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★不慣れ(6)
しおりを挟む指の出し入れが繰り返されたことで、普段は固く閉ざされている部分はすっかり柔らかく解れてしまっている。気持ちいい所を擦ってもらえるたびに、「あっ、あっ」と短く声をあげずにはいられなかった。
「う、ううっ……」
「マナト……? しんどい?」
「あっ、あっ、だめ、きもちいい……」
限界だった。しんどいからじゃなくて、気持ちがよくて、これ以上我慢が出来そうになかった。
ユウイチさんのを入れて欲しい。それで、前みたいに「マナト、好きだよ」と言われながら指では届かない場所を突かれたり擦ったりされたい。
コンドームが無い、と言われた時、最初に頭に浮かんだのは「中に出されてもいい」ということだった。今日、突発的にそう感じたというよりかは……。前にユウイチさんと一緒に見たゲイビデオで、何度も中出しされた穴から精液が溢れてくる映像を見た時からずっとそう感じていたような気がする。
どのシーンよりもエッチだと感じて、見ていて一番ドキドキしたせいなのか、いつまで経っても忘れられない。
挿入後に激しく出し入れされるのを怖いと感じるのに、中に精液を注ぎ込まれてから、トロトロになったソコを掻き回すようにした後、何度も突かれたらどうなるんだろうと想像することをやめられなかった。
ずっと強烈に印象に残っている映像と、「入れて欲しい」という感情とが頭の中で合わさって、ユウイチさんに触られると焦れったくて苦しい。いつもみたいに優しく丁寧に扱われても、目の前のユウイチさんの性器を舐めても全然満たされなかった。
「一度抜こうか」とユウイチさんから言われて、それに頷いたものの、出ていこうとする指をギュウギュウ締め付けてしまった。俺の体は、ユウイチさんを受け入れる準備がもう充分出来ている。
ユウイチさん、俺はどうしたらいいんでしょうか……? と「生でしてみたい、中出しされたい」という自分の欲求に困り果てながらも、そろそろと体を起こした。
「……ユウイチさん、あの、くっ付けて一緒に擦って……それで出したい」
「……いいよ」
「ありがとう……」
さっきとは逆の方向に体の向きを変えて、覆い被さるようにしてユウイチさんへぴったりとくっついた。
「……緊張してる?」
「う、ん……あまり上に乗らないから……」
顔つきを見てそう判断されたのか、ソワソワと落ち着かない気分でいることがすぐにバレてしまった。改めて顔をまじまじと見られるのが照れ臭くて、えへ、とそれを誤魔化すようにして笑うと、ユウイチさんも微笑んだ。
「このまま、してもいい……?」
「いいよ」
「あの、じゃ、じゃあ、ユウイチさん……目隠しして?」
「……うん?」
ユウイチさんはほんの少し困った顔をしてから、ハッキリしない返事をした。何を言われているのかわからない、と言った様子だったから「あれ」と布団の側に置かれている、ユウイチさんからのお裾分けの入っている紙袋を指差して見せた。
「アイマスク……?」
「あれ、ユウイチさんがつけて……」
「……ついにマナトもそういうプレイに興味が……?」
「違います……。見られるのが恥ずかしくて……。ユウイチさんに跨がって、えっと……擦り付けてるところ見られたくない……」
「跨がって擦り付ける!?」
口に出すだけでもだいぶ勇気を振り絞ったというのに、復唱されると恥ずかしくて堪らなかった。自分は何かとんでもないことを言ってしまったんだろうかという気がした。
ユウイチさんから上擦った声で「それは……マナトが、上に跨がってセックスする時みたいに腰を動かすってこと?」と聞かれても、「……うん」と小さな声で答えるのが精一杯だった。
「見たい……」
ユウイチさんは、そういうプレイじゃないなら絶対にこの目で見たい、アイマスクを着けている場合じゃない、と言い張って聞かなかった。
「恥ずかしい」「見られたら上手く出来ない」と俺がいくら理由を言っても、いつもしてくるみたいに「大丈夫、大丈夫」で押し通そうとしてくる。半ばやけくそで「そういうプレイだから、良いから着けてください!」とアイマスクを押し付けると、「わかった」と素直に受け取ってくれた。
あれだけ理由を言っても納得しなかったのに、「そういうプレイ」と言えばすぐオーケーしてくれるってどういうこと? そもそも、「そういうプレイ」ってなに……? と複雑な気持ちにはなったけど、これで自分の姿を見られるという心配が無くなってホッとした。
「……ユウイチさん、どう?」
「……何も見えない」
「見えたら欠陥品ですからね……。不安になったりします?」
「……これも、そういうプレイだと思うと最高に興奮する。マナトはやっぱり天才だな……」
「そうですか……」
ユウイチさんは「自分が身を持ってアイマスクを使ったプレイの安全性を立証する」ということをブツブツ呟いていた。
