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前編 プロポーズまで
しおりを挟む僕は異世界から転生してきたのですよね? どうか、そうだと言ってください!
物心ついた頃には、そんなことを繰り返しお母様へ聞いていた。幼い僕が覚えたての「異世界転生」という言葉を使っていくら質問したとしても、この国の王妃であるお母様の答えは決まっていた。「いいえ、ユリアーネス。あなたは正真正銘この世界の人間で、王家の血をひく者です」と。
「ううう……」
「一歳になる頃にはちゃんとユリアーネスという名前にも反応していたし、小さい頃からずっと私やじいやにくっついてばかりなのも変わらない。とてもじゃないけど、どこかで現実世界からやってきた誰かの魂が転生したとは思えないわ。それに、あなたこの世界の文字を読み書き出来るじゃない」
「ですが、お母様……」
「だいたい、お腹を痛めて産んだ私があなたは異世界人じゃないと言ってるんだから違うに決まっているでしょう!」
産まれてからもう何度繰り返したかわからないやりとりだ。子供の頃と違うのは、「あなた、もう十九になるのですから、いい加減諦めて自分は王の子であるという自覚を持ちなさい」とため息混じりのお母様からのお言葉が追加されていることだ。
もう十九になるから問題なのではないですか、と僕は心の中で言い返す。こんな卑屈で自分に自信がなくて、人付き合いが苦手な僕も、王族だからという理由で社交の場に顔を出さないといけないということがどれだけ苦しいか……。思ってはいても、お母様の仰っていることが正論で、いい加減現実を受け入れなければいけないのだということが自分でもよくわかっているから、僕は「はい、お母様」とがっくりと項垂れたまま、返事をすることしか出来ない。
「あらあら、そんなに落ち込むのなら、私、前から言っていらっしゃるけど、早く結婚したらよろしいじゃないの。そんなに王家の人間でいることが嫌なら、男でも女でも誰か王家の人間以外の家に入れてもらうことね。お城から離れて家庭を持ったなら、あなたは大嫌いな社交の場や公務に参加しなくてもよろしくてよ」
ほほほっと笑った後、「お相手ならいくらでも私が探してあげるわ」とお母様が目を光らせる。それだけは結構です、と僕はぶんぶん首を横に振った。
「あら、残念ね……。お城に一斉に集めて誰があなたを射止めるのか見物したかったのに」
「だだだダメです! 僕なんかのために集まっていただくなんて、申し訳さすぎて無理です……! というかそもそも僕なんかのために誰も集まらないかと思います……、ダメだ、言ってて悲しくなってきた……」
「いや~ね~。いっぱい集まるわよお! 現に可愛い可愛いっていろんな方からあなたへの縁談が来てるっていうのに全くもう……」
最近のお母様は「ゲンジツ」という異世界からやって来たお客さん達が言う、恋愛ドキュメンタリーというものに熱狂している。どんな技術を使っているのかは知らないけれど、特別な電波でゲンジツの世界のネットフリックスやらアマゾンプライムやらというものを覗き見ては「ああ~! 人様の恋愛はなんて面白いんでしょうね~!?」と楽しそうだ。
十二人いる子供のうち、独身で結婚適齢期の僕を使ってリアル恋愛ドキュメンタリーを自らが監修しようと思っているようだけど、僕には無理だ。きっとみんなの笑い者になるだけだし、誰かを選ぶなんて、想像しただけでパニックになりそうだ。
「僕、お相手は自分で探します! お母様、どうか見守っていてください……」
「あらそう~? じゃあ、あなたが素敵な人を連れてくる日を楽しみにしてるわね」
露骨につまらなさそうにしているお母様は、本当に僕の結婚を最高の娯楽か何かと思っているに違いない。大規模なパーティーが開催されて、その中心でまごまごしている僕と、別室でその様子を見ているお母様が「ちょっと~! 何やってんのよ、もう! これじゃあ、つまんないじゃない!」とブーブー言っている未来を想像しただけで気が重くなる。
僕はちゃんと自分の力で相手を見つけて、王家から離れるんだ! 出来れば、僕を第五王子ユリアーネスとしてではなく、一人の人間として愛してくれる人に出会いたい。相手の身分なんか僕には関係ない。不器用で、頭も悪くて運動も出来ない僕のことを笑わずに、一緒にゆっくりと幸せを探してくれるような人……。
