丸ごと全部を食べてみて

サトー

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★後ろから

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「ああっ……! あっ、あっ、は、はづきくん、まって……!」

 今日だけは我慢する、と約束したから頑張っているけど、「変な感じ」がいよいよ極限に達してしまいそうで、なんだか怖かった。
 指でナカを擦られると、腰がムズムズして、先走りが止まらなくなる。心の中では、「ストップ! ストップ! 待って、止まってよ!」とジタバタもがいているけれど、じわじわ押し寄せてくる快感に対してどうすることも出来ない。

「あっ……んうっ……」
「陸ちゃん、前も触ってあげようか」
「へ……?」
「一緒に触ったら気持ちいいよ……? ね、気持ちいいって言ってみて?」
「ああっ……! まって……まってよお……!」

 もう片方の手で葉月くんのが俺の性器を扱いてくれる。「変な感じ」に「気持ちいい」が加わると、「すごく気持ちいい」に変わってしまうなんて、知らなかった。内腿がブルブル震えて、勝手に腰が揺れる。

「だめっ……葉月君、でちゃうよっ……!」
「いいよ……? すっごく気持ち良さそう……可愛い……」
「やだ……、葉月君と一緒がいい……一緒にいきたい……」

 気持ちいいのに、なんだかグズグズと泣きたいような気もして、油断したら目からは涙が溢れそうだし、口の端からは唾液が垂れそうだった。

「葉月君、お願い……葉月君のが……入ってる時にいきたい……」

 今、出してしまったら、その瞬間に満足してしまうような気がして、それが怖い。「誕生日の日に、最後までしようね」って約束したのに、先にスッキリしてしまって力が抜けきった俺の体を、葉月君が抱き締めているのはなんだかとても寂しい事のような気がした。

「ねー、葉月君……お願い……」
「……わかった」

 絶対大丈夫だから、一気にやってね、と伝えたら葉月君は「なるべく頑張るけどー……」と頷いてくれた。



 セックスで挿入するためには、四つん這いになるか、仰向けで寝転んで足を開くか、とにかくすごく恥ずかしい格好をしないといけないと思っていた。
 俺はすごく体が固いから、足を少し開いただけでも痛くて堪らなくて、正常位でするならセックスどころじゃなくなってしまう。
 葉月君の顔が見えないのは怖いけれど、このまま後ろからして貰うしかないんだって、不安な気持ちでシーツをぎゅっと握りしめていたら、葉月君が「陸ちゃん」と顔を覗き込んで来た。

「葉月君……?」
「ゴロンって寝てごらんよ」
「え……? こう……?」
「そうそう……そのまま、俺に背中を向けてて……」

  休憩……? と不思議に思いながら横になっていると、なんだか葉月君がゴソゴソやっているのが聞こえる。自分では一度も使ったことが無いけれど、コンドームをつけてるんだ、ってわかった。
 つけてるところを見られたくないのかな、というか、今、葉月君、下を脱いだってことだよね!? 上も脱いでくれないかなあ……そしたら裸が見られるのに……と、緊張を少しでも和らげようといろいろなことを考えている間も、心臓が痛いくらいバクバクと鳴っていて、このまま死んでしまいそうだった。

「陸……」

 側に寝そべった葉月君の腕が絡み付いてくる。はい、って返事をする声が震えているのが自分でもわかった。

「ねー、陸。この格好のまま、後ろから入れるから、ちょっとだけ力抜いてて」
「え……? このまま……?」
「そうそう。後ろからずっと、ぎゅってしててあげるからさ……。それなら怖くないよ」
「……抱き枕みたいに?」
「そうだね」

 抱き枕、で葉月君がクスクス笑うから俺も一緒にちょっとだけ笑った。
 葉月君は普段ベッドの上でじゃれ合う時みたいに、俺を抱き締めて、頬にキスしたり胸を触ったりした。「暑い」と着ているものを葉月君が全部脱いだ時は、「これが葉月君の裸……!?」と感動してしまって、葉月君に「すごいエロい目で見てくるじゃん」って笑われてしまった。

 二人とも何も身に付けていない状態で抱き合うのは初めてだった。葉月君のスラッとした体は温かくて、スベスベしていて気持ちがいい。大好きないい香りに包まれながら、乳首を指先でつままれて、恥ずかしいけど、我慢出来なくて小さな声で喘いでしまった。

 時々お尻の割れ目に、葉月君の硬いモノが擦りつけられる。……葉月君の顔は見えないのに、不思議とさっきみたいに怖くはなかった。このまま、スルッと入ってくれたりしないかなー……なんて、都合のいいことを考えてしまうくらい、葉月君は「陸ちゃん、大好きだよ」って何度も言って、俺を安心させてくれた。

「力、抜いてて……」
「うん……」

 先っぽが入っただけでも、指とは比較にならない圧迫感で体が強張る。痛そうな声を出したら、葉月君が萎えちゃう、と頑張っているけど、本当の本当は少し苦しい。

「大丈夫……?」
「だ、だいじょぶ……」
「……おっぱい触ってあげるから、そっちにだけ集中してみて?」
「はい……」

 乳首を触って貰えると、ほんの少し苦しいのが薄れる。葉月君は俺を離さなかった。時々、耳の側へ唇を寄せては「大丈夫? いったん抜く?」と気遣ってくれる。気持ちいいのと葉月君が優しいのとで、ちょっとずつ体と心をほぐして貰いながら、なんとか全部を受け入れる頃には、二人とも息がすっかり上がってしまっていた。

「入った……」

 ほっとしたような声で葉月君がそう言ったのが聞こえた後、ぎゅうっと後ろから抱き締められる。

「……陸ちゃん、どう? 変な感じする?」
「……ふ、蓋されてるみたい」
「蓋って……」
「でも、ちゃんと繋がってるって、わかる……。良かった……」

 セックスは俺にとってすごく大変なことだけど、でも、葉月君となら、ちゃんと出来た。同じ男の人とするセックスが好きかどうかは、俺にはまだよくわからない。だけど、怖くて痛い思いをしないようにって、葉月君が俺のことをずっと大切にしてくれたことだけは、ちゃんとわかる。
 ちゃんと約束が守れた、ちゃんとセックスが出来たって、安心しているのに、葉月君のことが、どうしようもないくらい大好きで、なんだか胸がいっぱいで苦しい。


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