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第一章ヒューマニ王国編
守護者決定(sideドラゴニア帝国)
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ジュールはギデオンと雑談をしながら、どうにか今日の分の決済書類を誤魔化そうとしていると宰相であるランドルフが執務室へと遣って来た。
ランドルフは四大公の一人で宰相という地位にいる。赤髪を撫で付け、理知的なファンタムグレイの瞳の顰めっ面が常の壮年の男性だ。
ランドルフのフルネームはランドルフ=ミナミと言う。数代前の竜帝が所謂中二病を患った残念な竜帝だった。そんな残念な竜帝に四大公の名前が与えられたのだ。「四つあるなら四方を護る神獣だよね」と言う謎の発言により決定された。
「陛下、守護者選別が終了しました」
出場者名簿を抱えたランドルフが書類に目を落としながら入室した。それに気付いたジュールとギデオンが入室して来たランドルフへと顔を向けた。
「で?誰が勝ったの?ファンティーヌ嬢かな?」
「おや、よくわかりましたね。はい、ファンティーヌ=アイゼンハワー嬢が優勝しました」
抱えた分厚い書類から一枚取り出すとジュールへと渡そうとし、その手を止める。
「ランド?渡してくれないの?」
ジュールも受け取るつもりで手を出した状態で待機する。それを無視しランドルフの眉間の皺が深くなる。
「陛下、書類が進んでないようですが?」
「え?そう?頑張ってるよ~」
「昨日もそう言っていたと記憶してますが?」
「そうだっけ?」
「私もそう記憶してます」
「裏切ったな!ギデオン!!」
「逃げようとしてますよね?書類は溜まる一方ですよ?最後にその机の天板を見たかも定かではないのですが?」
眼光鋭く睨むランドルフにジュールの目は遭難中。ランドルフは一つ溜め息を吐き出すと新たな書類を差し出す。
「何?」
「長らく探していた彼の神獣様を見付けました」
「えっ!?」
「ただ、種族としてはもう駄目ですね。残っていらっしゃる方で最後です」
受け取った書類に目を通すジュール。最後の番の唯一の子。誰に会う事もなく自分の殻に籠るように書庫から出てこないとある。
ドラゴニア帝国に神の使いであった神獣が住んでいるという事は御伽噺としてしか語られていなかったが、まさか存在し、そして今まさに消える寸前だとは思っていなかったジュールは書類を机に叩き付けると身を翻し、王宮の窓から外へと飛び出した。
「陛下っ!?」
「ちょっ!!」
まさかの行動に驚いた二人はジュールの突飛な行動に引き留める事も出来ずに逃走を見逃す羽目になった。
ランドルフは四大公の一人で宰相という地位にいる。赤髪を撫で付け、理知的なファンタムグレイの瞳の顰めっ面が常の壮年の男性だ。
ランドルフのフルネームはランドルフ=ミナミと言う。数代前の竜帝が所謂中二病を患った残念な竜帝だった。そんな残念な竜帝に四大公の名前が与えられたのだ。「四つあるなら四方を護る神獣だよね」と言う謎の発言により決定された。
「陛下、守護者選別が終了しました」
出場者名簿を抱えたランドルフが書類に目を落としながら入室した。それに気付いたジュールとギデオンが入室して来たランドルフへと顔を向けた。
「で?誰が勝ったの?ファンティーヌ嬢かな?」
「おや、よくわかりましたね。はい、ファンティーヌ=アイゼンハワー嬢が優勝しました」
抱えた分厚い書類から一枚取り出すとジュールへと渡そうとし、その手を止める。
「ランド?渡してくれないの?」
ジュールも受け取るつもりで手を出した状態で待機する。それを無視しランドルフの眉間の皺が深くなる。
「陛下、書類が進んでないようですが?」
「え?そう?頑張ってるよ~」
「昨日もそう言っていたと記憶してますが?」
「そうだっけ?」
「私もそう記憶してます」
「裏切ったな!ギデオン!!」
「逃げようとしてますよね?書類は溜まる一方ですよ?最後にその机の天板を見たかも定かではないのですが?」
眼光鋭く睨むランドルフにジュールの目は遭難中。ランドルフは一つ溜め息を吐き出すと新たな書類を差し出す。
「何?」
「長らく探していた彼の神獣様を見付けました」
「えっ!?」
「ただ、種族としてはもう駄目ですね。残っていらっしゃる方で最後です」
受け取った書類に目を通すジュール。最後の番の唯一の子。誰に会う事もなく自分の殻に籠るように書庫から出てこないとある。
ドラゴニア帝国に神の使いであった神獣が住んでいるという事は御伽噺としてしか語られていなかったが、まさか存在し、そして今まさに消える寸前だとは思っていなかったジュールは書類を机に叩き付けると身を翻し、王宮の窓から外へと飛び出した。
「陛下っ!?」
「ちょっ!!」
まさかの行動に驚いた二人はジュールの突飛な行動に引き留める事も出来ずに逃走を見逃す羽目になった。
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もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
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気が向いたら書きますね
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