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お兄ちゃん
しおりを挟む適当な居酒屋を見つけたリンちゃんは「ここでいいよね?」と、俺の返事を聞く前にさっさと店に入ってしまった。
「良かったね、全席個室だって」と言われた時も、あえてそう言ってくるほど、それは良いことなんだろうか、と思いながら、黙って頷いた。
掘りごたつ式の狭い部屋の襖が閉められると、リンちゃんはなぜか俺の向かいではなく、側にピッタリと張り付くようにして並んで座った。
「あの……」
「マナトっていくつ?まだ若いよね?かっわいい顔してるなあ……」
「は、はたち…」
リンちゃんの大きな手が俺の両頬をすっぽり包み込む。
なんだか、怖くて目を合わせられない。「やめて」と言うべきなのかもしれないけど、「鍵を返せ」と言われるかもしれないと思うと、逆らわず、じっと大人しくしているしかなかった。
「それにしても、可愛いなあ……。ユウイチにいっぱいスケベなことされてるでしょ?
アイツ、意外とやるなあ……」
「あの、俺は、生田さんの彼氏じゃないです……」
「そうなのー?」
なあんだ、とリンちゃんが明るく笑った。合わせて一緒に笑った方がいいんだろうか、と思い、俺も口をほんの少しだけ動かして引きつった顔で笑った。
「……ユウイチの彼氏じゃないんだ。じゃあ、チューしてもいい?」
「えっ……」
「マナト可愛いからさあ…」
「だ、ダメです!絶対ダメです!ごめんなさい……」
顔をがっちり固定されてるから、首を動かすことが出来ず、声を出して拒否すると、ようやく両頬からリンちゃんの手が離れて自由になった。
「……ははは。からかいがいがあるなあ、もう!
マナトって、なんだかポメラニアンとかチワワとか……小型犬に似てる。
ユウイチのことも、そのウルウルした目で見つめて落としたんでしょ?」
「あの、俺、生田さんとは本当にそういう関係じゃないです……」
「ほんとにー?朝帰りもしてるし、部屋にだって通ってるんでしょ?
絶対何かあるでしょ?」
「う……」
「分かりやすすぎ!可愛いなあ、もう」と笑われた。
からかわれて遊ばれているだけだ、こんな人が俺なんかとキスをしたいわけがない、と思うと、本気にしてしまって「ダメです!」と慌ててしまったことが恥ずかしかった。
「あれ?マナト怒っちゃった?」
「……怒ってません」
「フフ、まあ、どっちでもいいけどね……」
リンちゃんは俺で遊んで満足したのか、微笑んだ後、俺の向かい側に座り直してからタバコを吸い始めた。
最近よく見かける、お洒落な見た目をした加熱式タバコじゃなくて、紙巻きタバコの方だった。
長い指でタバコを挟んでダルそうに一服する姿は、美しくてかっこいい。
気を遣ってくれているのか、そういう吸い方なのか、ほとんど口から煙を出さずに、ゆっくり味わうようにしてタバコを吸う姿はなんだか品があった。
生田さんも、リンちゃんのこの姿に何度も見とれたんじゃないだろうか、ってそんな気がした。
リンちゃんは「マナトって普段何してるの?え?学生と、バイトが二つ?だったら、たくさん食べな」とご飯をたくさん頼んでは俺に勧めてきた。
リンちゃん自身もたくさん食べた。
吸い込むようにして食べ物を口に運ぶ、リンちゃんの食事の仕方は独特だった。
どんな食べ物でも、前屈みになって真剣な顔で食べようとするけど、お箸の使い方はぎこちなくて、小さな子供みたいだった。
たくさん食べ物を頬張るし、見ようによってはリンちゃんは食べ方が「下手」と言われるのかもしれない。
けれど、そう言わせないような美しさをリンちゃんは確かに持っている。
俺も気が付いたら、目の前にいるリンちゃんを、一生懸命食事をする人だなあ、とずっと眺めてしまっていた。
リンちゃんが時おり指や唇に付いたソースを舐める仕草が、妙に艶かしかった。
