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「今まで考えたこともなかったけど、何かが出来上がるのを待つっていうのは案外楽しいねぇ」
ウィルフレッドにしては珍しく、無邪気な子供のような表情だ。
中庭の片隅に、木箱がずらりと並べられている。養蜂巣箱だ。「中庭の広さを考えると、あまり期待はできませんが、上手くいけば瓶4~5個分は採れると思いますよ」
グレゴリーは、自ら作った養蜂巣箱を見ながら満足そうに頷いた。
「蜂蜜ができたら、バターと蜂蜜がたっぷりかかったパンケーキが食べたい」
ユリシーズが期待に満ちた眼差しをグレゴリーに向ける。金色と青色のオッドアイが、キラキラと輝いている。
そんなユリシーズに、グレゴリーが目を細めて微笑む。
「ええ。それと、檸檬を蜂蜜に漬けましょう。炭酸水で割るととても美味しいですよ」
「それは楽しみだな」
大きく頷いてから、ユリシーズはふと辺りを見渡した。
「そういえば、ルカの姿が見えないが」
「テラスにいるよ。養蜂が気に入らないんだって」
せっかく喜んでくれると思ったのに。
一緒に蜂蜜取りがしたかったなんて、口が裂けても言えないけれど。
「蜂蜜は大好きなくせに、蜂は大嫌いだから。話には聞いていたけど、ここまでとは思わなかったよ。中庭で蜂を育てるって聞いて顔を青くした時のルカは笑えたね」
がっかりしていることを悟られないように、ルカを嘲る。
「兄さんのことを幻滅しました?」
「え? 別に……」
思わぬ質問に戸惑ったウィルフレッドは、返事に窮する。
今までのウィルフレッドなら幻滅したと即答していただろう。かっこわるい男なんて興味ないし、相手の情けない一面を見たとたんに冷めてしまう。
でも、過剰なまでに虫を嫌がるルカに幻滅はしなかった。逆に、ルカに申し訳ないことをしたかもと思ったほどだ。
「そうだ、グレッグ、ユーリちゃんと二人で話したいんだけど、ルカの相手してやってくれる? ティセットはオレたちが持ってくるから」
ごまかすように話を逸らした。
グレゴリーは深く追求してくる男ではない。案の定、何も聞かずに頷いた。
「分かりました。焼いたスコーンがあるので、ジャムも一緒に持ってきて頂けませんか」
「了解。じゃあ、ユーリちゃん、行こう」
「ああ」
ユリシーズたちの部屋に戻る後ろ姿を見送りながら、グレゴリーは小さくため息を吐いたのだった。
グレゴリーが中庭のテラスに戻ると、ルカが読書をしていた。グレゴリーの気配に気がついているはずなのに顔を上げようともしない。
「兄さん。いつまでいじけてるんですか。ウィルフレッド様に笑われますよ」
「別にいじけてなんていないよ」
「そうですか。ああ、養蜂は今のところ順調です」
報告してくれるグレゴリーに、ルカは「それは良かったね」と冷たく答える。
「それにしてもまぁ、グレゴリー。よくもウィルのお願い聞いてくれちゃったね」
非難の意味を込めてルカが言う。
「ユリシーズが蜂に刺されたら大変って、断ると思ったのに」
「蜂蜜は体に良いですからね。それに、ユリシーズ様も中庭で丹精込めて育てた花々から採れた蜂蜜を食べてみたいとおっしゃっていたので」
ウィルフレッドのために作ったわけではないらしいと分かり、ルカはそれ以上文句を言えなくなってしまった。グレゴリーはユリシーズのためになることなら何でもしてしまう男だ。逆に、ユリシーズのためにならないことならやらない。提案したのはウィルフレッドだったが、ユリシーズのために作ったということになる。
「それに、ウィルフレッド様がスズメバチの駆除を手伝って下さったお礼も兼ねて」
そう言って、グレゴリーはルカに非難に満ちた視線を送る。
