自分を皇帝に捧げて一族に安住をとか考えてるんでしょう、このバカ」
「なっ……」
私がセバスチャンと話しながら考えていると、エレノアが暴言を吐きだした。
幼少期から一緒に育った彼女とは何のしがらみや障壁もなく言いたいことを言い合う仲だった。
最近はお互い立場を意識して節度ある関係になってしまったが、なにか嫌なことがあるとお酒を飲んで、騒いで、悪口を言い合って、たまに喧嘩して、発散し合う仲だ。
まわりに他の人がいる状況で罵倒されるとは思わず、ついつい目が点になってしまったけどね……。
「それでもこのままジワジワと身も心もすり減らされるような生活を王国で続けるよりは……」
「だからそんなことないって言ってるのよ。私たちはあなたの元であれば辛い任務でもバカなこと言い合いながらこなしてみせるわ。私だけじゃないわ。ライラもダリウスもカリナもグレゴールもだし、セバスチャンだってそうよ」
うーむ……。
一族のみんなは私に優しい。
私は力なく、王太子の愛人の話も蹴ってしまったせいで状況を悪化させてしまったのに……。
コンコン……。
「はい?どなたでしょうか?」
私たちが言い合っていると、ふいに扉をノックする音が聞こえた。
この部屋には魔法で防音を施しているから私たちの声は聞こえていないと思うけど、なにかあったのかしら?
「失礼します」
入ってきたのはクリストファー王子の侍女の1人。予想外だったが王子からの使いだろうと思い直し、その言葉を待つ。
「クリストファー王子から明日の昼、ルイン伯爵とともに食事を採りたいとのお話があり、お伝えに参りました」
「王子から?」
「はい」
これも受けざるを得ないでしょう。
皇帝陛下の誘いを受けたのに王子の誘いを受けないとか、不敬もいいところよね。
「わかりました。お誘いいただきありがとうございますとお伝え願います」
「ありがとうございます。では、時間になりましたらお迎えに上がります」
ある意味チャンスかもしれないわ。
皇帝陛下との会食を終えて公館に戻った私はクリストファー王子に無難な会食であったことを報告し、自室に戻った。
そこで待っていたエレノア達は既にセバスチャンと通信の魔道具をつないでおり、私は皇帝陛下からの誘いについて話をしたところ大反対されている。
やっぱりそうよね。
でも……
「王国の犬と呼ばれ、蔑まれながら明るくない未来に向かって嫌々歩いていくのと比べてどうか?というところなんだけども」
これが私の本心だ。
王国の中にいたからと言って明るい未来なんか期待できない。
どうせ戦火には巻き込まれるし、その前から嫌な仕事しか待っていないのよ。
私自身が大変なのはいいけど、部下たちも現在進行形で難しかったり、意味が分からなかったり、面倒だったり、厳しい指令に晒されている。
それが変わるだけでも進歩のように感じてしまうのよ。
あの好色そうな皇帝陛下の視線からして私は側室にでもさせられるだろうけど、それさえ受け入れれば今よりはましな状況になると思うのよ。
『繰り返しますが、帝国が覇道を行く限り、我々の状況が改善するとは思えません。さらに主君を裏切って寝返った一族として帝国の中でも陰口を叩かれる立場に置かれるでしょう。恐れられ、蔑まれる状況も変わりません。もしかしたら勝手にやったことだと言われて皇帝自身からも斬り捨てられる可能性があります』
うーむ。
さすがにそんなことをしたら皇帝陛下の言葉の信頼性が失われるからそこまで悪どいことをされるとは思えない。
そこは私の技量次第とも言える。
そんなに若くはないけれども……。
「エリーゼ様、私も……いや、仲間しかいないから言うわね。エリー、自分を皇帝に捧げて一族に安住をとか考えてるんでしょう、このバカ」
「なっ……」
私がセバスチャンと話しながら考えていると、エレノアが暴言を吐きだした。
幼少期から一緒に育った彼女とは何のしがらみや障壁もなく言いたいことを言い合う仲だった。
最近はお互い立場を意識して節度ある関係になってしまったが、なにか嫌なことがあるとお酒を飲んで、騒いで、悪口を言い合って、たまに喧嘩して、発散し合う仲だ。
まわりに他の人がいる状況で罵倒されるとは思わず、ついつい目が点になってしまったけどね……。
「それでもこのままジワジワと身も心もすり減らされるような生活を王国で続けるよりは……」
「だからそんなことないって言ってるのよ。私たちはあなたの元であれば辛い任務でもバカなこと言い合いながらこなしてみせるわ。私だけじゃないわ。ライラもダリウスもカリナもグレゴールもだし、セバスチャンだってそうよ」
うーむ……。
一族のみんなは私に優しい。
私は力なく、王太子の愛人の話も蹴ってしまったせいで状況を悪化させてしまったのに……。
コンコン……。
「はい?どなたでしょうか?」
私たちが言い合っていると、ふいに扉をノックする音が聞こえた。
この部屋には魔法で防音を施しているから私たちの声は聞こえていないと思うけど、なにかあったのかしら?
「失礼します」
入ってきたのはクリストファー王子の侍女の1人。予想外だったが王子からの使いだろうと思い直し、その言葉を待つ。
「クリストファー王子から明日の昼、ルイン伯爵とともに食事を採りたいとのお話があり、お伝えに参りました」
「王子から?」
「はい」
これも受けざるを得ないでしょう。
皇帝陛下の誘いを受けたのに王子の誘いを受けないとか、不敬もいいところよね。
「わかりました。お誘いいただきありがとうございますとお伝え願います」
「ありがとうございます。では、時間になりましたらお迎えに上がります」
ある意味チャンスかもしれないわ。
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