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第28話:一人で歩く、その足元に誇りを
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「第一王子殿下には、今回は“単独で”の視察任務に就いていただきます。」
そう告げられたのは、王国内でも比較的平穏な地方領――リエナ村の視察だった。
形式的には“農業振興の視察”だが、将来的な国政参加を見据えた“試練”でもあった。
「アレス、今回は同行できないってさ。」
「……承知しています。」
「……いや、もうちょっと食い下がってくれてもいいのに!」
「そうすれば、“カノン様が一人でできる”という信頼を、傷つけることになります。」
「…………ちょっと寂しいけど、納得した!」
アレスは、ぎりぎりの理性を守って微笑んだ。
リエナ村に到着した私は、予想外の歓迎を受けた。
「おおっ、王子様が!しかも、ほんとに一人で!?」
「まだちっちゃいのに、しっかりしてらっしゃるなぁ……。」
(……ちっちゃい言うな!)
視察は順調だった。
しかし、地元の案内人である村長の娘・ニナが、ふと口にした一言が私の心を引っかけた。
「王子様って、ずっと守られてきた人ってイメージだったけど、実際は……ちゃんと、人の目を見て話すんだね。」
「え?」
「ほら、貴族とか偉い人って、こっちのこと見てないのに話すでしょ?でも、王子様は違うんだね。」
言われてみて、自分がしていたことに気づいた。
一人でいるぶん、私は相手の顔や空気を自然と見ていたのかもしれない。
(……そっか。俺、意外と“やれてる”じゃん。)
視察の最後、ニナがこっそり教えてくれた。
「この村ね、来年からちょっと水害の危険が出るかもしれないの。上には報告したけど、動きは鈍くて……。」
「……わかった。俺からも、ちゃんと伝えるよ。」
「ありがとう、王子様。やっぱり、来てくれてよかった。」
その笑顔が、どんな報告書よりも価値のある“報酬”だった。
王都に戻る馬車の中。
迎えに来ていたアレスは、無言で私の顔を見た。
「ん?どうした?」
「……安心しました。“誇り”を持って、戻ってこられた顔をしています。」
「……そりゃまあ、俺、ちょっと成長したからね?」
アレスは小さく微笑んだ。
「……次に誰かに何か言われたら、“あの方は、王子としての任務を一人で全うされた方です”と、胸を張って言えます。」
その言葉が、なんだかくすぐったかった。
カノン・ライエル・フィルディア、8歳と半年。
はじめての“ひとりの任務”を、確かに歩き終えた日だった。
そう告げられたのは、王国内でも比較的平穏な地方領――リエナ村の視察だった。
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「…………ちょっと寂しいけど、納得した!」
アレスは、ぎりぎりの理性を守って微笑んだ。
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「え?」
「ほら、貴族とか偉い人って、こっちのこと見てないのに話すでしょ?でも、王子様は違うんだね。」
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(……そっか。俺、意外と“やれてる”じゃん。)
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「……次に誰かに何か言われたら、“あの方は、王子としての任務を一人で全うされた方です”と、胸を張って言えます。」
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はじめての“ひとりの任務”を、確かに歩き終えた日だった。
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