スズメバチを撤去する時、グレゴリー一人では難しいのでルカに手伝いを頼んだのだが、ルカが頑なに断ったので代わりにウィルフレッドが手伝うことになったのだ。馴れない作業に四苦八苦しながら、何とか駆除を終えた。
「俺が虫嫌いなのは知ってるだろ。ミツバチ育てるって知って、背筋が凍ったよ」
「でも、ウィルフレッド様は喜んでいらっしゃいますよ」
「そうなんだよね。正直、ウィルがあんなに喜ぶなんて驚いたよ。こういうことに興味関心ないと思ってたのに」
「兄さんは大の蜂蜜好きですからね。蜂蜜がたくさん採れるようになったら兄さんが喜ぶって思ったのではないでしょうか?」
「あはは。それはないって。単なる思いつきだろ。でもまあ、セックス以外に興味がないウィルに楽しみができたんなら良かったんじゃないかな」
「……本当に、あなたたちは……」
グレゴリーの呆れたようなため息に、ルカは眉根を寄せる。
「なんだよ」
「いえ。何でもありませんよ。今までの貴方なら、蜂がたくさんいると分かった時点で中庭に一歩も入らなかったでしょうから、大きな前進じゃありませんか?」
「なんだ、その上から目線は。本当に、俺と二人きりになると人格変わるよな。それに、ユリシーズからお茶会に誘われてるんだから、来るに決まってるだろ」
「ユリシーズ様のためですか?」
「当たり前だろ。ユリシーズが悲しむ顔は見たくないからね」
さも当然のように言うルカに、グレゴリーは本日何度目か分からないため息を吐いたのだった。
一方、ティセットを取りにユリシーズの部屋に来ているウィルフレッドたち。
「ねぇ、ユーリちゃんは、グレッグが急激に太ったらどうする?」
「グレゴリーに何かあったのかと凄く心配になるな」
即答したユリシーズだったが、ウィルフレッドがなぜそのような質問をするのか理解できず、戸棚から取り出したティーカップを片手に小首を傾げた。
「でも、グレゴリーは自己管理がしっかりしているから、太るようなことはないぞ」
「もしもの話だよ。お腹とか出て、たるんだ体になっちゃっても、グレッグのこと愛せる?」
「私は気にしないが……。あまり太りすぎると病気になりやすくなるから気をつけて欲しいが。逆に、グレゴリーは私が太ったら気にするだろうか」
ユリシーズは心配そうに言った。
昔から病弱で、下手をすればあばら骨が浮き出てしまうユリシーズが、太るということは想像できない。むしろ、もう少し太った方が良い。
そんなユリシーズの体調管理はグレゴリーが一任しているので、肥満になるほど太らせることは決してしないだろう。
「ま、グレッグは、ユーリちゃんを自分好みの体型に維持させる力があるからねぇ。万が一太っても気にしないだろうけど。脂肪のついた体も美しいですとか言い出しそうだもん」
「ウィルフレッドはどうだ? ルカが太ったら気にするか?」
「そこなんだよね。どうも良く分からなくてさ。多少お腹が出てるくらいなら気にしないのかな。客を取ってる時は、ぶよぶよのおじさんとかいたからね。あれはキツかったけど、客だから我慢できたんだよね」
ウィルフレッドの返事に、ユリシーズは複雑そうな表情を浮かべる。
「セックスは抜きにして考えた方がいいのではないだろうか。体型が変わっても、ルカがルカであることは変わらないのだから」
「でも、セックスしなかったら、一緒にいる意味がなくない?」
「そうなのか? では、私と一緒にいることも意味がないのか?」
寂しそうに言うユリシーズに、ウィルフレッドははっとなる。
「そんなわけないじゃん! ユーリちゃんとオレは友達だし! ユーリちゃんと一緒にいるのは楽しいよ」
ユリシーズのことは好きだ。困っていることがあれば損得抜きで助けてあげたいし、ずっと一緒にいたいと思う。
それが友達というものなのだと知ったのは、ユリシーズと出会ってからだ。