もちろん高望みしすぎだってことはわかってる。社交の場ではいつも目立たないようにしているから、誰ともマトモに交流していないため肝心の相手のあてだって全然ない。けれど、これが今の僕の目標だ。
◇◆◇
スローン王国の国王と王妃の間に産まれた十二名の子供の中で、僕は最も王族に相応しくない人間なのだと自分でも常々思っている。
国王である僕のお父様は類い希なる美貌と勇敢さを持ち、性格は優しくおおらかで豪快。今でこそ平和で豊かなスローン王国だけど、それは国王であるお父様が隣国との難しい外交問題や大きな自然災害を乗り越えてきたからだと言われている。
お母様との間にも子供が大勢いるのに、他の女性との間にも子供をもうけているお父様は「子供は未来の宝だ。俺は赤ん坊が好きだ」とあちこちを飛び回っていて、いつまでも若々しい。スローン王国では重婚や同性婚が認められているけれど、お父様程広く人を愛している方を僕は知らない。
優しく美しいお母様は、いつだって周囲の人を明るく華やかな気持ちにさせる。そんなお二人の良いところを全て受け継いだのが第一王子であるシリウス兄様で、「シリウス兄様がいてよかった、僕が第一王子じゃなくて本当によかった……!」と僕は毎日神様に感謝をしている。
他の兄弟も姉妹も、明るく華やかで、なんというか「王家に恥じない」という雰囲気が漂っている。第三王子のローゼン兄様は僕と同じであまり社交の場は好きじゃないみたいだけど、趣味で続けている鉄道模型の才能は一流らしくゲンジツの世界からやってきた乗り物に詳しい人達の間で大人気だ。
それに比べて僕は……。子供の頃から身体が小さいうえに病弱で、物覚えも悪い。これが、「実は異世界から転生していたためいつまでたっても文字が読めないから」とか「異世界からやってきたせいで、この世界の環境に適応出来ないから身体が弱い」といった何か理由があればよかったと思う。
実際は、ただただ僕は人より覚えが悪く、運動が出来ないだけだった。ある程度大きくなり、身体はすっかり健康になっても、走るのは遅いし馬には乗れない。剣のお稽古では、足裁きの練習をしているだけで転んでケガをした。勉強はどれだけ一生懸命先生のお話を聞いてもまるで理解出来ずポカンとしていることがほとんどだった。
それでも、僕だってお父様とお母様の子供なのだからきっといつかは素敵な男性になれると信じていた。けれど、十二歳で初めて社交の場に出た時に、ひどい失敗をしてしまって、それがキッカケで僕の心はぺしゃんこに潰れてしまった。
知らない人に囲まれ一斉に話しかけられて、僕は誰にも上手く言葉を返せなかった。シリウス兄様は「お前達がちゃんとユリアーネスを守らないからだ」と他の兄様達を呼んで叱っていたけど、どう考えても僕の社交性の無さに原因があったと思う。
他にも失敗はある。緊張でキョロキョロとよそ見をしていたせいで、ご婦人とぶつかってしまいグラスを割ってしまった。悪いのは僕なのに、真っ青になって何度も謝罪するご婦人を見ていたら、僕みたいにトロくてグズな人間が王族だからという理由でこの方は謝らないといけないのだと思い、本当に申し訳なくて顔が上げられなかった。
極めつけは同い年の可愛らしい貴族の娘さんとダンスを踊った時だ。もちろんダンスの出来は最低というのは当然として、問題は緊張というものが僕はダイレクトに身体の反応として現れてしまうことだった。
「ユリアーネス様、あの、ご気分が優れないのですか?」
「い、いえっ、あの、ち、違います……」
顔が真っ赤になるだけならまだいい。握りあっている手がべしゃべしゃになるくらい汗をかいてしまって。それなのに、「失礼」と自分から切り上げることも出来ずに、僕はただグルグルと回っていた。きっと、僕が第五王子だから言えないだけで本当はすごくすごーく気持ち悪かったと思う。あれ以来、身体には触れるどころか、家族や城のメイド以外の女性とはマトモに話したことさえもない。
「うう……やっぱり相手を探すのには社交の場に行くしかないのかなあ。じいや、どう思う?」
落ち込んでいてもお腹は空く。じいやの準備してくれた手作りのケーキと紅茶をキチンと頂いてから、僕はもう一度うじうじと悩み始めることにした。
「そうですなあ……。ユリアーネス様なら、焦らずとも素敵な方が現れるとじいは思いますが」
「……それって僕が第五王子だからじゃない? きっとさあ、僕が王室から離れたいなんて言ったらガッカリされちゃうと思う。あーあ、誰でもいいからどこかにいないかなあ。僕が第五王子じゃなくても構わない、僕と家族になってもいいっていう人が……」
