何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

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第33話:この感情に、名前なんてつけられない

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「……“王族特有の魅了”について。古来より王家の血筋が他者を惹きつける理由――それを魔術理論的に検証するのが、私の任務です。」

ナージャ=ユスティネは、静かにそう告げた。

その部屋にいたのは、彼女とアレスだけだった。

「……つまり、カノン様を“研究対象”として見ている、ということですか。」

「感情的に聞こえるかもしれませんが、ええ、そうなります。もちろん、危害を加えるつもりはありません。ただ――。」

「――あなたの視線は、獣が獲物を見るような目をしていた。」

アレスの声は、低く、震えていた。

「……そう見えましたか?」

「ええ。僕にはわかります。あなたの視線は、“王子としての価値”を探るものだ。“カノン様”そのものを、見てはいない。」

「――冷静なご指摘ですね。でも、あなたは本当に冷静なのかしら?」

ナージャの声は優しかった。
それがまた、アレスを苛立たせた。

「……やめてください。そうやって“見抜いたような顔”で、感情をあおるのは。」

「じゃあ、聞かせて。あなたにとって――王子殿下は、何なの?」

一瞬、沈黙が走る。

そして――

「……僕の“全て”です。」

その言葉は、アレス自身も、初めて口にした“答え”だった。

「僕は、彼の剣になり、盾になり、影になると誓いました。それが、騎士としての誇りだと信じてきた。」

「でもそれは……“騎士の誇り”なんかじゃない?」

「僕は――。」

言葉が、詰まった。

「僕は、カノン様を……“奪われたくない”んです。」

目を伏せたアレスの瞳は、初めて曇っていた。

ナージャは、それを見て静かに息を吐いた。

「……そう。その気持ちは、もしかしたらあなたが一番、王子を“王子としてではなく”見ている証かもしれないわね。」

「……僕は、彼にふさわしくありません。」

「誰が決めたの?」

「……世界が。社会が。身分が。」

「それ、王子様が言ったの?あなたが勝手に決めたんじゃない?」

アレスは答えなかった。



数日後。

私は、ナージャ先生が突然“魔術協会の急な呼び戻し”で退任することを知った。

理由は語られなかったが――アレスが少しだけ、誇らしげな顔をしていた。

「……アレス?」

「はい、なんでしょう?」

「なんか……少し大人になった気がする。」

「それはきっと、あなたが“他人を見る目”を覚えたからですよ。」

「……お前もな?」

アレスは微かに笑って、目を逸らした。

カノン・ライエル・フィルディア、9歳。
自分の知らないところで、誰かが“本当の意味での恋”を知りかけていた。
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