「それに、こんな相談を真面目に聞いてくれるのはユーリちゃんだけだし」
そもそも、ユリシーズ以外の他人に相談したいとは思えない。
「私も、ウィルフレッドのことが好きだ。ずっと一緒にいたいと思っている。悩み事も、一緒に解決できたら嬉しい。私がもし、太ったら友達ではなくなるか?」
「まさか。ユーリちゃんはユーリちゃんだもの。最初は綺麗な子だなぁって思って声をかけたのが切っ掛けだけど。でも、それだけだったらこんなにずっと一緒にいないよ」
「そうか」
ユリシーズはほっとしたように微笑んだ。
「だったら、それはルカも同じこと。太ろうが痩せようが、禿げようが、ルカはルカだろう」
「そうだね。あ、でも、禿げることは考えてなかったなぁ」
そう言いつつも、ウィルフレッドは晴れ晴れとした笑みを浮かべたのだった。
ウィルフレッドたちが中庭に戻ると、ルカとグレゴリーは会話もなく互いに読書をしていた。
「遅かったね」
「友情を確かめ合っててんだよ。ねー、ユーリちゃん」
「そうだな」
ウィルフレッドとユリシーズは意味ありげな笑みを浮かべながら互いにうなずき合った。
「なにそれ」
「そんなことよりさ。蜂を育てて蜂蜜をたくさん採るから、パンケーキを作ってよ。蜂蜜のケーキとかもいいかも。食べ過ぎてルカが太っても、オレは気にしないから」
「は? 何のこと?」
意味が分からず、ルカはグレゴリーに意見を求めた。しかし、グレゴリーは苦笑して肩を竦めるだけだ。
「まあ、ウィルが何かを食べたいって言うのは初めてのことだから嬉しいけどね。ようやく食に対する欲求が出てきたみたいだね」
「あ、分かった!」
「ん?」
「何か足りないと思ったら、食欲だ!」
ウィルフレッドは腑に落ちたすがすがしい顔をしたが、他の三人はきょとんとした顔で互いの顔を見合わせた。
ウィルフレッドが蜂蜜たっぷりのパンケーキばかりを食べるようになってしまったのは、これから少し後の話だ。
ウィルフレッドにしては珍しく、無邪気な子供のような表情だ。
中庭の片隅に、木箱がずらりと並べられている。養蜂巣箱だ。「中庭の広さを考えると、あまり期待はできませんが、上手くいけば瓶4~5個分は採れると思いますよ」
グレゴリーは、自ら作った養蜂巣箱を見ながら満足そうに頷いた。
「蜂蜜ができたら、バターと蜂蜜がたっぷりかかったパンケーキが食べたい」
ユリシーズが期待に満ちた眼差しをグレゴリーに向ける。金色と青色のオッドアイが、キラキラと輝いている。
そんなユリシーズに、グレゴリーが目を細めて微笑む。
「ええ。それと、檸檬を蜂蜜に漬けましょう。炭酸水で割るととても美味しいですよ」
「それは楽しみだな」
大きく頷いてから、ユリシーズはふと辺りを見渡した。
「そういえば、ルカの姿が見えないが」
「テラスにいるよ。養蜂が気に入らないんだって」
せっかく喜んでくれると思ったのに。
一緒に蜂蜜取りがしたかったなんて、口が裂けても言えないけれど。
「蜂蜜は大好きなくせに、蜂は大嫌いだから。話には聞いていたけど、ここまでとは思わなかったよ。中庭で蜂を育てるって聞いて顔を青くした時のルカは笑えたね」
がっかりしていることを悟られないように、ルカを嘲る。
「兄さんのことを幻滅しました?」
「え? 別に……」
思わぬ質問に戸惑ったウィルフレッドは、返事に窮する。
今までのウィルフレッドなら幻滅したと即答していただろう。かっこわるい男なんて興味ないし、相手の情けない一面を見たとたんに冷めてしまう。
でも、過剰なまでに虫を嫌がるルカに幻滅はしなかった。逆に、ルカに申し訳ないことをしたかもと思ったほどだ。
「そうだ、グレッグ、ユーリちゃんと二人で話したいんだけど、ルカの相手してやってくれる? ティセットはオレたちが持ってくるから」