「どうして、俺をじっと見るの?」
視線に気付いたのか、お箸でボロボロに崩してしまったじゃがバターを突っつきながら、リンちゃんが不思議そうにしている。
「あの、あんまり顔が綺麗だから……」
「ああ……、よく言われる。どうもありがとう」
本当にそう言われるのに慣れているのか、微笑むだけで、リンちゃんは喜んだり照れたりはしなかった。
生田さん、こんなに綺麗な人が好きだったのか、出会い系で好みの人が見つからないっていうのは、本当だったんだろうなあ、とリンちゃんを見ていると納得してしまった。
「さっきも聞いたけど、本当にユウイチと付き合ってないの?」
なんて答えるのが正解なのか分からなかった。
付き合っていないけど、お金を貰って身体を提供していました、と正直に言うのは気が引ける。
「……前に、朝帰りしてるところを見たって言ったでしょ。
なんだか、ユウイチに連れられて歩いているマナトがすごく目を張らしてたから、いったいどんな変態プレイを強要されたんだろうって気になって……」
「そんなことされてません……」
「じゃあ、ケンカしたの?」
ケンカと言えるのか迷ったけど「はい」と一応肯定した。
リンちゃんは「そっかあ」と何度も頷いている。
どうして、こんなことを聞いてくるんだろう。
俺は、またからかわれているのかな、と思いながら、温くなったビールを一口飲んだ。
「ユウイチに意地の悪いこと……ううん、それはないか…。
何か、とてつもなくキモいことを言われたの?」
「あの……、俺が……」
正直に言って良いのかすごく迷った。身体を売っていたことを人に言うのはものすごく抵抗がある。
もしかしたら、リンちゃんはうっすら気がついているのかもしれないけど、それでも自分からは言い出せそうになかった。
「……俺、整形してるんだよね。この顔作るのに、250万かかってるんだ」
「えっ?!」
さらっとビックリするようなことを言われて、どこを?と思わず、リンちゃんの顔をまじまじと眺めた。
強いて言えば鼻筋が作り物みたいに綺麗すぎるくらいだけど、それでも特に不自然さは感じられなかった。
「フフ…どこを?って顔してるね。
俺は腕の良い医者にやって貰ったから、正面からでも横からでも自然に仕上がってるんだよね」
「へえ……」
いくら整形手術をしたと聞かされたからって、珍しいものを見るみたいにジロジロ見たのは失礼だっただろうか、とリンちゃんの顔色をうかがったけど、特に気にしてはいないようだった。
「……このことを知ってるのは、金を払ってくれたオッサンと、もう一人別の男と、それからマナトだけなんだ。
だから、内緒にしてくれる?」
「うん!……でも、どうしてそんな大事な秘密を俺に……?」
「うーん……べつに理由なんかないよ。
マナトが自分のことだけ話すのは、勇気がいるだろうなあって思ったから、俺の秘密を先に言っただけ」
「……そうなの?」
もしかしたら、整形していることは嘘なのかもしれない。
リンちゃんが良い人なのか悪い人なのか未だに分からないし、俺のことはオモチャだと思っているような気もする。
けれど、ずっと生田さんにも会えず、「ごめんなさい、仲直りしたいです」と謝りに行く勇気も出ず、悩み続ける日々に疲れ果てていた。
「……俺は……。生田さんからお金を貰って、それで、それで……いやらしいことをしてたら、いつの間にか生田さんのことを好きになってしまって……」
「へえ……」
生田さんのことを「好き」だと口に出して言ってみたのは、これが初めてだった。
本人に言ったわけでもないのに、なんだかすごいことを言ってしまったような気がする。心臓がただ事ではない音を立てて激しく鳴り始めた。
「でも、俺ってそうしたらゲイってことになっちゃうのかな……。
なんだか、そう思うと不安で、それで生田さんを傷つけるようなことを言っちゃった……」