「……ユリアーネス様を自分の元へ迎え入れたいという方はたくさんいらっしゃると思いますがね。ええ、その者の中身に拘らなければ」
「僕、人からガッカリされるのがすごく怖いんだ。今まで何度も『第五王子なのに』ってみんなを悪い方の意味で驚かせてきたから。だから、もうこれ以上第五王子でいたくない。僕を好きになってくれる人なんて贅沢は言わないから、誰でもいいから、一緒になって欲しい……」
テーブルに顔を伏せていじけていると、じいやが小さくため息をつくのが聞こえた。
「こんなじいにもお優しい素敵なお方が、将来のことで何をお悩みになる必要がありますか。じいはずっとユリアーネス様の側にいましたからよーくわかりますぞ……。ユリアーネス様は家族になる方と愛情深く寄り添う素敵な関係を築けると。本当にユリアーネス様が一番必要としているのは、よく知りもしない相手と一緒になってここを離れることなのですか?」
「じいや、僕は……」
「ユリアーネス様はまだ若い。これからたくさんの人と知り合って、そこで芽生えた恋を相手と育んでいくのもなかなか悪くないし、面白いものですよ」
じいやは僕と同じくらいの年齢で奥様と知り合い、今では五人の子供と九人の孫がいる。僕が産まれた時からずっと側にいて、我が子のように可愛がってくれたじいや。そんなじいやから「ユリアーネス様の幸せだけが、老い先短いじいの、最後の願いなのであります」と手を握られて、僕は自分が間違っていたのだとようやく気が付いた。
「ごめんね、じいや。僕、他の兄弟と自分の出来が違うことに焦ってばかりで、間違ってた……。誰でもいい、なんて考えでここを飛び出したってきっと上手くいくわけないし、相手にも迷惑だよね。もう少し真剣に考えてみる……」
「それは何よりでございます! ……いろいろ格好をつけましたが、ユリアーネス様がお城を出て行ってしまうことが寂しくて堪らないというのが、じいの本心なのです」
「じいやってば……。うん、僕もじいやと離れるのは寂しい」
そうだ、結婚して王家を離れるということは、今の暮らしと違って、自分のことは全部自分でやらないといけない。「誰でも良いから結婚して欲しい」なんて言って、相手の収入をあてにするのも失礼だし、僕がなんの役にも立たないせいでひもじい思いをさせてしまうのも申し訳ない。
「そっか……、どうやって暮らしていくかも一緒に考えないといけないのか……」
結婚して家を出るって、思ったよりも考える事がたくさんある。すぐにでもお城から出て行きたいけれど、まだまだ時間がかかりそうだということを判断した僕は、じいやに「僕が結婚相手を探してるってことはまだ内緒にしてね」とお願いをした。
◇◆◇
「……ユリアーネス、結婚する気なんだってね。母上から聞いたよ」
お母様やじいやと話した翌日。僕は第一王子であるシリウス兄様の部屋に呼び出されていた。
「おとなしくお利口にしていなさいといつも言っているだろう? どういうつもりなんだい? そしてそれを母上から聞かされた私の気持ちが君にはわかるか?」
「も、申し訳ございません、シリウス兄様……」
どもりながら必死で謝っていると、ブルーの瞳にじろりと睨まれて僕の身体はすくみ上る。
「結婚して城を出ていくだとか、そのためには相手を広く募るつもりだとか、そういう話になっているそうじゃないか」
「えっ……、あの僕、そんなことは言っていません。お、お城は出て行くとは言いましたけど、相手の方は……」
「言い訳はやめなさい」
ぴしゃりと言葉を遮られて、それで僕は何も言えなくなってしまう。今まで何度もシリウス兄様に叱られてきたからわかる。これは、すごく怒っている時の態度だ。
きっと、お母様がシリウス兄様に「ユリアーネスがいよいよ結婚する気になったみたい! どんな人と一緒になるのかしら~! 楽しみで眠れないわ~! そうだ、あなた、お城にいい人がいないか誰か見繕ってちょうだいよ! なるべくたくさんよ! た! く! さ! ん!」とでも言ったに違いない。真面目で厳格なシリウス兄様にはきっと僕がふざけた思い付きで結婚しようとしていると思われているのだろう。
「こっちへ来なさい。考えなしに私の元を離れたらどうなるのかをお前によく教えておこう」
「はい……」