ごまかすように話を逸らした。
グレゴリーは深く追求してくる男ではない。案の定、何も聞かずに頷いた。
「分かりました。焼いたスコーンがあるので、ジャムも一緒に持ってきて頂けませんか」
「了解。じゃあ、ユーリちゃん、行こう」
「ああ」
ユリシーズたちの部屋に戻る後ろ姿を見送りながら、グレゴリーは小さくため息を吐いたのだった。
グレゴリーが中庭のテラスに戻ると、ルカが読書をしていた。グレゴリーの気配に気がついているはずなのに顔を上げようともしない。
「兄さん。いつまでいじけてるんですか。ウィルフレッド様に笑われますよ」
「別にいじけてなんていないよ」
「そうですか。ああ、養蜂は今のところ順調です」
報告してくれるグレゴリーに、ルカは「それは良かったね」と冷たく答える。
「それにしてもまぁ、グレゴリー。よくもウィルのお願い聞いてくれちゃったね」
非難の意味を込めてルカが言う。
「ユリシーズが蜂に刺されたら大変って、断ると思ったのに」
「蜂蜜は体に良いですからね。それに、ユリシーズ様も中庭で丹精込めて育てた花々から採れた蜂蜜を食べてみたいとおっしゃっていたので」
ウィルフレッドのために作ったわけではないらしいと分かり、ルカはそれ以上文句を言えなくなってしまった。グレゴリーはユリシーズのためになることなら何でもしてしまう男だ。逆に、ユリシーズのためにならないことならやらない。提案したのはウィルフレッドだったが、ユリシーズのために作ったということになる。
「それに、ウィルフレッド様がスズメバチの駆除を手伝って下さったお礼も兼ねて」
そう言って、グレゴリーはルカに非難に満ちた視線を送る。
スズメバチを撤去する時、グレゴリー一人では難しいのでルカに手伝いを頼んだのだが、ルカが頑なに断ったので代わりにウィルフレッドが手伝うことになったのだ。馴れない作業に四苦八苦しながら、何とか駆除を終えた。
「俺が虫嫌いなのは知ってるだろ。ミツバチ育てるって知って、背筋が凍ったよ」
「でも、ウィルフレッド様は喜んでいらっしゃいますよ」
「そうなんだよね。正直、ウィルがあんなに喜ぶなんて驚いたよ。こういうことに興味関心ないと思ってたのに」
「兄さんは大の蜂蜜好きですからね。蜂蜜がたくさん採れるようになったら兄さんが喜ぶって思ったのではないでしょうか?」
「あはは。それはないって。単なる思いつきだろ。でもまあ、セックス以外に興味がないウィルに楽しみができたんなら良かったんじゃないかな」
「……本当に、あなたたちは……」
グレゴリーの呆れたようなため息に、ルカは眉根を寄せる。
「なんだよ」
「いえ。何でもありませんよ。今までの貴方なら、蜂がたくさんいると分かった時点で中庭に一歩も入らなかったでしょうから、大きな前進じゃありませんか?」
「なんだ、その上から目線は。本当に、俺と二人きりになると人格変わるよな。それに、ユリシーズからお茶会に誘われてるんだから、来るに決まってるだろ」
「ユリシーズ様のためですか?」
「当たり前だろ。ユリシーズが悲しむ顔は見たくないからね」
さも当然のように言うルカに、グレゴリーは本日何度目か分からないため息を吐いたのだった。
一方、ティセットを取りにユリシーズの部屋に来ているウィルフレッドたち。
「ねぇ、ユーリちゃんは、グレッグが急激に太ったらどうする?」
「グレゴリーに何かあったのかと凄く心配になるな」
即答したユリシーズだったが、ウィルフレッドがなぜそのような質問をするのか理解できず、戸棚から取り出したティーカップを片手に小首を傾げた。
「でも、グレゴリーは自己管理がしっかりしているから、太るようなことはないぞ」
「もしもの話だよ。お腹とか出て、たるんだ体になっちゃっても、グレッグのこと愛せる?」