立証した結果、俺に対して使わせるつもりなんだ、でも快楽責めをオーケーするのはちょっと……と複雑な思いで、どこにでも売っていそうな、黒いアイマスクを着けたユウイチさんの顔をじっと眺めた。
「ユウイチさん、鼻、高いね」
「……どうもありがとう」
いつもじろじろ俺のことを見てくる目にばかり注目しがちだけど、ユウイチさんの鼻は高くて、真っ直ぐで綺麗だった。肌にほとんど赤みが無いのと目が隠れているせいなのか、ほんの少し作り物じみていて余計にそう思えた。
ユウイチさんは、なぜこのタイミングでそんなことを? と困惑しつつも、一応褒められたことに対してお礼を言ってくれた。
「ユウイチさん、好き……」
たまには、いつもユウイチさんにして貰ってるようなことを俺からもしようと、ちゅ、と自分からキスをした。何も見えていないユウイチさんが、ぎゅっと体を抱き締めてくれる。
何をされるか怖いとか感じないのかな? 俺のことを信用してくれてるってこと? とたくさんの疑問を頭に浮かべながら夢中でキスをした。気持ちよくて、安心するのに、体がムズムズするような感覚になる。
「んっ、んん……」
ユウイチさんの舌で口の中を舐め回されると、もうそれだけで体のあちこちに触って欲しくなってしまった。敏感になった肌を擦りつけるようにしていると、だんだん頭がぼうっとしてくる。
ユウイチさんは何も見えていないんだから、俺がちゃんとしないとダメなのに、体がだらしなく快感を拾おうとしてしまう。
名残惜しい気持ちでキスを中断して、いつも自分がしてもらっているみたいに、ユウイチさんのことを一生懸命舐めた。固い胸板をペロペロと舐めていると「子犬……」と呟くのが聞こえた。
子供扱いされているようでもあったし、「下手」と言われているみたいでムッとしたから、ビックリさせようとユウイチさんの乳首も吸った。
「気持ちいいよ」と言ってもらえたから、吸っていない方の乳首も手で触った。どう頑張っても、ユウイチさんは俺みたいに乳首への刺激でビクンと反応したりしなかった。
やっぱり俺の乳首、ユウイチさんにしょっちゅう触られすぎておかしくなってるんじゃ……と自分の胸を見ながらほんの少し不安になった。べつに色も形も変化はないし、触ってもらうのは気持ちいいけど、しばらくの間我慢した方がいいのかもしれない。
何も見えていないユウイチさんのために「ユウイチさん、大好き」「もっと触ってもいい?」となるべく言葉をかけながら、触ったり舐めたりするようにした。
ちゃんとした返事を貰える時もあれば、何を言っているのかハッキリ聞き取れないくらい、だらけた喋り方の時もあった。特に「好き、大好き」と俺が言うと、「うーん……」と長く呻いた後、「ああ……」と悩ましげな声をあげてユウイチさんは悶えていた。
最終的には「触ってよ」とでも言うかのように、硬くなった性器を俺に擦りつけてきた。
「あの、ユウイチさんにもローション塗りますね……」
さっきお裾分けしてもらえたばかりのローションを、ユウイチさんの性器に塗り拡げた。
少し恥ずかしいけど、ユウイチさんの身体に跨がって、セックスする時みたいに性器を擦り付けたり、お互いのモノをくっ付けて扱いたりすれば、きっとそれだけで充分気持ちよくなれる。
射精へ導く程の強さではないものの、優しく先端を撫で回したり、裏筋を指先でなぞったり……とにかく前に教えてもらったユウイチさんの好きな触り方をした。
「マナト、手でするの、……う、ほんとに、上手になった……」
ユウイチさんの呼吸は浅く早くなっていた。「ユウイチさん、ここ気持ちいい?」と耳元で囁きながら裏筋を擦ってあげると、「はあ……」と深いため息のような声をあげて身を捩っている。
勃起した状態でローションをたっぷり塗ったユウイチさんの性器は大きくて、ヌラヌラしていて、触っているだけでドキドキした。そのせいで、一度静まったと思った欲求が、復活し始めていた。
こんなにローションを塗っているし、上に跨がって擦り付けていたら入ってしまうかも、ということを考えると手が震えるはー、はー、という自分の荒い呼吸が酷く耳障りで、ユウイチさんにも聞こえてしまって不審に思われるんじゃないかと不安になるほどだった。
「マナト……?」
「あの、ごめんなさい、すみません……ちょっとだけ入れてもいいですか?」
「……えっ?」
「す、すぐ抜くからっ……」
ユウイチさんに跨がって、もうずっと焦らされていた場所をユウイチさんの性器へ何度も擦り付けた。
「あっ」とソコへ硬いものが触れた瞬間に、意識なんかしなくても自然に声が漏れる。「ちょっとだけ」でやめられる自信が一気になくなってしまった。けれど、もう止められなかった。
「……ユウイチさん、ごめんね」と謝ってから、ひくつく場所へユウイチさんの性器をあてがった。
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