シリウス兄様はお仕事で使っている机で頬杖をついたまま、足が震えてなかなか動き出そうとしない僕のことをじっと見ている。九歳上のシリウス兄様のことが僕は少し怖い。兄弟の中で僕は一番出来が悪いうえに、卑屈で陰気なせいでいつもこうやって呼び出されて叱られているからだ。
それに、顔はソックリだけどいつも笑っているお父様と違って、シリウス兄様の笑顔を僕はほとんど見たことが無い。いつも、僕と話す時は全く表情がないかウンザリしているかのどちらかで、きっと僕に心底呆れているんだと思う。
「シリウス兄様……」
「もっと近くに来なさい」
「はい……」
シリウス兄様がお仕事で使っている机どころか、この部屋にさえ普段用の無い時は誰も入ってはいけないと言われている。それなのに、シリウス兄様は僕の腕を掴むと、小さな子供にそうするみたいに、自分の膝の上へ座らせた。
「私の元にもお前とぜひ結婚させて欲しいという縁談の話が届いている。貴族の何人も妻がいるような男からだって……。お前は家を出るためだったら自分の親より年上の男の元へも平気で嫁ぐつもりなのかい?」
「ひ……」
シリウス兄様の唇が今にも僕の耳に触れそうな距離で、囁かれる。ただでさえ、怖いと思っているシリウス兄様がこんなに近くにいる。その事実で僕はパニックになってしまい、泣きそうになりながら「シリウス兄様、ごめんなさい、許してください」とただただ謝った。
「ユリアーネス、私が怖いんだね」
「そんなことは……」
「お前は何も知らないんだ。お前に縁談を申し込んでくる男のほとんどが何を目的にしているのかも。アイツ等はお前の純粋さを平気で踏みにじるような連中だ」
「あっ……」
「私がどれだけお前を守ろうとしているかも、ユリアーネス、お前は何もわかっていない……。私はお前が幼い頃からずっとお前のことを見ていたのに」
首筋にシリウス兄様の唇が当たっていて、大きな手が僕の胸を撫でる。大声で怒鳴られたことも叩かれたことも一度だってないけれど、僕はシリウス兄様からこうして触れられるのが怖い。お父様や兄様がいない世界では生きていけない、ちっぽけな存在なのだと思い知らされているような気持ちになるからだ。
「ごめんなさい、シリウス兄様ごめんなさい……、兄様の言う事を聞きます、どうか許してください……」
兄様の腕の中で、兄様の気が済むまで何度も謝る。小さな頃からずっとそうしてきた。
「わかればいいんだ。いい子だ、ユリアーネス……」
「……はい」
さっきとは別人のような優しい声で、もっと自分に凭れてくるよう兄様が僕を促す。本当は一秒だって早くシリウス兄様と二人っきりのこの空間から逃げ出したいけれど、僕に「断る」という選択肢はないため、かちかちに強張った身体でぎこちなく兄様の胸に寄り掛かった。
「……お前に相応しい結婚相手はもっとずうっと後に私が見つけて来てやるからね。だから安心しなさい」
「……はい、シリウス兄様。ありがとうございます……」
「もちろん城を出ることは許さない。ユリアーネスはここに奥さんを迎え入れるんだ。そしたら、私がお前のことを一生守ってやれる」
シリウス兄様の大きな手が僕の髪や頬を撫でる。社交の場や式典が辛いのなら、もっと出席する機会を減らしてもいい、と言う兄様に僕は小さく頷いた。シリウス兄様は「私は元々お前をあまり人の目に触れさせたくなかったんだ」と嬉しそうにしていた。たぶん、どこへ行ってもおどおどするばかりの僕がいない方がかえって安心できるという事なのだろう。
シリウス兄様がもう怒っていないのだとわかってホッとしているはずなのに、心がしょんぼりと萎んでいるようなそんな気持ちになった。
◇◆◇
自由への道を切り拓くために、もっと僕自身がしっかりしないといけないんだ、と前向きな気持ちでいられたのはほんの一瞬で、今ではますます王家を離れた生活が遠のいてしまったような気がする。
シリウス兄様をよっぽど怒らせてしまったのか、僕は外出を禁止されてしまって、毎日をお城で過ごしている。ローゼン兄様のゲンジツ世界からやってきたお友達が遊びに来た時だって、いつもは混ぜてもらえるのに、シリウス兄様からは部屋にいなさいと言われた。同情したローゼン兄様が後でゲンジツの世界で流行している「ライトノベル」という本を僕にこっそり貸してくれたことだけが唯一の救いだった。薄い本? というものは「貸したことがバレたら、俺がシリウス兄様に殺されちゃうからな」という理由で触らせてももらえなかった。あれはなんなんだろう? もし、自由になれる日が来たら、僕もどこかで手に入れて読んでみたい。
