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第二章ドラゴニア帝国編

木陰は溜まり場なのだろうか

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 華麗に舞うようにコヒキさん達を翻弄する姿に見入っているとカイルさんが木陰で寝ているのを発見した。その傍でノアさんが本を読んでいる。休憩中?

「ん?カイルか?魔力切れで休憩中だ」

 私の視線に気付いたロウさんが説明しながらカイルさん達の方へと近付く。するとノアさんが顔を本から上げ、私達だと気付くと本を脇に置き、ロウさんから私を奪う。

「う?」

「姫、どうした?」

「ん?ニア?」

 抱き上げたと思ったらまた先程の所へ腰を下ろして膝の上に乗せるノアさんと姫と言う言葉でカイルさんが私が来ているのに気付いた。

 私を取り上げられた?ロウさんは溜め息を吐くと訓練に参加する為なのか何処か行ってしまった。

 顔にかけられていたタオルを捲り、私を確認すると億劫そうに上体を起こす。魔力切れで動くのもしんどいだろうに。

「カイルしゃん、ねんね」

 と言って、カイルさんの額に手を当てて寝かせようとする。子供の力では当然押し戻す事は出来ないけど、カイルさんは素直にまた元の状態へと戻る。

「ニアの手は暖かいですね」

 ひんやりするカイルさんの額を撫で撫でしながら少し魔力を流してあげる。体力回復と魔力譲渡。この微妙な力の調節をするのが得意なんだよね。ジュールさんとかにも試してもらったら失敗してたっけ。

 形の良い額を撫で撫でしているとカイルさんがいつの間にか寝てた。まあ、寝る事で魔力回復力が上がるから良しとしとこう。

 涼しい木陰でぼんやりしていると風が吹き抜け、ノアさんの髪が風で舞い上がる。これを真剣白羽取りしたりしながら遊んでいると組手をしていたファンティーヌさん達が休憩に入った。

 汗をタオルで拭きながら周囲へと視線を向けていたファンティーヌさんと目が合った。

「姫様!」

 途端にパァァァと輝くような笑顔になり、タオルを投げ捨てると此方に向けて走ってきた。落ちたタオルをエレンさんが回収してる。エレンさんもいたんだね。

「姫様、どうしたんですか?」

 全力で走ってきただろうに息一つ乱していないファンティーヌさんは体力お化けですか?

「皆に会いちゃかっちゃんでしゅ」

 と、言うとファンティーヌさんの顔面が溶けた。いや、本当に溶けたら怖いけどデレッデレになったのだ。本当にファンティーヌさんは黙ってたら可愛らしいのに私に関わるとコロコロと表情が変わって、ちょっと残念になる。

「あれ?姫様じゃないですか。今日は訓練の見学ですか?」

 ファンティーヌさんの影からひょっこりと顔を出すエレンさん。その通りですよ。

「あい」

 元気よく答えたらエレンさんが優しく微笑んだ。穏やかなエレンさんは癒しです。
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