「はあ……」
「生田さんは、俺のことは好きじゃなくて、あの、たぶん、まだリンちゃんが好きかもしれないけど……」
「…………うん?」
「でも、もう、お金もいらないし、俺のことを好きじゃなくてもいいから、……生田さんに彼氏が、見つかるまでの間、また、一緒にいたいな……」
やっと言えた、と思いリンちゃんの方を見ると、能面みたいな表情になっていた。
「どうしたの……?」
「ごめん、話が長すぎて途中聞いてなかった」
「えっ?」
「いや、マナトの顔が可愛かったからさー、話が頭に入って来なかったんだよねえ、ごめんごめん」
ひどいよ、とリンちゃんのことを咎めるような目付きで見たけど、可愛く笑って「ごめんね」と軽い口調で言われただけだった。
べつに、リンちゃんからアドバイスが欲しかったわけじゃないし、誰にも言えなかったことを話せただけでも、ほんの少し心が楽になったから「大丈夫」と首を振った。
「……自分がゲイかどうか、なんかウダウダ言ってるけどさあ、そんなん死ぬまで分かんないじゃん。
ずっと女が好きだったオッサンが死ぬ直前に男を好きになったら、オッサンはゲイだってことになるのかって話だし」
「え……」
「死ぬまで誰にもわかんないし、誰にもとやかく言われる筋合いもないよ。そんなこと。
だから、生きてるうちに、ウジウジ悩むのはやめな」
「うん……」
「……大丈夫だよ。さっき渡した鍵で忍び込んで、「ごめんね」ってちょっとしゃぶってやれば仲直り出来るよ」
リンちゃんはテーブルの上に落ちている食べこぼしや水滴をペーパーナプキンでせっせときれいにしながら、「全く……手がかかる…」とブツブツぼやいていた。
「ユウイチってさあ、なんかいっつも真剣にものを考えてそうな顔してるけど、実際はなーんも考えてないからね。
だから、全然マナトが言ったことなんか気にしてないよ」
「……そうなの?」
「そうだよ。なんか意味深な顔でじーっと見てくることない?
大概、そういう時は「可愛い、ヤりたい、食べたい、抱きたい」とかそんなことしか考えてないからね」
「……そうなんだ」
もういちいち覚えていられないくらい、今までそういう顔を向けられてきたような気がする。
「ありがとうございます」と俺がお礼を言った時は必ずそういう顔をしていたけど、「ヤりたい」と思われていたんだろうか。
何でも顔に出てしまう俺と違って、生田さんの表情は本当に分かりにくい。
「……アイツ、いろいろ拗らせ過ぎて、好きな人としかセックスしないとかいうクソめんどくさい奴だけど、それでも良ければ仲直りすれば……。
俺はオススメしないけど……」
もう帰ろう、とリンちゃんが伝票を引っ掴んで立ち上がった。
俺のことを上から下までジロジロ眺めた後、「……マナト、どう見てもお金持ってなさそうだし、俺より年下だから奢ってあげる」と、リンちゃんが言うから俺ってそんなにみすぼらしく見えるんだろうか?と不安になった。
「俺ってそんなふうに見えるの?」
「……ユウイチに言って、高い服を買って貰いな。ちょっと待って……確か、この間パチンコで勝った時のお金が……」
リンちゃんはそう言いながら、ポケットからおもむろに一万円札を取り出した。
どうやら、財布を持たない主義らしかった。
「駅まで送って」と当然のようにリンちゃんに言われたから、並んで一緒に歩いた。
「……マナトって、バイトも二つしてて、ユウイチからも金貰ってんでしょ?なんで?なんかワケ有り?」
「べつに、そうじゃないけど……」
生田さんにも詳しく言ったことはないのに、リンちゃんにはどうしてお金が必要なのかを話してしまった。
俺が高校生の時に父さんが病気で死んでしまってからは、母さんが昼も夜も働いて、家族を支えてくれたこと。
下に小学生の弟と中学生の妹がいるから、本当は高校を卒業したら、すぐに就職するべきだったのに、どうしても自動車整備士になりたくて実家から離れた場所にある学校に通うために、バイトをしながら一人暮らしをしていること。