「う~……やはり、トラック? というものに跳ねられるしか、異世界へ転生する方法はないのか……」
この国にはトラックというものは存在しないけど、ローゼン兄様から聞いた話によれば、すごく重たい物を馬車とは比べ物にならない速さで運べる乗り物らしい。そんな物に跳ねられて魂が異世界へ転生するなんて、きっと相当大変だと思う。僕みたいに勇気も根性も無い人間にはきっと無理だ。やっぱり僕はこの世界の、たまたま王族に産まれてしまった落ちこぼれなのだ。
暗くて卑屈な僕だけど、ずっと自分の部屋に閉じ籠っているのはさすがにつまらない。きっと、シリウス兄様が結婚して、男の子供が産まれた時に「ああ、よかった。これで僕は王位の継承について何も悩まなくてもいいんだ」と思ったバチが当たったのだと思う。お母様は「シリウスったら! いくらなんでもやりすぎよ!」と怒っていたけれど、シリウス兄様が許してくれるまで僕はじっとしているつもりだった。
そんな日々に変化が起こったのは、秋の収穫を祝う晩餐会に僕も出席するようにという、お父様の一言だった。
「本当に……? 僕も?」
「ええ、ええ。じいは嬉しくて、早速ユリアーネス様のお召し物を手配させていただきましたよ」
僕とシリウス兄様の間に何があったかはわからなくても、なんとなく元気がない、ということにお父様は気がついてくださったのだろう。「え? なんか暗くない? 暗いよね?」と僕を見てたいそう驚いた後、晩餐会に出れば元気も出るさと明るく笑って言った。
今までは苦痛で仕方が無かった華やかな場所への出席も、久しぶりに家族以外の人々の姿を見られるのだと思うとワクワクした。
当日は、素敵な出会いがありますように、と昔から僕に仕えてくれているメイド達が朝からつきっきりで支度を手伝ってくれた。……と言っても、姉様や妹達と違って髪を梳かしたり、紋章入りの特別な服に着替えたりするくらいだけど。顔にも何かいろいろ塗りたくられたけど、鏡を見てもいつもと同じように自信がなさそうな顔の僕がソワソワしているだけだった。だけど。
「誰だ!? ここまでユリアーネスの姿を変えたのは!?」
晩餐会が始まる直前に僕の姿を見たシリウス兄様はすごく怒り始めた。「え? いいじゃん。さっすが俺の息子だな~って感心したよ、お父さんは」「やだ~! 素敵!」と僕の姿に喜んでくれたのはお父様とお母様だけで、他の兄弟は全員、イライラしているシリウス兄様と僕を見て「あーあ、またかあ」と呆れていた。
姉様や妹達の華やかさに比べたら僕なんてきっといてもいなくても同じだ。それなのにシリウス兄様は「こんな姿では目立ってしまうだろう」とイライラしていて、僕は泣きたくなった。このままだと、支度をしてくれたメイド達へ迷惑がかかってしまう。
「あのー……シリウス兄様の側にずっと座らせておけばいいのでは? 面倒なんで」
「ねー、お腹空いたあ!」
「あ~ん! もう、この髪飾り耳が痛くなってきた! 外していい?」
「ママ~、おしっこ~」
「今日は若くて可愛い子全然いねーじゃん、部屋に戻っていい?」
「……」
十二人の子供達とそれからシリウス兄様や姉様達の子供達が徐々に騒ぎ始めて収集がつかなくなったため、お父様が「目立ちすぎるかどうかは、会場で確かめればいい」と話をまとめてしまった。シリウス兄様はまだ何か言いたそうだったけど、国王であるお父様の言う事は絶対だ。
ぞろぞろと移動している時に、シリウス兄様からはとにかく不用意に動き回らず大人しくしているよう強く言われた。第一王子である兄様は、僕と違ってお父様と一緒にいろいろな人とお話をしないといけないのに、また面倒をかけてしまっている。
「……私はお前の側にずっといてやれない。代わりに、お前のことはミオに頼んである。アイツの言う事だけをよく聞いて離れないようにしなさい」
「……は、はい。シリウス兄様、ありがとうございます……」
ミオ、という名前に胸がどきんと大きな音を立てる。大袈裟な反応をして、シリウス兄様に不審に思われたら今度こそ部屋に閉じ込められてしまう。必死で平静を装ったけれど、小さく声が震えてしまっている。
他の兄弟たちが散り散りになっても僕の腕はシリウス兄様に掴まれたままだ。兄様は迷わずにある方向へ向かって歩き始めて、そして僕の身体は壁際に立っている男性へと引き渡される。
「よお。ユリアーネス。また、シリウスにいじめられてた?」
