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第二章ドラゴニア帝国編
夢
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私はスヴェンさんが取り乱す中、夢を見ていた。
真っ暗な暗闇の中をふよふよと浮かんでいる。地面のようなものは存在しないので安定しない姿勢でくるくると縦回転してみたり、現実では出来ない世界大会の選手も真っ青な捻りを加えての横回転や側転したりしてみたけど一向に何かが起こる事もない。
暫くそのままで目が回るのが逆に楽しくなってしまい調子にのってスピンしていると遠くに光を見たような気がした。
回転するのを止めると案の定、フラフラになってしまい、その場で治るのを待ちながら、どうにか移動したいけどどうやって移動しようかと考える。
感覚的には水の中のような気がしてきたのでクロールで進んでみると簡単に移動する事が出来た。
クロールからバタフライにシフトして進んでいると光の中には黒髪の少年が蹲っていた。
膝を抱え、顔を伏せている姿に何故か、庇護欲を刺激される。私は光に近付くと途端に重力が戻ってきたのか地面を踏み締める感覚が戻ってきたので少し安心した。だってずっとふよふよしてたらやっぱりソワソワするのだ。人間、地に足がついていないとね。
「どうしたの?」
精神世界なだけあり、滑舌は普通だった。現実世界だと噛み噛みだからな、とちょっぴり悲しかった。
「え?」
自分一人だけだと思っていたのに私が出現した事で驚いたのか、少年は顔を上げた。
長めの黒い髪に真っ青なサファイアの瞳の綺麗な美少年だった。十六、七位だろうか?本当、私は美形遭遇率高い。こちらを見上げる蒼の瞳は涙に潤み、擦ったのか目元が赤くなっている。今もはらはらと流れる涙。とても綺麗な泣き顔に私は言い様のない動悸に襲われた。
同時に全身が粟立ち、私の感情とは関係無く本能が興奮していくのを感じた。
「君は?」
「私はニア。貴方は?」
「名前…僕にも名前があるのだろうか?」
悲しそうに歪む顔に私もなんか切なくなる。それにしても名前を忘れでもしたのかな?そんな事ってある?
少年の隣に座るとビクッと体が揺れた。その表情からも驚きが伝わってくる。なんだろう?初対面で馴れ馴れしくし過ぎたのかな?
そう思って、少し離れると少年は悲しそうに眉を下げた。なんなんだろ?隣に座る事で私の本能が本格的に騒ぎ出す。それを押し込めて、少年へと手を伸ばす。
「君は僕が怖くないの?」
さらりとした黒髪の感触を確かめながら撫でていると少年がポツリと呟く。
「なんで?」
撫でられて気持ち良いのか目を瞑った少年の長い睫毛をぼんやりと眺める。
「なんでって…」
困惑しているのは十分伝わるけれど私は少年から何もされていないし、心当たりもない。だから怖くないし、怯える必要など無い。
「怖くないよ」
小首を傾げるとほんの少しだけ嬉しそうに笑った。それが私の心臓を握り潰さん勢いできた。
平静を装いながら乱暴に打つ心臓を上から押さえる。けれど自己主張が激しく、なかなか鎮まってくれない。
「また、会える?」
膝を抱えたまま、こてりと首を傾げる少年と離れたくないと何処かで声がする。けれど覚醒が近いのか私の体が透け出した。
「うん。またきっと、近いうちに会えるよ」
確証など無いのに確信があった。きっとまた直ぐに会えるだろうと。本能で感じた数々の感覚。きっと、彼はーーーーー
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※作者よりお知らせ※
リアルが忙しくなり、いつ更新できるのか定かではない為、一旦ドラゴニア帝国編が終了したら完結にさせていただきます。
章完結まではこの話を含めて十五話あります。引き続き読んでいただけるとありがたいです。
読んでいただいている方々には大変申し訳ありません。
真っ暗な暗闇の中をふよふよと浮かんでいる。地面のようなものは存在しないので安定しない姿勢でくるくると縦回転してみたり、現実では出来ない世界大会の選手も真っ青な捻りを加えての横回転や側転したりしてみたけど一向に何かが起こる事もない。
暫くそのままで目が回るのが逆に楽しくなってしまい調子にのってスピンしていると遠くに光を見たような気がした。
回転するのを止めると案の定、フラフラになってしまい、その場で治るのを待ちながら、どうにか移動したいけどどうやって移動しようかと考える。
感覚的には水の中のような気がしてきたのでクロールで進んでみると簡単に移動する事が出来た。
クロールからバタフライにシフトして進んでいると光の中には黒髪の少年が蹲っていた。
膝を抱え、顔を伏せている姿に何故か、庇護欲を刺激される。私は光に近付くと途端に重力が戻ってきたのか地面を踏み締める感覚が戻ってきたので少し安心した。だってずっとふよふよしてたらやっぱりソワソワするのだ。人間、地に足がついていないとね。
「どうしたの?」
精神世界なだけあり、滑舌は普通だった。現実世界だと噛み噛みだからな、とちょっぴり悲しかった。
「え?」
自分一人だけだと思っていたのに私が出現した事で驚いたのか、少年は顔を上げた。
長めの黒い髪に真っ青なサファイアの瞳の綺麗な美少年だった。十六、七位だろうか?本当、私は美形遭遇率高い。こちらを見上げる蒼の瞳は涙に潤み、擦ったのか目元が赤くなっている。今もはらはらと流れる涙。とても綺麗な泣き顔に私は言い様のない動悸に襲われた。
同時に全身が粟立ち、私の感情とは関係無く本能が興奮していくのを感じた。
「君は?」
「私はニア。貴方は?」
「名前…僕にも名前があるのだろうか?」
悲しそうに歪む顔に私もなんか切なくなる。それにしても名前を忘れでもしたのかな?そんな事ってある?
少年の隣に座るとビクッと体が揺れた。その表情からも驚きが伝わってくる。なんだろう?初対面で馴れ馴れしくし過ぎたのかな?
そう思って、少し離れると少年は悲しそうに眉を下げた。なんなんだろ?隣に座る事で私の本能が本格的に騒ぎ出す。それを押し込めて、少年へと手を伸ばす。
「君は僕が怖くないの?」
さらりとした黒髪の感触を確かめながら撫でていると少年がポツリと呟く。
「なんで?」
撫でられて気持ち良いのか目を瞑った少年の長い睫毛をぼんやりと眺める。
「なんでって…」
困惑しているのは十分伝わるけれど私は少年から何もされていないし、心当たりもない。だから怖くないし、怯える必要など無い。
「怖くないよ」
小首を傾げるとほんの少しだけ嬉しそうに笑った。それが私の心臓を握り潰さん勢いできた。
平静を装いながら乱暴に打つ心臓を上から押さえる。けれど自己主張が激しく、なかなか鎮まってくれない。
「また、会える?」
膝を抱えたまま、こてりと首を傾げる少年と離れたくないと何処かで声がする。けれど覚醒が近いのか私の体が透け出した。
「うん。またきっと、近いうちに会えるよ」
確証など無いのに確信があった。きっとまた直ぐに会えるだろうと。本能で感じた数々の感覚。きっと、彼はーーーーー
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※作者よりお知らせ※
リアルが忙しくなり、いつ更新できるのか定かではない為、一旦ドラゴニア帝国編が終了したら完結にさせていただきます。
章完結まではこの話を含めて十五話あります。引き続き読んでいただけるとありがたいです。
読んでいただいている方々には大変申し訳ありません。
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