母さんに、生活費を送って貰うことは出来ないから、少しでもお金が欲しくて、美味しいバイトだなと思って生田さんの誘いをオーケーしたこと……。
リンちゃんは、俺の話を聞いているのか聞いていないのか、よくわからない表情でぼんやりしていた。
「……最後にいいこと教えてあげようか」
急に、パッと子供みたいな無邪気な笑顔を浮かべて、リンちゃんがそう言うから「うん!」と頷いた。
リンちゃんの言ういいことが、どんな内容かなんて、ほとんど気にしていなかった。
「……一回、アナルでセックスすると形変わっちゃうらしいよ」
「えっ?!」
「肛門科の医者が見たら「あっ、コイツ、アナルでセックスしたことあるな」って一発で分かるんだって」
「ええ……」
自分の排泄するための場所がどんな形をしているのかなんて当然知らないけど、「形が変わる」なんて言われたら、すごく恐ろしいことに感じられた。
そんなことを言われたら怖じ気づいてしまうに決まっているのに、うひひ、と笑っているリンちゃんは、やっぱり意地悪なんだろうか、と思えた。
「ビビった?」
「うん……。……でも、大丈夫…。痛かったら、ちゃんと痛いって言うから。
形は、残念だけど…しょうがないって思うことにする…」
「……それでいいよ。マナト、自分の身体は大事にしな。
親よりも恋人よりも…自分を大事にしな」
なんだか安心したような声でリンちゃんはそう言った。
なぜか、この時だけは、きっとリンちゃんは嘘をついていない、本当にそう思っている、という気がした。
「……また、会える?」
「はあ?なんで?」
「だって、俺、リンちゃんしか、こういう話出来る人いない……」
生田さんの元カレにまた会いたがるというのもおかしな話だけど、俺には今のところリンちゃんしか、生田さんのことやセックスのことを話せる人が思い浮かばなかった。
「……ユウイチと話せばいいじゃない」
呆れたような顔でリンちゃんはそう言って肩を竦めた。
「そんな話も出来ないで、付き合っていくつもりなの?」と言われているみたいだった。
「……俺もまた、マナトと二人で会いたいけど……さすがにユウイチの彼氏寝とるのはな……」
「そういうのじゃなくて!普通に友達として!」
「友達ね……」
リンちゃんは、ふいに足を止めて俺のことをじっと眺めた。
「飲みに行こう」と言われた時のように、ものすごい力で腕を引っ張られる。
リンちゃんの綺麗すぎて迫力のある顔が近付いてきて、唇がゆっくり動いた。
「……駄目。マナトが俺を好きになっちゃうから」
ムスクの甘ったるい香りと、ほんの少しタバコの匂いがした。
囁くような、すごく色気のある声色でそう言われて、言葉が出なかった。
油断したらリンちゃんの言うことに頷いて、そのまま食べられてしまいそうだった。
硬直している俺に「冗談冗談」とリンちゃんは笑いかけていたけど、全く冗談に聞こえなかった。
なんだかこういうところは生田さんとよく似ている。
「……マナト、すぐにヤらせてくれそうで、絶対ヤらせない、これが一番金を引っ張れるよ。フフ…」
「えっ……。……リンちゃん、生田さんとしたこと無いの?」
「あったり前じゃん!アイツ、すっごいしつこそうだし、俺の身体は安くないっつーの……」
吐き捨てるようにそう言ったリンちゃんは、やっぱり堂々としていて強気で……、俺が生田さんから話を聞くたびに、勝手にイメージしていたとおりの女王様みたいな人だ。
「バイバイ。ユウイチと仲良くね」と手を振ってあっさり去っていくリンちゃんを見送りながら、なんとなく、もう二度とあの綺麗な人には会えないんだろうなという気がした。
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