「余計なことを言うな、ミオ。私がいつユリアーネスをいじめたと言う?」
「見てみろよ、ユリアーネスの顔。真っ白じゃないか。あーあー可哀そうに。こっちへ来な、俺と全部のご馳走を食べつくしてしまおう」
シリウス兄様がまだ何か言っていたけど「わかった、わかったよ」とミオ兄様は片手を上げて手を振ってから、行こうぜと僕の肩を叩く。
「あの、ミオ兄様……」
「あ! その呼び方はやめろっていつも言ってるだろう? ユリアーネスは相変わらずだなー」
どうしよう。言いたい事がいっぱいあって、というかそもそも挨拶すらちゃんとしていないのに、シリウス兄様にビクビクしていたらいつの間にか二人きりになってしまった。
ミオ兄様の姿に気が付いた妹達が「あ! ミオ兄ちゃん!」「久しぶりー、遊んでよー」と寄ってくる。
「ダメダメ。今はユリアーネス兄ちゃんの警護中なの! また今度な!」
ユリアーネス兄様だけずるーい! と騒いでいるのが聞こえたけれど、手を引かれるのに付いて行くうちに、あっという間に大広間の隅へ連れてこられた。
「大丈夫? 人に酔った?」
「だ、大丈夫……。あの、ごめんなさい、僕、目立たないようにおとなしくしてないといけなくて……」
「あー大丈夫大丈夫。その辺のことはシリウスからよく聞いてるから。もうちょっと落ち着いたら飲み物でも取りに行こう」
ニコッと笑ってから、「暑い?」とミオ兄様が僕の額の汗を手の甲で拭う。ビックリして固まっている僕に構わず「陛下が気楽で派手なパーティーを好む人でよかったよな。形式ばった厳かな会だったら、俺なんて怖くて出入り出来ないに決まってる」とミオ兄様は話し続けていた。
「ミオ兄様、手! 僕の……」
「え? あ、そうだ、ユリアーネス」
今日の恰好、素敵だ。君によく似合ってる。
ミオ兄様の言葉に、僕は赤くなって俯くしかなかった。
◇◆◇
ミオ兄様はシリウス兄様の幼い頃からのご学友だ。
シリウス兄様に負けないくらいミオ兄様は優秀で、勉強も剣のお稽古も二人はいつも競い合うことで互いを高め合ってきたのだと言う。
驚くことにミオ兄様は、赤ちゃんだった頃にこの世界にゲンジツの世界からやって来たのだと言う。本人が「ゲンジツの世界からやって来て、川の側に流れ着いていたらしい」と笑って言う話がどこまで本当かはわからないけれど、ミオ兄様はこの世界の文字を読み書きすることは出来ないし、あちこち調べた結果この世界の毒が何も効かないということがわかって、ゲンジツという異世界からやってきたのだと証明された。
ゲンジツの世界の記憶を持たない事から、「帰りたい」と思ったことはないそうで、川の側で泣いていたミオ兄様を保護したヴァレン伯爵の養子となって、この世界でずっと暮らしている。
明るくて元気なミオ兄様は、僕たち兄弟からも好かれる人気者だ。僕やシリウス兄様を呼び捨てにすることについて、ヴァレン伯爵が謝りに来ていたけれどお父様は「いいの、いいの」と笑っていた。僕も他のみんなも、気さくに接してもらえることがとても心地よかったからだ。
シリウス兄様も、ミオ兄様がいるから毎日退屈しないのだと言う。文字の読み書きが出来なくても、一度誰かに読んでもらったことは決して忘れないという記憶力を武器に懸命に努力をされたミオ兄様のことをシリウス兄様は「生涯で私を本気にさせるのはミオだけだ」と言っていた。
そんなミオ兄様に物心がついた時から僕はずっと憧れていた。他の兄弟達と同じように気軽に「ミオ兄ちゃん」と呼べないくらいには。同時に僕は自分が恥ずかしくなる。自分の不甲斐なさを「異世界からやってきたから」ということにして逃げようとしていた自分に。
お城へ遊びに来ていたミオ兄様にそのことを打ち明けた時、「俺はゲンジツっていう異世界からやって来て、ユリアーネスやシリウスに会えてよかったって思ってるよ。だから、これからも一緒に頑張ろう。な」と僕の頭を撫でてくれた。僕もミオ兄様のように優しくて強い人になれたらいいのに……とコッソリと願う事さえ烏滸がましいということはわかっているけれど、ミオ兄様のことを思うと不思議と元気になれた。
ミオ兄様はお城へやって来ると、いつだって僕にも声をかけてくれた。時々、「これはなんて読む?」といろいろな本の文章を指差しては僕に尋ねてきて、僕はそれをミオ兄様のために一生懸命読んだ。頼まれてミオ兄様の言うことをノートに書き写したこともある。
どうして、僕なんかに頼むんだろう?
