何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

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第31話:貴族令嬢の正しい攻略方法 ~でも、王子はルートをすっ飛ばす~

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「――王子殿下には、婚約話が持ち上がっております。」

「……は?」

あまりの急展開に、私とアレスは同時に固まった。

「お相手は、北方の有力家門、ディアレル侯爵家のご息女。由緒正しく、品行方正、才色兼備で……。」

(あー……“いかにも”って感じの人だ。)



数日後、紹介の席で対面した彼女――セリシア=ディアレル嬢は、まさに絵に描いたような貴族のお嬢様だった。

「このたびは光栄でございます、王子殿下。私は家の名に恥じぬよう、日々自省と鍛錬を……。」

(……完璧すぎて逆に怖い。)

けれど、その美しい微笑の裏に、わずかな影が見えた。

(あの目……“諦め”の色だ。)



私はアレスを連れて、こっそりセリシア嬢の身辺を探ってみた。
すると浮かび上がってきたのは――

「セリシア嬢、パンが……好き?」

「はい……幼い頃から、母に隠れて町のベーカリーに通っていたのです。……でも、それは“ディアレルの娘”としては恥ずべきこととされて。」

「それで、侯爵家から出られない?」

「ええ……私は、籠の中の鳥なのです。」

私は言った。

「じゃあ、逃げようか。パン屋の息子と結婚して、幸せになればいい。」

「……え?」

「いいから、俺に任せて!」



アレスは頭を抱えていた。

「……なぜ、第一王子が、貴族令嬢をパン屋に嫁がせようとしているのですか。」

「えーと、幸せのため?」

「確かに正しいことではありますが、あまりにも自由です。」

けれど――

翌週、セリシア嬢は正式にディアレル家を離籍し、“フロム街角パン屋・助手見習い”として新たな人生を歩み出していた。

その姿は、驚くほど幸せそうだった。



「……婚約、破談になったな。」

「ええ。王族としては問題ですが、個人としては……正解だったと思います。」

「でも、いいのか?お前、心配してたじゃん。婚約者とかに俺を取られないかって。」

アレスはゆっくりと息を吐いた。

「……それが、“パン屋の息子”なら、許せます。」

「えっ、そこ!?」

「“愛”が見える相手には、私も敵いませんから。」

カノン・ライエル・フィルディア、9歳と少し。
今日も彼は、“ゲームのルール”なんてお構いなしに、まっすぐに幸せを生み出していた。

そしてアレスは――
今日も、「奪われなくてよかった」と、心から安堵するのだった。
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