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第32話:恋じゃなくて、憧れだと――自分に言い聞かせた
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春先の学園。
新しい季節と共に、教室に現れたのは、黒衣の女性だった。
「本日より、魔術史の臨時講師を務めます。ナージャ=ユスティネです。よろしく。」
その瞬間、教室の空気が変わった。
長い黒髪と琥珀色の瞳、落ち着いた声と柔らかな微笑――
彼女は、どこか“異質な気配”をまとっていた。
「……あの先生、ちょっと他の先生と違うね。」
「たしかに……どことなく、貴族然としていないのに、威厳がある。魔術協会出身という噂です。」
「魔術協会!?ってことは、超エリートじゃん!」
ナージャ先生の授業は、面白かった。
難しい理論を子供でもわかるように語ってくれて、それでいて時折混ざる“本物の魔力”が、空気を震わせた。
(なんか……すごい人だなぁ。)
そう思っていたら、ふと声をかけられた。
「王子殿下。少しだけ、お時間よろしいですか?」
「え? ……俺に?」
呼び止められた私は、戸惑いながらも応じた。
「あなたの発言、先ほどの授業でとても興味深かったです。“魔術の限界を知ることが魔術を育てる”という視点……なかなか言えるものではありません。」
「え、そ、そんなに褒められると……。」
「ふふ、“照れる王子”もまた、学問の糧になりますね。」
その笑顔に、思わず頬が熱くなった。
(こ、これって……恋……?いやいや!尊敬、憧れ、そういうやつ!)
その日の帰り道。
「……アレス。なんか今日、お前、静かじゃない?」
「そうでしょうか?」
「すげぇ静か。ナージャ先生と話してから、めっちゃ口数少ない。」
「……あの女性、“危険”です。」
「へっ?」
「あなたの心が、まっすぐなだけに。“尊敬”が“恋”にすり替わるのは……一瞬ですから。」
「いやいやいやいや、俺、そういうのじゃないから!大丈夫だから!」
アレスはそっと目を伏せた。
「……それでも、油断はできません。」
そのつぶやきは、小さく、そして少し切なかった。
カノン・ライエル・フィルディア、9歳と数ヶ月。
“恋”と“憧れ”の違いを、自分でもよくわからないまま、大人びた微笑の下で揺れていた。
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「え、そ、そんなに褒められると……。」
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「そうでしょうか?」
「すげぇ静か。ナージャ先生と話してから、めっちゃ口数少ない。」
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「へっ?」
「あなたの心が、まっすぐなだけに。“尊敬”が“恋”にすり替わるのは……一瞬ですから。」
「いやいやいやいや、俺、そういうのじゃないから!大丈夫だから!」
アレスはそっと目を伏せた。
「……それでも、油断はできません。」
そのつぶやきは、小さく、そして少し切なかった。
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