嬉しいと感じながらも不思議に思っていた。たぶん、内気な僕が学校でも上手く馴染めていないことを知っていて、そんな僕でも出来るようなことをわざわざ頼んでいたんだと今ならわかる。ありがと、助かると言われるたびに僕の心は喜びで震えた。
それはミオ兄様が大人になった今でも変わらない。
今、ミオ兄様はシリウス兄様と二人で、この国をより豊かに、みんなが暮らしやすくなるような仕事をしている。
元々、ゲンジツ世界からやって来たというミオ兄様は、異世界からやって来た人達と積極的に交流をすることで、便利な仕組みを次々とこの国に取り入れた。道を整備し、井戸からではなく水道から水が出るようにしてくれた。鉄道が国の端から端まで通せたのもシリウス兄様とミオ兄様が寝る間も惜しんで働いたからだと僕は聞いている。
「こういうのを、ゲンジツの世界では『いんふら』と言うらしい」
「いんふら、ですか?」
「そーそー。へー、こうやって書くのか」
耳慣れない言葉をそのまま書き取った僕の文字を見つめるミオ兄様の目はキラキラと輝いていた。
「次は、車だ。車」
「車?」
「こうやって、タイヤが四つついていて、馬車なんかよりもずーっと早く移動できるんだ」
ミオ兄様が描いた四角い乗り物は馬車の車輪に似た「タイヤ」というものが四つついていて、小さいものでも四人いっぺんに乗れるのだと言う。僕は言われた通りに「車」の絵のあちこちに「えんじん」「ぶれーき」「はんどる」「ばってりー」という言葉を次々と書き込んだ。ミオ兄様は僕の手を握ってから「俺はユリアーネスの字が好きだよ。俺のために書いてくれた特別な字」と呟いた。
「おーおー。完璧だ、夢の設計図だ」
「これで、車を作ることが出来るのですか?」
「んー……、まだまだ時間がかかるけど、まあ最初の一歩はこんなもんさ」
ミオ兄様の大切な夢を教えてもらえたような気がして、僕は今でも時々この時のことを思い出すと嬉しくなってしまう。ミオ兄様との関りがあったから、僕は今日までやって来られた。
「ふー……、シリウスがあれだけ必死になるのもなんとなくわかるな。ユリアーネスが結婚相手を探しているって話がすっかり広まっているみたいで、金持ちのおじさん連中が血眼になってユリアーネスを探してるよ」
「えっ……どうして……? 僕、お母様とじいやにしか話していないのに……」
「うーん……、君らのお母様の宣伝力はこの国でも一番だからな。仕方ないさ。……それにしても、城を出た自分を養ってくれるのなら誰でも構わないと言ったっていうのは本当か?」
「僕、そんなことは言っていません……。お城を離れた僕と幸せに暮らしてくれる方をゆっくり探そうと思っているだけです……。僕、相手の方の財産をあてにするつもりはありません」
「あー……、そうだよな。はあ、噂ってやつは恐ろしいね」
肩を竦めるミオ兄様は僕の側に付きっきりなせいで、ろくに食事もとれていない。僕が深く考えずにわがままを言ったせいでこんなことになってしまうなんて。いっそのこと「気分が悪くなった」とでも言って部屋へ戻っておとなしくしていようか。たぶん、その方がシリウス兄様の機嫌だってよくなる。
「あの……」
「ん? どうした、疲れた?」
「えっと、僕……」
「こんな所でおとなしくしてろなんて言われても息が詰まるよな。そうだ、少し外の空気を吸いにいかないか?」
「えっ……」
「まさかユリアーネスが外にいるとは誰も思わないだろうから、求婚してくるようなヤツだっていないさ。ほら」
僕の手をとって立ち上がらせると、ミオ兄様は「行こう」と堂々と外へ連れ出してくれた。本当は嘘をついてでも部屋へ戻るべきだったのに。もう少しだけ一緒にいたくて、僕は手を引かれるままミオ兄様と一緒に庭を歩いた。
「あー、やっぱりパーティーよりも、好き勝手に過ごすのが一番だ。この広い庭でシリウスと走り回った頃が懐かしいよ」
「はい。僕も、ミオ兄様とシリウス兄様の背中を追いかけて走ったことをよく覚えています」
「みんなちっこくて可愛かったよなー。ローゼンなんか、庭へ出るたびに俺かシリウスがおぶってやらないと臍を曲げてたんだ。懐かしいな」
華やかな会場を離れてみると外はしんと静まり返っている。招待者のほとんどはすでに到着しているからなのか、見張りの衛兵達の表情もどこか柔らかい。
「よし、ここならゆっくり出来るだろ」
そう言ってからミオ兄様はガゼボ内のベンチへ腰を下ろした。「おっと。失礼」とハンカチを敷いてくれたけど、その上へ座っていいのかどうかも僕にはわからない。僕がただ突っ立っているのを見て、ミオ兄様はハンカチをくしゃっとポケットへしまってから「へへ」と笑う。それがなんだかおかしくて、僕も笑った。
「今日もきっと花火が上がるんだろうな。ドッカンドッカン花火が上がるのを、みんな楽しみにしてるから」
「はい。お父様はよく『一流の花火師が転移してこないかなあ』と言っています。よんしゃくだま? という花火がどうしても欲しいみたいで……」
「ははっ、国王陛下らしいな」
ぼんやりしていただけなのに、額が露になるように撫で付けた髪型は少しずつ崩れてきているし、緊張していたせいなのか汗だってかいている。見苦しくないかなと、ミオ兄様の様子を窺っていると目があってしまった。
「……結婚すんの?」