「私は気にしないが……。あまり太りすぎると病気になりやすくなるから気をつけて欲しいが。逆に、グレゴリーは私が太ったら気にするだろうか」
ユリシーズは心配そうに言った。
昔から病弱で、下手をすればあばら骨が浮き出てしまうユリシーズが、太るということは想像できない。むしろ、もう少し太った方が良い。
そんなユリシーズの体調管理はグレゴリーが一任しているので、肥満になるほど太らせることは決してしないだろう。
「ま、グレッグは、ユーリちゃんを自分好みの体型に維持させる力があるからねぇ。万が一太っても気にしないだろうけど。脂肪のついた体も美しいですとか言い出しそうだもん」
「ウィルフレッドはどうだ? ルカが太ったら気にするか?」
「そこなんだよね。どうも良く分からなくてさ。多少お腹が出てるくらいなら気にしないのかな。客を取ってる時は、ぶよぶよのおじさんとかいたからね。あれはキツかったけど、客だから我慢できたんだよね」
ウィルフレッドの返事に、ユリシーズは複雑そうな表情を浮かべる。
「セックスは抜きにして考えた方がいいのではないだろうか。体型が変わっても、ルカがルカであることは変わらないのだから」
「でも、セックスしなかったら、一緒にいる意味がなくない?」
「そうなのか? では、私と一緒にいることも意味がないのか?」
寂しそうに言うユリシーズに、ウィルフレッドははっとなる。
「そんなわけないじゃん! ユーリちゃんとオレは友達だし! ユーリちゃんと一緒にいるのは楽しいよ」
ユリシーズのことは好きだ。困っていることがあれば損得抜きで助けてあげたいし、ずっと一緒にいたいと思う。
それが友達というものなのだと知ったのは、ユリシーズと出会ってからだ。
「それに、こんな相談を真面目に聞いてくれるのはユーリちゃんだけだし」
そもそも、ユリシーズ以外の他人に相談したいとは思えない。
「私も、ウィルフレッドのことが好きだ。ずっと一緒にいたいと思っている。悩み事も、一緒に解決できたら嬉しい。私がもし、太ったら友達ではなくなるか?」
「まさか。ユーリちゃんはユーリちゃんだもの。最初は綺麗な子だなぁって思って声をかけたのが切っ掛けだけど。でも、それだけだったらこんなにずっと一緒にいないよ」
「そうか」
ユリシーズはほっとしたように微笑んだ。
「だったら、それはルカも同じこと。太ろうが痩せようが、禿げようが、ルカはルカだろう」
「そうだね。あ、でも、禿げることは考えてなかったなぁ」
そう言いつつも、ウィルフレッドは晴れ晴れとした笑みを浮かべたのだった。
ウィルフレッドたちが中庭に戻ると、ルカとグレゴリーは会話もなく互いに読書をしていた。
「遅かったね」
「友情を確かめ合っててんだよ。ねー、ユーリちゃん」
「そうだな」
ウィルフレッドとユリシーズは意味ありげな笑みを浮かべながら互いにうなずき合った。
「なにそれ」
「そんなことよりさ。蜂を育てて蜂蜜をたくさん採るから、パンケーキを作ってよ。蜂蜜のケーキとかもいいかも。食べ過ぎてルカが太っても、オレは気にしないから」
「は? 何のこと?」
意味が分からず、ルカはグレゴリーに意見を求めた。しかし、グレゴリーは苦笑して肩を竦めるだけだ。
「まあ、ウィルが何かを食べたいって言うのは初めてのことだから嬉しいけどね。ようやく食に対する欲求が出てきたみたいだね」
「あ、分かった!」
「ん?」
「何か足りないと思ったら、食欲だ!」
ウィルフレッドは腑に落ちたすがすがしい顔をしたが、他の三人はきょとんとした顔で互いの顔を見合わせた。
ウィルフレッドが蜂蜜たっぷりのパンケーキばかりを食べるようになってしまったのは、これから少し後の話だ。
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