顔を覗き込まれるようにしてそう聞かれて、僕は自分の頬が熱くなるのに気づいた。結婚。自分が王家の一員であるという重圧から逃れる唯一の手段だと信じていた。それなのになぜか今は「はい」と頷きたくないと思ってしまう。じっと僕を見つめるミオ兄様の視線が真剣だからだろうか。
「……たぶん。お母様が、お城を離れたいのなら、結婚して相手の方と新しい家庭を築きなさいと」
「へー……。小さかったユリアーネスが結婚かあ……。まだ十九だろ? いくらなんでも焦りすぎていないか?」
「はい……。でも、シリウス兄様からは、相手は、兄様が決めると言われました。城を、兄様の側を離れることは許さないとも……」
「はー……。アイツは本当に……」
やれやれ、と言いたげな様子でミオ兄さんが首を横に振った。シリウス兄様のことを「アイツ」なんて堂々と呼べるのはミオ兄様くらいだと思う。僕は、あの鋭い眼差しを、僕に触れる冷たい手や唇を思い出すだけで背筋が寒くなる。
「……アイツも悪いヤツじゃないんだ。昔っからユリアーネスのことになるとちょっと我を忘れて必死になりすぎるっていうかさ……。キツく叱られたのか?」
「はい、僕にはもったいないくらい素晴らしい兄様です。……僕がお城を離れたいって、わがままを言ったから、兄様に余計な心配をかけてしまった……」
「うーん……。お城を離れたいとユリアーネスの心が感じたことについては、シリウスにも誰にも止められないと俺は思うけど。アイツはユリアーネスをずっと側に置いておきたいんだろうな、大事な弟として……」
何かを考え込んでいるのかミオ兄様が黙ってしまったため、しんとした空気に包まれた。シリウス兄様が言っていることは間違いじゃない。それに、束の間の時間ではあったもののこうしてミオ兄様と話をすることが出来た。きっと僕にはそれだけで十分だ。今日の記憶があれば、これから先もずっと、目立たないように、誰にも迷惑をかけないように、おとなしくお利口でいられる。
「……どうしても辛い時は俺に言うといい。俺はいつでもユリアーネスの味方だから」
「ありがとうございます。……僕、またいつか、ミオ兄様の車の設計図を描くお手伝いがしたいです」
「おー、助かるよ、ありがとう。……あの時からずっと俺は、ユリアーネスのことを大事に思ってる。それは今も変わらない」
辛いですなんて言ってシリウス兄様の部屋であったことを話してしまったら、きっとミオ兄様のことを困らせてしまう。だから、言えない。
「じゃあ、行くか。そろそろシリウスがユリアーネスがいないことに気づいてる頃だな」
「……はい」
「……ん?」
戻らないといけないことはわかっていた。だけど、このまま戻ったら、次はいつミオ兄様と会えるのだろう。そう思ったら自然に手がミオ兄様の腕を掴んでいた。
「ごめんなさい……。僕、帰りたくありません。ミオ兄様、ごめんなさい……」
どうして僕は周囲の人に迷惑ばかりかけてしまうんだろう。このまま消えてしまいたい。ミオ兄様との幸せな記憶と共に。
「……。参ったな……」
涙なんか出ていないのに、ミオ兄様は「泣かないでくれ」と俺の頬を撫でた。
「……あー。これ以上のことをしても、このまま君を連れ去ったとしても、俺はシリウスに間違いなく殺されるんだよな」
「え……」
「でもさ、帰りたくないなんてユリアーネスから言われて、置いて帰れるわけないだろー……」
そう言ってからミオ兄様は周囲をキョロキョロと見渡してから、腕を伸ばしてそっと僕のことを抱き締めた。
「ミオ兄様、僕、ミオ兄様にずっと憧れていました。ミオ兄様が僕の、心の支えでした……」
ミオ兄様の両手が僕の両頬を包み込む。僕の気持ちは一生言葉にしてはいけないのだと、ずっとそう思っていた。だけど、このまま残りの人生をお城で暮らしてひっそりと忘れられてしまうのなら、一度だけでいいからミオ兄様に思いを伝えたい。きっと、僕は今、一生分の勇気を振り絞っている。
「ユリアーネス。俺は……俺も君のことを可愛いと思ってる。何よりも大切だとも……。でも、俺達は、他の人と同じように自由に愛し合うことは許されない。……君の兄さんはまず俺を殺すだろうし、君からも自由を取り上げるだろう」
それについてはよくわかっているから、僕はこくこくと頷くことしか出来ない。
「だから……結婚しよう。俺と」
「……へ?」
「うん、そうだ、それしかない。結婚前の自由な恋愛をシリウスは認めるわけないだろうけど、結婚なら……」
「け、結婚? 僕とミオ兄様が……?」
「そう。俺と結婚しよう、ユリアーネス。……このままユリアーネスが他の誰かと結婚するのはやっぱり俺には無理だ。ユリアーネス、好きだ、城を出て俺の元へ来て欲しい」
全ては僕の願望が見せる幻なのだと思った。ただ、これだけはわかっていた。俺はお城を出たいのじゃない、ミオ兄様の側にいたいのだと。
ミオ兄様はすごく真面目な顔で俺のことを見つめた後、少し迷ってから頬に唇で触れた。「ずっとこうしたかった。シリウスの目を盗んで。ずっと触れたかった」と囁かれて、まるで全身がじいんと甘く痺れていくようだ。その後すぐ、夜空に花火が上がった。
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